Artist: Pixies
Album: Surfer Rosa
Song Title: Brick Is Red
概要
1988年に発表されたPixiesの歴史的デビュー・フルアルバム『Surfer Rosa』のクロージングを飾る本楽曲は、アルバム全体を覆っていた凶暴なノイズや狂気的な性衝動から一転し、どこかメランコリックで静謐な余韻を残すナンバーである。ジョーイ・サンティアゴによる流麗で印象的なギター・リフが楽曲を牽引し、スティーヴ・アルビニのソリッドなプロダクションがその冷たい美しさを際立たせている。歌詞は非常に短く抽象的であり、日常的な風景の描写に唐突に「吊るし首にしてくれ」という死の匂いが交錯する。生と死、熱と冷気といった相反するイメージが断片的に羅列された末に、主人公の瞳が「氷やダイヤモンドの色」に変わっていくという不気味なほど美しい結末を迎える。オルタナティヴ・ロックにおける静と動のコントラストをアルバムという一つの作品単位で見事に完結させた、Pixiesの文学的な美学が光る傑作のアウトロである。
和訳
[Instrumental Intro]
[Verse: Frank Black & Kim Deal]
A fish is fast and Jimmy's cast
魚は素早く、ジミーは釣り糸を投げる
※シュールで断片的なイメージの羅列。「ジミー」が誰を指すかは明言されていないが、ファンの間では牧歌的で日常的な風景の裏に潜む、釣り(命を奪う行為)という静かな暴力性へのメタファーとして解釈されている。
Hang me!
俺を吊るし首にしてくれ!
※静かな情景描写から一転、唐突に死刑や自殺を想起させる自罰的な叫びが挿入される。ブラック・フランシス特有の狂気的なコントラストであり、精神の不安定さを端的に表している。
A white moon's hot, the other side's not
白い月は熱く、裏側はそうじゃない
※天体についての物理的な事実の歪曲、あるいは物事の二面性や極端な温度差(狂気と静寂、生と死)を暗示するポエティックな表現。
Hang me!
俺を吊るし首にしてくれ!
[Pre-Chorus: Frank Black & Kim Deal]
It's not time for me to go
俺が行くべき時間じゃない
※「吊るしてくれ」と叫んだ直後に「まだ死ぬ時じゃない」と即座に否定する。自己矛盾と生への執着、死への誘惑の間で揺れ動く解離的な精神状態が描かれている。
It's not time for me to go
俺が行くべき時間じゃない
[Chorus: Frank Black & Kim Deal]
My eyes have turned just the color of diamond
俺の目はまるでダイヤモンドのような色に変わった
※極度の恐怖や狂気、あるいは死の淵に立たされたことで、瞳がガラス玉のように無機質に冷え切っていく描写。感情の完全な喪失を意味している。
Just the color, the pretty color of ice
その色、氷のように美しく冷たい色に
※狂気の果てに行き着いた、冷酷で静謐な美しさ。暴力やタブー、不条理に満ちた『Surfer Rosa』というアルバム全体を、最後に冷たい氷のイメージで美しく凍結させて締めくくる見事なパンチラインである。
Diamond, just the color
ダイヤモンド、その色に
The pretty color of ice
氷のように美しく冷たい色に
