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Phone Home - Lil Wayne 【和訳・解説】

Artist: Lil Wayne

Album: Tha Carter III

Song Title: Phone Home

概要

本作は、2000年代後半のヒップホップシーンを完全制覇したLil Wayneの歴史的名盤『Tha Carter III』(2008年)の収録曲である。プロデュースはマイアミのヒットメーカー・Cool & Dreが担当。映画『E.T.』の有名なセリフ「E.T. phone home」をサンプリング的なフックとして用い、ウェイン自身を「他のラッパーとは次元が違う火星人(Martian)」になぞらえている。彼のシグネチャーである「We are not the same, I am a Martian」という強烈なパンチラインは、後のヘイターやフォロワーに対する絶対的な宣言として機能し、当時の彼の神がかった絶頂期のクリエイティビティと、リーン(咳止めシロップ)の影響下にある特異なフロウを見事に象徴するマスターピースである。

和訳

[Intro: Dre]

This is, this is, this is, this is
これだ、これだ、これこそが

We are not the same, I am a Martian
俺とお前らは次元が違う、俺は火星人だ
※このラインはLil Wayneのキャリア全体を象徴する最も有名なマントラの一つである。2008年当時、全米チャートを席巻し客演を総なめにしていた彼は、文字通り「地球上の誰とも異なる」存在に到達していた。火星人(Martian)という自己定義は、彼の常軌を逸したワークエシックや、常人には理解不能な言語感覚(エイリアン・フロウ)を示す強烈なメタファーとして機能している。

We are not the same, I am a Martian
俺とお前らは次元が違う、俺は火星人だ

Greetings from Planet Weezy
惑星ウィージーからの挨拶だ
※「Weezy」はLil Wayneの代表的な愛称。自身の脳内世界やクリエイティビティを一つの独立した惑星(Planet Weezy)として表現しており、George Clintonが率いたP-Funkの「宇宙神話(アフロフューチャリズム)」の系譜を、現代のサウス・ヒップホップにおいて彼なりのドラッギーな解釈で継承しているとも読み取れる。

We will begin transmission in five, four, three, two, one
5、4、3、2、1… これより交信を開始する

[Chorus: Dre]

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)
※1982年のスティーヴン・スピルバーグ監督映画『E.T.』における名台詞「E.T. phone home(E.T.、おうちデンワ)」の直接的なオマージュ。地球外生命体であるWayneが母星と交信している様子を描きつつ、ラップシーンにおいて他を寄せ付けない孤独なトップの座にいることのメタファーにもなっている。

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

And if you feel like you're the best
もし自分が最強だと思うなら

Go 'head and do the Weezy-We, and
やってみろよ、このウィージー・ウィーのスタイルをな

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

[Verse 1: Lil Wayne]

We are not the same, I am a Martian
俺とお前らは次元が違う、俺は火星人だ

And I'm hotter than summer rain like Carl Thomas
そしてカール・トーマスの「Summer Rain」より熱いぜ
※R&Bシンガー、Carl Thomasが2000年にリリースしたヒット曲「Summer Rain」との見事な言葉遊び。夏の雨(summer rain)は通常であれば涼しさをもたらすものだが、Wayneは自身のラップスキルや勢いが「夏の雨の直後に立ち込める強烈な熱気(蒸し暑さ)」以上にHot(イケている)であると表現している。R&Bクラシックをシームレスに引き合いに出すWayneのヒップホップIQの高さが窺える。

Lock, load, ready to aim at any target
装填完了、どんな標的でも狙い撃つ準備はできてる

I could get your brains for a bargain like I bought it from Target
お前の脳みそ(知識)なんて、Targetで安売りされてるみたいに簡単に奪い取れるぜ
※アメリカの大手ディスカウントスーパー「Target」と、前のラインの「target(標的)」をかけたダブルミーニング。「get your brains」は文字通り「頭を撃ち抜く」という暴力的な脅しであると同時に、オーラルセックス(brain)を受ける意味、あるいは他者の知識や知性を安値(bargain)で買い叩くほど相手が薄っぺらい存在であることを嘲笑している。ディスカウントストアの安っぽさとラッパーの命の軽さを掛け合わせたパンチラインである。

Hip hop is my supermarket
ヒップホップは俺のスーパーマーケットだ
※ヒップホップ業界全体を自身の食料調達の場(スーパーマーケット)に見立てている。前述の「Target」という小売店からの連想ゲームで文脈を広げている点にWayneのフリースタイル的な脳内回路の凄みがある。

Shopping cart full of fake hip-hop artists
ショッピングカートの中はフェイクなヒップホップ・アーティストで満杯だ

I'm starving, sorry, I gotta eat all it
俺は飢えてるんだ、悪いが全部食い尽くさせてもらうぜ
※「eat」はヒップホップのスラングで「成功を収める」「他を圧倒する(喰う)」を意味する。フェイクなラッパーたちを自らの血肉(実績やインスピレーションの糧)として「食い殺す」という、Wayneの捕食者としての圧倒的な優位性を示している。

