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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

I Can’t Go to Sleep - Wu-Tang Clan (feat. Isaac Hayes) 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan (feat. Isaac Hayes)

Album: The W

Song Title: I Can’t Go to Sleep

概要

2000年にリリースされたWu-Tang Clanの3rdアルバム『The W』に収録された「I Can't Go to Sleep」は、グループのコンシャスな側面と社会に対する悲痛な叫びが刻まれた歴史的な一曲である。RZAによるビートは、ソウルの巨匠アイザック・ヘイズによる名曲「Walk On By」(1969年)の壮大なストリングスとドラムブレイクをサンプリングしており、さらにヘイズ本人を客演に招いて原曲のメロディを再解釈して歌わせるという奇跡的なコラボレーションを実現している。
Ghostface Killahは若くして散ったラッパーたちへの追悼とストリートの悲惨な現実、そして自分たちを陥れるシステムへの怒りを涙ながらに吐き出す。続くRZAは、マルコムX、キング牧師、マーカス・ガーベイ、そしてケネディ大統領など、歴史的な指導者たちが暗殺されてきたアメリカの血塗られた歴史を振り返り、黒人社会が抱える根深いトラウマと絶望を浮き彫りにする。「眠りにつくことができない」という叫びは、終わらない暴力と抑圧の中で正気を保とうとする彼らの魂の慟哭であり、ヒップホップが持つメッセージの重みを証明するクラシックである。

和訳

[Verse 1: Ghostface Killah]

The technique is ill, son
テクニックはヤバいぜ、なあ

Watch how I spill one
俺がどうやって吐き出すか見てな

Peace to Biggie, 2Pac, Big L, and Big Pun
ビギー、2Pac、ビッグ・L、そしてビッグ・パンに安らぎを

Havoc on the streets of Staten –
スタテンのストリートは大混乱だ
※Wu-Tangの地元、スタテンアイランドのこと。

Snitches, house niggas, children watch as they produce the same patternin'
チクリ魔たち、ハウス・ニガたち、そして子供たちが見つめる中で、奴らは同じパターンを繰り返している
※「house niggas」は白人(主人)に媚びへつらう黒人奴隷に由来する言葉で、ここでは体制側に魂を売った裏切り者を指す。

Somebody raped our women, murdered our babies
誰かが俺たちの女をレイプし、俺たちの赤ん坊を殺した

Hit us with the cracks and guns in the early '80s
80年代初頭、俺たちにクラックと銃を撃ち込んできた
※1980年代のクラック・エピデミック。CIAが中南米から麻薬を黒人コミュニティに流入させたという、黒人社会崩壊の歴史的背景への言及。

For those that murdered me shall stand before God
俺を殺した者たちは、神の前に立つことになるだろう

To fall at the hands of fate; then, out comes the rod!
運命の手に落ちるために、そしてその時、裁きの杖が振り下ろされる!

[Interlude: Ghostface Killah]

Bring it back, bring it back, bring it back, bring it back, bring it back...
引き戻せ、引き戻せ、引き戻せ、引き戻せ、引き戻せ…

[Verse 2: Ghostface Killah]

What the fuck is going on? I can't go to sleep
一体どうなってるんだ? 俺は眠りにつくことができない

Feds jumping out their Jeeps, I can't go to sleep
連邦捜査局がジープから飛び出してくる、俺は眠りにつくことができない

Babies with flies on they cheeks, it's hard to go to sleep
赤ん坊の頬にハエが止まっている、眠りにつくのは難しいぜ
※アフリカの飢餓やゲットーの極限の貧困の悲惨な光景。

Ish bowled two sixes twice, I couldn't go to sleep
イッシュが2回連続で6のゾロ目を出しやがった、俺は眠りにつけなかった
※ダイスゲーム(Cee-Loなど)での不運な負けによるイライラ。「Ish」はGhostfaceの仲間。

Ayo, we deep in the stairs, we carry kin's guns
エイヨォ、俺たちは階段の奥深くにいる、身内の銃を持ち歩いてるんだ

Whippy got hit up with the big shit—"bung bung"
ウィッピーがデカい弾を食らいやがった、「バン・バン」とな

Ducked past the cheeba spot, then passed the liq' spot
ハッパの売人の場所を身を屈めて通り過ぎ、酒屋の前を通り過ぎる

Drove past y'all niggas again, you took a cheap shot?!?
お前ら野郎どもの前をまた車で通り過ぎた、お前ら卑怯な撃ち方をしやがったな!?

Not knowing, fucking with me you'd get your meat chopped!
分かっちゃいねえな、俺にちょっかいを出せばお前の肉は切り刻まれるんだよ!

You thought we fell on our face? You think the Beez stopped?!?
俺たちが顔から突っ伏して倒れたとでも思ったか? ビーズが立ち止まったとでも思ったのか!?
※「Beez」はWu-TangのシンボルであるKilla Bees(殺人蜂)のこと。

Call on the chariots! Call on an ambulance!
チャリオットを呼べ! 救急車を呼べよ!

