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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Love Me or Hate Me - Lil Wayne 【和訳・解説】

Artist: Lil Wayne

Album: Tha Carter III (Deluxe Revised)

Song Title: Love Me or Hate Me

概要

本作は、幾多のリーク被害を乗り越えてリリースされた歴史的メガヒットアルバム『Tha Carter III』(2008年)のデラックス版等に収録された、Lil Wayneの不屈のメンタリティと自己確信を歌い上げたソウルフルなバンガーである。タイトルの「Love Me or Hate Me(愛そうが憎もうが)」が示す通り、頂点に立つがゆえに浴びる称賛と嫉妬の双方を冷徹に受け流し、自身の歩みは誰にも壊せない(make me or break me)と宣言する。地元ニューオーリンズ第17区の交差点(Eagle StreetとApple Street)というローカルな原風景から、マーティン・ルーサー・キング・Jr.の遺産を継ぐ者としての壮大な自己定義、そして「Carrot(ニンジン)」と「Carat(宝石の質量)」を掛けた彼特有のコミカルかつ天才的なワードプレイまで、全盛期のWayneのラップスキルと哲学が凝縮された、コアなファンから絶大な支持を集めるマスターピースである。

和訳

[Verse 1]

Thank you
ありがとう

I've been through it all
俺はすべてを経験してきた

The fails, the falls
失敗も、転落もな

I'm like Niagara
俺はナイアガラの滝みたいに落ちた(フォール)が

But I got right back up, like Viagra
バイアグラみたいに、すぐにまた立ち上がる(勃起する)のさ
※「Falls(滝/転落)」からの連想でナイアガラの滝を引き合いに出し、そこからED治療薬のバイアグラ(再びそそり立つ)へと繋ぐ、Wayneの代名詞とも言える下品で天才的な言葉遊び。

I am agri-culture
俺は「アグリカルチャー(農業)」だ
※ヒップホップという「カルチャー」そのものを育て、収穫する存在であるという比喩。

Swagger so mean, it might insult ya
俺のスワッグ(オーラ)は意地悪すぎるから、お前らを侮辱(インサルト)しちまうかもな

Hah, I'm like an ultra-vulture
ハッ、俺は「ウルトラ・ヴァルチャー(究極のハゲタカ)」みたいだぜ
※ハゲタカ(Vulture)のように、死肉(敗れ去ったラッパーたち)を食い尽くす貪欲な存在のメタファー。

I fuck around and catapault ya
ふざけた真似をして、お前らをカタパルト(投石機)で吹っ飛ばしてやるよ

Torture
拷問(トーチャー)だ

Thought ya parents taught ya?
親から教わらなかったのか?

You guys is chocha
お前らは「チョチャ」なんだよ
※「Chocha(チョチャ)」はスペイン語のスラングで「女性器(プッシー)」のこと。お前らはプッシー(臆病者/軟弱な奴ら)だという侮辱。

I'm gone, buenos noches
俺はもう行くぜ、ブエナス・ノチェス(おやすみ)
※前行のスペイン語に引き続いて、スペイン語の挨拶でライミング。

Flow scorcher
俺のフロウはスコーチャー(すべてを焼き尽くす猛暑)だ

And I don't even write — No author
それに俺はリリックを書くことすらしない、作家(オーサー)じゃねぇんだ
※Wayneが2002年頃からノートに歌詞を書かず、ブース内でフリースタイル(頭の中での構築)のみで録音を行うようになった伝説的なスタイルへの言及。

So harder, so smarter
誰よりもハードで、誰よりもスマートだ

All about a dollar, like four quarters
1ドル札(ダラー)のことしか頭にねぇ、4枚のクォーター(25セント硬貨)みたいにな
※4枚のクォーター硬貨(25セント×4)で1ドルになるという直喩。ひたすら金(Dollar)を稼ぐことだけに集中している。

Oh Father, will tonight be my last?
おお天の父よ、今夜が俺の最期になるのでしょうか?

