UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Opps - Vince Staples & Yugen Blakrok 【和訳・解説】

Artist: Vince Staples & Yugen Blakrok

Album: Black Panther: The Album

Song Title: Opps

概要

本楽曲は、映画『ブラックパンサー』のサウンドトラックにおいて、特筆すべきエレクトロニックな疾走感と冷徹な攻撃性を併せ持つバンガーである。タイトルの「Opps」は「Opposition(敵対するギャング)」や「Police(警察)」を意味するストリートスラングであり、劇中では釜山での激しいカーチェイスシーンを彩る。西海岸ロングビーチ出身のVince Staplesが持ち前のシニカルなギャングスタの視点でアメリカのシステムと警察の暴力を冷酷に描き出し、南アフリカのアングラシーンを牽引するフィメールMC、Yugen Blakrokがサイバーパンクとアフロフューチャリズムを融合させたスピリチュアルなバースで圧倒する。Kendrick Lamarがフックを牽引することで、米国のストリートの現実とアフリカの精神性が「敵(Opps)への抵抗」という一つの軸で結実した、アルバムの裏ハイライトとも言える実験的傑作である。

和訳

[Verse 1: Kendrick Lamar]

Fuck y'all want from me?
お前ら、俺から何が欲しいってんだ?

Y'all don't want money, y'all don't want from me
金が欲しいわけでもねえ、俺自身が欲しいわけでもねえ

Y'all wanna die in the chase of things
何かを追い求める中で死にたいんだろ

We all gon' die and embrace the thing
俺らはみんないつか死ぬ、その事実を受け入れるんだ

Trapped inside a burnin' church
燃え盛る教会の中に閉じ込められた

Made it out alive, God know my worth
だが生きて抜け出した、神は俺の価値を分かってるのさ
※燃え盛る教会は、1960年代の公民権運動時代における白人至上主義者(KKKなど)による黒人教会への放火テロ(16番街バプテスト教会爆破事件など)を強く示唆している。黒人の歴史的トラウマや過酷な環境から生還し、神から使命(価値)を与えられた存在としてのケンドリックの自己認識である。

Raw face, Scarface
むき出しの素顔、まるでスカーフェイスだ

Y'all face more defeat, I know it hurts
お前らはさらなる敗北に直面する、痛いのは分かってるぜ
※映画『スカーフェイス』のトニー・モンタナのように、血まみれになっても容赦なく敵(Opps)を追い詰める姿。敵が味わう敗北の「痛み(hurts)」を冷酷に見下ろしている。

20 of 'em, 20 on call
20人の仲間がいて、20人が電話一本で動く

Got 20 in my hand, got 20 on judge
手元には20万ドル、裁判官にも20万ドル握らせた
※「20」という数字の反復。ストリートの仲間(兵隊)、現金、そしてシステム(裁判官への賄賂)をコントロールする絶大な権力と富の誇示。ワカンダの強大な国力や、ヒップホップ界のトップとしての影響力を重ねている。

Gave 20 to my dog, got 20 on girls
ダチに20万渡し、女にも20万使う

That'll fuck you to— (zoom zoom zoom)
そいつらがお前をヤっちまう—(ズーム、ズーム、ズーム)

That'll fuck you then fuck you over
お前とヤッて、それからお前を徹底的に破滅させるんだ
※「zoom zoom」は劇中のカーチェイスを思わせる車のエンジン音。女を使ったハニートラップで敵を誘惑し(fuck you)、その後に裏切って破滅させる(fuck you over)というストリートの非情な手口を描写している。

Take your safe, take your keys, take your Rover
お前の金庫を奪い、鍵を奪い、レンジローバーも奪う

Take the heart you thought you had
お前が持ってると思ってた心臓すら奪い取ってやるよ

Speed off, rollin' up life in a taxi cab
スピードを上げて走り去り、タクシーの中で人生を巻き上げるぜ
※「rollin' up」はマリファナを巻くことと、逃走するタクシーの中で次のビジネス(人生)の計画を練り上げることのダブルミーニング。鮮やかな逃走劇のクロージング。

[Chorus: Kendrick Lamar]

Opps on the radar (You're dead to me)
レーダーに敵(Opps)の影だ(俺にとってお前は死んだも同然だ)
※「Opps」は警察や対立ギャング。ワカンダの高度な監視レーダーに映る侵入者(クロウやキルモンガー)への警告であり、彼らを生かして帰すつもりはない(You're dead to me)という殺気立った宣告。

How you wanna play ball? (You're dead to me)
どうやって勝負したいんだ?(俺にとってお前は死んだも同然だ)

–takes all (You're dead to me)
勝者が全てを奪う(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me, you're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ、死んだも同然だ)

You know what zone I'm in (You're dead to me)
俺が今どんな「ゾーン」に入ってるか分かってるだろ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Don't care who you with (You're dead to me)
お前が誰と一緒だろうが知ったこっちゃねえ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Watch me do my shit (You're dead to me)
俺がブチかますのを見とけ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ)

[Verse 2: Vince Staples]