You better smile, my nigga, you on 'Candid Cam'
笑った方がいいぜ、なあ、お前は「キャンディッド・カメラ」に映ってるんだからな
※1940年代から放送されたドッキリ番組『Candid Camera』。無様な姿が世間に晒されているという皮肉。

Gangsta broad, these be the lords, walk with big balls
ギャングスタの女よ、こいつらが主だ、デカい金玉を持って歩いている

Nigga motherfucking eunuch, I even take which was yours
去勢されたクソ野郎どもめ、お前のものだったものさえ俺が奪い取ってやる

I'm the nigga that made you, man
俺がお前を育て上げた黒人なんだぜ、なあ

When your rap wasn't doing well, I'm the nigga that gave you a hand
お前のラップが上手くいってなかった時、手を差し伸べたのは俺なんだよ

[Hook: Isaac Hayes]

Don't kill your brother
兄弟を殺してはいけない

Learn to love each other
互いを愛することを学ぶんだ

Don't get mad
怒りに任せてはいけない

'Cause it ain't that bad
そこまで悪い状況ではないのだから

Look at who you are
自分が何者かを見つめなさい

You've come too far
君たちはここまで遠くへやって来たのだ

It's in your hands
それは君たちの手の中にある

Just be a man
ただ一人の男であれ

Get the jelly out your spine!
背骨からゼリーを取り除くんだ!
※「jelly in the spine」は気骨がない、臆病である状態を指す慣用句。

Cobwebs out of your mind
心の中の蜘蛛の巣を取り払うんだ

[Verse 3: RZA]

I can't go to sleep, I can't shut my eyes
俺は眠りにつくことができない、目を閉じることなんてできない

They shot the father at his mom's building seven times
奴らは父親を彼の母親の建物で7回撃ち抜いた
※ここでRZAは感極まり、声をつまらせながら過去の身近な悲劇を語っている。

They shot Malcolm in the chest in front of his little seeds
奴らはマルコムの胸を撃ち抜いた、彼の小さな種たちの目の前で
※1965年のマルコムX暗殺事件。「seeds」は5% Nation用語で子供のこと。

Jesse watched as they shot King on the balcony
ジェシーが見つめる中、奴らはキングをバルコニーで撃ち抜いた
※1968年のキング牧師暗殺事件。側近であったジェシー・ジャクソンがその場にいたことを指す。

Exported Marcus Garvey 'cause he tried to spark us
マーカス・ガーベイを国外追放した、彼が俺たちに火をつけようとしたからだ

With the knowledge of ourselves and our forefathers
俺たち自身と、俺たちの祖先の知識を持とにな
※黒人民族主義の指導者マーカス・ガーベイは、1927年にアメリカからジャマイカへ強制送還された。

Oh, Jacqueline, you heard the rifle shots crackling
あぁ、ジャクリーン、あなたはライフルの銃声が響くのを聞いた

Her husband's head in her hands, you tried to put it back in
夫の頭部をその手に抱え、あなたはそれを元に戻そうとしていた
※1963年のジョン・F・ケネディ暗殺事件。ジャクリーン夫人が撃たれた夫の頭部の破片を拾い集めようとした悲惨な光景。

America's watching, blood-stained ink blotches
アメリカが見つめている、血に染まったインクのシミを

Medgar took one to the skull for integrating college
メドガーは大学を人種統合させるために、頭蓋骨に一発食らった
※1963年に暗殺された公民権運動家メドガー・エヴァース。彼はミシシッピ大学の人種隔離撤廃のために尽力した。

What's the science? ...Nobody?!? This is trick knowledge!
その科学は何だ?… 誰も分からないのか!? これは騙しの知識だ!
※「science」は真理や背後のメカニズム。真実が隠蔽され、支配層に都合の良い歴史が押し付けられていることへの憤り。

They tried to keep us as slaves and still scrape our dollars
奴らは俺たちを奴隷として留め置こうとし、未だに俺たちのドルを搾り取っている

Walking through Park Hill, drunk as a fuck
パークヒルを歩いている、クソみたいに酔っ払ってな

Looking around like, "These Devils! I'm ready to break this world down"
辺りを見回して思うんだ、「この悪魔どもめ! 俺はこの世界をぶっ壊す準備ができてるぜ」と
※「Devils」は5% Nationにおいて、黒人を抑圧する白人社会やそのシステムを指す。

They got me trapped up in a metal gate, just stressed out with hate
奴らは俺を金属のゲートに閉じ込め、ただ憎悪でストレスを溜め込ませる

And this gives me no time to relax and use my mind to meditate
そのせいで俺にはリラックスする時間も、精神を使って瞑想する時間もない

What should I do? Grab a blunt or a brew?
どうすればいい? ブラントかビールでも掴むか?

Grab a .22 and run out there and put this fucking violence in you?
それとも22口径を掴んで外へ飛び出し、このクソ忌々しい暴力をテメェに撃ち込んでやるか?

I can't go to sleep, I can't shut 'em, son, I—
俺は眠りにつくことができない、目を閉じることができないんだ、なあ、俺は—

[Outro: Isaac Hayes]

Don't let the game make you lose your head
ゲームにお前の正気を失わせるな

You should be calling the shots instead
お前が代わりに采配を振るうべきなんだ

The power is in your hands
力はお前たちの手の中にある

Stop all this crying, and be a man
この泣き言をすべてやめて、一人の男になれ