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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Protect Ya Neck (The Jump Off) - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Album: The W

Song Title: Protect Ya Neck (The Jump Off)

概要

2000年にリリースされたWu-Tang Clanの3rdアルバム『The W』のリードラッパーであり、彼らの伝説的なデビュー曲「Protect Ya Neck」の精神的続編とも言えるバンガーである。プロデューサーのRZAは、The Honey Drippersのクラシック・ブレイク「Impeach the President」などを再構築し、アップテンポでファンキーかつ攻撃的なビートを作り上げた。当時Ol' Dirty Bastard(ODB)は法的なトラブルと服役によりレコーディングに参加できなかったが、彼を除くオリジナルメンバー8人にCappadonnaを加えた9人のMCが、息をつく暇もなく次々とマイクリレーを展開する。リリックの随所にODBへの愛と連帯が込められており、メンバー間の強固な絆を感じさせる。各MCが己のペルソナと特大のパンチラインを叩き込む、2000年代初頭のヒップホップシーンにWu-Tangの健在ぶりを強烈にアピールした記念碑的トラックだ。

和訳

[Intro: Inspectah Deck]

Ladies and gentlemen, we'd like to welcome to you
レディース・アンド・ジェントルメン、ようこそお越しくださいました

All the way from the slums of Shaolin
はるばるシャオリンのスラム街からやって来た

Special uninvited guests
招かれざるスペシャル・ゲストたちです

Came in through the back door
裏口から忍び込んできた

Ladies and gentlemen, it's them!
レディース・アンド・ジェントルメン、奴らの登場だ!

[Verse 1: Inspectah Deck]

Dance with the mantis, note the slim chances
カマキリと踊りな、生き残るチャンスは僅かだと知れ
※蟷螂拳(カマキリの型)というカンフーのスタイルと、死と隣り合わせのストリートの状況。

Chant this anthem, swing like Pete Sampras
このアンセムを唱えろ、ピート・サンプラスのようにスイングするぜ
※90年代を代表するプロテニス選手。強烈なサーブ(パンチ/フロウ)を打ち込む比喩。

Taking it straight to Big Man On Campus
キャンパスの顔役(BMOC)のところに直接持っていく
※「Big Man On Campus」は大学で一番目立つ男。シーンの頂点にいる自負。

Brandish your weapon or get dropped to the canvas
武器を振りかざせ、さもなくばキャンバス(マット)に沈められるぞ

Scandalous, made the metro panic
スキャンダラスだ、地下鉄をパニックに陥れる

Cause static with or without the automatic
オートマチック(銃)があろうがなかろうが、ノイズ(揉め事)を起こしてやる

And while I'm at it, yo, you got cash, pass it
ついでに言っておくが、ヨォ、現金を持ってるなら寄こしな

It's drastic, gotta send half to Dirty Bastard
強硬手段だ、半分はDirty Bastardに送らなきゃならねえからな
※当時服役中だったOl' Dirty Bastardの保釈金や生活費を稼ぐための強盗(ハッスル)という、仲間への熱いシャウトアウト。

[Verse 2: Raekwon]

Ayo, ayo, waves is spinning, blades is spinning
エイヨォ、エイヨォ、波(ウェーブス)がうねり、刃が回転する
※「waves」は黒人のヘアスタイル(360 Waves)のこと。

Slay 'em in the eighth inning
8回裏に奴らを仕留めるぜ

Stay truck, god stay playing linen
トラック(ジュエリー)を身につけろ、神よ、常にリネンを着こなしてな
※「truck」は重たいジュエリー。「linen」は高級なリネン素材の服。マフィオソ的なファッションの誇示。

Kill rap, observe the uptowns, ho, feel that
ラップを殺す、アップタウンを観察しろ、売女よ、それを感じな

Mink jeans on, seen where the real at
ミンクのジーンズを穿いて、どこに本物がいるか見極める

2000 Zitos, moving with a ill ego
2000のジィト、ヤバいエゴと共に動く
※「Zito(Ziti)」はマカロニの一種で、マフィア映画『ザ・ソプラノズ』などで使われる「金」のスラング。

For real, for real, ill lines, ill people
マジで、マジでな、ヤバいライン、ヤバい奴ら

Yo, bring it back, 9 more civilians
ヨォ、引き戻せ、さらに9人の一般市民だ
※Wu-Tangの9人のメンバーのこと。

Pollying deals, monopoly and bills, y'all niggas lying
取引を画策し、モノポリー(独占)と札束だ、お前ら野郎どもは嘘をついてる

Caught 300, lab look royal wit a mean stomach
300(の利益)を掴む、ラボは王室のように見え、意地汚い胃袋を抱えてる
※「lab」はドラッグの精製所、またはスタジオ。

Go broke, all seen, done it
無一文になる、すべて見てきた、やってきたさ

Words from the heavy set
大物(ヘヴィ・セット)からの言葉だ

If I don't eat
もし俺が食えないなら

Then we already met fly-ass bro, liver than coke
なら俺たちはすでに出会ってるってことだ、イカした兄弟、コカインよりも生々しいぜ

[Verse 3: Method Man]

Now what Clan you know with lines this ill?
さて、こんなにヤバいライン(リリック)を持つクランを他に知ってるか?

