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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Kim Jong - Lil Nas X 【和訳・解説】

Artist: Lil Nas X

Album: NASARATI

Song Title: Kim Jong

概要

2018年にリリースされたLil Nas Xの初期ミックステープ『NASARATI』の収録曲。彼が世界的ブレイクを果たす前夜の、無名ながらも野心に満ちたアティチュードが刻まれた一曲である。タイトル「Kim Jong(金正恩)」は、北朝鮮の最高指導者になぞらえ、ラップゲームを独裁的かつ暴力的に「乗っ取る(Take over)」という強烈なメタファーだ。トラップビートに乗せ、当時のメインストリームで蔓延していた「コンシャス・ラップ vs マンブル・ラップ」という二項対立の論争を冷笑し、両者を一刀両断する鋭い視点を見せている。Arthur Millerの戯曲『るつぼ(The Crucible)』への言及や、オタクカルチャーとストリートの文脈をシームレスに行き来するリリシズムには、後年ポップアイコンとして時代を牽引する彼の特異な才覚がすでに芽生えている。

和訳

[Intro]

Lando made the track, so you know we 'bout to turn up
Landoがビートを作ったんだ、これからブチ上がるって分かるだろ
※LandoはプロデューサーのLando。当時のSoundCloudラップシーン特有のビートタグ的シャウトアウトであり、曲のバイブスを決定づけている。

[Chorus]

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる
※「up one」はスコアや競争において相手より勝っている(1点リードしている)というスラング。ラップシーンで天狗になっている同業者を指す。

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や
※「Choppa」はAK-47などの連射可能なアサルトライフルを指すヒップホップ頻出のスラング。相手を「son(息子、格下)」と呼ぶことで、圧倒的な力の差を誇示している。

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか
※楽曲のタイトル回収であり最大のパンチライン。北朝鮮の最高指導者である金正恩(Kim Jong-un)の絶対的な独裁権力や核兵器(転じて強烈なリリックやフロウ)の脅威を、自身のラップシーンにおける「独裁的支配(take over)」になぞらえている。善悪を超越したヒップホップ的な強さの象徴としての引用である。

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか

[Verse 1]

Thirty niggas with me and they shootin' too, nigga, they will shoot at you
30人のダチが俺についてる、奴らも撃ちまくるぜ、間違いなくお前をハチの巣にする

Thus leaving you dead, bust your motherfucking cuticles
お前を死体にして、そのクソみたいな爪の甘皮までぶっ飛ばしてやるよ

Dif'rent color Gucci, nigga, I look like a Rubik's cube
色とりどりのGucciでキメた俺は、まるでルービックキューブみたいだろ
※ハイブランドのGucciのカラフルなアイテムを全身に纏っている様子を、おもちゃの「ルービックキューブ」に例えたワードプレイ。ストリートの暴力的なフレックスから一転して、インターネット・トロール出身の彼らしいオタクチックでユーモラスなメタファーが光る。

Putting fake niggas on trial, like The Crucible
フェイクなラッパー共を裁判にかけるんだ、『るつぼ』の魔女狩りみたいにな
※「The Crucible(るつぼ)」は、劇作家アーサー・ミラーによる1953年の名作戯曲。17世紀末にアメリカのセイラムで起きた「セイラム魔女裁判」を題材にしている。ラップシーンにはびこるフェイクな(実力のない)ラッパーたちを異端者として血祭りにあげるという、高い知性(文学的教養)と攻撃性を併せ持った高度なライン。

Delusional niggas thinkin' they up next
自分が次にブレイクするって勘違いしてる妄想野郎ども

That's a shame, 'cause they name ain't Lil Nas X
残念だったな、お前らの名前はLil Nas Xじゃねえんだよ

Young nigga, I was raised in the projects
俺は若造だが、プロジェクト(低所得者層公営住宅)で育ったんだ
※「projects」は米国都市部の低所得者向け公営住宅のこと。自身のタフなバックグラウンドを誇示するヒップホップの定番フレーズ。

