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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Small World - Nas 【和訳・解説】

Artist: Nas

Album: I Am...

Song Title: Small World

概要

本作は、Nasの3rdアルバム『I Am...』(1999年)に収録された、彼の真骨頂である緻密なストーリーテリングが光るマフィオソ・ラップの傑作である。バッド・ボーイ・レコードのプロデューサーチーム「The Hitmen」のNashiem MyrickとCarlos Broadyが手掛けた緊迫感のあるストリングス・ビート上で、Nasは「ストリートの因果応報(Karma)」と「狭い世界(Small World)」をテーマに、三人の登場人物が交錯するノワール映画のような群像劇を描き出す。メリーランド出身のドラッグ・クイーン「キャロリン」、ブルックリン出所の無軌道なハスラー「スヌーク」、そして孤児から殺し屋へと変貌した「ボディーガード」。欲望と裏切りが渦巻くゲットーの食物連鎖の中で、すべての行動が最終的に自分へと返ってくるというストリートの無慈悲な真理を、冷徹な観察眼と圧倒的な描写力で描き切った文学的作品である。

和訳

[Intro]

See no evil, fear no evil, speak no evil, hear no evil
悪を見ざる、恐れざる、言わざる、聞かざる
※日本の「三猿(見ざる、言わざる、聞かざる)」に「fear no evil(恐れざる)」を加えたストリートの生存哲学。犯罪やトラブルに関わったり、無用な恐怖を抱かなければ生き延びられるという教訓。

If you don't bring that shit around you
そういうヤバいモンを自分の周りに持ち込まなければ

You ain't got nothin' to worry about (Uh-huh)
何も心配することなんてねえのさ

Yeah (Yeah, uh-huh)
ああ

Know what I'm sayin'? (Yeah)
俺の言ってることが分かるか?

Yo, yoyo, yo
ヨォ

[Verse 1]

Carolyn from Maryland, she Lady Heroin
メリーランドから来たキャロリン、彼女は「レディ・ヘロイン」さ
※「Lady Heroin」は、単なるドラッグの売人ではなく、ストリートを牛耳る強大な女性麻薬王(クイーンピン)であることを示している。名前と出身地で韻を踏みつつ、彼女の存在感を際立たせている。

She elegant, her apparel in the M-Class caravan
エレガントな女で、ベンツのMクラスの車列に乗って着飾ってる

Ki's of dope, lovin' cats to skeet in her throat
何キロものヤクを扱い、男たちに喉の奥へブチ撒けさせるのが好きな女だ
※「Ki's」はキログラム(大量の麻薬)。「skeet」は精液を射精すること(特にフェラチオの文脈)。彼女がドラッグビジネスの元締めでありながら、同時に激しい性欲を持つファム・ファタール(魔性の女)であることを描写している。

She fuck killers in her condo, her Benz and her boat
自分のコンドミニアムやベンツ、クルーザーで殺し屋たちとヤりまくる

Her ice fro', ass is curvy, forty years old
ダイヤは凍りつくように輝き、ケツはグラマラス、年は40歳
※「ice fro'」は「ice froze(凍りつくような大量のジュエリー)」の意。

She passin' for thirty. Gucci framed glasses from Purvy's
だが30歳で通る美貌さ。Purvy'sで買ったグッチのフレームの眼鏡をかけてる
※「Purvy's」はニューヨークの高級眼鏡店「Purdy Opticians」をもじったもの、あるいは特定の高級ブティックを指すストリートのスラングとされる。

Madison Ave., shoppin', when she not, coppin' bricks of that shit
マディソン・アベニューで買い物をしてない時は、ヤクの塊(ブリック)を仕入れてやがる
※マディソン・アベニューはNY屈指の高級ショッピング街。表向きはセレブのような生活を送りながら、裏では麻薬の卸売(coppin' bricks)を行っているという二面性。

She hoppin' on dicks, ridin' Pony's who trick
男のイチモツに跨り、貢いでくれるパトロン(Pony)に乗っかるのさ
※「trick」は売春婦に金をつぎ込む客やパトロンのこと。ここではキャロリン自身が金持ちだが、さらに男たちから搾取する狡猾さを示している。

At my man's wake, she said the eulogy
ダチの通夜じゃ、彼女が弔辞を読んでたぜ

After that, I usually bumped into her shoppin' for jewelry
その後、ジュエリーの買い物中によく出くわすようになった

Her bodyguard screwin' me. I gave her my math
彼女のボディーガードは俺を睨みつけてたが、俺は彼女に番号を渡した
※「math」は数学から転じて「電話番号」を意味する当時のNYのスラング。

Ain't nothin' new to me. Blowin' backs out, six-pack Stouts
目新しいことじゃねえ。激しくヤりまくって、スタウトビールを6本空ける
※「Blowin' backs out」は、女性の背中(腰)が壊れるほど激しいセックスをすることを示すスラング。

