Artist: Michael Jackson (feat. Stevie Wonder)
Album: Bad
Song Title: Just Good Friends
概要
1987年の歴史的アルバム『Bad』に収録された、モータウンの偉大な先輩にしてポピュラー音楽界の至宝、スティーヴィー・ワンダーとの奇跡のデュエット・ナンバーである。『Thriller』におけるポール・マッカートニーとの『The Girl is Mine』の系譜を継ぐ「一人の女性を巡る恋の鞘当て」をテーマにしているが、テリー・ブリテンとグレアム・ライル(ティナ・ターナーの『What's Love Got to Do with It』の作者陣)が手掛けたアップテンポなシンセ・ポップに乗せて、黒人音楽の天才二人が極上のボーカル・バトルを繰り広げる。過激化するタブロイド紙の熱愛報道に対し、セレブリティが口にする常套句「ただの仲の良い友達さ(Just good friends)」をタイトルに据え、メディアの過剰な詮索を軽快なグルーヴでシニカルに笑い飛ばす。クインシー・ジョーンズの洗練されたプロダクションと、二人の圧倒的なリズム感が火花を散らす80年代ポップスの贅沢な結晶である。
和訳
[Intro: Stevie Wonder & Michael Jackson]
Na-na-na-na-na-na-na-na-na
Na-na-na-na-na-na-na-na-na
Hoo-hoo, dancin', hee!
Hoo-hoo、踊ろうぜ、hee!
Doggone, lover
全く、いまいましい恋人だぜ
※「Doggone(いまいましい)」。『The Girl is Mine』でも使用された、「Goddamn」を避けるマイケル特有のクリーンなスラング。このフレーズが入ることで、本作が『The Girl is Mine』の精神的続編であることを聴き手に暗示している。
C'mon, boy
さあ来いよ、ボーイ
[Verse 1: Michael Jackson]
I watched you on the floor, cheek-to-cheek
君たちがフロアで頬を寄せ合って踊るのを見ていたよ
She's getting to you
彼女、君に気があるみたいだね
You didn't see her eyes on me, no
でも君は気づいていなかっただろう、彼女の視線が僕に向いていたことに
※ダンスフロアでの心理戦。スティーヴィー演じるライバルに向かって、マイケルが余裕たっぷりにマウントを取る。視覚的な「eyes(瞳)」という表現を、全盲のスティーヴィー相手に歌うというある種のブラック・ユーモアも、深い信頼関係がある二人だからこそ成立する演出である。
She looked right through you
彼女は君のことなんて、完全に素通りして僕を見ていたんだ
(Before you make) Before you make
(君がしでかす前に)君がしでかす前に
(A big mistake) Remember
(大きな間違いを)覚えておきなよ
That looks can fool you, babe, hee
見かけには騙されるってことをさ、ベイビー、hee
There's something I would sure appreciate
一つだけ、君に感謝したいことがあるんだ
(If you can keep a secret)
(もし君が秘密を守れるならね)
※「秘密を守る」というフレーズは、大衆の監視下に置かれたスーパースターの恋愛における絶対的なルールを意味する。
[Pre-Chorus: Michael Jackson]
Baby loves me, but she never shows she cares
ベイビーは僕を愛している、でも彼女は決してそんな素振りは見せない
(No, you won't see her kiss and hug me)
(そうさ、彼女が僕にキスやハグをするのを見ることはないだろうね)
Baby loves me, no, she acts like I'm not there
ベイビーは僕を愛している、いや、彼女は僕がそこにいないかのように振る舞うんだ
(That doesn't mean she doesn't love me, ooh)
(だからといって、彼女が僕を愛していないってわけじゃないんだよ、ooh)
[Chorus: Michael Jackson]
And if they ask her
そしてもし、みんなが彼女に尋ねたなら
Tell 'em that we're just good friends
「私たちはただの仲の良い友達です」って答えるように言うのさ
※タイトル・フレーズ「Just good friends(ただの仲の良い友達)」。真実の愛をカモフラージュするための「大義名分」。パパラッチに追われ続けたマイケルにとって、この常套句は恋愛関係を守るための唯一の防衛手段であった。
Dah-chika, chika-chika
ダ・チカ、チカ・チカ
Just good friends
ただの仲の良い友達さ
Ah-chika, chika-ah-ooh
ア・チカ、チカ・ア・ooh
(Doo-doo-doo-doo, hee, aaow)
(ドゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ、hee、アォゥ)
Just good friends
ただの仲の良い友達さ
[Verse 2: Stevie Wonder, Stevie Wonder & Michael Jackson]
You better take advice, never trust first impressions
忠告を聞いておきな、第一印象なんて絶対に信じちゃダメだぜ
※ここでスティーヴィー・ワンダーが堂々と登場する。モータウン時代からマイケルを弟のように可愛がってきたスティーヴィーが、大人の男としての余裕を見せつけながら、マイケルの思い込みを一蹴する。
I tried to hide this affair from their suspicions
俺は奴らの疑いの目から、この関係(情事)を隠そうとしてきたんだ
So even if she's asking you to stay
だから、たとえ彼女が君に「そばにいて」と頼んだとしても
You better know where you stand
