Artist: Lil Nas X
Album: MONTERO
Song Title: DEAD RIGHT NOW
概要
2021年にリリースされたデビュー・アルバム『MONTERO』の収録曲。世界的なスーパースターへと上り詰めたLil Nas Xが、成功の裏に潜む「人間関係の醜悪さ」と「家族との修復不可能な溝」を赤裸々に告白した、極めて私的でダークなトラックだ。大学を中退し、自殺願望に苛まれながら姉の家のソファで暮らしていた2018年のどん底の記憶。彼の夢を「100万分の1の確率」と否定したゴスペル歌手の父親。そして、重度の薬物依存に陥り、金の無心と暴言を繰り返す母親。成功前は彼を見捨てていたにもかかわらず、大金を手にした途端に「神の祝福(ハレルヤ)」と称してすり寄ってくる血族や知人たちに対し、「お前らは俺の中で死んだも同然だ(Dead right now)」と冷徹な絶縁状を叩きつける。華やかなポップアイコンの陰にある生々しいトラウマを、重厚なホーンサウンドと聖歌隊のコーラスに乗せて歌い上げた、アルバム随一の重みを放つ傑作である。
和訳
[Verse 1]
Breaker, breaker, 911, somebody come get this bitch
ブレイカー、ブレイカー、911だ。誰かこのビッチを連れてってくれ
※「Breaker, breaker」はCB無線(市民ラジオ)で通信を始める際の呼びかけ文句。大ブレイクを果たした途端に緊急事態(911)のごとく金やコネを求めてすり寄ってくる偽物の友人や親族に対する、極度の苛立ちと呆れを表現している。
Thinkin' you a star on the rise, you got time to reply
「お前はスターの階段を登ってるんだろ、返信する時間くらいあるよな」
※すり寄ってくる連中が彼に投げかける、恩着せがましいセリフの引用。
Don’t lie, you can hit my shit
「嘘つくなよ、俺に連絡できるだろ」
You can lend me five, lil' nigga, on the side, lil' nigga
「ちょっと5千ドル(あるいは5ドル)くらい貸してくれよ、なぁ、内緒でさ」
※「five」は5ドル、500ドル、あるいは5000ドルの隠語。売れる前は見向きもしなかったくせに、小銭や大金を平然と無心してくる図々しさ。
Couple thou’, need to fix my whip
「2、3千ドルでいいんだ、車を修理しなきゃならなくてな」
How you switch sides on a nigga who was down with you, nigga?
お前と一緒にどん底にいた俺を、よくも裏切れたもんだな?
※「switch sides」は敵側に寝返る、態度を豹変させること。「down with」は苦楽を共にするという意味だが、ここでは「俺が売れない頃は見捨てていたくせに」という皮肉。
You a fraud, just a fib, my nig', my nig', uh (Huh, mmm, mmm)
お前は詐欺師だ、ただの嘘っぱち野郎さ、なぁ兄弟(ハァ、ンー、ンー)
※「fib」は些細な嘘。「my nig'」と親しげに呼んでくる相手の言葉をそのまま返し、その薄っぺらさを冷笑している。
[Pre-Chorus]
You know I never did you wrong
俺がお前に酷いことなんて一度もしてないって、分かってるだろ
Even though I'm right here by the phone, dawg
俺はずっとこの電話のそばにいたのにな
You know, you never used to call
分かってるよな、昔のお前は電話なんて一度もしてこなかった
Keep it that way now
今更かけてくんな、そのままにしておけ
※成功前は彼からのSOSを無視し続けた人々に対し、現在もその「無関心」な関係を継続するように要求する、冷徹で正当な絶縁宣言。
[Chorus]
I'll treat you like you're dead right now
今この瞬間から、お前は死んだものとして扱ってやる
I'm on your head right now
今、俺はお前の頭上(はるか高み)にいるんだぜ
※「on your head」は相手を圧倒する、あるいはプレッシャーをかけるという意味。かつて自分を見下していた者たちを完全に凌駕したという絶対的な自信。
You wanna fuck with me so bad right now
今じゃ俺と関わりたくて仕方ないんだろ
Well, now, you can't right now, oh, oh, oh
まぁ、もう無理だけどな、オー、オー、オー
[Verse 2]
2018, I was at my sister house the whole summer (Yeah)
2018年の夏、俺はずっと姉貴の家に転がり込んでた(イェー)
※大学を中退し、音楽に専念するため実家を出て姉の家でカウチサーフィン(居候)をしていたブレイク前夜のリアルな回想。
Songs wasn’t doin’ numbers (Yeah), whole life was goin' under
曲の再生回数(数字)も伸びず(イェー)、人生そのものが沈みかけてた
Left school, then my dad and I had a face-to-face in Atlanta
大学を辞めて、アトランタで親父と面と向かって話し合ったんだ
He said, "It’s one in a million chance, son," I told him, "Daddy, I am that one-uh, uh-uh"
親父は言った「そんなの100万分の1の確率だぞ、息子よ」。俺は答えた「親父、俺がその1なんだよ」
※ファンの間で語り草となっている名ライン。ゴスペル歌手でもある厳格な父親は、息子の音楽キャリアを無謀だと反対していた。「Old Town Road」で世界的スターとなり、文字通り「100万分の1」の存在であることを証明した彼の揺るぎない信念が光る。
I ain't never need him, huh, I ain't never need no nigga, uh
親父の助けなんて要らなかった、ハッ、誰の助けも要らなかったんだ
I ain't never need no feature
客演(フィーチャー)なんて誰一人必要なかった
※「Old Town Road」のオリジナル版は彼一人で作られ、のちにBilly Ray Cyrusら大物がこぞってリミックスに参加した事実を指す。自力で道を切り開いた自負。
If I didn’t blow, I would've died tryna be here
もしブレイク(大ヒット)してなかったら、ここに辿り着く前に死んでただろうな
If it didn't go, suicide, wouldn't be here
もし上手くいってなかったら、自殺して、ここにはいなかっただろう
※ブレイク前の2018年当時、彼が重度のうつ病と自殺願望に苛まれていたという衝撃的な告白。「100万分の1」を掴まなければ死ぬしかなかったという、背水の陣の精神状態が赤裸々に語られている。
Now, they all come around like they've been here
今じゃ、昔から俺の味方だったみたいな顔して群がってきやがる
When you get this rich and famous, everybody come up to you singin'
これだけ金持ちで有名になれば、誰もが俺にすり寄ってきてこう歌うんだ
"Hallelujah, how'd you do it?"
