Artist: GZA
Album: Liquid Swords
Song Title: Liquid Swords
概要
Wu-Tang Clanの精神的支柱であり、「The Genius」の異名をとるGZAのセカンド・ソロアルバム『Liquid Swords』(1995年)のタイトルトラック。プロデューサーのRZAが作り上げた、冷たく不穏でミニマルなビートは、冬のニューヨークのストリートと東洋の武術世界を完璧に融合させている。冒頭には日本のカルト時代劇映画『子連れ狼(Shogun Assassin)』からの長大なサンプリングが使用されており、裏切りと復讐に生きる凄腕の侍(拝一刀)の姿が、シーンの頂点に立つ孤高のMCであるGZAのペルソナと重ね合わせられている。タイトルの「液体の剣」とは、GZAの流れるようなフロウと、いかなる形状にも変化し隙間に入り込んで相手を切り裂く、変幻自在で致命的なリリシズムの比喩である。ヒップホップ史において最も文学的で完成されたリリックの一つとして、今なおコアなヘッズから神格化されているクラシックである。
和訳
[Intro: Gibran Evans]
When I was little, my father was famous
私が小さかった頃、父は有名だった
He was the greatest samurai in the empire
父は帝国で最高の侍だった
And he was the Shogun's decapitator
そして、将軍の首斬り役だった
He cut off the heads of a hundred and thirty-one lords
父は131人の大名の首を刎ねた
It was a bad time for the empire
帝国にとっては悪い時代だった
The Shogun just stayed inside his castle and he never came out
将軍は城の中に引きこもり、決して外に出ようとはしなかった
People said his brain was infected by devils
人々は、将軍の脳は悪魔に感染してしまったのだと噂した
My father would come home, he would forget about the killings
父は家に帰ると、殺しのことは忘れようとした
He wasn't scared of the Shogun, but the Shogun was scared of him
父は将軍を恐れていなかったが、将軍は父を恐れていた
Maybe that was the problem
おそらく、それが問題だったのだろう
Then, one night
そして、ある夜
The Shogun sent his ninja spies to our house
将軍は我が家に忍者スパイを送り込んできた
They were supposed to kill my father, but they didn't
彼らは父を殺すはずだったが、仕留め損ねた
That was the night everything changed
その夜から、すべてが変わってしまったんだ
※映画『子連れ狼』の英語版『Shogun Assassin』からのサンプリング。主人公の息子・大五郎の語りを通じて、権力者(将軍)から恐れられ裏切られた孤高の暗殺者という、Wu-TangとGZAのストリートにおける立ち位置を暗喩している。
[Interlude: RZA]
See, sometimes, you gotta flash 'em back
ほら、時には奴らに過去を見せてやらなきゃならねえ
See, niggas don't know where this shit started
奴らはこのシットがどこから始まったのか分かっちゃいねえからな
Y'all know where it came from
お前らはこれがどこから来たのか知ってるだろ
I'm sayin', we gon' take y'all back to the source through knowledge, yo
俺が言いたいのは、知識を通じてお前らを源流(ソース)へと連れ戻してやるってことさ、ヨォ
[Chorus: GZA & RZA]
When the MCs came to live out the name
MCどもがその名に恥じぬように生きようとし
And to perform, some had
パフォーマンスをするために、ある者は
To snort cocaine, to act insane
狂ったように振る舞うためにコカインを吸わなきゃならなかった
Before he rocked it on
ステージを揺らす前にな
Now gone off the mental plane to spark the brain
今じゃ精神の次元から離れ、脳をスパークさせている
※かつてのラッパーたちがドラッグの力でステージを盛り上げていたのに対し、GZAは純粋な精神力と知識の力(スパーク)で聴衆の脳を刺激するという宣言。
With the building to be born
生み出されるべき構築とともにな
※「building」「born」は5% Nation(ファイブ・パセンターズ)の教義(Supreme Mathematics)における「知識の構築」と「真理を教え導くこと」の隠語。
