Artist: JPEGMAFIA
Album: Veteran
Song Title: Baby I’m Bleeding
概要
JPEGMAFIA(通称:Peggy)の2018年のアルバム『Veteran』のハイライトとも言える本作は、彼のビートメイカーとしての特異な才能と、研ぎ澄まされた攻撃的リリシズムが真正面から衝突する傑作である。耳をつんざくようなノイズ、不規則にチョップされた女性ボーカルのサンプル、そして絶え間なく変化するインダストリアルなビートは、他ならぬ彼自身による変態的なセルフプロデュースの賜物だ。リリック面では、ニューヨークの各地やかつて所属していた空軍基地の地名を跨ぎながら、口先だけのSoundCloudラッパーたち、業界の偽物、さらには特定のノイズラップデュオに対して鋭いディスを放っている。カニエ・ウェストの右傾化への失望や、プロレス、格闘ゲームといったナードなカルチャーの引用を散りばめつつ、音楽業界における「奴隷とマスター(支配者)」の構造を撃ち抜く本作は、エクスペリメンタル・ヒップホップにおける彼の覇権を決定づけたアンセムとして高く評価されている。
和訳
[Intro]
Let that shit run
そのまま流しとけ
Ah, fuck
あぁ、クソ
Fuck is, fuck
何だよこれ、クソ
Alright, alright, alright, shit
わかったよ、わかったって、クソが
(You think you know me)
お前ら俺の何を知ってるって言うんだ
※JPEGMAFIAのシグネチャータグ。WWEの伝説的プロレスラーであるエッジの入場曲からのサンプリング。
Ah, fuck
あぁ、クソ
Uh, uh
S-stop, it's over, it's ov–
やめろ、もう終わりだ、終わ…
Uh
[Verse 1]
"Peggy, where you been at?" Getting all this promo
「ペギー、どこに行ってたんだ?」って、これだけプロモーションしてやってるのに
When it comes to money, bet these niggas is a no-show
金の話になると、どうせあいつらは顔も出さねえ
I've been out in Bed-Stuy, chilling with my feet up
俺はベッドスタイにいて、足を伸ばしてくつろいでる
※Bed-Stuy(ベッドフォード・スタイベサント)はニューヨーク・ブルックリンの地区。The Notorious B.I.G.などの出身地として知られるヒップホップの聖地。
Laughing at these SoundCloud niggas trying to be us
俺たちになろうと必死なサウンドクラウドの連中を見て笑ってるんだ
When I say "us," bet I don't mean no fucking crew
「俺たち」って言っても、群れてるクソみたいなクルーのことじゃねえぞ
Peggy been a solo act since Looney Tunes and Goofy Troops
ペギーはルーニー・テューンズやグーフィー・トゥループスの頃からずっとソロなんだ
※「Looney Tunes」や「Goof Troop」といった90年代以前の古いアニメを引き合いに出し、誰にも頼らず昔からずっと一人でやってきたというインディペンデントな姿勢をアピールしている。
Catch me out in Barksdale, counting fettuccine
バークスデールにいる俺を見つけてみな、フェットチーネを数えてるからよ
※Barksdaleはルイジアナ州にある空軍基地(Barksdale Air Force Base)。元空軍兵士(Veteran)である自身のキャリアへの言及。「fettuccine」はパスタのフェットチーネだが、札束(紙幣を輪ゴムで束ねた形が似ているため)を指すストリートスラング。
While you pussy crackers still trying to pass P.T
お前ら腰抜けの白人どもが、まだ体力テストに受かろうと必死になってる間にな
※「P.T」は軍隊のPhysical Training(体力テスト)のこと。crackerは白人への蔑称。軍隊での過酷な経験を持たない口先だけのタフガイたちを嘲笑している。
Ooh, I'm up in Brownsville, strapped with a Kimber
俺は今ブラウンズヴィルにいる、キンバーで武装してな
※Brownsvilleもブルックリンの治安の悪い地区。Kimberは高級な1911系ピストルを製造する銃器メーカー。
All you yuppie purses getting swiped like Tinder
お前らヤッピーの財布は、ティンダーみたいにスワイプされるんだ
※「swipe」には「盗む(ひったくる)」という意味がある。マッチングアプリのTinderでスワイプするように、都会の裕福な若者(ヤッピー)たちからテンポよく金を巻き上げるという見事な言葉遊び。
Now I'm at the White House, looking for your President
今度はホワイトハウスにいるぜ、お前らの大統領を捜してな
※当時の大統領であったドナルド・トランプに対する明確な敵意。右翼や保守派を標的にする彼特有のミリタントなスタンス。
Hop out the van, pointing guns at your residence
バンから飛び出して、お前の家に銃を向ける
Ooh, I'm up in Queens now, showing y'all a body
俺は今クイーンズにいる、お前らに死体を見せてやるよ
Hoping that you pussy ass c******s try and find me
お前ら腰抜けの白人どもが、俺を見つけようとすればいいのにな
※歌詞の「c******s」はcrackers(白人への蔑称)の伏せ字。ヘイターたちが自分を探し出して報復しに来ることを逆に歓迎している。
Chains on my body, looking like a rapper
体にチェーンを巻いて、まるでラッパーみたいな見た目だ
Acting like a slave when I’m gunning for my masters, nigga
奴隷のふりをしながら、俺は主人たちを狙撃してるんだよ
※「チェーン(ネックレス)」を着けて音楽業界の型にはまった「ラッパー」を演じつつ、本心では黒人を搾取する業界の白人経営者(マスター)たちの首を狙っているという強烈なパンチライン。
[Break 1]
Fuck these niggas!
