Artist: Ghostface Killah (feat. RZA)
Album: Ironman
Song Title: Marvel
概要
Ghostface Killahのソロデビュー作『Ironman』(1996年)の最終トラックである本作は、プロデューサーのRZAとGhostfaceによる、女性と生命の誕生、そして宇宙の真理に対する深遠な対話である。RZA自身のプロデュースによるメロウでソウルフルなビートに乗せ、前半でGhostfaceがストリートで男たちを破滅させる魅力的な女性(ファム・ファタール)を描写する。後半ではRZAが引き継ぎ、Wu-Tang Clanの圧倒的な影響力から、5% Nation(ファイブ・パセンターズ)の教義である「女性の胎内(Womb)はブラックホールであり、生命を育む豊穣な土壌である」という形而上学的な宇宙論へと一気に飛躍させる。ゲットーの日常風景と壮大なスピリチュアリズムがシームレスに交差する、アルバムの締めくくりにふさわしいヒップホップ哲学の極致である。
和訳
[Intro: Ghostface Killah & RZA]
Yeah...
ああ…
Word, these wiz's be bugging, God
マジだぜ、この女どもはおかしくなってる、神よ
※「wiz(wisdomの略)」は5% Nationの言葉で女性のこと。「God」は黒人男性(ここではRZA)への呼びかけ。
But you know we ain't got nothing to do with that, Ghost
だが分かってるだろ、俺たちには関係ないことさ、ゴースト
Yeah, check it out, y'all – one, two
ああ、聞いてくれお前ら、ワン、ツー
We back up in this joint! One!
俺たちがこの場所に戻ってきたぜ!ワン!
Check the fly shit...
このイカしたシットをチェックしな…
Yeah – don't black out on me
ああ、俺の前で気を失うなよ
[Verse 1: Ghostface Killah]
Yo, Black man, watch out, she salt-water trout
ヨォ、黒人の兄弟、気をつけな、あの女は海水マスのよう(しょっぱい女)だぜ
※「salt-water trout」は見た目は良いが中身が伴わない(または性病を持っている)危険な女性の比喩。
Al Deuce dug her back out, inside the dugout
アル・デュースがダグアウトの中で、あの女の背中を掘りまくった(ヤッた)んだ
※野球のベンチ(ダグアウト)での情事というストリートの生々しい噂話。
Heard the pussy was good, big niggas fell victim
アソコが最高だって聞いたぜ、大物どもが次々と犠牲になった
Mentally stripped 'em, one God turned Christian
精神的に骨抜きにされてな、ある「神(5% Nationの信者)」はキリスト教徒に改宗しちまったくらいさ
※女の魅力に狂い、自身の信仰(黒人至上主義的な教え)すら捨ててしまう男たちの滑稽さと女の魔性の描写。
She know magic, soaking wet pussy on the mattress
あの女は魔法を知ってる、マットレスの上でびしょ濡れになってな
Skin like Cleopatra's, the leading actress
クレオパトラみたいな肌をした、主演女優さ
She been fuckin' since we went to fourteen, look at Miss Thing
俺たちが14歳の頃からあの女はヤッてた、あのミス・シングを見てみろよ
With a ponytail, kept a jar of Vaseline
ポニーテールで、ワセリンの瓶を持ち歩いてた女だぜ
She's a big girl now, with a body that growl
今じゃ立派な大人の女だ、唸り声を上げるようなボディをしてる
Like Wiz murder trial, smile attract crowds
ウィズの殺人裁判みたいにな、その笑顔は群衆を惹きつける
Most niggas – would light the Lord over this broad
大抵の野郎は、この女のためなら神すらも燃やすだろうよ
Big niggas in their drawers pose, one knee on the floor
大物どもが下着姿でポーズを決め、片膝をついて求愛してる
Little kids daydream of humping Wildflower
ガキどもはあのワイルドフラワー(野良花)とヤることを夢見てる
Hanna-Barbera fame, Geraldo Rivera
ハンナ・バーベラ級の知名度だ、ヘラルド・リベラさ
※アニメ制作会社(『トムとジェリー』など)や有名なTV司会者を引き合いに出し、その女がストリートでどれだけ有名かを示している。
