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Bad Mood / Shit on You - Travis Scott 【和訳・解説】

Artist: Travis Scott

Album: Owl Pharaoh

Song Title: Bad Mood / Shit on You

概要

トラヴィス・スコットのデビュー・ミックステープ『Owl Pharaoh』に収録された本作は、二部構成の壮大な組曲であり、彼のキャリア初期におけるダークでインダストリアルな美学が凝縮された重要曲である。前半の「Bad Mood」では、カニエ・ウェストの影響を色濃く反映した重厚なビートに乗せ、大学を中退し音楽の道へ進んだ際の周囲との軋轢、高額な学費ローンなどの社会システムへのフラストレーション、そして音楽業界の闇に対するパラノイアを吐き出している。後半の「Shit on You」ではビートがメランコリックかつ壮大に展開し、自分を信じなかったヘイターや地元の人間たちに対して圧倒的な成功を見せつける(Shit on you)という冷酷な復讐心と野心を宣言する。緻密なサウンドスケープと荒々しい感情の爆発は、後の『Rodeo』へと繋がるトラヴィスのシグネチャーサウンドの原点として高く評価されている。

和訳

[Part I: Bad Mood] [Verse 1]

(I just have one question) Fuck outta my business (Why?)
(一つだけ聞かせてくれ)俺のやることに首突っ込んでんじゃねえよ(なんでだ?)

I did things that most men will ask forgiveness (Huh?)
大半の奴らなら神に許しを乞うようなヤバいことを俺はやってきたんだ(あぁ?)
※トラヴィスが自身の野望を達成するために、道徳的な境界線や常識を踏み越えてきたことを示唆している。親の期待を裏切って大学を中退し、学費を勝手に音楽機材やLAへの渡航費に注ぎ込んだ自身の過去の破天荒な行動への言及でもある。

Broke the code, the commandments from my descendants (We stretch it out)
掟を破り、先祖代々伝わる戒律すらもぶち壊してやった(俺たちがそれを広げていくんだ)
※「commandments」はモーセの十戒などを連想させる宗教的な言葉。保守的な家庭環境や、テキサスという土地の伝統的な価値観(大学を出て真っ当な職に就くことなど)に背き、自らの信念を貫いた反骨心を表現している。

Who gives a fuck? New children in the buildin'
知ったことかよ、新世代のガキ共がこのビルを乗っ取りに来たぜ
※既存のヒップホップシーンのルールに縛られない、新たなサウンド(インダストリアルでトラップ寄りのゴシックサウンド)を提示する新世代の旗手としての強烈な自負。

We ride with no limits
俺たちは限界なんて無視して突っ走る

Shut the fuck up, don't you hear me tryna finish?
黙りやがれ、俺がやり遂げようとしてるのが聞こえねえのか?

I'm in a bad mood
俺はクソほど機嫌が悪いんだよ

[Verse 2]

Rob that dude, fuck that couch, burn that house
あの野郎から奪い取り、ソファをめちゃくちゃにして、あの家を燃やしてしまえ
※アナーキーで破壊的なパンク精神の現れ。トラヴィスのライブ(のちのAstroworld等の熱狂的なモッシュピット)に直結する、エネルギーの暴発と混沌(Rage)を扇動するようなリリックである。

We the cause of the era, new niggas with new terror
俺たちがこの時代の引き金だ、新たな恐怖をもたらす新世代の黒人だ

A thousand on the leather, you niggas should know better
レザーに1000ドル注ぎ込む、お前らはもっと弁えるべきだな

We niggas new slaves, I do say (Fuck, fuck)
俺たち黒人は現代の新たな奴隷だ、そう言ってやるよ(クソが)
※トラヴィスの師であり、当時密接に制作を共にしていたカニエ・ウェストの楽曲「New Slaves」(アルバム『Yeezus』収録)と完全に共鳴するパンチライン。物質主義やファッション業界、あるいはレコード会社の契約に縛られる現代の黒人の状況に対する強烈な皮肉である。

Twice only on a Tuesday when I'm in a bad mood
火曜日には2回だけだ、俺の機嫌が悪い時はな

Ooh, your skin mahogany (Fuck, Fuck)
あぁ、お前の肌はマホガニーみたいだ(クソ、クソ)

Ooh, let's break the monotony
あぁ、この退屈な日常をぶっ壊そうぜ

Government threw us in a maze (What?)
政府は俺たちを迷路の中に放り込みやがった(なんだって?)
※社会システムへの不信感。教育や借金といったシステムが、若者を抜け出せない迷路に閉じ込めているという構造的な搾取への批判。

