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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Tie My Hands - Lil Wayne (feat. Robin Thicke) 【和訳・解説】

Artist: Lil Wayne (feat. Robin Thicke)

Album: Tha Carter III

Song Title: Tie My Hands

概要

2005年8月、アメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナによる未曾有の被害と、それに対する連邦政府の冷淡な対応という悲劇を背景に、ニューオーリンズ出身のLil Wayneが故郷への愛と哀悼、そして再生への希望を込めた至高の社会派アンセムである。Robin Thickeがプロデュースと客演を務め、彼のアコースティックで悲痛なボーカルが、Wayneのストリートの獰猛さを脱ぎ捨てた生の感情を引き出している。「両手を縛られる(Tie My Hands)」というタイトルは、国家から見捨てられ、救済の手を差し伸べられなかった被災者たちの無力感と絶望の象徴だ。当時のブッシュ政権への直接的な批判、メディアの偏向報道への怒り、そしてどん底から這い上がる同胞たちへの力強い激励を織り交ぜた本作は、パーティーチューンが並ぶ『Tha Carter III』というエンターテインメントの極致において、アメリカ社会の暗部を抉り出す極めて重要なポリティカル・トラックとして機能している。

和訳

[Intro: Robin Thicke]

We are at war with the universe
俺たちは宇宙と戦争状態にあるんだ

The sky is falling
空が落ちてきている

And the only thing that can save us now
今、俺たちを救える唯一のものは

Is sensitivity and compassion
感受性と、思いやりの心だけさ

Da, da, da, da-da-da, da, da, da
ダ、ダ、ダ、ダダダ…

Da, da, da, da-da-da, da, da, da (Ooh-ooh-ooh-ooh)
ダ、ダ、ダ、ダダダ…

But I know one thing's for sure
でも、一つだけ確かなことがある

I'm gonna get my kicks before it all burns down
すべてが燃え尽きる前に、俺は自分の楽しみ(キックス)を見つけるつもりさ

(Ooh-ooh-ooh)
(オー)

[Verse 1: Lil Wayne]

Yeah, some say tragedy's hard to get over
ああ、悲劇を乗り越えるのは難しいって言う奴もいる

But sometime that tragedy means it's over
だが時には、悲劇ってのは「すべてが終わった」ってことを意味するんだ
※2005年8月にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの壊滅的な被害を指す。多くの住民にとって、単なる災害ではなく生活とコミュニティの完全な崩壊(It's over)であった。

Soldier, from the academy league of rollers
俺はソルジャーだ、ストリートで這い上がるハスラー(ローラー)たちの学校の出身さ

I deny being down though they seem to hold us
奴らが俺たちを押さえつけようとしても、俺は倒れることを拒否するぜ

My shoulders are strong, I prove 'em wrong
俺の肩(責任を負う力)は強い、奴らが間違ってるって証明してやる

I ain't doing nothing but moving on, let the truth be known
俺はただ前に進み続けるだけだ、真実を明らかにしてやる

But they talked that freedom at us
奴らは俺たちに向かって「自由」について語りやがった

And didn't even leave a ladder, damn
なのに、ハシゴ一つ残しちゃくれなかった、クソが
※アメリカ政府が標榜する「自由と平等」の欺瞞を突いたパンチライン。洪水で屋根の上に取り残された被災者たちに対して、ヘリコプターやボートによる政府の救助(ハシゴ)が全く来なかったという現実の光景と、社会的な階層を登るための構造的支援がないというダブルミーニング。

[Verse 2 Robin Thicke]

I work at the corner store
僕は街角の店(コーナーストア)で働いている

We all got problems, problems
誰もが問題を抱えているんだ

No one's gonna fly down low
誰も低空飛行で助けには来てくれない
※ヘリコプターでの救助活動が遅れ、見捨てられた被災者たちの絶望感を表現している。

No one's gonna save us now
今、誰も僕らを救ってはくれない

How you feel, you're not alone
君がどう感じようと、君は一人じゃない

We're all just jealous, jealous
僕らはみんなただ嫉妬している、羨んでいるんだ

We don't reach the sky no more
僕らはもう、空に届くことはない

We just can't overcome, no
僕らはただ乗り越えられないんだ、ああ

[Chorus: Robin Thicke]

You tie my hands, what am I gonna be?
あんたが僕の両手を縛るなら、僕はどうなればいいんだ?
※「You」は政府や社会システムを指す。救済の手段を奪われ、文字通り手足を縛られたような無力感の表れ。

What have I done so bad? What is my destiny? (Oh-oh-oh)
僕がそんなに悪いことをしたのか? これが僕の運命なのか?

You tie my hands, what am I suppose to see?
あんたが僕の両手を縛るなら、僕は何を見ればいいんだ?

What have I done so bad? (What have I done) What am I gonna be?
僕がそんなに悪いことをしたのか? 僕はどうなればいいんだ?

