Artist: Travis Scott (feat. Toro y Moi)
Album: Owl Pharaoh
Song Title: Chaz Interlude
概要
トラヴィス・スコットのデビュー・ミックステープ『Owl Pharaoh』に収録された本作は、タイトルの通りチルウェーブの先駆者であるToro y Moi(本名:Chaz Bear)を大々的にフィーチャーしたインタールードである。全編にわたってダークで攻撃的なトラップ・ビートが支配する同作の中で、シンセサイザーの浮遊感とサイケデリックなアンビエントサウンドが際立つこのトラックは、トラヴィスのジャンルレスな音楽的ルーツと類稀なキュレーション能力を証明している。ヒップホップの枠組みを越え、インディーポップやエレクトロニックミュージックの要素をシームレスに融合させる彼の手法は、後の『Astroworld』などに至る壮大なサウンドスケープの原点とも言える。リリックでは、過去の執着や依存からの脱却といった哲学的なテーマが歌われており、アルバム全体における一種の精神的なオアシス、あるいはトリップ中の白昼夢のような役割を果たしている。
和訳
[Instrumental Intro] [Chorus: Toro Y Moi]
Missed existence (Existence), I don't miss it (Miss it)
失われた存在(存在)、別に未練はねえよ(未練はねえ)
※「Missed existence(あり得たかもしれない別の人生や、手放した過去)」に対する執着を否定するライン。チルウェーブの代表格であるToro y Moiによる浮遊感のあるボーカルが、物質主義的でギラついたヒップホップの世界観とは対極にある、精神的・哲学的なテーマを提示している。
I can keep it (Keep it), if I want it (Want it)
俺が望めば(望めば)、いつだって保ち続けられるんだ(保てる)
※執着心を捨て去った上で得られる自己効力感の現れ。Redditなどの考察では、トラヴィス・スコットがインディー・アーティストを起用すること自体が、当時のラップシーンの狭い境界線を破壊し、自らの音楽的野心をジャンルに縛られず自在にコントロールできるという自信の暗喩であると解釈されている。
There's nothing like it (Like it), it's not a secret (Not a secret)
こんな感覚は他にねえよ(他にねえ)、隠すようなことでもねえしな(秘密じゃねえ)
If the crutch is a king (King), then I can fix it (Fix it)
もし依存(松葉杖)が王様だってんなら(王様なら)、俺がそれを正してやるよ(直してやる)
※「crutch」は直訳で「松葉杖」だが、スラングや心理学用語では「精神的な拠り所」「依存対象(ドラッグや富など)」を意味する。ヒップホップ業界にはびこる物質的・薬物的な依存(crutch)がシーンのトップ(king)に君臨している狂った現状に対して、全く異なる音楽的アプローチによってそれを治癒・変革(fix)できるという強烈なメッセージ。Toro y Moiのオルタナティヴな視点が、アルバムに異質な解毒作用をもたらしている。
Missed existence (Existence), I don't miss it (Miss it)
失われた存在(存在)、別に未練はねえよ(未練はねえ)
I can keep it (Keep it), if I want it (Want it)
俺が望めば(望めば)、いつだって保ち続けられるんだ(保てる)
There's nothing like it (Like it), it's not a secret (Not a secret)
こんな感覚は他にねえよ(他にねえ)、隠すようなことでもねえしな(秘密じゃねえ)
If the crutch is a king (King), then I can fix it (Fix it)
もし依存(松葉杖)が王様だってんなら(王様なら)、俺がそれを正してやるよ(直してやる)
[Outro: Toro Y Moi]
Ah
あぁ…