Hey hey, ready, set, go crazy
ヘイヘイ、位置について、用意、狂いな

Here to finesse, you see I'm getting mines
ここで華麗に騙し取る、俺が俺の分をしっかり頂くのが見えるだろ
※「finesse」は状況を巧みに操り、相手から利益を掠め取るストリートの手法。

A life hit a nigga with a lemon's limelight
人生は黒人にレモン(不良品)のスポットライトを当ててきやがった
※「lemon」はスラングで欠陥車や粗悪品。「When life gives you lemons(人生が酸っぱいレモンを与えたら、レモネードを作れ)」という西洋の諺を踏まえ、過酷な環境(lemon)から現在の名声(limelight)を掴み取ったというVinceの秀逸なワードプレイ。

But at night, we still committin' crimes, spittin' rhymes
だが夜になれば、俺らはまだ犯罪に手を染め、ライムを吐き出してる

Bought a coupe with the spinnin' rims, get inside
スピナー・リムを履かせたクーペを買ったぜ、乗り込みな

Bring a friend, bleedin' hands from the genocide
友達も連れてきな、ジェノサイド(大量虐殺)で血まみれの手をした奴を
※コンプトンやロングビーチでの凄惨なギャング抗争(gang violence)を「ジェノサイド」と表現。日常的な殺し合いが、一つの民族の抹殺に等しいレベルで行われているというストリートの地獄を冷徹に描写している。

Clean me up, beam me up to the other side
俺を綺麗にしてくれ、向こう側へ転送してくれよ
※SFドラマ『スタートレック』の有名な転送のセリフ「Beam me up, Scotty」の引用。血まみれのストリート(あるいは地球)から、天国やより良い世界(ワカンダのようなユートピア)へ脱出したいという悲痛な願い。

Brothers die, 'cause 'coons turn to butterflies
ブラザーたちは死ぬ、クーン(繭/黒人)が蝶に変わるからだ
※天才的なダブルミーニング。「'coon」は黒人への強烈な蔑称(raccoon由来)であると同時に、「cocoon(繭)」の略。ストリートの黒人たち(繭)が成功してラッパーや富裕層(蝶)になる過程で、地元での嫉妬や抗争に巻き込まれて命を落とすというVinceらしい極めてシニカルな観察。ケンドリックの傑作アルバム『To Pimp A Butterfly』のコンセプトに対する完璧なアンサーでもある。

They don't wanna see me sittin' in the Benz
奴らは俺がベンツに座ってるのを見たくねえのさ

They don't wanna see me livin' on the end
奴らは俺が端っこで暮らしてるのを見たくねえんだ

Of the city in a citywide bend
この街の見晴らしのいいカーブの先でな

Show no pity in the city full of sin
罪にまみれたこの街じゃ、同情なんて一切見せるな

They don't wanna see me gettin' to the check
奴らは俺が小切手(大金)を手にするのを見たくない

They just wanna see me swimmin' in the debt
奴らは俺が借金漬けで溺れてるのを見たいだけさ
※「奴ら(They)」とは白人社会や抑圧的なシステムのこと。黒人が経済的に自立(ベンツに乗り、小切手を得る)することを望まず、永遠に貧困と借金(debt)に縛り付けてコントロールし続けたいという構造的な人種差別の告発である。

Don't drown on ground, wait until you hear
地面で溺れるな、聞こえるまで待ちな

9-1-1, freeze (zoom, zoom) dead
「911(警察)だ、動くな」(ズーム、ズーム)そして死だ
※地面に横たわっているだけで血の海で「溺れる(息ができない)」という、アメリカの警察による黒人射殺事件(Police Brutality)の恐怖。何もしていなくても警察(Opps)に遭遇すれば即座に死が待っているという、極度の緊迫感と絶望でヴァースを締めくくる。

[Chorus: Kendrick Lamar]

Opps on the radar (You're dead to me)
レーダーに敵(Opps)の影だ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

How you wanna play ball? (You're dead to me)
どうやって勝負したいんだ?(俺にとってお前は死んだも同然だ)

–takes all (You're dead to me)
勝者が全てを奪う(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me, you're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ、死んだも同然だ)

You know what zone I'm in (You're dead to me)
俺が今どんな「ゾーン」に入ってるか分かってるだろ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Don't care who you with (You're dead to me)
お前が誰と一緒だろうが知ったこっちゃねえ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Watch me do my shit (You're dead to me)
俺がブチかますのを見とけ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ)

[Verse 3: Yugen Blakrok]

I move like a millipede
私はヤスデみたいに動くの

When I flex them tendons like rubber trees
ゴムの木みたいに腱を曲げる時にね
※南アフリカ出身の彼女が、多足類(ヤスデ)やゴムの木といった自然界のメタファーを用いて、自身の変幻自在で予測不可能なフロウと動きをアピールしている。

Young Millie Jackson back to the shit
若きミリー・ジャクソンがこのクソったれな世界に戻ってきたわ
※ミリー・ジャクソンは70年代の過激なソウルシンガーで、曲間の語り(ラップの起源の一つとも言われる)や反骨精神で知られる。Yugenが自身の攻撃的なスタンスを彼女に重ね合わせている。

