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Ok Ok pt 2 (Deluxe) - Kanye West (feat. Shenseea) 【和訳・解説】

Artist: Kanye West (feat. Shenseea)

Album: Donda (Deluxe)

Song Title: Ok Ok pt 2 (Deluxe)

概要

本作は『Donda』デラックス版に収録された「Ok Ok」の別バージョンであり、リル・ヨッティとルーガに代わってジャマイカ出身のダンスホール・スター、シェンシーア(Shenseea)を客演に迎えている。カニエ・ウェストのヴァースは原曲と共通しており、音楽業界の裏切りやフェイクな人間関係、とりわけドレイクとの確執を暗に批判する内容だが、シェンシーアの参加により楽曲のテーマは「有害な関係の完全な断絶」へとより鋭く昇華されている。彼女の流暢なパトワ(ジャマイカ英語)によるアグレッシブなフロウは、元彼や裏切り者を冷酷に切り捨てる自立した女性の強さを提示し、同時に「禁断の果実」という聖書的なメタファーを織り交ぜることで、アルバム全体の宗教的なコンセプトと見事に共鳴している。カニエの特異なプロデュース能力とグローバルなキュレーション力が光る、先鋭的なドリル・チューンだ。

和訳

[Verse 1: Kanye West & Fivio Foreign]

Okay, now they got me wanna rap again
オーケイ、奴らが俺を怒らせた、またラップしたくなってきたぜ。
※宗教的なアプローチに傾倒していたカニエが、業界のしがらみやヘイトによって再び好戦的なヒップホップモード(ラップの戦い)に引き戻されたことを示唆している。

Healed up wound and then you stab me in my back again (Uh)
傷を癒したと思ったら、また俺の背中を刺しやがる。
※ドレイクとの和解と対立の終わらないサイクルへの言及と推測される。信頼して傷を癒した直後の裏切りに対する怒り。

You the type to play the joke and try to hide your hand (Uh)
お前は悪ふざけをしておきながら、自分の手(証拠)を隠そうとするタイプだ。
※"hide your hand"はヒップホップにおける「Sneak dissing(名前を出さずに遠回しにディスること)」の定番のメタファー(石を投げておいて手を隠す)。

Not the type to come around and try to play your friend
直接会いに来て、ダチとして堂々と振る舞うような器じゃねえよな。
※裏でコソコソ動く敵に対する冷笑。

You the type to cut the grass and snake your bestest man
お前は草を刈って、親友すらも裏切る(蛇になる)ような奴だ。
※「草を刈って蛇(裏切り者)を見つけ出す」という定番のストリートの格言を逆手に取り、「お前自身が蛇そのものだ」と非難している。

I'm the type to close the deal and cut my **** in
俺は取引を成立させて、ダチたちにも利益を分け与える(カットインさせる)タイプだ。
※利己的な裏切り者に対し、自分は常に周囲を引き上げるビジネスマン(プロデューサー)であるという対比。

See me in person, I look like a ghost (Grrr)
直接俺に会ってみろよ、まるで幽霊(ゴースト)みたいに見えるはずだ。
※『Donda』制作時の覆面姿や、ロールス・ロイス・ゴーストに乗っていることのダブルミーニング。

See me in person, I look like a ghost (Baow)
直接俺に会ってみろよ、まるで幽霊(ゴースト)みたいに見えるはずだ。

You wanna come in and play with the G.O.A.T. (Baow)
お前ら、G.O.A.T.(史上最高)の俺の領域に踏み込んで遊びたいんだろ。
※Greatest Of All Time。カニエの揺るぎない絶対的なエゴイズム。

You wanna come in and play with the G.O.A.T. (God body)
お前ら、G.O.A.T.の俺の領域に踏み込んで遊びたいんだろ。(神の肉体)
※"God body"はファイブ・パセンターズ(NOI派生)の用語で、黒人男性自身が神の体現であるという思想。圧倒的な全能感。