自分の立ち位置(身の程)をわきまえておいた方がいいぜ
[Refrain: Stevie Wonder & Michael Jackson]
Baby loves me, though she never shows she cares
ベイビーは俺を愛している、彼女は決してそんな素振りは見せないがね
(No, you won't see her kiss and hug me)
(そうさ、彼女が僕にキスやハグをするのを見ることはないだろうね)
But my baby loves me, though she acts like I'm not there
でも俺のベイビーは俺を愛している、彼女は俺がそこにいないかのように振る舞うがね
(That doesn't mean she doesn't love me, ooh)
(だからといって、彼女が僕を愛していないってわけじゃないんだよ、ooh)
[Chorus: Stevie Wonder, Michael Jackson & Both]
Now, if they ask you
さあ、もしみんなが君に尋ねたなら
Just tell 'em that we're just good friends
俺たちは「ただの仲の良い友達です」って答えておきな
Yes, just good friends
そうさ、ただの仲の良い友達さ
Dah-chika, chika-chika
ダ・チカ、チカ・チカ
※シンセサイザーのブラス音に合わせて、二人がパーカッシブなスキャットを交わす。80年代のブラック・コンテンポラリーを象徴する、洗練された人工的なサウンドと肉声のグルーヴの見事な融合である。
Root-doo-doo-doo (Doot-do-do-do)
ルトゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ(ドゥトゥ・ドゥ・ドゥ・ドゥ)
Just good friends
ただの仲の良い友達さ
[Bridge: Michael Jackson, Stevie Wonder & Both]
Listen up, hee
よく聞きなよ、hee
We've got a problem here, I can see the signs
どうやら問題発生だね、その兆候が見えるよ
I guess the lady is still making up her mind
どうやら、あのレディはまだ心を決めかねているみたいだ
Say we're just good friends (Oh)
「私たちはただの仲の良い友達」だなんて言ってさ(Oh)
※結末のどんでん返し。実は彼女はどちらの男も選んでおらず、単に二人を弄んでいただけかもしれないという、小粋なストーリーテリング。真の勝者が不在のまま、楽曲は純粋な音楽的歓喜へと向かっていく。
[Chorus: Stevie Wonder, Michael Jackson & Both]
Baby loves me, though she never shows she cares
ベイビーは僕を愛している、彼女は決してそんな素振りは見せないけれど
No, you won't see her kiss and hug me (Just good friends)
そうさ、彼女が僕にキスやハグをするのを見ることはないだろうね(ただの仲の良い友達さ)
My baby loves me, though she acts like I'm not there (Aaow)
僕のベイビーは僕を愛している、僕がそこにいないかのように振る舞うけれど(アォゥ)
You doggone lover, hee, no-no-no-no
全く、いまいましい恋人だぜ、hee、no-no-no-no
[Outro: Stevie Wonder & Michael Jackson]
Baby loves me, but she never shows she cares (She loves me)
ベイビーは僕を愛している、でも彼女は決してそんな素振りは見せない(彼女は僕を愛してる)
She doesn't kiss and hug me (Just good friends)
彼女はキスもハグもしてくれない(ただの仲の良い友達さ)
My baby loves me, she loves me, she loves me
僕のベイビーは僕を愛してる、愛してる、愛してるんだ
Hee, hee, hee, hoo-hoo
Hee, hee, hee, hoo-hoo
My baby loves me, baby (Doo-doo)
僕のベイビーは僕を愛してる、ベイビー(ドゥ・ドゥ)
My baby's gon' stay there, my baby loves me
僕のベイビーはそこに留まるんだ、僕のベイビーは僕を愛してる
Baby loves me, baby loves me, ooh-ooh-ooh! (Just good friends)
ベイビーは僕を愛してる、ベイビーは僕を愛してる、ooh-ooh-ooh!(ただの仲の良い友達さ)
My baby loves me, she loves me, she loves me
僕のベイビーは僕を愛してる、愛してる、愛してるんだ
She loves me, hee, hoo, hoo-hoo
彼女は僕を愛してる、hee, hoo, hoo-hoo
You might gon' try to get her (Doo-doo)
君は彼女を自分のものにしようとするかもしれないけど(ドゥ・ドゥ)
I'm not gonna give up like that
俺はそんな風に簡単には諦めないぜ
Na-na-na-na-na, oh yeah! (Just good friends)
Na-na-na-na-na, oh yeah!(ただの仲の良い友達さ)
Baby love me, don't she? Oh-oh-oh
ベイビーは僕を愛してる、だろ? Oh-oh-oh
※フェイドアウトに向けて炸裂する、ポップス史に残る天才ボーカリスト二人のフェイク合戦。スティーヴィーの野太くソウルフルな咆哮と、マイケルの鋭くパーカッシブなシャウトが完璧な対比を描きながら交差する。「ただの友達(偽装)」という設定を笑い飛ばすかのように、純粋なブラック・ミュージックの祝祭空間がアルバムのB面を華やかに彩って幕を閉じる。
