Artist: Pixies
Album: Surfer Rosa
Song Title: Broken Face
概要
1988年に発表されたPixiesの記念碑的デビューアルバム『Surfer Rosa』に収録されている「Broken Face」は、バンドのパンク・ルーツが最も猛烈なスピードと狂気で発露した1分半ほどのショート・チューンである。プロデューサーのスティーヴ・アルビニによる極限まで削ぎ落とされたノイジーなギターと、疾走するベースラインが強烈なインパクトを放つ。フロントマンであるブラック・フランシスが描く歌詞は、近親相姦、ロボトミー手術(あるいは穿孔開頭術)、そして顔面崩壊という極めてグロテスクでタブーとされるテーマのオンパレードだ。しかし、それらの凄惨なイメージを、まるで子供の童歌のような陽気でキャッチーなメロディに乗せて叫ぶことで、Pixies特有のシニカルでシュールなポップネスが完成している。人間の肉体や精神が物理的に破壊されていく様を冷酷に、そしてどこかユーモラスに描き出す彼の特異な作家性が凝縮された、痛快かつ狂気的な一曲である。
和訳
[Intro]
I got a broken face, I got a...
俺の顔はぶっ壊れてる、俺には…
I got a broken face, uh-huh
俺の顔はぶっ壊れてるんだ、アハ
Uh-huh, uh-huh, uh-huh, ooo!
アハ、アハ、アハ、ウー!
I got a broken face
俺の顔はぶっ壊れてる
※曲の冒頭から疾走感あふれるビートに乗せて、顔面の崩壊というショッキングな状態が陽気なコーラスとともに宣言される。自己のアイデンティティの喪失や肉体的な欠損を、まるで自慢話のように語る不気味なテンションが特徴的だ。
[Chorus]
I got a broken face
俺の顔はぶっ壊れてる
I got a broken face
俺の顔はぶっ壊れてる
[Verse 1]
There was this boy who had two children with his sisters
ある男の子がいて、自分の姉妹との間に2人の子供を作ったんだ
Who were his daughters, who were his favorite lovers
その子たちは彼の娘であり、一番のお気に入りの恋人でもあった
※ブラック・フランシスが好んで用いる旧約聖書的な近親相姦のモチーフ、あるいは純粋な猟奇的シュールレアリズムの表れである。社会的なタブーを童話の語り部のような無邪気なトーンで語ることで、道徳観念が完全に崩壊した狂気の世界を提示している。
[Pre-Chorus]
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
Where there were eyes, there's only space
かつて目があった場所には、ただ空洞が広がっているだけさ
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
※顔面のパーツが物理的に欠損しているグロテスクな情景。これは単なるスプラッター描写ではなく、外界とのコミュニケーション(話すこと、見ること)を完全に絶たれた究極の自己閉鎖や、人間性の喪失の隠喩としてファンの間で考察されている。
[Chorus]
I got a broken face, uh-huh, uh-huh!
俺の顔はぶっ壊れてる、アハ、アハ!
I got a broken face
俺の顔はぶっ壊れてる
[Verse 2]
There was this man who smashed his brain in little pieces
ある男がいて、自分の脳みそを粉々に砕いてしまった
And then they drilled holes and then they put 'em back in there
それから奴らは頭蓋骨に穴を開けて、脳みそをそこに戻したんだ
※穿頭術(トレパネーション)やロボトミー手術を連想させる暴力的な医療描写。精神の異常を物理的な破壊と再構築によって治療しようとする不気味さや、自己の精神すらも物質的なパズルゲームのように弄ばれる無力感を描いている。「奴ら(they)」という曖昧な主語が、医療権威や社会的なシステムに対する漠然とした恐怖を煽る。
[Pre-Chorus]
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
Where there were eyes there's only space
かつて目があった場所には、ただ空洞が広がっているだけさ
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
[Chorus]
I got a broken face, uh-huh
俺の顔はぶっ壊れてる、アハ
Uh-huh, uh-huh, uh-huh, ooh!
アハ、アハ、アハ、ウー!
I got a broken face
俺の顔はぶっ壊れてる
[Verse 3]
The little thing who does my laundry speaks no English
俺の洗濯をしてくれる小柄な子は、英語を全く話さない
But if you saw her, you'd say, "Hey, isn't she lovely?''
でも彼女を見たら、君も「なぁ、可愛くないか?」って言うはずさ
※不法移民のメイドや、人身売買を思わせる不穏な従属関係の描写。ブラック・フランシスのプエルトリコ滞在経験に基づくヒスパニック系文化への関心が歪んだ形で表れている。言葉が通じない相手を「little thing(小さなもの)」とモノのように扱いながら、その外見だけを称賛する視点には、コミュニケーションを放棄した表面的な関係性や搾取の構造への痛烈な皮肉が込められている。
[Pre-Chorus]
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
Where there were eyes there's only space
かつて目があった場所には、ただ空洞が広がっているだけさ
I got no lips, I got no tongue
俺には唇がない、舌もない