All you rap **** sound like me, can't tell who is who
最近のラッパーどもは全員俺みたいなサウンドで、誰が誰だか区別がつかねえ。
※トラップやエモーショナルなラップスタイルの雛形を作ったのは自分であり、有象無象のラッパーは皆自分のクローンに過ぎないという事実の突きつけ。

You got no real identity, can't tell you from you
お前らには本物のアイデンティティがねえ、お前とお前の区別すらつかねえよ。
※トレンドを追うだけの没個性なシーンへの痛烈な批判。

Pricе went up (Yeah), angel invеstor (Yeah)
俺の価値(価格)は跳ね上がった。エンジェル投資家のおかげでな。
※神(Angel/God)が自分に投資し見守ってくれているからこそ、自分の価値が天井知らずに上がっているというパンチライン。

Price went up (Uh), angel investor
俺の価値は跳ね上がった。エンジェル投資家のおかげでな。

[Chorus: Kanye West, Shenseea & Fivio Foreign]

Okay, okay, I'm not okay (Not okay)
オーケイ、分かったよ、俺は全然大丈夫(オーケイ)じゃねえ。(大丈夫じゃない)
※強気なヴァースから一転、精神的な疲弊や裏切りによる心の傷(not okay)を素直に認めるカニエの脆さ。

Think you're good, it's not okay (No, they all away)
お前は上手くやったと思ってるだろうが、全然オーケイじゃねえぞ。(いや、連中はみんな去っちまった)
※Shenseeaのコーラスが重なることで、原曲よりもさらに複雑な感情のレイヤーが生まれている。

Okay, okay, not okay (I'm not okay, uh)
オーケイ、分かったよ、全然オーケイじゃねえ。(私は大丈夫じゃない、uh)

Think you're good, get out the way
自分がイケてるだなんて勘違いだ、どきやがれ。

(Ah, Shenseea, uh)
(Ah、シェンシーア、uh)
※自身の名前(プロデューサータグに近い)をフックの終わりにコールする。

[Verse 2: Shenseea]

Nuh trust any and any man (Any man)
そこら辺の男を誰でもホイホイ信じたりしない。(誰でもね)
※ここからShenseeaのヴァース。ジャマイカ・パトワ(クレオール言語)特有の"Nuh"(No/Don't)が多用される。

Pree dem man, mi play along (Play along)
奴らの魂胆は見透かしてる(プリーしてる)、私はただ話を合わせてるだけ。(合わせてるだけ)
※"Pree"はパトワで「じっくり観察する、見抜く」の意。男たちの下心や業界人の嘘をすでに見抜いている余裕の態度。

Watch how dem ah sing mi song
奴らが私の歌をどう歌うか、見てなさいよ。
※自分を軽視していた者たちが、成功した自分にすり寄ってくる様を冷笑している。

Suddenly dem tun ah fan
突然、連中はファンに寝返るのよ。
※"tun"は"turn"。手のひら返しをする偽善者たちへの皮肉。

Aim with precision
正確無比なエイムで狙い撃つ。

Fi number one position
ナンバーワンのポジションに向けてね。
※"Fi"は"For"。

Write the plan, right my wrong
計画を書き(Write)、自分の過ちを正す(Right)。
※WriteとRightの同音異義語を使った言葉遊び。

And look, now I'm the boss in charge
そして見てよ、今や私が全てを仕切るボスなんだから。
※ジャマイカから世界的なスターダムにのし上がった自信。

Used to talk down 'pon me, now me on top
昔は私を見下してた(talk down)くせに、今じゃ私が上に乗ってる(on top)。
※キャリアの逆転と、性的な主導権を掛けている。

Left mi inna struggle suh nuh badda come back
私が苦しんでる時(どん底)に見捨てたんだから、今さら戻ってこようとしないで(nuh badda)。
※"inna"は"in the"、"suh nuh badda"は"so don't bother"。

Tek mi fi granted, tek mi fi soft
私のことを当たり前(都合のいい女)だと思って、弱い女(soft)だと舐めてたでしょ。
※"Tek"は"Take"。自分を軽視した元恋人や業界人への怒り。