Had me trickin' forty K for some grades (What?)
たかが成績のために4万ドルも騙し取られちまった(マジかよ?)
※トラヴィスがテキサス大学サンアントニオ校(UTSA)に通っていた際にかかった高額な学費(約4万ドル)への痛烈な批判。実社会で役に立たない教育システムを「騙し(trickin')」と断じている。

Just to make forty K for the wage
給料として4万ドルを稼ぐためだけにな

Dropped out and made that in one day
だから中退して、そんな額は1日で稼いでやったよ
※大学の学位をドロップアウトし、音楽業界で成功を収めたことで、かつて重荷だった4万ドルという金額をたった1日で稼ぎ出すようになったという究極のフレックス。カニエの『The College Dropout』精神を正当に受け継いでいる。

I'm in a bad mood
俺はクソほど機嫌が悪いんだよ

[Verse 3]

Ooh, nigga, I'm wildin' on 'em
あぁ、俺はあいつらを相手に暴れまくってるぜ

Mm, back pilin' on 'em (Pilin' on 'em)
山積みの札束をあいつらに見せつけてやる

I never feel the pain, only God can make it rain (Make it rain)
俺は痛みなんて一切感じない、雨を降らせることができるのは神様だけだ(雨を降らせろ)
※ストリップクラブで札束をばら撒く行為(Make it rain)と、自然現象としての雨を掛け合わせたダブルミーニング。痛みを麻痺させ、自身を神と同等の高次元の存在として自己暗示をかけている。

So I must be Mary, Joseph, Allah
だから俺はマリアであり、ヨセフであり、アラーでなきゃならないんだ
※キリスト教やイスラム教の神聖なアイコンを羅列し、自身がヒップホップシーンにおいて救世主的な役割を担っているという誇大妄想的なセルフイメージの提示。

Kid of a disciple, these thoughts is suicidal
使徒の子供、こんな思考は自殺行為だな

Jumpin' off a buildin', quit thinkin' like a psycho
ビルから飛び降りるなんて、サイコパスみたいな考えはもうやめろ

They tryna find a nigga dead, Chris Lighty
あいつらは俺の死体を見つけたがってるんだ、クリス・ライティみたいにな
※クリス・ライティ(Chris Lighty)は、50 CentやMissy Elliottらを育て上げた伝説的なヒップホップ・マネージャー。2012年に自身の頭を撃ち抜き自殺したとされるが、他殺説も根強く囁かれている。音楽業界のトップに君臨しながらも悲惨な最期を遂げた彼を引き合いに出し、業界の重圧や裏切りに対する深いパラノイア(被害妄想)を表現している。

Anxiety, after the meds, Kris Bobbi, ah
薬をキメた後の不安感、クリス・ボビー、あぁ
※「Kris Bobbi」はホイットニー・ヒューストンとボビー・ブラウンの娘であるボビ・クリスティーナ・ブラウン(Bobbi Kristina Brown)を指しているという考察が有力。彼女もまた両親の名声と薬物問題に苦しめられていた。抗不安薬の副作用とセレブリティの精神的崩壊を掛け合わせた、業界の闇に対する深い憂鬱。

[Verse 4]

Skinny black bastard ridin' a Casper
キャスパーを乗り回すガリガリの黒人野郎
※「Casper(キャスパー)」は有名な「フレンドリーな幽霊」のキャラクター名だが、ヒップホップのスラングにおいては真っ白な高級車(特にロールス・ロイス・ゴーストや白いポルシェなど)を意味する。オタク気質でやせっぽちだったトラヴィスが、今や超高級車を乗り回す成功者になったという鮮やかなコントラスト。

I tend to lose my thoughts when I walk
歩いていると思考が吹っ飛んじまう傾向があるんだ

They say I'm a slave, so tell me the master
あいつらは俺を奴隷だと言う、ならご主人様は誰だってんだ

Now his head on the pendant by the cross
今やそいつの首は十字架の横のペンダントになってるぜ
※イエス・キリストの顔が彫られたジーザス・ピース(ヒップホップ特有の高価なネックレス)を指している。自分を支配しようとする存在(マスター)を否定し、神すらもジュエリーとして首から下げて見下ろしているという傲慢なフレックス。