Bust shots at Big Ben like we got time to kill
ビッグ・ベンに向かって銃をぶっ放す、まるで暇つぶし(Time to kill)でもするかのようにな
※ロンドンの時計塔「ビッグ・ベン」と、「時間を潰す/殺す(time to kill)」を掛けたヒップホップ史に残る特大のパンチライン。

Niggas can't gel or I'm just too high to tell
野郎どもはまとまりがねえのか、それとも俺がハイすぎて分からねえだけか

Put on my gasoline boots and walk through Hell
ガソリンを染み込ませたブーツを履いて、地獄を歩いてやるぜ
※引火して自分が燃えるリスクを冒してでも、過酷な状況(地獄)を突き進むというクレイジーな覚悟。

With 9 generals, 9 ninjas in your video
9人の将軍、お前のビデオにいる9人の忍者と共にな

9 milli blow, semi-auto with no serial
9ミリが火を噴く、シリアルナンバーのないセミオートマチックだ

Man metaphysical, I speak for criminals
俺は形而上学的だ、犯罪者たちを代弁するぜ

Who don't pay they bills on time and fuck with digital
期限通りに請求書を払わず、デジタル(デジタルの秤)をいじる奴らのためにな

Never seen, smoke a bag of evergreen
決して姿を見せず、エバーグリーン(極上のハッパ)の袋を吸い尽くす

My sword got a Jones, more heads for the severing
俺の剣は中毒(ジョーンズ)になってる、切り落とすための首をもっと寄こせ
※マイク(剣)が血を求め、MCたちの首を刈りたがっているという武術的メタファー。

Johnny in the dungeon, taking all bets, throw ya ones in
ジョニーが地下牢にいる、すべての賭けを受け付けるぜ、お前らの1ドル札を放り込め
※「Johnny」はMethod Manの別名(Johnny Blaze)。

Scared money don't make money, throw ya guns in
ビビった金じゃ金は稼げねえ、お前らの銃を放り込め

[Verse 4: Masta Killa]

That's word to Damo, San Juan, Puerto Rico
ダモに誓うぜ、サンフアン、プエルトリコだ

Blowin hydro on a beach wit Tamiko
タミコと一緒にビーチでハイドロ(水耕栽培のハッパ)を吹かしてる

My gun bullet hollow for you to swallow
俺の銃の弾はホローポイントだ、お前が飲み込むためにな

Blowin' the nozzle, hear it whistle
銃口が火を噴く、その口笛を聞きな

One in the head, this is code red, man for dead
頭に一発だ、これはコード・レッド(緊急事態)、死を待つ男さ

X amount of lead spray from the barrel
未知数の鉛(銃弾)が銃身からばら撒かれる

Heat clear the street like Connor O'Carroll
熱(銃)がコナー・オキャロルのようにストリートを一掃する
※アイリッシュ・マフィアや冷酷な殺し屋のような恐ろしさの比喩。

Fully equipped, rifles, banana clip shit
完全装備だ、ライフル、バナナクリップのヤバい代物

To make my niggas from East New York flip
イースト・ニューヨークの俺のダチたちを熱狂させるためにな

[Verse 5: RZA]

Yo, you may catch me in a pair of Polo Skipperys
ヨォ、お前はポロのスリッパを履いた俺を見かけるかもしれない

Matching cap, razor blades in my gums (BOBBY!)
お揃いのキャップ、歯茎にはカミソリの刃を隠してるぜ(ボビー!)
※いつでも相手を切り裂けるように口の中にカミソリを隠し持つストリートの護身術。背後の「BOBBY!」はRZAの本名(Robert)を呼ぶ声。

You may catch me in yellow Havana Joe's goose jumper
お前は黄色のハバナ・ジョーの靴と、グース(ダウン)ジャンパーを着た俺を見かけるかもしれない

And my phaser off stun (BOBBY!)
そして俺のフェイザー銃はスタン(気絶)モードを解除してあるぜ(ボビー!)
※『スタートレック』の武器。気絶ではなく「殺傷モード」に設定してあるということ。

Y'all might just catch me in the park playin' chess
お前らは公園でチェスをしている俺を見かけるかもしれない

Studyin' math, signin' 7 and a Sun (BOBBY!)
数学を学び、7と太陽のサインを描いているのをな(ボビー!)
※5% Nationにおける「Supreme Mathematics(至高の数学)」。7は神(黒人男性)、太陽は真理を表すシンボル「Universal Flag」。

But you won't catch me without the ratchet, in the joint
だが、俺がラチェット(銃)を持たずにいるところは絶対に見かけないぜ、刑務所の中でも

Smoked out, dead broke or off point (BOBBY!)
ハッパでハイになってようが、完全に無一文だろうが、気を抜いている時でもな(ボビー!)