「ハレルヤ、一体どうやって成功したんだ?」
※「Hallelujah(主を褒め称えよ)」という宗教的なフレーズは、ゴスペルシンガーである父親や、同性愛を否定する保守的なキリスト教徒の親族に向けた強烈な皮肉。成功した途端に「神の奇跡」だともてはやす偽善を糾弾している。
"You've been on my mind, you've been runnin' through it", yeah (Hallelujah)
「お前のこと、ずっと気にかけてたんだぜ」、イェー(ハレルヤ)
※連絡すら寄越さなかった人間たちの手のひらを返したような嘘。
"Hallelujah, how'd you do it?"
「ハレルヤ、一体どうやって成功したんだ?」
"You've been on my mind, you've been runnin' through it", yeah (Yeah, yeah, yeah, yeah)
「お前のこと、ずっと気にかけてたんだぜ」、イェー(イェー、イェー、イェー、イェー)
[Pre-Chorus]
You know I never did you wrong
俺がお前に酷いことなんて一度もしてないって、分かってるだろ
Even though I'm right here by the phone, dawg
俺はずっとこの電話のそばにいたのにな
You know, you never used to call
分かってるよな、昔のお前は電話なんて一度もしてこなかった
Keep it that way now
今更かけてくんな、そのままにしておけ
[Chorus]
I'll treat you like you're dead right now
今この瞬間から、お前は死んだものとして扱ってやる
I'm on your head right now
今、俺はお前の頭上(はるか高み)にいるんだぜ
You wanna fuck with me so bad right now
今じゃ俺と関わりたくて仕方ないんだろ
Well, now, you can't right now, oh, oh, oh
まぁ、もう無理だけどな、オー、オー、オー
[Verse 3]
Mama told me she was gonna stop fuckin' around with that needle (Fuckin' 'round with that needle)
母さんは、あの注射針(ヘロイン)をもうやめるって俺に言ったんだ(あの針をな)
※Verse 2の父親に続き、ここでは薬物依存症に苦しむ実の母親との断絶という、さらに重く私的なトラウマが語られる。「needle(注射針)」はヘロイン等のハードドラッグのメタファー。
Told me she'd be clean but I'm knowin' that her ass is a deceiver (Oh, oh, oh)
「クリーン(しらふ)になる」って言ったけど、俺はあの人がペテン師だって分かってる(オー、オー、オー)
My mama told me that she love me, don't believe her
母さんは俺を愛してるって言ったが、信じちゃダメだ
When she get drunk, she hit me up, man, with a fever, like, woah
酔っ払うと、熱でも浮かされたみたいに俺に電話してきて、こう言うんだ、ウォー
"You ain't even all that pretty, you ain't even all that, nigga
「アンタなんて大して可愛くもないし、大した存在じゃないのよ
You ain't helpin' out with me, God won't forgive you" (Shit)
私を助けてくれないなんて、神様がアンタを許さないわよ」(クソッ)
※薬物に溺れた母親から浴びせられる、経済的支援を求める脅しと暴言(ガスライティング)。ここでも「God」という宗教的な言葉が、家族からの精神的虐待の道具として使われている。Lil Nas Xがなぜ「Dead right now(今はお前を死んだものとして扱う)」という冷酷な決断を下さざるを得なかったのか、その正当性と悲痛な背景がこのVerseに凝縮されている。
"You ain't even all that pretty, you ain't even all that, nigga
「アンタなんて大して可愛くもないし、大した存在じゃないのよ
You ain't helpin' out with me, God won't forgive you" (Damn)
私を助けてくれないなんて、神様がアンタを許さないわよ」(クソッ)
[Pre-Chorus]
You know I never did you wrong
俺がお前に酷いことなんて一度もしてないって、分かってるだろ
Even though I'm right here by the phone, dawg
俺はずっとこの電話のそばにいたのにな
You know, you never used to call
分かってるよな、昔のお前は電話なんて一度もしてこなかった
Keep it that way now
今更かけてくんな、そのままにしておけ
[Chorus]
I'll treat you like you're dead right now (I'll treat you like you're dead)
今この瞬間から、お前は死んだものとして扱ってやる(死んだようにな)
I'm on your head right now
今、俺はお前の頭上(はるか高み)にいるんだぜ
You wanna fuck with me so bad right now (Well, now you can't)
今じゃ俺と関わりたくて仕方ないんだろ(まぁ、もう無理だけどな)
Well, now, you can't right now, oh-
まぁ、もう無理だけどな、オー
[Outro]
Treat you like you're dead right now
お前は死んだものとして扱ってやる
I'm on your head right now
今、俺はお前の頭上(はるか高み)にいるんだぜ
You wanna fuck with me so bad right now
今じゃ俺と関わりたくて仕方ないんだろ
Well, now, you can't right now, oh, oh, oh
まぁ、もう無理だけどな、オー、オー、オー