Wide fat mouth. The evil look with a bow-leg
分厚い唇。ガニ股で、邪悪な目つきをしてやがる

Yo, niggas said, "Shorty's a pro, she blow heads
ヨォ、周りの連中は言ってたぜ。「あの女はプロだ、フェラも最高だし
※「blow heads」は銃で頭を撃ち抜く殺し屋の暗示と、フェラチオ(give head)のダブルミーニング。

She push the fo' red. She know Feds, Feds know her"
赤いレンジローバーを乗り回してる。連邦捜査局(Feds)にも顔が利くし、サツも彼女をマークしてる」ってな
※「fo' red」は4.0リッターエンジンの赤いSUV(当時のレンジローバー等)を指す。

A code red, maybe she's out to slay me. This bitch is crazy
コード・レッド(緊急事態)だ、彼女は俺を殺そうとしてるのかもな。マジでイカれたビッチだ

She blew the celly up. Meet me at the telly to fuck
彼女は俺の携帯を鳴らしまくり、ヤるためにホテルで待ち合わせた
※「celly」は携帯電話(Cellular phone)、「telly」はホテル(Hotel)のスラング。

She knew about cats from way back. We smoked the haystack
彼女は昔馴染みの連中のこともよく知ってた。俺たちは山ほどのウィードを吸った
※「haystack」は干草の山だが、ここでは大量のマリファナの比喩。

She never coughed once; blunts was her hobby
彼女は一度も咳き込まなかった。ブラントを吸うのは彼女の趣味だったからな

She said I knew her man probably. No doubt; '96, he tried to rob me
彼女の彼氏を知ってるか聞かれたが、間違いない、96年に俺を強盗しようとした野郎だ
※Nasの過去のビーフやストリートでの実際のトラブル(1996年頃)を暗示している。

I jetted though. Sometimes, you never know
俺は逃げ切ったけどな。世の中、何が起こるか分からねえもんさ

He snorted all her work, now, she need me to do her dirty work
そいつが彼女のヤクを全部鼻から吸っちまったせいで、今度は彼女が俺にその「汚れ仕事」を頼みたいらしい
※「work」は販売用のドラッグのこと。彼氏が売り物を全てコカインとして消費してしまったため、彼氏を始末する(dirty work)ようNasに依頼してきたという展開。

[Chorus]

It's a small world (It's a...), nigga, you reap what you sow (...Small world)
狭い世界さ(マジでな)、自業自得ってやつだ
※「reap what you sow」は「撒いた種は自分で刈り取る(自業自得、因果応報)」という聖書由来の諺。

What goes around comes around, if you sleep, you don't know
やったことは必ず自分に返ってくる、気を抜いて(眠って)たら気づかねえぞ
※「What goes around comes around」も因果応報を意味するストリートの鉄則。

A very small world (It's a...), where beef could never end (...Small world)
本当に狭い世界だ、そこじゃビーフ(抗争)は絶対に終わらねえ

At the time you least expect it, I'ma see you again
お前が全く予期してない時に、また出くわすことになるのさ

It's a small world (It's a...). You get away with it now (...Small world)
狭い世界だ。今は逃げおおせたとしてもな

Soon enough it catches up to you someway, somehow
そのうち必ず、何らかの形でお前に追いついてくるんだ

Yo, it's a small world, watch what you do... (It's a small world)
ヨォ、狭い世界だ、自分の行いには気をつけな……

[Verse 2]

Snook from Red Hook was grimy, did five years, glad to be home
レッドフックのスヌークは薄汚い野郎で、5年食らって出所してきたのを喜んでた
※ブルックリンのレッドフック地区は、当時犯罪率の高いゲットーとして知られていた。ここで場面転換し、第二の登場人物であるSnookのストーリーが始まる。

From Attica, known for keepin' chrome calibers
アッティカ刑務所帰りさ。銀色のハジキ(クローム・キャリバー)を手放さねえことで有名だった
※「Attica」はNY州北部にある悪名高い重警備の刑務所。1971年の暴動でも知られ、ハードコアな犯罪者が収容される場所の代名詞。

Smooth like a Wallaby shoe. He's out to get it
ワラビーの靴みたいに滑らかで抜け目がねえ。あいつは金を手に入れるためなら何でもやる
※「Wallaby shoe」はClarksのワラビーブーツ。Wu-Tang Clanなどが愛用したことで90年代のNYストリートで大流行した。足音が立たず滑らかに動けることから、ハスラーや強盗の象徴的アイテムとされた。