In the draft, I'm the number one prospect
ドラフトなら、俺が文句なしのナンバーワン候補(プロスペクト)さ
※NBAやNFLなどのスポーツのドラフト会議にラップシーンを例え、自分が最も将来性のある大型ルーキーであることを宣言している。

[Chorus]

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか

[Verse 2]

Uh, think I was meant for this rappin' shit
あぁ、俺はこのラップゲームのために生まれてきたんだと思うぜ

'Cause all the new niggas sent really wack as shit
だって最近出てきた新人共は、マジで全員クソダサいからな

Maybe if I change the game, I'll aim at lame niggas brains
俺がこのゲームを変えるなら、まずはイケてない奴らの脳天を狙い撃ちするぜ

And take the fame off they names, then I will give it back
そいつらの名前から名声を剥ぎ取って、その後に還元してやるよ

To a motherfuckin' humble rapper
マジで謙虚にやってるラッパーたちにな

Conscious niggas always talking 'bout them mumble rappers
コンシャス・ラッパー気取りの奴らは、いつもマンブル・ラッパーの悪口ばかり言ってるが
※「Conscious rapper」は社会的・政治的メッセージを重視するラッパー(Kendrick LamarやJ. Coleなど)。一方「Mumble rapper」は当時流行していた、言葉を濁して(マンブル)メロディを重視するトラップ系の若手。ここでは、コンシャスであることを盾に新しい波を批判ばかりしているベテラン層(オールドヘッド)を冷ややかに見ている。

Like y'all shit can't be trash too, you niggas be wack too
自分たちの曲がゴミじゃないとでも思ってんのか? お前らも大概ダサいぜ
※当時のヒップホップシーンを二分していた「リリカルなラップ vs マンブルラップ」の論争に対する、Lil Nas Xの強烈なアンサー。メッセージ性があろうが、つまらなければ「wack(ダサい)」という本質的な批判。このジャンル横断的でフラットな視点が、後にカントリーとトラップを融合させた「Old Town Road」の世界的ヒットへと繋がっていく。

Pussy fuck ya past, ooh, you niggas gassed
腰抜け共の過去の栄光なんて知るかよ、お前らは調子に乗ってるだけだ
※「gassed(gassed up)」は根拠なく自信過剰になっている、おだてられて調子に乗っている状態。

My check better be gettin' to me
俺のギャラ(小切手)はきっちり俺の手元に届くようにしろよ

Or I'm wettin' necks of niggas who didn't give it to me
さもなきゃ、金を出さなかった奴らの首を血で染めてやるからな
※「wetting」は銃撃して血まみれにするというストリート・スラング。

Don't expect no respect, I never give it truly
リスペクトなんて期待するなよ、俺が本気で誰かを敬うことなんてないんだから

Switch the pivot, gotta get it, that's how I'm livin', ooh-wee
ピボット(軸足)を切り替えて、何がなんでも掴み取る。それが俺の生き方さ、ウーウィー
※バスケットボールの用語「ピボット」を引用し、状況に応じてプレイスタイルやジャンルを柔軟に変えながら成功を掴み取るという、彼の今後のキャリアを予言するようなライン。「ooh-wee」は西海岸のレジェンドSnoop Doggなどがよく使う感嘆詞で、自信と余裕を表している。

[Chorus]

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか

Uh, niggas thinking that they up one
あぁ、連中は自分が一歩リードしてる気でいやがる

Choppas in the truck, you better go and duck, son
トラックにはチョッパーを積んでるぜ、お前ら伏せたほうが身のためだぞ、坊や

I could give a motherfuck 'bout what you did done
お前が過去に何を残してきたかなんて、俺にはマジで知ったこっちゃねえ

'Cause now I'm taking over, nigga, guess I'm Kim Jong
なぜって、これからは俺がこのゲームを乗っ取るからだ。そうだな、俺は金正恩ってところか