Artist: John Lennon & Yoko Ono
Album: Unfinished Music No. 2: Life with the Lions
Song Title: Cambridge 1969
概要
本作は、1969年3月2日にイギリスのケンブリッジ大学レディ・ミッチェル・ホールで開催されたフリー・ジャズのコンサートにおける、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの伝説的なライブ・パフォーマンスを収録したものである。「未完成の音楽」シリーズ第2弾『Life with the Lions』のA面全体(約26分間)を占めるこのトラックは、ジョンのノイズまみれのフィードバック・ギターと、ヨーコのプリミティブな絶叫によるヴォイス・パフォーマンスの激しい応酬で構成されている。ビートルズという世界最大のポップ・バンドの枠を完全に破壊し、前衛芸術の領域へと足を踏み入れたジョンの覚悟と、ヨーコのフルクサス的な芸術観が公衆の面前で衝突・融合した歴史的瞬間だ。後半からはジョン・チカイ(サックス)やジョン・スティーヴンス(パーカッション)も加わり、フリー・ジャズの極限的な混沌へと雪崩れ込んでいく。ポップスへの強烈なアンチテーゼであり、後のノイズ・ミュージックへの先駆的マイルストーンとして評価されている。
和訳
[Spoken Intro: Yoko Ono]
Um, this is a piece called, um, "Cambridge 1969".
ええと、これは「ケンブリッジ 1969」という作品です。
※この約26分間にも及ぶ前衛的で暴力的なノイズ・セッションの中で、唯一発せられる言語的なフレーズである。ヨーコのどこか控えめで礼儀正しいこの短いMCの直後、空気を切り裂くような彼女の絶叫とジョンのハウリング・ギターが突如として爆発する。ファンの間や音楽評論においては、この「日常的で静かな入り口」から「予測不能な狂気」へと一瞬でリスナーを引きずり込む落差こそが、極めて巧妙な芸術的ギミックであると分析されている。また、一説によれば、この日はジョンにとって「ビートルズのメンバー以外と行った初の公式なライブ・パフォーマンス」であった。ポップスターとしてのペルソナを脱ぎ捨て、ただのアヴァンギャルドなギタリストとしてヨーコの背後に立ち、彼女の表現を全身全霊でサポートするジョンの立ち位置は、二人の揺るぎない共犯関係と新たな時代の幕開けを象徴している。