Five years plannin' to blow soon as he hit the bridicks
シャバ(ストリート)に戻ったらすぐに成り上がるため、5年間ずっと計画を練ってたのさ
※「bridicks」は「bricks(レンガ)」が変形したAAVEのスラングで、「ストリート」や「プロジェクト(公営住宅)」を意味する。

Had a girl in Woodside Queens, thought he was low
クイーンズのウッドサイドに女がいて、上手く身を潜めてるつもりだった

Played the crib for a month and deaded his P.O
1ヶ月ほど部屋にこもり、保護観察官(P.O.)との連絡をブッチしやがった
※「P.O.」はParole Officer(保護観察官)。出所後の定期連絡を絶つ(deaded)ことは、再び法を犯して地下に潜る(逃亡する)ことを意味する。

Started robbin' niggas ‘til he caught a whole kilo
丸々1キロのヤクを奪い取るまで、そこら中のハスラーから強盗を働き始めた

He had a bunch of starvin' niggas he owe. He never paid though
あいつには借金を抱えた腹を空かせた連中が大勢いたが、絶対に金は払わなかった

Got large sign on his door: "Don't knock hard"
ドアには「強くノックするな」ってデカい看板を掲げてな

Laying with his bitch. "Niggas is rich" is what he told her
ビッチと寝そべりながら、「俺らは金持ちだ」なんて嘯いてた

Played the block holdin' cracks inside the baby stroller
ベビーカーの中にクラックを隠し持ちながら、ブロック(街角)で立ち回ってた
※警察の捜査や敵対組織の目を誤魔化すため、無実の象徴であるベビーカーを麻薬の運搬や隠し場所として利用するという、ゲットーの底辺のリアルで冷酷な日常を描写している。

Here come his crazy soldier, six shots; it's over
そこへイカれた兵隊(ヒットマン)がやってきて、6発の銃弾をブチ込んだ。それでおしまいさ

A year went past, Snook went flossing fast
1年が経ち、スヌークはあっという間に調子に乗って見せびらかし(flossing)すぎたんだ

His old man had crossed his ass for the laws of this fast cash
あいつの親父が、この手っ取り早い金(ファスト・キャッシュ)の掟のために、あいつを裏切ったのさ
※「His old man」は実の父親、あるいはギャングのボスや年長のハスラーを指す。「fast cash」の誘惑とストリートの掟(law)により、身内から裏切られて命を落としたことを示唆している。

[Chorus]

It's a small world (It's a...), nigga, reap what you sow (...Small world)
狭い世界さ(マジでな)、自業自得ってやつだ

What goes around comes around, if you sleep you don't know
やったことは必ず自分に返ってくる、気を抜いて(眠って)たら気づかねえぞ

A very small world (It's a...), where beef could never end (...Small world)
本当に狭い世界だ、そこじゃビーフ(抗争)は絶対に終わらねえ

At the time you least expect it, I'ma see you again (Again, nigga)
お前が全く予期してない時に、また出くわすことになるのさ(またな)

It's a small world (No doubt) (It's a...), you get away with it now (...Small world)
狭い世界だ(間違いない)。今は逃げおおせたとしてもな

Soon enough, it catches up to you, someway, somehow
そのうち必ず、何らかの形でお前に追いついてくるんだ

It's a small world, watch what you do... (It's a small... world, ah-yeah, ah-yeah)
ヨォ、狭い世界だ、自分の行いには気をつけな……

[Verse 3]

I seen death, seen thugs cry, it's bugged why we let the slugs fly
俺は死を見てきたし、サグたちが泣くのも見てきた。なんで俺たちが銃弾(slugs)を飛び交わせてるのか、狂ってるぜ

Enter your brain through your skull, another thug dies
頭蓋骨を貫通して脳ミソにブチ込まれ、また一人サグが死んでいく

Pitchin' your soul into that infinite black hole
無限のブラックホールへと、魂を放り投げるのさ

Where many souls go 'cause of a .44 blast
44口径の爆風のせいで、数え切れない魂がそこへ送られてきたんだ

Snook was one of 'em, so many more
スヌークもその一人だったし、他にも大勢の奴らがな

Even that Fendi whore got niggas hit up. Yeah, let that Henny pour
あのフェンディを着た売春婦でさえ、何人もの男を殺し屋に始末させてきた。ああ、ヘネシーを注いでくれ
※「Fendi whore」はVerse 1に登場したキャロリンのこと。彼女のような一見華やかな女性ですら、裏では何人もの死に関与しているという「狭い世界」の繋がりが見え始める。死者への追悼のためにヘネシー(Henny)を地面に撒く(pour out some liquor)というヒップホップの儀式。

