Artist: Drake
Album: Care Package
Song Title: Heat of the Moment
概要
「Heat of the Moment」は、2014年後半にSoundCloudで突如無料公開され、のちに2019年のコンピレーション・アルバム『Care Package』に正式収録された、長年の盟友40(Noah Shebib)プロデュースによるメランコリックなR&Bトラックだ。本作でDrakeは、活字離れが進む若者や量産型のラッパーたち、さらには気候変動といったマクロな社会問題に触れ、「世界の終わり」と「名声の終焉」という実存的な不安を憂いている。しかし、そうした真面目な思考は長く続かず、結局は目の前の女性との刹那的な快楽(その場の熱=Heat of the moment)へと逃避していく。純粋な愛を失った「Sad Boy」の虚無感を見事に描き出している。アウトロには実父Dennis Grahamとの電話音声が収録されており、若者の無軌道な性行動に対する警告と避妊の重要性をユーモア交じりに語るという、OVO特有のシニカルな世界観が堪能できる一曲である。
和訳
[Verse 1]
All the school kids are so sick of books and learnin'
学校のガキ共は本を読むのも学ぶのもウンザリしてる
They don't read anymore, they don't even read anymore
奴らはもう本を読まない、活字なんて全く読まなくなった
They just wanna be like all the rappers that I can't stand
俺が我慢ならないようなラッパーたちの真似をしたがるだけだ
Niggas we don't need anymore
もうこれ以上シーンに必要ない奴らの真似をな
All the niggas we don't need anymore
これ以上必要のない、クソみたいな奴らのことさ
※Drakeが珍しく社会やユースカルチャーに対する憂いを語るライン。中身のない言葉を並べるフェイクなラッパーたち(mumble rappersなど)へのサブリミナルな批判と、それに影響される若者たちへの嘆き。
And all the cops are still hangin' out at the doughnut shops
そしてサツの連中はいまだにドーナツ屋でたむろしてる
Talkin' 'bout how the weather's changin'
天気が変わっていくことについてのんきに話しながらな
The ice is meltin' as if the world is endin'
まるで世界が終わるみたいに氷は溶け続けてるのに
※地球温暖化による海面上昇や社会の崩壊(世界の終わり)が迫っているにもかかわらず、警察(権力)は無関心で無能であるというシニカルな社会風刺。
[Chorus]
She asked me
彼女は俺に聞いてきた
"Who are you gonna be when it's all over? When it's all over?"
「すべてが終わった時、あなたは何者になるの? すべてが終わった時に」ってな
She asked me
彼女は俺に聞いてきた
"Who are you gonna be when it's all over? When it's all over?"
「すべてが終わった時、あなたは何者になるの? すべてが終わった時に」ってな
※「すべて」とは、世界の終わりだけでなく、Drake自身の「名声やキャリアの終焉」も意味している。スーパースターとしての栄光が過ぎ去った後、自分に何が残るのかという根源的な問い。
I don't wanna think about that right now
今はそんなこと考えたくもない
Heat of the moment
その場の熱気
Heat of the moment, girl, heat of the moment
その場の勢いさ、なぁ、この熱気に身を任せるんだ
I ain't even got a strap, if you think we really need one, I'm on it
俺はストラップすら持ってない、でも君が本当に必要だと思うなら調達するよ
※「strap」はヒップホップのスラングで「銃(護身用の武器)」を指すが、この曲の文脈およびアウトロの会話から「コンドーム」を意味する秀逸なダブルミーニング。深刻な未来の話を避け、目の前の性行為(その場の勢い)へ逃避している。
The last man fucked up, I'll take it since he doesn't want it
前の男はしくじった、あいつがいらないって言うなら俺がもらうよ
※女性の元恋人が彼女を大切にしなかったため、自分が彼女(の体)を奪うという傲慢さ。
Can't think straight in the heat of the moment, heat of the moment
その場の勢いに流されて、まともに考えられないんだ、この熱気の中じゃ
[Interlude]
What are we even doing?
俺たち、一体何をしてるんだろうな?
