Artist: Yoko Ono
Album: Fly
Song Title: Toilet Piece / Unknown
概要
1971年の2枚組アルバム『Fly』に収録された「Toilet Piece / Unknown」は、約30秒間にわたり「トイレの水を流す音」だけが収録された、ヨーコ・オノの前衛芸術家(フルクサス)としてのルーツが最も端的に表出されたコンセプチュアルなトラックだ。マルセル・デュシャンのレディメイド作品「泉(便器)」や、環境音を音楽として捉えたジョン・ケージの思想をポップ・ミュージックの世界に持ち込んだこの作品は、既成の商業的な音楽に対する痛烈なアンチテーゼである。当時、メディアや大衆から向けられていた数々の心無い批判やバッシング、あるいは大量消費される音楽産業の構造そのものを「排泄物」として水に流してしまうかのような、シニカルでユーモラスなステートメントとして機能している。ロックのアルバムにこのような日常のノイズを堂々と配置する彼女の急進的な姿勢は、後のパンクやノイズ・ミュージックに決定的な影響を与えた。
和訳
[Toilet flushing]
トイレの水を流す音
※本トラックには人間の声による言語的メッセージや楽器の演奏は一切含まれず、ただトイレの水を流す環境音のみで構成されている。ファンの間や前衛音楽の文脈では、この「流す」という行為自体が究極のカタルシス(浄化)のメタファーとして深く考察されている。当時、ビートルズ解散の元凶として世界中から向けられていたミソジニー的なヘイトスピーチ、家父長制社会の抑圧、そして音楽業界の権威主義といったすべての「くだらないもの(Bullshit)」を文字通り「水に流す(Flush away)」という、毅然とした態度の表明である。また、便器という日常的でプライベートな空間のノイズをレコードという公共のメディアに刻み込むことで、芸術と日常の境界線を破壊した歴史的なサウンド・アートとして極めて重要な意味を持っている。