And I'll be back in the morning
そして明日の朝にはまた戻ってくるぜ
※シーンのフェイクなラッパーをすべて食い尽くしても、彼のワーカホリックな食欲(創作意欲)は尽きず、翌朝にはまた新たな獲物を求めてスーパーマーケット(業界)に戻ってくるという驚異的なワークエシックを宣言している。

[Chorus: Dre]

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

And if you feel like you're the best
もし自分が最強だと思うなら

Go 'head and do the Weezy-We, and
やってみろよ、このウィージー・ウィーのスタイルをな

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

[Verse 2: Lil Wayne]

We are not the same, I am a alien
俺とお前らは次元が違う、俺はエイリアンだ

Like Gonzales, young college
ゴンザレスみたいにな、若い大学生のように
※Genius等で頻繁に議論される極めて高度な歴史的・政治的リファレンス。1999年にアメリカとキューバ間で親権争いの国際問題となったキューバ人の少年、エリアン・ゴンザレス(Elián González)のファーストネーム「Elián」と「alien(エイリアン=外国人/宇宙人)」を同音異義語としてかけている。また、あの少年だったGonzalesが現実世界で成長して大学生(young college student)になるという時の流れと、Wayne自身の進化をリンクさせたトリプルミーニングに近い離れ業である。

Student, who done just flipped the game like Houston
俺はヒューストンのように、このゲーム(業界)をひっくり返した生徒だ
※「flip」はドラッグの転売や状況を覆すことを意味するが、ここではヒューストン大学のバスケットボールチーム(もしくはヒューストンのラップシーン)がゲームの流れを変える様子になぞらえている。また、ヒューストンといえばスクリュー(Chopped and Screwed)発祥の地であり、次行のラインへの完璧なセットアップとなっている。

I'm used to promethazine in two cups, I'm screwed up
カップを2つ重ねてプロメタジンを飲むのには慣れてる、俺はぶっ飛んでるんだ
※サウス・ヒップホップカルチャーの象徴である「リーン(プロメタジン・コデインを含む咳止めシロップをスプライト等で割り、発泡スチロールのダブルカップで飲むドラッグ)」への言及。「screwed up」は「イカれている(酔っ払っている)」という意味に加え、ヒューストンの伝説的DJであるDJ Screwが考案したテンポを極端に落とす手法「Chopped and Screwed」へのリスペクト(Screwed Up Click)が込められた強烈なサウス賛歌である。

And you ain't shit if you ain't never been screwed up
スクリューされた経験がねえような奴はクソだぜ

Flow so sick, make you wanna throw your food up
俺のフロウは病的にヤバすぎて、お前らは食ったもんを吐き出したくなる
※「sick」は「病気」と「最高にイケてる」の両方の意味を持つ。Verse 1で「フェイクなラッパーを食い尽くす」と言ったのに対し、他の中途半端なラッパーは彼のあまりにも高度なフロウを消化しきれず、吐き戻してしまう(throw up)という圧倒的な実力差の表現。

Ice water chest, and my wrist like a cool cup
胸には氷水みてえなジュエリー、手首は冷えたカップみたいに凍りついてる
※「Ice」はダイヤモンドの俗称。胸(チェーン)や手首(時計やブレスレット)が大量のダイヤモンドで覆われ、氷のように冷たく輝いている様子を描写している。同時に、先述のリーンの入った「冷たいカップ(cool cup)」というモチーフを持続させている。

Two twin clippers, I give your ass a crew cut
2丁拳銃(バリカン)を持てば、お前らをクルーカット(丸刈り)にしてやるよ
※「twin clippers」は本来はバリカンを意味するが、ここでは「2丁の銃(クリップ/弾倉を持つ武器)」の暗喩である。銃を乱射して敵の頭を吹き飛ばす行為を、「crew cut(スポーツ刈りなどの短い髪型)」にするという美容師のジョークに置き換えたブラックユーモア。Wayne特有のシリアスな暴力とコミカルな言葉遊びの融合である。

I get bread like cold cuts, you know what?
コールドカット(スライス肉)みたいにパン(金)を手に入れるんだ、わかるか?
※「bread」はヒップホップ・スラングで「お金」のこと。サンドイッチを作る際にパン(bread)と冷製スライス肉(cold cuts)を合わせることから、「日常的かつ当然のように大金を稼いでいる」という状況を食のメタファーで表現している。

Your girl go down fast, come up slow, but I never slow up
お前の女は素早く下に行って、ゆっくり上がってくる、でも俺のペースは絶対に落ちないぜ
※「go down」はフェラチオの隠語。相手の女性の動き(素早くしゃがみこみ、ゆっくりと顔を上げるフェラチオのテクニック)を性的に描写しつつ、Wayne自身のキャリアやラップのペース(slow up)は決して落ちることなくトップを走り続けるという誇示を組み合わせている。

Weezy
ウィージー

[Chorus: Dre]