[Verse 2: RZA]
Fat ass, wrist, big asses, colorful lips
でかいケツ、手首の宝石、巨大なケツ、カラフルな唇
※ここからRZAのヴァース。前半はライブ会場に集まるファンやストリートの熱気を描写する。
Wide hips, spoiler kits, chrome dipped rims with new kicks
広い腰、車のスポイラーキット、新品のタイヤを履いたクロームメッキのリム
Plus jeeps boomin' beats
それにビートを爆音で鳴らすジープ
Loud horn beasts, crowded streets, confusion
デカいクラクションを鳴らす野獣ども、混雑したストリート、大混乱だ
Yo – the heat is on, yo it's too Black, it's too strong
ヨォ、熱気が高まってる、あまりにもブラックで、あまりにも強力だ
In one hour, Wu-Tang Clan is about to perform
あと1時間で、ウータン・クランのライブが始まる
Police barricade, sidewalk crowded like parades
警察のバリケード、パレードみたいに人だらけの歩道
Your arena now present the event of the decade
お前の地元の会場が今、この10年で最大のイベントを提示する
Long braids and fades, bald heads, finger waves
長いブレイズにフェードカット、スキンヘッドにフィンガーウェーブ
Extensions, nails, Friday, just got paid
エクステにネイル、金曜日、給料をもらったばかりの奴らだ
Headlining your marquee is the prime time rhyme crime family
看板のヘッドライナーは、プライムタイムのライム犯罪ファミリー(Wu-Tang)だ
That shines Godly light upon this Hip-Hop art form
このヒップホップという芸術形式に、神々しい光を照らす存在さ
Yo, dunn, we can't be measured by no chart, the God born
ヨォ、兄弟、俺たちはチャート(順位)なんかじゃ測れねえ、神として生まれたんだ
Never bust premature, for sure
早漏(早出し)は絶対にしねえ、確実にだ
※ここからメタファーが「性交と生命の誕生」へと切り替わる。
You want it raw? Let me plant my dynamite, bitch, deep inside your core
生がいいのか? 俺のダイナマイトをお前の奥深くに植え付けさせてくれ、ビッチ
The explosion stops your menstruation, cause your stomach inflation
その爆発がお前の生理を止め、お前の腹を膨らませる(妊娠させる)
Patiently wait nine months for deportation
9ヶ月間、国外追放(出産)を辛抱強く待つんだ
Of the Earth from the Moon
月(女性)から地球(子供)が生み出されるのをな
※5% Nationの教義で、Moon(月)=女性、Earth(地球)=女性または子供の隠語。宇宙の法則を生命の誕生に例えた極めてスピリチュアルな表現。
Black woman, stay in tune
黒人の女よ、波長を合わせ続けろ
Yo Gods, let me born y'all the science about the womb
ヨォ神々(兄弟たち)よ、お前らに子宮に関する科学(真理)を教えよう
※「born」は5% Nationのスラングで「明白にする・教える(数字の9)」という意味。
It's a black hole for those who lose control
それはコントロールを失った者にとってはブラックホールだ
Fertile soil for royal and wise
高貴で賢明な者にとっては、豊穣な土壌となる
And spoiled many men and took many lives
そして多くの男たちを堕落させ、多くの命を奪ってきた
Loyal brothers changed sides
忠実だった兄弟たちも、寝返っちまうほどにな
Only birthed a decimal compared to those who died inside
その中で死んでいった者(精子)たちに比べれば、生み出された命なんてほんの数パーセントに過ぎないのさ
※女性の胎内(Womb)は、生命を生み出す神聖な土壌であると同時に、男たちを狂わせ、無数の精子が死んでいく暗黒の空間(ブラックホール)でもあるという、生命と宇宙の摂理を説いた究極のパンチラインでアルバムが幕を閉じる。