Yo, RZA flip the track with the what to cut
ヨォ、RZA、このトラックを何を切るかでフリップ(再構築)しろ
[Verse 1: GZA]
Fake niggas get flipped in mic fights
フェイクな野郎どもはマイクファイトでひっくり返される
I swing swords and cut clowns
俺は剣を振り回し、ピエロどもを切り刻む
Shit is too swift to bite, you record and write it down
俺のシットはパクるには速すぎるぜ、お前は録音して書き留めるだけだ
I flow like the blood on a murder scene
俺は殺人現場の血のように流れる(フロウする)
Like a syringe, on some wild-out shit to insert a fiend
注射器みたいにな、ヤク中の中にブチ込むためのヤバいシットさ
But it was your op' to shop stolen art
だが盗品のアート(他人のラップ)を売り歩くのはお前らの作戦だったな
Catch a swollen heart from not rollin' smart
賢く立ち回らなかったせいで、心臓を腫れ上がらせる(痛い目を見る)ことになるぜ
I put mad pressure on phony wack rhymes that get hurt
俺は怪我をするような偽物のワックなライムに、強烈なプレッシャーをかける
Shit's played like zodiac signs on sweatshirts
スウェットシャツにプリントされた星座みたいに、ダサくてありふれてるぜ
※当時の流行の安っぽいファッションを引き合いに出し、他人の陳腐なラップを揶揄している。
That's minimum and feminine like sandals
それはサンダルみたいに最小限で、女々しいんだよ
My minimum table stacks a verse on a gamble
俺の最小のテーブルは、ギャンブルの上にヴァースを積み上げてる
Energy is felt once the cards are dealt
カードが配られた瞬間に、エネルギーが感じられるだろう
With the impact of roundhouse kicks from black belts
黒帯からの回し蹴りのような衝撃でな
That attack the mic-phones like cyclones or typhoons
サイクロンや台風のようにマイクに襲いかかる
I represent from midnight to high noon
俺は真夜中から真昼までレペゼンし続ける
I don't waste ink, nigga, I think
俺はインクの無駄遣いはしねえ、思考するんだ
※GZAの別名「The Genius(天才)」にふさわしく、言葉の重みと知性を強調するパンチライン。
I drop megaton bombs more faster than you blink
お前がまばたきするよりも早く、メガトン級の爆弾を落としてやる
'Cause rhyme thoughts travel at a tremendous speed
なぜなら、ライムの思考はとてつもないスピードで移動するからな
Through clouds of smoke of natural blends of weed
自然なブレンドのウィード(マリファナ)の煙の雲を通り抜けてな
Only under one circumstance, that's if I'm blunted
ただし条件が一つある、俺がブラント(マリファナ)を吸ってハイになってる時だけだ
Turn that shit up, my clan in the front want it
そのシットの音量を上げろ、最前線にいる俺のクラン(一族)がそれを求めてるぜ
[Chorus: GZA & RZA]
Now, when the MCs came to live out the name
今、MCどもがその名に恥じぬように生きようとし
And to perform, some had
パフォーマンスをするために、ある者は
To snort cocaine, to act insane
狂ったように振る舞うためにコカインを吸わなきゃならなかった
Before he rocked it on
ステージを揺らす前にな
Now born with the mental plane just to spark the brain
今じゃ精神の次元と共に生まれ、ただ脳をスパークさせている
With the building to be born
生み出されるべき構築とともにな
Yo, the RZA flip the track with the what to cut
ヨォ、RZA、このトラックを何を切るかでフリップしろ
[Verse 2: GZA & RZA]
I'm on a mission that niggas say is impossible
俺は奴らが不可能だと言うミッションに挑んでる
But when I swing my swords, they all choppable