[Verse 2]
Ridin' clean
クリーンな車を乗り回して
With you on my mind and I'm thinkin' dirty things
君のことを思い浮かべながら、淫らなことばかり考えてる
Yes Lord, yes Lord, yes Lord
ああ神様、神様、神様
I've seen some things
俺は色々なものを見てきた
I wish we had met when I was in my teens
10代の頃に君と出会えていたらよかったのに
※名声によって誰も信じられなくなる前、無垢だった10代の頃に出会っていれば、純粋な愛を築けたかもしれないというSad Boy全開の哀愁。
Yes Lord, yes Lord, yes Lord
ああ神様、神様、神様
'Cause these days I only know conditional love
だって最近の俺は、条件付きの愛しか知らないからな
※富や名声、地位といった「条件」目当てで近づいてくる人間ばかりになり、真実の愛を見失っている孤独感。
I'm not used to settlin' down
落ち着くことなんて慣れてない
I'm too used to switchin' it up, oh
次々と相手を乗り換えることに慣れすぎちまったんだ
And she says, "You don't how good it is to be you 'cause you're him"
そして彼女は言う、「自分があなたであることの素晴らしさが分かってないわ、だってあなたは『彼』なんだから」って
※「him(彼)」とは、頂点に立つ者、選ばれし者(The Man)を指すスラング。女性は彼の孤独を理解せず、ただ彼が世界的スターであるという事実だけを称賛している。
And I say "Well, goddamn"
だから俺は「そりゃどうも」って答えるのさ
[Chorus]
Then ask myself
そして俺自身に問いかける
Who am I gonna be when it's all over? When it's all over?
すべてが終わった時、俺は何者になるんだろう? すべてが終わった時に
Who am I gonna be when it's all over? When it's all over?
すべてが終わった時、俺は何者になるんだろう? すべてが終わった時に
I don't wanna think about that right now
今はそんなこと考えたくもない
Heat of the moment
その場の熱気
Heat of the moment, girl, heat of the moment
その場の勢いさ、なぁ、この熱気に身を任せるんだ
I ain't even got a strap if you think we really need one, I'm on it
俺はストラップすら持ってない、でも君が本当に必要だと思うなら調達するよ
The last man fucked up, I'll take it since he doesn't want it
前の男はしくじった、あいつがいらないって言うなら俺がもらうよ
Can't think straight in the heat of the moment, heat of the moment
その場の勢いに流されて、まともに考えられないんだ、この熱気の中じゃ
[Outro: Dennis Graham & Drake]
All of this, it's alcohol, it's drugs, weed, it's everything that you could ever imagine. Man, our sisters, our sisters, and our brothers, our brothers, need to stop this shit. They need to take a step up. Young girls are hot, and they will fuck anybody, anytime, anyway. Because they are so hot and young guys are, they are going for it. This shit has to stop, man. This shit has to stop. These people need to uh, uh, uh, uh educate themselves. Women are too fucking hot.
こういうのは全部、酒、ドラッグ、ウィード、お前が想像しうるあらゆるものが原因なんだ。なあ、俺たちの姉妹や、兄弟たちは、こんなクソみたいなことはやめなきゃいけない。奴らは一歩踏み出さないとダメだ。若い女の子たちは魅力的で、いつでも、どこでも、誰とでもヤっちまう。彼女たちが魅力的だから、若い男たちもそれに食いつく。こんなことは終わりにしなきゃいけないんだ。終わりにしなきゃダメだ。連中はもっと、あー、自分たちで学ばなきゃいけない。女たちが魅力的すぎるんだよ。
Yeah, you're right. You're right. Alright man, well, shit, I just wanted…
ああ、親父の言う通りだ。その通りだよ。分かったよ、まあ、クソ、俺はただ…
They know they're too hot. They don't give a fuck. It's the heat of the moment. It's the heat of the moment and that's all it is. It's the heat of the moment.
彼女たちも自分が魅力的だって分かってる。でも全く気にしてないんだ。それが『その場の熱(Heat of the moment)』ってやつさ。その場の熱、結局はそれだけのことなんだ。ただのその場の勢いなんだよ。
I agree
同感だね
This shit, that's all it is. It's the heat of the moment. Be a 100% woman, or try and be a 100% man, and use a fucking condom
こんなの、ただそれだけのことだ。その場の熱さ。100%の女になるか、100%の男になろうとするなら、せめてクソみたいなコンドームくらい使えってことだ。
※Drakeの実父であるDennis Grahamからの電話の録音音声。若者の快楽主義に対する説教かと思いきや、最終的には「女が魅力的すぎるせいだ」と身も蓋もない結論に至り、せめて避妊(コンドームの使用)だけはしろと諭す。曲のテーマである「刹那的な快楽への逃避」と「strap(コンドーム)」というワードを見事に回収する、完璧なオチとして機能している。
Haaa
ハハハ