Mouthpiece drawn, got a verbal armory
マウスピースを引き抜き、言葉の武器庫を持ってるわ
※「Mouthpiece」は銃口と代弁者のダブルミーニング。物理的な銃ではなく「言葉(ラップ)」の兵器庫(armory)で闘うという意思表示。

Stack bodies, not figurines
フィギュアなんかじゃなく、死体の山を築き上げる

Move beneath the surface, submarine
水面下を移動するの、潜水艦みたいに

I'm half machine, obscene with a light sword
私は半分機械よ、ライトソードを持つ卑猥(異常)な存在
※映画のシュリの技術力のような「サイボーグ(半分機械)」というアフロフューチャリズムの要素と、スター・ウォーズのライトセーバーを思わせる近未来的なイメージの融合。

Look inside the brain, it's a riot in the psych ward
脳の中を覗いてみな、精神病棟の暴動みたいになってるから

What you standing on the side for?
なんで傍観者みたいに脇に立ってるの?

Roar like a lioness, punch like a cyborg
メスライオンのように吠え、サイボーグのようにパンチを食らわす
※ワカンダの強き女性たち、特に国王直属の親衛隊「ドーラ・ミラージュ」の野生的な力強さと、高度なテクノロジーに裏打ちされた戦闘力を完璧に言語化している。

Spit slick, attack is subliminal
滑らかに言葉を吐き、攻撃は潜在意識に忍び込む

Flowers on my mind, but the rhyme style sinister
心には花を咲かせているけど、ライムのスタイルは邪悪なの

Stand behind my own bars, like a seasoned criminal
私は自らの「バー」の後ろに立つ、ベテランの犯罪者のように
※「bars」は刑務所の「鉄格子」と、ラップの「小節(リリック)」のダブルミーニング。自らが生み出した完璧なリリックの後ろに、揺るぎないスタンスで陣取っている。

Gotham City Streets, I'll play the *****
ゴッサム・シティのストリート、私が(ヴィラン)を演じてやるわ
※バットマンの犯罪都市ゴッサムを引き合いに出し、混沌とした社会においては正義の味方ではなく、アンチヒーロー(ヴィラン)として暴れ回るという宣言。伏字部分はジョーカーやリドラーなどが推測される。

Crushing any system, that belittles us
私たちを貶めるあらゆるシステムを叩き潰す

Antidote to every poison they administer
奴らが投与してくる全ての毒に対する解毒剤よ
※白人社会の抑圧的なシステムやプロパガンダ(毒)に対し、真実を語る彼女のラップがコミュニティを救う解毒剤(Antidote)として機能するというアフロ・パンク的な闘争宣言。

Switch it like time signatures
拍子記号みたいに切り替えてやる

Colors in my aura tend to cover the perimeter
私のオーラの色が周囲一帯を覆い尽くすの

Brown bodies that the blues wanna shoot through
「ブルー(警察)」が撃ち抜こうとするブラウンの肉体たち
※「blues」は警察の制服(Blue lives)の隠語。白人警官(Blue)が有色人種(Brown bodies)の命を軽視して日常的に発砲するアメリカの根深い警察の暴力(Opps)に対する、最も直接的で痛烈な批判ライン。

Hi-res lasers wanna (zoom, zoom, zoom)
高解像度のレーザーが(ズーム、ズーム、ズーム)と狙ってくる

Wool over your eyes
お前の目を完全に欺いてやる
※「Pull the wool over someone's eyes(人の目を欺く、騙す)」という慣用句を用いた表現。

My strength ain't nothing like my size
私の力はこの見た目のサイズなんかじゃ測れないわ

Blades on the top, Kathleen Cleaver
てっぺんには刃(ブレード)、キャスリーン・クリーバーみたいに
※Kathleen Cleaver(キャスリーン・クリーバー)は、現実のアフリカ系アメリカ人の急進的武装組織「ブラックパンサー党」の女性リーダーであり広報担当。巨大なアフロヘアがトレードマークで、党員はアフロの中に護身用の刃物を隠し持っていたとも言われる。映画のタイトルと現実の歴史的闘争をリンクさせる、圧倒的なパンチラインである。

Tangle my cords like a weaver
織工みたいに私のコードを絡み合わせるの

[Chorus: Kendrick Lamar]

Opps on the radar (You're dead to me)
レーダーに敵(Opps)の影だ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

How you wanna play ball? (You're dead to me)
どうやって勝負したいんだ?(俺にとってお前は死んだも同然だ)

–takes all (You're dead to me)
勝者が全てを奪う(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me, you're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ、死んだも同然だ)

You know what zone I'm in (You're dead to me)
俺が今どんな「ゾーン」に入ってるか分かってるだろ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Don't care who you with (You're dead to me)
お前が誰と一緒だろうが知ったこっちゃねえ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

Watch me do my shit (You're dead to me)
俺がブチかますのを見とけ(俺にとってお前は死んだも同然だ)

(You're dead to me)
(俺にとってお前は死んだも同然だ)