Artist: Playboi Carti
Album: MUSIC
Song Title: HBA
概要
タイトルの由来は、2010年代のヒップホップ・ファッションシーンに革命を起こした伝説的ストリートブランド「Hood By Air」であり、ブランドの美学に通ずるダークでアバンギャルドな世界観が提示されている。ビートはミニマルで陰鬱なピアノと重厚な808ベースで構成され、Cartiは前作『Whole Lotta Red』までの高音域(ベビーボイス)から一転、腹の底から響くような「ディープボイス」を披露している。リリックの面では、自身のファッション・アイコンとしての絶大な影響力(ムードボードへの言及)やフォロワーへの苛立ちを語る一方で、Michael Jacksonを引き合いに出して唯一無二の存在であることを誇示する。さらにアウトロでは、Iggy Azaleaとの間に生まれた長男Onyxに加え、新たに誕生した長女Yves(イヴ)の存在を初めて公に明かし、「ようやく眠りにつける」と父親としてのパーソナルな胸中を吐露している。トラップの枠を超越した現代のロックスターの、虚勢と孤独が入り混じる革新的な一曲である。
和訳
[Intro]
Uh, you gotta get high like this
Uh、こんな風にハイにならなきゃな
You gotta get high like me
俺みたいにハイにならなきゃな
You gotta get high like this
こんな風にハイにならなきゃな
You gotta get high like me
俺みたいにハイにならなきゃな
You gotta get high like this
こんな風にハイにならなきゃな
You gotta get high like me
俺みたいにハイにならなきゃな
You gotta get high like this
こんな風にハイにならなきゃな
You gotta get high like me
俺みたいにハイにならなきゃな
[Verse 1]
I'm fuckin’ these bitches, alright
俺はこのビッチどもとヤッてる、そうだろ
I'm havin' my way, alright, uh
俺の思い通りにしてる、そうだろ、uh
My fingers, they motherfuckin’ tight
俺の指は、クソみたいに固く握りしめられてる
My eyes are open, I'm high
目は見開かれてる、俺はハイなんだ
I can't believe I can die
自分が死ぬなんて信じられねえ
※絶対的な全能感と、ふとよぎる死への恐怖が入り混じったドラッグによる極限状態の精神描写。
I just realized I was high
今自分がハイだってことに気づいたぜ
I was seventeen on the mic
マイクを握ったのは17歳の時だった
I'm tryna be Carti, not Mike
俺はマイクじゃなく、カルティになろうとしてるんだ
※「Mike」はマイケル・ジャクソン。ヒップホップ界で成功者が自らをマイケルに例えるのは定番だが、Cartiは誰かの再来ではなく「Playboi Carti」という唯一無二のアイコンを確立するという強烈なエゴの表れ。
I'm a gigolo, ho, I bite
俺はジゴロだ、ho、俺は噛み付くぜ
※「gigolo」は女を食い物にする男(ヒモ/ジゴロ)。ヴァンパイアのペルソナとして女性の首に「噛み付く(bite)」ことのダブルミーニング。
My wholе career, they bite
俺のキャリア全体を、奴らが噛み付いてきやがる
※「bite」には「他人のスタイルを盗む(パクる)」という意味がある。インディーズ時代から現在に至るまで、常に自分のフロウやファッションがシーンのラッパーたちに模倣され続けてきたことへの苛立ちと自負。
Some niggas still thinkin' thеy faster than me
まだ自分の方が俺より速いと思ってる野郎どもがいるな
Somebody should tell 'em they dyin'
誰かあいつらに、お前らは死にかけてるって教えてやれよ
I’m done with these niggas and dissin’, I just be pissin', I don’t give a fuck
俺はこいつらやディスり合いにはもうウンザリだ、俺はただ小便を引っ掛けるだけ、全く気にしちゃいねえよ
I know I'm on your moodboard, bitch, I'm tryna tell you your ho gon' fuck
俺がお前のムードボードに載ってるのは知ってるぜ、ビッチ、お前の女が俺とヤりたがってるって教えてやってるんだ
※「moodboard」はデザイナーやクリエイターがアイデアをまとめるために画像をコラージュしたボード。ラッパーやデザイナーがCartiのファッションや世界観を無断でリファレンス(パクる)している状況を痛烈に皮肉っている。