[Verse 3: Lil Wayne]

I, knock on the door, hope isn't home
俺はドアをノックするが、希望は留守だ
※被災地における希望の完全なる欠如を、擬人化を用いて詩的に表現している。

Fate's not around, the luck's all gone
運命も出かけていて、運はすべて消え去っちまった

Don't ask me what's wrong, ask me what's right
「何が間違ってるか」なんて聞くな、「何が正しいか」を聞いてくれ

And I'ma tell you what's life, and did you know
そしたら俺が「人生とは何か」を教えてやる、知ってたか?

I lost everything? But I ain't the only one
俺もすべてを失ったんだ、だが俺だけじゃない
※Wayne自身もニューオーリンズに所有していた家をハリケーンで失っている。しかし、貧しい同胞たちの被害に比べれば自分はまだマシだと連帯を示している。

First came the hurricane, then the morning sun
最初にハリケーンが来て、その後に朝日が昇った

Excuse me if I'm on one
俺がハイになってたら(感情的になってたら)悪ぃな

And don't trip if I light one, I walk a tight one
俺が一本火を点けても気にすんな、俺は綱渡り(タイト・ワン)をしてるんだ
※「Light one」はマリファナを吸うこと。極限のストレスの中で、ウィードで正気を保ちながら、細いロープの上を歩くようなギリギリの精神状態で生きていることの比喩。

They try tell me keep my eyes open
奴らは「目をしっかり開けておけ」って俺に言う

My whole city underwater, some people still floating (Oh)
俺の街全体が水没して、まだ水に浮いてる(遺体になっている)人たちもいるのにな
※文字通り水死体が街に何日も浮いていたというニューオーリンズの地獄のような惨状を直視し、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の対応の遅れを告発している。

And they wonder why black people still voting (Ooh)
それでも奴らは「なぜ黒人がまだ投票に行くのか」なんて不思議がってやがる
※政府に見捨てられた黒人コミュニティが、なぜまだ白人中心の政治(選挙)に期待を持っているのか、という冷笑的な視点に対する怒り。

'Cause your president still choking (Oh yeah)
だってお前らの大統領が、未だに息を詰まらせて(まともに機能せず)やがるからだ
※当時のジョージ・W・ブッシュ大統領の対応の遅れと無能さを「Choking(スポーツ等でプレッシャーに負けて大失敗すること)」と表現し、痛烈に批判している。Kanye Westの有名な「George Bush doesn't care about black people」という生放送での発言と共鳴する、ヒップホップ界の総意である。

Take away the football team, the basketball team
フットボールチームも、バスケットボールチームも奪い去られちまった
※NFLのセインツ(スーパードームが避難所になり破損)やNBAのホーネッツ(現ペリカンズ)といった地元のプロスポーツチームが、街の崩壊により一時的に他都市へ拠点を移さざるを得なかった事実。街の希望やアイデンティティが失われたことの象徴。

Now all we got is me to represent New Orleans, shit (Yeah, yeah)
今じゃ、ニューオーリンズをレペゼンできるのは俺しか残ってねぇ、クソが
※スポーツチームも機能せず、街が崩壊した今、世界的スターとなったLil Wayne自身が故郷の魂を背負う最後の希望(アイコン)であるという、重すぎる責任と決意。

No governor, no help from the mayor
州知事もいねぇ、市長からの助けもねぇ

Just a steady beating heart and a wish and a prayer (Yeah, yeah)
あるのはただ、力強く打つ心臓の鼓動と、願い、そして祈りだけだ

Let's pray
祈ろうぜ

[Verse 4: Robin Thicke]

These friends, they come and go
友人たちは、来ては去っていく

But I got family, family
でも僕には家族がいる、家族がね

These kids so fast they grow
この子供たちはとても早く成長する

They learn so quickly now
彼らは今、とても早く学んでしまうんだ

That there's nowhere to go
どこにも行き場がないってことを

That there's no future, future
未来なんてないってことを

Don't make this here so low
この場所をこれ以上どん底にしないでくれ

And we can't overcome, no
僕らには乗り越えられないんだ

[Chorus: Robin Thicke]

You tie my hands, what am I gonna be? (What am I gonna be?)
あんたが僕の両手を縛るなら、僕はどうなればいいんだ?

What have I done so bad? (Oh) What is my destiny? (What have I done?)
僕がそんなに悪いことをしたのか? これが僕の運命なのか?

You tie my hands (What have I done?), what am I supposed to see? (What have I done?)
あんたが僕の両手を縛るなら、僕は何を見ればいいんだ?

What have I done so bad? (Ooh) What am I gonna be? (Oh, oh)
僕がそんなに悪いことをしたのか? 僕はどうなればいいんだ?