あいつらなんてクソくらえだ!
Buck these niggas!
あいつらを撃ち殺せ!
Yeah
[Verse 2]
It’s ironic you pressed for a cooking
お前が料理のことでキレてるのは皮肉な話だな
※このバースは、LAのノイズ・パンクデュオ「Girl Pusher」やその取り巻きに向けられた非常にパーソナルなディス。SNS上の諍いが背景にあるとファンコミュニティでは考察されている。
It’s ironic you talk jail time, but you ain’t never seen no central booking (Yeah)
刑務所の話をしてるのに、中央留置所なんて一度も見たことがないのは皮肉な話だ
It’s ironic you hang with a nigga that beat women and have the nerve to call yourself "Girl Pusher," wow
女を殴るような奴とツルんでるくせに、よくもまあ自分のことを「ガール・プッシャー」なんて名乗れるもんだ、皮肉な話だよな
[Break 2]
You ain't real, you're a Jarrod, I'll show you how I really feel (Yah)
お前はリアルじゃねえ、ジャレッドみたいな奴だ、俺の本当の気持ちを教えてやるよ
※「Jarrod」はサブウェイの元CMキャラクターで、児童ポルノ所持などで逮捕されたジャレッド・フォーグル(Jared Fogle)を指しているという説が有力。小児性愛者や性犯罪者と同列に扱う究極の侮辱。
White boy better put his hands up, I'm ready
白人の坊やは両手を上げたほうがいいぜ、俺は準備できてるからな
[Verse 3]
And I'm getting Wilder, shoutout to Deontay
俺はどんどんワイルドになっていく、デオンテイにシャウトアウト
※「Wilder(より野蛮に)」と、圧倒的なKO率を誇ったプロボクサーのデオンテイ・ワイルダー(Deontay Wilder)を掛けたパンチライン。
Country niggas booming Peggy, I'm the new Beyoncé
田舎の連中がペギーを大音量で流してる、俺は新しいビヨンセだ
※アンダーグラウンドの存在でありながら、ポップアイコンであるビヨンセ並みの熱狂を生み出しているというフレックス。
Devil on my entrée, cut like Dante
俺のメインディッシュには悪魔が乗ってる、ダンテみたいに切り刻むぜ
※カプコンの人気アクションゲーム『Devil May Cry』の主人公ダンテからの引用。悪魔をスタイリッシュに斬り刻むゲーム性と、ビートや敵を切り刻む自身のスタイルを重ね合わせている。ここでも彼特有のゲームオタクっぷりが発揮されている。
Promise I will never go blonde like Ka– (Hol' up)
絶対にカ…みたいに金髪にはならねえって約束するよ(待てよ)
Promise I will never go blonde like Kanye
絶対にカニエみたいに金髪にはならねえって約束するよ
※カニエ・ウェスト(Kanye West)がトランプタワーを訪れ、ドナルド・トランプと会談した際に金髪に染めていた出来事への強烈なディス。同胞を裏切り、権力に擦り寄ったかつてのヒーローへの完全な決別宣言。
Got so many styles, they should call me Peggy A.J
あまりにもスタイルが多すぎる、あいつらは俺をペギー・A.J.と呼ぶべきだ
※「フェノメナル・ワン(驚異的な存在)」の異名を持つWWEのトップレスラー、AJスタイルズ(AJ Styles)からの引用。プロデューサーとしてもラッパーとしても多彩な「スタイル」を持っていることの誇示。
When I hit the stage, niggas know it's a payday
俺がステージに立てば、あいつらも給料日だってことがわかるんだ
Tell your bitch "Come here" like I work for Midway, nigga
お前の女に「こっちへ来い」って言うぜ、俺がミッドウェイで働いてるみたいにな
※「Midway」は残虐格闘ゲーム『Mortal Kombat』シリーズの開発元であったゲーム会社。ゲーム内の人気キャラクターであるスコーピオンが、敵を引き寄せる際に放つ象徴的なセリフ「Get over here! (Come here!)」を鮮やかに引用している。
(Fuck!)
クソ!
[Outro]
Hot like fire
炎のように熱いぜ