If you really got a problem, we can handle that problem, yeah, body to body
もしマジで文句があるなら、その問題を片付けてやるよ、yeah、肉体と肉体でな
Buffie the Body, my bitch got body, Buffie the Body
バフィー・ザ・ボディ、俺のビッチはボディを持ってる、バフィー・ザ・ボディみたいにな
※「Buffie the Body」は2000年代のヒップホップMVなどに多数出演し、グラマラスな曲線美で一世を風靡した伝説的なビデオ・ヴィクセン(モデル)。
My bitch got body, yeah, my bitch got body, yeah, my bitch got body
俺のビッチはボディを持ってる、yeah、俺のビッチはボディを持ってる、yeah、俺のビッチはボディを持ってる
She screech like a hyena when I get her body
俺があいつの体を抱く時、あいつはハイエナみたいに甲高い声で鳴くんだ
[Verse 2]
Travel the world, huh, huh, schyeah, hol’ up
世界中を旅する、huh, huh, schyeah、待てよ
On tour with your girl
お前の女と一緒にツアーを回ってるぜ
It's not my world, it's Mali world
これは俺の世界じゃない、マリの世界だ
And she's not my girl, she's Mali's girl
そしてあいつは俺の女じゃない、マリの女さ
※「Mali」はCartiの古くからの親友であり、Opium周辺の重要人物。仲間への強いリスペクトとシャウトアウト。
You play with my top, get a referral
俺のトップに手を出せば、紹介状をもらうことになるぜ
※「top」は頭部(ヘッドショット)、あるいはトップ(頂点)。「referral」は病院や葬儀屋への紹介状=死を意味するストリートの言い回し。
Put him in smoke, he reefer
あいつを煙にする、あいつはリーファーだ
※「reefer」はマリファナ。敵を殺して(煙にして)吸い尽くすという定番のギャングスタ・スラング。
Put him in a coffin, put him in a coffin
あいつを棺桶にぶち込め、あいつを棺桶にぶち込め
Put him in a, uh, put him in a, uh, put him in a coffin
あいつを、uh、あいつを、uh、棺桶にぶち込め
I jump out the Lam' truck, she thought that I lost it
俺がランボのトラックから飛び出すと、あいつは俺がイカれちまったと思ったらしい
※「Lam' truck」はランボルギーニ・ウルス(SUV)。
I jump out my Redeye, push out, then I go to Boston
レッドアイから飛び出し、押し進んで、それからボストンへ行くぜ
※「Redeye」はダッジ・チャージャー/チャレンジャーの超高性能モデルSRT Hellcat Redeye。ヴァンパイアの「赤い目(Red eye)」とも掛かっている。
I stay with like ten thots, Austin
俺は10人の尻軽女たちと一緒にいる、オースティンだ
※テキサス州オースティン(Austin)。ボストンからのライミング。
Everything is awesome, FA, Fucking Awesome
すべてが最高だ、FA、ファッキング・オーサムさ
※プロスケーターのジェイソン・ディル(Jason Dill)が手掛けるストリートブランド「Fucking Awesome (FA)」へのシャウトアウト。Cartiのスケートカルチャーへの愛着を示している。
Make sure you tell them niggas watch me, they don't know how I cross over
あの野郎どもに俺を見てろって伝えな、奴らは俺がどうやってクロスオーバーするか分かっちゃいねえ
※バスケットボールのクロスオーバードリブルで相手を抜き去るように、音楽性やファッションで別次元(メインストリームや異ジャンル)へ軽々と移行していく自身のスタイルの比喩。
Double 0, yeah, the biggest ever, we just gettin' ready for the crossover
ダブル・オー、yeah、史上最大だ、俺たちはクロスオーバーの準備をしてるだけさ
※「Double 0」は自身のレーベルOpium(00)。
Tell the driver he need to pull over, let this bitch come top, then over
運転手に車を止めろって伝えろ、このビッチにトップをさせて、それから終わりだ