[Verse 5: Lil Wayne and Robin Thicke]

Yeah, and if you come from under that water then there's fresh air
ああ、その水の下から這い上がってくれば、そこには新鮮な空気があるぜ
※洪水の濁水から顔を出す=絶望的な状況からのサバイブと再生のメタファー。

Just breathe, baby, God's got a blessing to spare (Oh)
ただ息をするんだ、ベイビー、神様はまだ祝福を残してくれてる

Yes, I know the process is so much stress (Oh, come on, baby)
ああ、復興の過程(プロセス)がものすごいストレスだってことは分かってる

But it's the progress that feels the best
だが、少しずつ前進(プログレス)していくのが一番最高の気分なんだ

'Cause I came from the projects straight to success, and you're next
だって俺はプロジェクト(低所得者層公営団地)から成功へと一直線に這い上がったんだ、次はお前の番だぜ
※第17区のホリーグローブの貧困地区からトップスターへと上り詰めた自身のサクセスストーリーを引き合いに出し、被災した同胞たちへ「俺ができたのだから、お前たちも再起できる」と力強く鼓舞している。

So try, they can't steal your pride, it's inside (Oh, woah)
だから挑戦しろ、奴らはお前のプライドを盗むことはできねぇ、それはお前の中にあるんだからな

Then find it and keep on grinding (Woah)
だからそれを見つけ出して、グラインド(ハッスル)し続けるんだ

'Cause in every dark cloud, there's a silver lining, I know
なぜなら、どんな暗い雲(絶望)にも、必ずシルバーライニング(希望の光)があるって、俺は知ってるからな
※「Every cloud has a silver lining(どんな困難な状況にも、希望の兆しはある)」という英語の有名なことわざ。暗黒の時代を経験したニューオーリンズの未来を信じるメッセージ。

[Interlude: Lil Wayne and Robin Thicke]

Yeah, yeah, yeah (Ooh, ooh, ooh, ooh)
イェー、イェー、イェー

See, right now we just riding on love, huh
ほらな、今俺たちは愛に乗って進んでるだけさ

(Take that money, make that money)
(その金を受け取れ、その金を稼げ)

A shot in the dark
暗闇の中の一撃さ

(Take that money)
(その金を稼げ)

We ain't tryin' to do nothing but hit the heart
俺たちはただ、みんなの心(ハート)を撃ち抜きたいだけなんだ

(I can't wait to stop the wait, all of it)
(待たされるのはもうごめんだ、すべてにおいてな)

We need love
俺たちには愛が必要だ

(Love, okay)
(愛がな、オーケイ)

That's all y'all, that's all
それがすべてだ、お前ら、それがすべてさ

[Chorus: Robin Thicke and Lil Wayne]

You tie my hands, what am I gonna be?
あんたが僕の両手を縛るなら、僕はどうなればいいんだ?

(Yeah, born right here in the USA)
(ああ、ここUSAで生まれたのにな)

What have I done so bad? (What have I done?) What is my destiny? (What have I done?)
僕がそんなに悪いことをしたのか? これが僕の運命なのか?

(But, due to tragedy, looked on by the whole world as a refugee)
(だが、悲劇のせいで、世界中から難民(レフュジー)のように見られちまった)
※カトリーナ後、自国の被災者であるはずの黒人市民に対し、メディアが「Refugees(難民)」という言葉を頻繁に使ったことに対する鋭い批判。彼らは正当なアメリカ市民(Citizens)であるのに、保護されるべき国民ではなく棄民として扱われたという根深い怒り。

You tie my hands, what am I suppose to see? (Tie me up)
あんたが僕の両手を縛るなら、僕は何を見ればいいんだ?

(So accept my emotion)
(だから、俺の感情を受け止めてくれ)

What have I done so bad? (Tie me up) What am I gonna be? (Oh, oh-oh)
僕がそんなに悪いことをしたのか? 僕はどうなればいいんだ?

(Do not take it as an offensive gesture)
(これを攻撃的な態度だなんて受け取るなよ)

You tie my hands, what am I gonna be?
あんたが僕の両手を縛るなら、僕はどうなればいいんだ?

(It's just the epitome of my soul)
(これはただ、俺の魂の真髄(エピトミー)を表現してるだけさ)

What have I done so bad? What is my destiny? (Oh, baby)
僕がそんなに悪いことをしたのか? これが僕の運命なのか?

(And I must be me, we got spirit y'all, we got spirit)
(俺は俺らしくなきゃいけねぇ、俺たちにはスピリットがある、スピリットがな)

You tie my hands, what am I suppose to see?
あんたが僕の両手を縛るなら、僕は何を見ればいいんだ?

(We got soul y'all, we got soul)
(俺たちにはソウルがある、ソウルがあるんだ)

What have I done so bad? What am I gonna be?
僕がそんなに悪いことをしたのか? 僕はどうなればいいんだ?

(They don't want us to see, but we already know)
(奴らは俺たちに気づかせたくないみたいだが、俺たちはもう分かってるのさ)