And if so, make sure my kids see my cash
もしそうなら、俺の子供たちが確実に俺の遺産(現金)を受け取れるようにしてください

And I know, I'm solid like an elbow cast
分かってる、俺は肘のギプス(キャスト)みたいにソリッド(強固)だぜ
※「Solid」は「硬い」と「信頼できる/本物である」のダブルミーニング。

And my future will be better than my past
そして俺の未来は、俺の過去よりもずっとマシなものになるはずさ

Weezy
ウィージーだ

[Chorus]

You can love me or hate me
俺を愛してもいいし、憎んでもいいぜ

I swear, it won't make me or break me
誓って言うが、それで俺が成功する(メイク)わけでも、壊れる(ブレイク)わけでもない

I'm going wherever the money take me
金が導く場所なら、俺はどこへだって行く

Until they funeral and wake me
奴らが俺の葬式(フューネラル)と通夜(ウェイク)を出すその日までな
※「Wake」には「目覚めさせる」と「(死者の)通夜・お通夜」のダブルミーニングがあり、次行への秀逸なブリッジとなっている。

And don't wake me
だから俺を起こさないでくれ

'Cause I'm sleeping
俺は眠っているんだから

I'm dreaming
夢を見ているんだ

I know that there's a better way
もっとマシな生き方があるってことは分かってる

'Cause I've seen it, Lord
だって俺はそれを見てきたんだから、神様

But this faster money is so convenient
だけど、この手っ取り早い金(ファスター・マネー)はあまりにも便利でな

And I need it
俺にはそれが必要なんだ

Say I need it
どうしても必要なのさ

[Verse 2]

C-A-R, T-E-R
C-A-R、T-E-R(カーター)

I spit movies like a VCR
俺はVCR(ビデオデッキ)みたいに、映画(ムービー)をスピット(吐き出す)するぜ
※ビデオデッキがテープの映像を映し出すように、自分が吐き出す(Spit)ラップは映画のようにリアルで映像的であるというメタファー。

I spit rounds like the Tiki bar
俺はティキ・バーみたいに、ラウンド(酒のおかわり/銃弾)をスピットする
※「Round」には「バーでの酒の注文(Round of drinks)」と「銃の弾丸(Rounds of ammo)」のダブルミーニングがある。ポリネシア風の酒場(Tiki bar)のように酒を出しつつ、銃弾を連射するという言葉遊び。

And if I got beef, I'm the meat cleav-er
もしビーフ(揉め事/牛肉)があるなら、俺は肉切り包丁(ミート・クリーバー)だぜ

And I are
そして俺は

The illest nigga Martin Luther King died for
マーティン・ルーサー・キングが命を懸けた中で、最もヤバい黒人さ
※公民権運動の指導者キング牧師が血を流して勝ち取った「黒人の自由と権利」の恩恵を受け、アメリカで最も成功し、かつ最も型破りな黒人(The illest nigga)になったのは自分であるという、傲慢かつ歴史的な重みを持たせたパンチライン。

And I ride for
俺が命を懸けて走るのは

Hollygrove, One-Seven, Eagle Street
ホリーグローブ、第17区、イーグル・ストリートのためだ
※Wayneの地元であるニューオーリンズ第17区(17th Ward)のホリーグローブ地区。彼が育った具体的な通りの名前をレペゼンしている。

And I'm higher than an eagle's feet
そして俺は、ワシ(イーグル)の足よりも高く飛んでる(ハイになってる)ぜ
※前行の「イーグル・ストリート」から、実際の鳥の「ワシ(Eagle)」へと連想を繋いでいる。

But I believe in me
だが俺は自分自身を信じてる

Apple is the cross street
アップル・ストリートが交差点(クロス・ストリート)だ
※ホリーグローブに実在する通り。Eagle StreetとApple Streetが交差する場所が、彼の真のルーツ(地元)であるというストリートの地理学。

I am just an offspring
俺はただの落とし子(オフスプリング)にすぎない

Born in the ghetto
ゲットーで生まれたな

That's why I can't let go
だから手放すことなんてできねぇのさ

One call, I'll have my dogs on ya like an echo
電話一本で、俺の犬(ダチ)たちをお前に差し向けるぜ、エコー(やまびこ)のようにな
※「Dogs」はストリートの仲間たち。エコーのようにワンワンと鳴きながら(次々と連続して)敵に襲いかかるという比喩。