だが俺が剣(言葉)を振るえば、奴らはみんな切り刻めるんだ
I be the body dropper, the heartbeat stopper
俺は死体を転がす者、心臓の鼓動を止める者だ
Child educator plus head amputator
子供たちの教育者であり、頭を切り落とす者でもある
※「Child educator」は無知な若者を教え導く5% Nationの教え。「head amputator」はイントロの『子連れ狼』の首斬り役とリンクしている。
'Cause niggas' styles are old like Mark 5 sneakers
なぜなら奴らのスタイルは、マーク5のスニーカーみたいに古いからな
※「Mark 5」は古くてダサいスニーカーの代名詞。
Lyrics are weak like clock radio speakers
リリックは時計付きラジオのスピーカーみたいに弱々しいぜ
Don't even stop in my station and attack
俺の駅(領域)に停まって攻撃しようとなんてするな
While your plan failed, get derailed like Amtrak
お前の計画は失敗し、アムトラックみたいに脱線するだけだ
※アメリカの旅客鉄道アムトラック。脱線事故が多いことで知られていた。
What the fuck for? Down by law, I make law
何のためだ? 掟に従ってな、俺が掟を作るんだ
※「Down by law」はストリートの掟や固い絆を意味する古いヒップホップ・スラング。
I be justice, I sentence that ass two-to-four
俺は正義だ、お前に2年から4年の刑を宣告してやる
'Round the clock, get that state pen' time, check it
時計の針が回るように、州立刑務所の時間(懲役)を食らいな
But the pens I be stickin' with, you can't state the crime
だが俺が突き刺す「ペン(言葉)」に関しては、お前は犯罪(crime)を陳述(state)することはできねえ
※「state pen'(州立刑務所)」と「pen(文字を書くペン)」、「state the crime(罪を陳述する)」を掛け合わせた極めて高度なダブルミーニング。自分のリリックの破壊力は法では裁けないという宣言。
Came through with the Wu, slid off on the DL
ウータンと共に現れ、DL(秘密裏)に滑り込む
※「DL」はDown Lowの略。密かに、目立たずに行動すること。
I'm low-key like seashells, I rock these bells (When the MCs)
俺は貝殻みたいに控えめ(ローキー)だが、このベル(ステージ)を揺らすぜ(MCどもが)
※LL Cool Jのクラシック「Rock the Bells」の引用。目立たず静かに行動しつつ、マイクを握れば頂点に立つというGZAのスタンス。
Now come aboard, it's Medina-bound
さあ乗り込みな、メディナ行きだ
※「Medina」は5% Nationのスラングでブルックリンのこと。
Enter the chamber and it's a whole different sound
チェンバー(部屋・流派)に入れ、そこは全く違うサウンドだ
※「The 36 Chambers(少林三十六房)」というWu-Tangの世界観。
It's a wide entrance, small exit like a funnel
入り口は広く、出口は漏斗みたいに狭いぜ
※一度Wu-Tangの世界(またはGZAの知性の沼)に足を踏み入れたら、容易には抜け出せないことの比喩。
So deep it's picked up on radios in tunnels
あまりにも深いから、トンネルの中のラジオでも受信できるほどさ
Niggas are fascinated how the shit begin
野郎どもは、このシットがどうやって始まったのか魅了されてる
Get vaccinated, my logo is branded in your skin
ワクチンを打っておけ、俺のロゴはお前らの肌に焼き印されてるからな
[Chorus: GZA & RZA]
When the MCs came to live out the name
MCどもがその名に恥じぬように生きようとし
And to perform, some had
パフォーマンスをするために、ある者は
To snort cocaine, to act insane
狂ったように振る舞うためにコカインを吸わなきゃならなかった
Before he rocked it on
ステージを揺らす前にな
Now gone off the mental plane just to spark the brain
今じゃ精神の次元から離れ、ただ脳をスパークさせている
With the building to be born
生み出されるべき構築とともにな
Yo, RZA flip the track with the fuckin'
ヨォ、RZA、このトラックをクソみたいにフリップしろ