※「top」はオーラルセックス。
Nosebleed, yeah, high speed, huh, I can get the rollover
鼻血が出る、yeah、ハイスピードだ、huh、俺なら横転事故だって起こせるぜ
※「Nosebleed」はコカインの吸いすぎ、あるいは異常なハイスピードで車を走らせた際のG(重力)や高揚感によるもの。「rollover」は車の横転事故。ドラッグとスピードによる破滅的なスリル。
You been actin' funny and you fake poppin', yeah, just like hot soda
お前はずっとおかしな態度をとってるし、フェイクに弾けてるな、yeah、まるでホットソーダみたいにな
※「fake poppin'」は人気がある(イケている)フリをしていること。炭酸が抜けて生温かくなった不味いソーダ(hot soda)に例え、敵の勢いが偽物で中身がないことを痛烈にディスしている。
Y'all niggas don't know how to grow up, I been an OG since I was younger
お前ら野郎どもはどうやって大人になるか分かっちゃいねえ、俺はガキの頃からOGだったぜ
All of my friends are dead, leave 'em in the cold, put 'em in the tundra
俺の友達はみんな死んじまった、奴らを寒空の下に置き去りにしろ、ツンドラにぶち込め
※「All my friends are dead」はLil Uzi Vertのヒット曲「XO Tour Llif3」からの有名なラインの引用(ポケットの中の死んだ大統領=大量の現金、を意味する場合もあるが、ここではかつての仲間との決別やストリートの冷酷さを暗示している)。
I go Ray Charles, I cannot see her, I make her fumble
俺はレイ・チャールズになる、あいつの姿は見えない、俺はあいつをしくじらせるのさ
※「Ray Charles」は盲目の天才ソウルシンガー。不要な女やヘイトに「目もくれない(見えない)」というヒップホップ定番のワードプレイ。
I was just in Texas with Aaliyah, her pussy a jungle
テキサスでアリーヤと一緒にいたところだ、あいつのプッシーはジャングルさ
※特定の女性、あるいは伝説的なR&BシンガーAaliyahの名前を使ったライミング。
They wanted this album to be opposite, but I told 'em I'm comin' normal
奴らはこのアルバムが正反対のものになるのを望んでたが、俺は奴らに「ノーマルでいく」って伝えたんだ
※常に前作(WLR)からサウンドを急変させ、ファンや批評家の予想を裏切ってきたCartiが、次作『MUSIC』ではあえて彼本来のアトランタ・トラップ(ノーマル)を極めるという逆説的な宣言。
When you play this shit, wear a white tux, young nigga, like you in a formal, hah
このシットを流す時は、白いタキシードを着な、若い野郎ども、フォーマルな場にいるみたいにな、hah
※自身の音楽がもはやストリートの消費物ではなく、ハイエンドで芸術的な価値(フォーマル)を持つレベルに到達したという圧倒的な自信と美学。
[Outro]
I was twenty-four when I had lil' Onyx
リル・オニキスが生まれた時、俺は24歳だった
※「Onyx」はCartiとラッパーIggy Azaleaの間に2020年に生まれた長男Onyx Kellyのこと。
(Then I had a daughter, I got a daughter too)
(それから娘が生まれたんだ、俺には娘もいる)
Twenty-seven when I had Yves
イヴが生まれた時、俺は27歳だった
※Cartiの現在のパートナーとの間に生まれた長女「Yves」の存在を公の楽曲で初めて明かした、ファンを驚かせた重要なライン。
Now I can finally sleep
これでようやく眠りにつくことができる
※「不眠症のヴァンパイア」というこれまでのペルソナや、ドラッグと狂乱に満ちたロックスターの生活から、二人の子供の父親となったことで精神的な安らぎ(睡眠)を得られたという、非常に人間らしくエモーショナルな吐露。
I let the sun
俺は太陽に
I let the sun lead me home
俺は太陽に、家まで導かせる
I let the moon
俺は月に
I let the moon set me up
俺は月に、身を委ねるのさ
※ヴァンパイアにとって致命的な「太陽」を家への道標として受け入れ、夜の象徴である「月」の元で安息を得るという、昼と夜(光と闇)の狂騒を調和させるポエティックなアウトロ。