Coke'd it then I fucked her for the theory
コカインをキメて、持論のためにあのビッチを抱いてやった

You know I'm crazy, I'm straight, no weary
俺がイカれてるのは知ってるだろ、俺はシラフだし、疲れも知らねえ

I hate when conversates can't relate
話が噛み合わない奴らとの会話は反吐が出るぜ

You know it be fuckin' up my groove when I'm in a bad mood
俺の機嫌が悪い時は、俺のグルーヴまで台無しになっちまうんだよ

[Part II: Shit on You] [Intro]

I can't wait
待ちきれないぜ

I can't wait just to shit on you
お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ
※「Shit on (someone)」は直訳すると「排泄物をかける」だが、スラングでは「相手を徹底的に見下す」「成功を見せつけて相手を惨めな気持ちにさせる」という意味。自分を信じなかった者たちに対する強烈な復讐心の表明である。

[Verse]

This one for the fuck fake niggas that love to just hate, dog
これはただヘイトするのが大好きなクソみたいなフェイク野郎共へ向けた曲だ、なあ

Always talkin' that wild shit (Wild shit)
いつも適当なデタラメばかり喚き散らしてやがる(デタラメをな)

See 'em never let them verbs off (Verbs off)
あいつらが有言実行するのなんて見たことねえよ(口先だけだ)

All these fuckin' missed calls, mm
このクソみたいに溜まった不在着信の山

Might delete the whole call log (Call off)
着信履歴ごと全部消してやるかもな(消してやるよ)
※トラヴィスが成功した途端にすり寄ってきた昔の知人や、手のひらを返した連中からの連絡を完全にシャットアウトする冷酷な態度。

Thousand dollars for the jeans, fam'
デニム一本に1000ドルだぜ、兄弟

She grip 'em when a nigga swerve off (Yeah)
俺が車を急旋回させる時、女がそのデニムを強く握りしめるんだ(あぁ)

Think I need a desert eagle (Desert eagle), niggas in my face (My face)
デザートイーグルが必要みたいだな(デザートイーグルが)、あいつらが俺の目の前に突っ立ってる(目の前にな)
※「デザートイーグル」は強力な大型自動拳銃。成功に伴って近づいてくるハイエナのような連中から身を守るための武装と、精神的な警戒心の高まりを表している。

Thinking they know Jacques (Know Jacques), niggas don't know me (Don't know me)
あいつらはジャックのことを分かってるつもりだろうが(分かってるつもりだろうが)、俺の本当の姿なんて知らねえよ(知らねえんだ)
※「Jacques(ジャック)」はトラヴィスの本名であるJacques Webster II。地元ヒューストンで彼をただのジャックとしてしか見ていなかった連中、あるいは彼の夢を鼻で笑っていた昔の知人たちに対する怒り。アーティスト「トラヴィス・スコット」として覚醒した現在の自分を彼らは全く理解していないという孤独感の表れ。

Grew up on my lonestar (Lonestar), niggas roll that weed
ローンスターの中で育ってきたんだ(ローンスター)、ウィードを巻けよ
※「Lonestar(ローン・スター)」はテキサス州の愛称(Lonestar State)。地元への愛憎入り混じる感情を示すとともに、文字通り孤立無援(lone star)の状態で独自のスタイルを磨き上げてきた彼の生い立ちを示すダブルミーニングとなっている。

(Niggas roll that, niggas roll that, niggas roll that weed)
(あいつらはウィードを巻く、ウィードを巻くんだ)

[Chorus]

I, I, I can't wait just to shit on you
俺は、俺は、お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

I, I, I can't wait just to shit on you
俺は、俺は、お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

I, I, I can't wait just to shit on you
俺は、俺は、お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

Just to shit on you
お前らを完全に屈服させるためだけにな

I can't wait just to shit on you
お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

(But why, Travis?)
(でもどうしてなの、トラヴィス?)

(Two, three, lights)
(2、3、照明を点けろ)

Yeah, I can't wait just to shit on you
あぁ、お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

I, I, I can't wait just to shit on you
俺は、俺は、お前らをコケにしてやるのが待ちきれないんだ

[Outro: James Fauntleroy]

I, I, I, I
俺は、俺は…

I, oh (I), oh, oh (Oh)
俺は、あぁ…
※アウトロでソウルフルなコーラスを響かせているのは、フランク・オーシャンやドレイクらを手掛けるグラミー賞受賞シンガー・ソングライターのジェームス・フォントルロイ(James Fauntleroy)。前半の荒々しいインダストリアルな怒りが、後半にかけてメランコリックで荘厳なカタルシスへと昇華していく見事な展開を、彼の歌声が完璧に締めくくっている。