Baby, I am the real deal, no pickle
ベイビー、俺は「本物(リアル・ディール)」だ、ピクルスじゃねぇぜ
※「Real deal(本物)」の「Deal」と、「Dill pickle(ディル・ピクルス)」の「Dill」の音が似ていることを利用したジョーク。アメリカで有名なピクルスのブランド「Vlasic」が宣伝文句として使っていたフレーズ等も掛かっている。

Uh, spit sickle-cell psycho
アー、鎌状赤血球症(シックル・セル)みたいに血に根ざした、サイコなラップを吐き出す

I go
俺はイクぜ

Off, like a motherfucking rifle
クソみたいなライフルが火を噴く(ゴー・オフ)みたいにな
※「Go off」は「銃が発砲される」ことと「怒り狂う/ラップで暴れ回る」ことのダブルミーニング。

And I'm from
俺の出身は

The underground, baby, like a pipe hole
配管の穴(パイプ・ホール)みたいな、アンダーグラウンドだ、ベイビー

And I will stand tall like light poles
そして俺は街灯(ライト・ポール)みたいに、高くそびえ立つ

Until the light blows
その明かり(命の火)が吹き飛ぶ(消える)までな

[Chorus]

And you can love me or hate me
お前らは俺を愛してもいいし、憎んでもいいぜ

Baby, I swear it won't make me or break me
ベイビー、誓って言うが、それで俺が成功するわけでも、壊れるわけでもない

And I be going wherever the money take me
金が導く場所なら、俺はどこへだって行く

Until they funeral and wake me
奴らが俺の葬式と通夜を出すその日までな

And don't wake me
だから俺を起こさないでくれ

'Cause I'm sleeping
俺は眠っているんだから

And I'm dreaming
そして夢を見ているんだ

See, I'm just hustling
ほら、俺はただハッスル(シノギ)してるだけさ

Living what I believe in, dog
自分の信じるもののために生きてるんだよ、ダチ

And it's a problem when our homies not eating
俺たちの仲間が食えてない(稼げてない)のは、大問題だからな
※ストリートにおける「Eating(食べる)」は「稼いで豊かに暮らす」ことのメタファー。

And I'm greedy
それに俺は強欲(グリーディ)なんだ

I'm greedy
とことん強欲なのさ

[Verse 3]

Share my blood
俺の血を分け合い

Feed my family
俺の家族を食わせる

My flow will have to plead insanity
俺のフロウは「精神異常(インサニティ)」を主張(プリード)しなきゃならないだろうな
※法廷用語「Plead insanity(心神喪失による無罪を主張する)」。自分のラップスキルが、もはや正気の沙汰ではないほど狂っている(ヤバい)という比喩。

So sick, I need Gray's Anatomy
あまりに病的(シック)すぎて、『グレイズ・アナトミー』が必要なくらいだぜ
※「Sick(最高にヤバい/病気)」から、有名な医学書『グレイ解剖学』、またはそれをモチーフにした大ヒット医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』を連想している。

Acid, like a bust open battery
酸(アシッド)だ、破裂したバッテリーから漏れ出すようにな
※自分のラップが、バッテリー液(希硫酸)のように危険で腐食性があるというメタファー。LSD(アシッド)の幻覚的なヤバさも掛かっている。

I'm cool like L.A. nights
俺はL.A.の夜みたいにクール(涼しい/イケてる)だ

I'm tight like ballet tights
俺はバレエのタイツみたいにタイト(最高/ピッタリ)だぜ

Ay, Juelz
エイ、ジュエルズ
※Dipsetのメンバーであり、当時Wayneとコラボアルバム『I Can't Feel My Face』を制作していた親友Juelz Santanaへのシャウトアウト。

I swear the other day, I pissed Cristal
誓って言うが、こないだ俺は「クリスタル(高級シャンパン)」の小便を漏らしたぜ
※血中アルコール濃度がシャンパンで満たされるほど、毎日大量の高級酒を浴びるように飲んでいる(成功している)という豪快なジョーク。