Carolyn, paid-up bitch, made bitch, stay rich
キャロリン、金回りのいいビッチ、成功したビッチ、ずっと金持ちのままさ

Heard her bodyguard took Snook to God
噂じゃ、彼女のボディーガードがスヌークを神の元へ送った(殺した)らしい
※ここでVerse 1と2のストーリーが交差する。Snookを射殺した「crazy soldier」の正体は、Carolynのボディーガードだったことが判明する。

Carolyn, when she needed him, he took the job
キャロリンが彼を必要とした時、彼はその仕事(殺し)を引き受けたんだ

He was close to her ever since she took him inside
彼女が彼を家に迎え入れて以来、彼は彼女の側近だった

When his moms died; dope fiend, OD'd, '85
彼の母親が死んだ時のことさ。ヤク中で、1985年にオーバードーズで死んだんだ
※ボディーガードの悲惨な生い立ち。母親が麻薬中毒で死亡し、孤児となったところを麻薬王であるキャロリンに拾われたという皮肉な運命。ドラッグが命を奪い、ドラッグマネーが彼を育てたという負の連鎖。

He went crazy, stuck up banks to stay alive
彼は狂っちまって、生き延びるために銀行強盗を働いた

He was live, do niggas even know the things that he tried?
彼はガチだったぜ。あいつがやってきたヤバい事の数々を、周りの連中は知ってんのか?

Robbed armored trucks, incidents where police died
現金輸送車を襲撃し、警察官が死んだ事件だってあった

He stayed in lower Eastside, peace, God, (Peace, God). He stared at me hard
あいつはロウアー・イーストサイドに潜伏してた。「ピース・ゴッド(調子はどうだ)」。あいつは俺をキツく睨みつけてきた
※「Peace, God」は、Five-Percent Nation(5% Nation)の教義に基づくヒップホップ特有の挨拶。黒人男性同士が互いを「神(God)」と呼び合い、敬意を示す言葉だが、ここでは殺意を秘めた緊迫した状況での皮肉なやり取りとして使われている。

Two of his mans with him. I got to hit 'em
あいつの仲間が2人一緒にいた。俺は奴らをヤるしかねえ

I'm reachin' for my Roscoe, cocked it back on and get my blast on
俺は愛銃(Roscoe)に手を伸ばし、撃鉄を引いてブッ放す準備をした
※「Roscoe」は拳銃全般を指す古典的なストリート・スラング。

At the gas station, bunch of Arabs racin'
ガソリンスタンドでの出来事さ、アラブ系の店員たちが慌てて逃げ回ってた

Out the way as my Taurus spray. Jump in the whip, hit the highway
俺のトーラスが火を吹き、邪魔者を蹴散らす。車(whip)に飛び乗り、ハイウェイへ急いだ
※「Taurus」はブラジルの銃器メーカー「トーラス社(Taurus)」製の拳銃(トーラスPT92など)。Nasのラップにおける細部の描写の緻密さが光る。

You know how I say, the game that I play
俺がいつも言ってるだろ、俺がやってるこのゲームってやつを

It's real tendencies when you feel your enemies
敵の気配を感じ取る時、それがリアルな生存本能(tendencies)なんだ

But can't figure out who's who, keep it true
だが誰が敵で誰が味方か分からねえ、リアルを保ち続けるしかねえんだ

Shit is cool now. Put the tools down? Never
今は落ち着いてる(クール)だと? 銃(tools)を下ろせってか? 絶対にありえねえ
※「tools」は銃や武器のスラング。誰も信じられない「狭い世界」において、武装解除することは死を意味する。

'Cause everyday is on, livin' this life, out for this cheddar
毎日が戦いなんだ、この人生を生きて、金(cheddar)を追い求めてる限りはな
※「cheddar」はチーズ=金(money)を意味するスラング。

[Chorus]

It's a small world (It's a...), nigga, you reap what you sow (...Small world)
狭い世界さ(マジでな)、自業自得ってやつだ

What goes around comes around, if you sleep, you won't know
やったことは必ず自分に返ってくる、気を抜いて(眠って)たら気づかねえぞ

A very small world (It's a...), where beef never ends (...Small world)
本当に狭い世界だ、そこじゃビーフ(抗争)は絶対に終わらねえ

At the time you least expect it, I'ma see you again
お前が全く予期してない時に、また出くわすことになるのさ

It's a small world (It's a...), you get away with it now (...Small world)
狭い世界だ。今は逃げおおせたとしてもな

Soon enough, it catches up to you someway, somehow
そのうち必ず、何らかの形でお前に追いついてくるんだ

It's a small world, watch what you do... (It's a... small, world)
ヨォ、狭い世界だ、自分の行いには気をつけな……

[Outro]

I'm gonna see you again
また出くわすことになるぜ

Uh-huh, I'm gonna see you again, nigga
ああ、またどこかで会おうな

Uh-huh, gonna see you again, nigga Yeah...
ああ、また会うことになるのさ……