[Verse 6: Ghostface Killah]

Wallo's comfortable, chocolate frosting
ワラビーは快適だ、チョコレートのフロスティング(アイシング)

Your socks hangin' out, yours is talkin'
お前の靴下ははみ出してるし、お前の靴は喋ってる(底が剥がれて口を開けてる)ぜ

Rock so steadily, son, I'm still crazy
着実に揺らすぜ、なあ、俺は今でもイカれてるんだ

Sport my old Force MD furs from the 80's
80年代のForce MDsのお下がりのファーを着こなしてな
※80年代のスタテンアイランド出身のR&Bグループ「Force MDs」。地元の先輩グループのファッションへのオマージュ。

Nat Turners wit burners, Jackie Joyner-Kersee
銃を持ったナット・ターナーどもだ、ジャッキー・ジョイナー・カーシー
※「Nat Turner」は白人に反乱を起こした黒人奴隷の指導者。白人社会のシステムに反逆する姿勢。「Jackie Joyner-Kersee」はオリンピックの陸上金メダリスト。走って逃げる、または駆け抜ける比喩。

Taught y'all niggas how to rap, reimburse me
お前ら野郎どもにラップの仕方を教えてやったんだ、その代金を払いな

Rothsdale's, ruby red sales, Bloomingdale's, blocks
ロスデールズ、ルビーレッドのセール、ブルーミングデールズ、ブロック
※ニューヨークの高級百貨店やストリートのブロックを行き来する。

Ox tails chopped up in Caribbean spots
カリブ系の店でぶつ切りにされたオックステール(牛の尾)だ

I'm nice, maxed out, creepin' wit the ax out
俺は最高だ、限界までキメて、斧を取り出して忍び寄る

Murder these bikini bitches, switchin' with their backs out
このビキニ姿のビッチどもを殺める、背中を丸出しにして寝返る奴らをな

[Verse 7: U-God]

Niggas wanna pop shit, I pop clips
野郎どもが戯言を撃ち放ちたがるなら、俺はクリップ(弾倉)をぶっ放す

Bitch, I'll put my dick on ya lips
ビッチ、お前の唇に俺のイチモツを乗せてやるよ

Alabama split, hammer slay quick
アラバマ・スプリット、ハンマーが素早く仕留める

That David Banner gamma ray shit
あのデヴィッド・バナーのガンマ線のヤバい代物だ
※TVドラマ版『超人ハルク』の主人公デヴィッド・バナー。怒りでハルクに変身するような破壊的なラップ。

Shells in the mouth, jailhouse snitch
口の中に薬莢だ、刑務所のチクリ魔め

My powder voice, Snow White sniff
俺のパウダー・ボイス、白雪姫(コカイン)のひと嗅ぎだ

Verbal killas, gorilla grip
言葉の殺し屋たち、ゴリラの握力

God body shit, puff Marley spliffs
ゴッド・ボディ(神の肉体)のクソヤバい代物だ、マーリーの巨大なジョイントを吹かす
※5% Nationにおいて黒人は神(God body)。

[Verse 8: Cappadonna]

You might see me in a 6, that's not my style
お前は俺を6(BMW 6シリーズ)に乗ってるのを見るかもしれないが、それは俺のスタイルじゃない

You might see me wit a bitch, that's not my child
お前は俺がビッチと一緒にいるのを見るかもしれないが、俺の子供じゃないぜ

I be in the benzo, keep a low profile
俺はベンツに乗り、目立たないようにしている

Dead serious, take flicks and don't smile
マジで真剣だ、写真を撮られても笑ったりしねえ

Tryna get money, y'all cats is wild
金を稼ごうとしている、お前ら野郎どもはワイルドだな

I pose for the clothes, make a song like wild
俺は服のためにポーズをとり、ワイルドな曲を作るんだ

I'm a chip off the board game, got sword game
俺はボードゲームのチップだ、剣術のゲームを持ってるぜ
※「chip off the old block(親譲り)」をもじり、チェスの駒(戦略家)であり剣客(ラッパー)であることを示す。

Live life to the fullest, still want more fame
人生を最大限に生きる、それでももっと名声が欲しいんだ

Darts on layaway, beats on standby
ダーツ(リリック)は取り置きしてある、ビートはスタンバイ状態だ

Outfits pressed up, ready for airtime
服はアイロンがけされてる、放送(エアタイム)の準備はできてるぜ

[Verse 9: GZA]

Run on the track like Jesse Owens
ジェシー・オーエンスのようにトラックを走る
※1936年のベルリン五輪でヒトラーの眼前で金メダル4つを獲得した黒人陸上選手。歴史的な偉業とトラック(ビート)上のラップをかけている。

Broke the record flowing without any knowing
誰も気づかないうちに、フロウで記録を打ち破ったのさ

That my wordplay run the 400 meter relay
俺の言葉遊び(ワードプレイ)が400メートルリレーを走るようにな

It's on once I grab the baton from the DJ
俺がDJからバトン(マイク)を受け取った瞬間に始まるんだ

A athlete wit his iron cleat in the ground
鉄のスパイクを地面に突き立てたアスリート

Wireless nigga who sprint off the gun sound
ピストルの音(銃声)でダッシュする、ワイヤレスの黒人だ

The best time yet still 7.0
これまでのベストタイムは7.0秒だ

Swift flow made the cameramen clothes blow
俊敏なフロウが、カメラマンの服を風で吹き飛ばしたのさ