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

And if you feel like you're the best
もし自分が最強だと思うなら

Go 'head and do the Weezy-We, and
やってみろよ、このウィージー・ウィーのスタイルをな

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

[Verse 3: Lil Wayne]

They don't make 'em like me no more
俺みたいな奴はもう二度と作られない

Matter of fact, they never made it like me before
いや実際のところ、俺みたいな存在はかつて一度も創られたことがねえんだ
※ヒップホップにおける「One of one(唯一無二)」の自己宣言。過去のレジェンド(BiggieやTupacなど)との比較すら拒絶し、ヒップホップの歴史上において完全に突然変異的な存在(エイリアン)であることを強調している。

I'm rare, like Mr. Clean with hair
俺はレアなんだ、髪の生えた「Mr. Clean」みたいにな
※「Mr. Clean」はアメリカの有名な家庭用洗剤ブランドのキャラクターで、スキンヘッドの筋骨隆々な男性。そのスキンヘッドのキャラクターに「髪の毛が生えている」というあり得ない矛盾(オクシモロン)を提示することで、自身がいかに存在し得ないほど希少(rare)な存在であるかをユーモラスに表現している。

No brake lights on my car rear
俺の車の後ろにはブレーキランプがついてねえ
※「止まる(ブレーキを踏む)気が一切ない」という比喩。キャリアにおいて立ち止まったり減速したりすることはなく、常に全速力で業界を突っ走り続ける意志を示している。後の「No Ceilings(限界なし)」というミックステープの大名盤のタイトルにも通じるWayneの哲学である。

I never had life and I never had fear
俺は人生(命)なんて持ったことがない、そして恐怖も持ったことがねえ
※自身が地球上の「生命体(life)」ではない火星人であるため、「命」という概念にとらわれず、ゆえに死や失敗に対する「恐怖(fear)」も存在しないという、エイリアン・ペルソナを極限まで押し進めた哲学的なライン。

I rap like I done died and gone to heaven, I swear
俺はマジで、死んで天国へ行ったかのようにラップするんだ
※このラインの「天国」とは、ラッパーとしての究極の解放状態、つまり一切の重圧や地上のルールから解き放たれた「神の領域」を意味する。インスピレーションが天から直接降りてくるような、スピリチュアルなレベルでのゾーンに入り込んでいることの表れである。

And yeah, I'm a bear, like black and white hair, so I'm polar
そうさ、俺は熊だ、白黒の毛並みのな、だから俺はポーラー(ホッキョクグマ/両極端)なんだ
※RedditやGeniusの考察コミュニティで今なお語り草となっている「Wayneの意図的な矛盾」の代表格。白と黒の毛を持つ熊は「パンダ(Panda)」だが、彼はそれを「ポーラー(Polar=ホッキョクグマ)」と呼んでいる。これは単なる無知の露呈ではなく、「Polar」が持つ「両極端の、正反対の(bipolarなどの語源)」という意味を引き出し、自身の多面性や常識の枠に収まらない異常性(エイリアンであること)をあえてバグのような論理で表現した確信犯的なパンチラインと見なされている。

And they can't get on my system 'cause my system is the solar
あいつらは俺のシステム(音響/思考)には乗っかれねえ、なぜなら俺のシステムはソーラー(太陽系)だからな
※「system」のダブルミーニング。「カーステレオのサウンドシステム」や「体内(ドラッグの抜け具合)」を指すストリート・スラングと、「solar system(太陽系)」をかけている。地球の枠を超え、太陽系規模のスケールを持つWayneのラップ(システム)には、地球のラッパーは到底ついてこれないという宇宙規模のマウントである。

I am so far from the othars, I meant others
俺は他の奴ら(オザーズ)からはるか遠くにいる、アザーズって言おうとしたんだがな
※「others(他の奴ら)」を意図的に「othars」と発音して文末の「hover」や「supper」と強引に韻を踏みつつ、直後に「I meant others(othersの間違いだった)」と自己訂正するメタ的アプローチ。火星人であるがゆえに地球の言語(英語)に不慣れであるという演出、あるいは自身の発音の訛りすらもギミックにしてしまう圧倒的な余裕を見せつけている。

I just eat them for supper, get in my spaceship and hover, hover
あいつらを夕食(サパー)として食っちまって、宇宙船に乗り込みホバリングして飛び去るのさ
※Verse 1の「ヒップホップはスーパーマーケット」という捕食者のメタファーをここで回収。地球のラッパーたちをディナーとして平らげた後、未確認飛行物体(UFO)のように宙に浮き(hover)、元の惑星(Planet Weezy)へと帰還していくという、曲のテーマである「Phone Home」を映像的に完結させるアウトロ的なパンチラインである。

[Chorus: Dre]

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)

And if you feel like you're the best
もし自分が最強だと思うなら

Go 'head and do the Weezy-We, and
やってみろよ、このウィージー・ウィーのスタイルをな

Phone home (Weezy)
電話して帰還しろ(ウィージー)

Phone home (Weezy)
母星と交信しろ(ウィージー)