And if yuh play hard
もしあなたが強がって(play hard)みせても。

If yuh let me down, mi nah have nuh food fi give yuh, right? Yuh know mi lock di shop down
私をガッカリさせたら、あなたにあげるエサ(food)なんて一切ないわよ、でしょ? 私が店(ビジネスや関係性)を完全にロックダウンするって分かってるわよね。
※一度裏切れば完全にアクセスを遮断するという冷酷な宣言。

Mi did like when you show luv to mi face, then chat behind mi back
私の目の前では愛想よく愛を語って、陰では私の悪口を叩く(chat behind mi back)。そういうの、昔は好きだったんだけどね。
※皮肉。カニエの1バース目の「stab me in my back」と見事にリンクする、業界の二面性に対する批判。

Nuh trust people, cyaan trust people
人は信じない、信じられるわけない(cyaan = can't)。

From dem eat the fruit, mankind tun evil
人間ってのは、あの「果実」を食べてからずっと邪悪になったのよ。
※旧約聖書におけるアダムとイヴの「禁断の果実(原罪)」への言及。『Donda』の宗教的テーマに沿いつつ、人間の本質的な裏切りや嘘の根源を聖書に求めている非常に知的なパンチライン。

Get cut off, you will get cut off
切り捨てるわよ、あなたは完全に切り捨てられる。
※カニエの「cut my man in(利益を分かち合う)」に対し、Shenseeaは不要な人間を「cut off(縁を切る)」と宣言する対比。

Mi nuh cyar how much memories we have in the past
過去にどれだけ思い出があろうと、そんなの知ったこっちゃない(nuh cyar = don't care)。

Yuh bruk up wid yuh ex, still in love, suh yuh single
あなたは元恋人と別れて(bruk up)もまだ未練タラタラだから、ただの「独り身(シングル)」だけど。
※"bruk up"は"break up"。

Mi bruk up wid mi ex, him dead to me, I'm a widow
私が元彼と別れる時、そいつは私の中で死んだも同然。だから私は「未亡人(ウィドウ)」なの。
※Reddit等でもバズった彼女のヴァース最大のキラーフレーズ。ただの失恋(シングル)ではなく、相手の存在そのものを抹消する(死んだものとして扱う=未亡人になる)という、圧倒的で冷酷な女性のエンパワーメント。

Get cut off, you will get cut off
切り捨てるわよ、あなたは完全に切り捨てられる。

Mi nuh cyar how much memories we have in the past (Hmm)
過去にどれだけ思い出があろうと、そんなの知ったこっちゃない。

Bruk up wid yuh ex, still in love, suh yuh single
あなたは元恋人と別れてもまだ未練タラタラだから、ただの「独り身(シングル)」だけど。

Mi bruk up wid mi ex, him dead to me, I'm a widow, uh
私が元彼と別れる時、そいつは私の中で死んだも同然。だから私は「未亡人(ウィドウ)」なの。

[Chorus: Kanye West & Shenseea]

But it's okay, we gon' be okay (Not okay)
でも大丈夫だ、俺たちはきっと上手くいく(オーケイになる)。(大丈夫じゃない)
※Shenseeaのヴァースを経て、カニエはポジティブな着地を目指すが、バックコーラスでは「Not okay」とトラウマが響き続ける。

Only show up when we cut the cake (No, they all away)
俺たちがケーキを切る(成功の分け前を貰う)時にだけ姿を現しやがる。(いや、連中はみんな去っちまった)
※都合の良い時だけすり寄ってくるハイエナたちへの皮肉。

Showin' love, but we okay (I'm not okay)
愛のあるフリをしてきても、俺たちは間に合ってる(オーケイだ)。(私は大丈夫じゃない)
※フェイクな愛をキッパリと拒絶している。

Find God 'fore it's too late
手遅れになる前に、「神を見つけろ」。
※『Donda』期におけるカニエの象徴的なキャッチフレーズ。嘘や裏切りにまみれた人間に対し、最終的な審判(神の赦し)を求めるよう諭して楽曲を締めくくる。

 

Donda (Deluxe)

Donda (Deluxe)

  • Getting Out Our Dreams II, LLC / Def Jam Recordings
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