These bitches tryna kick it like Juntao
このビッチどもは「ジュンタオ」みたいにキック(格闘/チル)したがるんだ
※「Kick it」には「格闘技で蹴る」と「一緒にリラックスして遊ぶ(チルする)」のダブルミーニングがある。「Juntao(ジュンタオ)」はジャッキー・チェン主演の映画『ラッシュアワー』の黒幕(悪役)の名前。武術アクション映画に掛けて女たちの積極性を表現している。

I gotta watch my head in the battle
戦いの中じゃ、自分の頭(命)に気をつけなきゃならねぇ

I'm just trying to stay ahead of my shadow
俺はただ、自分の「影」よりも先(アヘッド)を行こうとしてるだけさ
※誰かと競うのではなく、自分自身(影)を追い越すほどのスピードで進化し続けるという孤高のスタンス。

And I'm floating like a boat and a paddle
そして俺は、ボートとパドルみたいに浮かんで(フロートして)いる

Alligators and rattlesnakes
アリゲーターに、ガラガラヘビ(ラトルスネーク)だ
※ボートで浮かんでいる場所が、地元ルイジアナ州の危険な沼地(バイユー)であることを示唆。ストリートには常に死の危険(肉食獣)が潜んでいる。

But I promise I will take a nigga off, like a Saturday
だが約束するぜ、土曜日みたいに、野郎どもを「オフ」にしてやるよ
※「Take off(休みを取る/土曜日)」と「Take someone off(人を殺す/排除する)」を掛けた、美しくも冷酷なパンチライン。

Got money to validate
証明(バリデート)するための金なら腐るほどある

I'm icy like carrot cake
キャロット・ケーキみたいに「アイシー」だぜ
※「Icy」には「ダイヤモンドを大量に着けている」という意味と、ケーキの表面を覆う甘い「アイシング(Icing/Frosting)」の意味がある。さらに「Carrot(ニンジン)」と宝石の質量単位である「Carat(カラット)」の同音異義語を用いた、Geniusでも高く評価される神がかったワードプレイ。

Different colored diamonds make me look like a salad plate
色とりどりのカラー・ダイヤモンドのせいで、俺は「サラダの皿」みたいに見えるぜ
※前行の「ニンジン(Carrot/Carat)」から連想を広げ、赤や緑の様々なカラーダイヤを身につけた自分を、カラフルなサラダボウルに例えるユーモア。

I'm straight out the alleyway
俺は路地裏(アレイウェイ)からの叩き上げだ

It's the nigga ya daddy hate
お前らの親父が憎むような黒人(ニガ)さ
※保守的な大人たち(白人も含む)が最も嫌悪するような、顔面にタトゥーを入れた成金でサグな若き黒人スターであることの皮肉な誇示。

Weezy F. Baby—great
ウィージー・F・ベイビー、最高(グレイト)だろ

[Chorus]

I know they love me then hate me
奴らが俺を愛して、それから憎むことは分かってる

But I'm a G –
だが俺はG(ギャングスタ)だ

It won't make me or break me
それで俺が成功するわけでも、壊れるわけでもない

And you can find me wherever the money place me
金が俺を置く場所なら、どこにだって俺を見つけられるぜ

Yeah, until you're riding to the late me
ああ、お前らが「故人となった俺(ザ・レイト・ミー)」の葬列を走るその日までな
※「The late 〇〇(故〜)」という表現を用い、死ぬまで金のために走り続けることを誓っている。

And don't wake me
だから俺を起こさないでくれ

'Cause I'm sleeping
俺は眠っているんだから

And I'm dreaming
そして夢を見ているんだ

And me and my Lord got an agreement, y'all
俺と神様は、固い契約(アグリーメント)を結んでるんだよ、お前ら

And so I thank him every day for my achievements
だから俺は毎日、自分の成し遂げたこと(アチーブメント)を神に感謝してるのさ

And I'm Weezy
俺がウィージーだ

I'm Weezy
俺がウィージーなんだ