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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

I’m Amazed - Pixies 【和訳・解説】

Artist: Pixies

Album: Surfer Rosa

Song Title: I’m Amazed

概要

1988年発表のPixiesの記念碑的デビューアルバム『Surfer Rosa』に収録された本作は、再生時間わずか1分40秒強という短尺の中に、バンドの狂気とシュールレアリズムが凝縮されたハードコア・パンク的なナンバーである。最も目を引くのは、楽曲の冒頭に配置された約40秒間にも及ぶキム・ディールとブラック・フランシスの生々しいスタジオでの会話だ。これはプロデューサーのスティーヴ・アルビニがマイクをオンにしたまま録音したもので、教師による生徒への性的虐待というショッキングな噂話を、ブラックジョークを交えながら淡々と語る様子が収められている。その不穏な空気から一転、本編では「結婚前夜の自殺」「毛糸玉で遊ぶ子供」「死ぬ前のドライブ」といった全く脈絡のない断片的なイメージが羅列され、ただただ「驚いたよ」と連呼される。意味の崩壊と圧倒的なエネルギーの奔流が同居する、オルタナティヴ・ロックの真髄とも言える特異な一曲である。

和訳

[Intro: Kim Deal, Frank Black]

…girls and fucked them at school
…女の子たちと、学校でヤってたんだよ
All I know is that there were rumors he was into field hockey players
私が知ってるのは、彼がフィールドホッケー部の選手たちを狙ってるって噂があったことくらい
There were rumors
そういう噂があったのよ
So I applied, basically…
だから、基本的に私は入部届を出したわけ…
He was gone the next day
次の日には彼はいなくなってたけどね
…and went out for the team
…それでチームに入ったの
It's like, he was go—they'd just like… it was like, so hush-hush
なんか、彼は…彼らはただ…なんていうか、すごく秘密裏に進められてて
They were so… quiet about it and then the next thing, you know…
彼らはそのことについてすごく…静かで、それで気がついたら…
※キム・ディールが過去に通っていた学校の教師が、女子生徒と関係を持っていたというスキャンダルについて語っている。深刻な事件であるにもかかわらず、「だから私もホッケー部に入ったの(彼をからかうためのジョーク)」と笑いながら話すキムのブラックなユーモアと、それを盗み録りして楽曲のイントロに丸ごと採用してしまうスティーヴ・アルビニのドキュメンタリー的かつサディスティックなプロデュース手法が光る。この異様な日常のスケッチが、後に続く楽曲の狂気への完璧な助走となっている。

[Verse 1: Kim Deal & Frank Black]

The day before that I was wed
俺が結婚する前の日
She went upstairs and she shot her head
彼女は上の階へ行って、自分の頭を撃ち抜いた
※あまりにも凄惨でトラウマティックな出来事を、まるで昨日の天気を語るかのように無機質なメロディで歌い上げる。ブラック・フランシスの猟奇的な世界観と、それを中和するキム・ディールのポップなコーラスのコントラストが不気味さを増幅させている。

[Chorus: Kim Deal & Frank Black]

I'm amazed
驚いたよ

I'm amazed, ah
驚いたよ、ああ

I'm amazed
驚いたよ

I'm amazed
驚いたよ
※恋人の自殺に対してのリアクションが、悲しみや絶望ではなく単なる「amazed(驚愕、あるいは呆然)」である点が極めて異常である。感情の回路がショートしてしまったかのような解離的な感覚を示している。

[Verse 2: Kim Deal & Frank Black]

And when I was a little boy
俺がまだ小さな男の子だった頃
A ball of string, my favorite toy
毛糸の玉が一番のお気に入りのおもちゃだった
※死と暴力のイメージから突如として、無垢で貧相な子供時代の記憶へとフラッシュバックする。脈絡のない不条理な場面展開は、シュールレアリズムの自動筆記的であり、狂気の精神状態を視覚的に表現している。

[Chorus: Kim Deal & Frank Black]

I'm amazed
驚いたよ

I'm amazed, ah
驚いたよ、ああ

I'm amazed
驚いたよ

I'm amazed
驚いたよ

[Verse 3: Frank Black]

Before I died, I took my Honda
俺は死ぬ前に、自分のホンダに乗って
And packed it up, up, up to Arizona, honey
荷物を詰め込んで、アリゾナへ向かったんだ、ハニー
※「死ぬ前(Before I died)」という既に自分がこの世にいないことを前提とした語り口により、物語は完全に非現実の次元へと突入する。「ホンダ(の車)」という具体的な固有名詞と「アリゾナ」という乾いたアメリカの原風景が、まるでB級ロードムービーのようなチープで荒涼としたイメージを呼び起こす。

[Chorus: Kim Deal & Frank Black]

I'm amazed, ah
驚いたよ、ああ

I'm amazed
驚いたよ

I'm amazed
驚いたよ

I am amazed
本当に驚いてるんだ