Artist: JID & Kenny Mason (feat. Lil Wayne)
Album: The Forever Story
Song Title: Just In Time
概要
JIDの3rdアルバム『The Forever Story』(2022年)の終盤に配置された本作は、同郷アトランタの盟友Kenny Masonと、ヒップホップ界の生ける伝説Lil Wayneを迎えたスリリングなバンガーである。タイトルの「Just In Time」や頻出する「Time」というキーワードを軸に、限られた時間の中で成功を掴み取ろうとするハングリー精神と、いつでもバトルに応じるという「I got the time today(今日は時間がある=相手になってやる)」というストリートのネットスラングがテーマとなっている。Monte BookerとChristoが手掛けたベースヘヴィでミニマルなビートの上で、JIDの超絶技巧な言葉遊びと、Lil Wayneによる「Time」という単語を限界まで韻踏みし続ける狂気的なヴァースが激突する、ラップオタクの期待を裏切らない歴史的マイクリレーだ。
和訳
[Chorus: Kenny Mason]
Woke up at six (Six), pray to a .9 (.9)
朝6時に目覚め、9ミリ口径に祈りを捧げる
※数字の「6」と「9」の対比、あるいはDrakeの異名「6 God」へのオマージュ等のダブルミーニングがファンの間で考察されている。
Twelve (Twelve), was already runnin' from twelve, a nigga was flyin'
12歳で、すでにサツ(12)から逃げ回ってた。俺は飛ぶように走ってたのさ
※「Twelve」は12歳という年齢と、警察を表すストリートスラング(12)を掛けている。
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time
エイ、今日はたっぷり時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな
※「I got the time today」は「今日はお前のくだらない挑発に乗って(喧嘩して)やる暇があるぞ」という意味のインターネットミーム/スラング。
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time (Time)
エイ、今日は時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな(時間をな)
[Verse 1: JID & Kenny Mason]
Time is of the essence, I'm progressively improvin'
時は不可欠なものだ、俺は進化し続けてる
Impressive and I'm pressin' if you second-guess my movements
印象的だろ、俺の動きを疑うならプレッシャーをかけてやるぜ
First to the bullshit
クソみたいな揉め事には真っ先に駆けつける
Who tryna hang with me? I brought the nooses
誰が俺とつるむんだ? 投げ縄は持ってきたぞ
※「Hang」の「つるむ」と「(ロープで)首を吊る」というダブルミーニング。俺と関わると死ぬぞという脅し。
I draw the stainless like you draw conclusions
お前らが勝手な結論を引き出す(ドロー)ように、俺はステンレス(銃)を引き抜く(ドロー)のさ
It's a ball of confusion
ここは混乱の塊だ
The writings on the wall was all illusion
壁に書かれた文字(不吉な予兆)は、全部ただの幻だった
※「The writing on the wall」は旧約聖書に由来する「災いの前兆」を意味するイディオム。
You got the drip, but that shit all pollution
お前にはドリップ(ファッションセンス)があるが、そんなもん全部汚染水(ポリューション)だ
I shot the clip and had another for the audible
マガジン(クリップ)を撃ち尽くし、作戦変更(オーディブル)のためにもう一つ用意する
※アメフト用語の「オーディブル(プレイ直前の作戦変更)」と、銃の「クリップ」を掛けたJID特有のスポーツ比喩。
All the bullshit aside, boy, I got plenty time
戯言はさておき、ボウヤ、俺にはたっぷり時間がある
I've been ready for whatever, anytime
いつだって、何が起きても準備はできてるぜ
From a city where niggas on killin' time
奴らが暇潰しに人殺し(キリン・タイム)をする街の出身だからな
※「Killing time(暇をつぶす)」と「Killing(殺し)」のワードプレイ。
In your pockets for nickels or penny, dimes
お前のポケットにあるニッケル(5セント)やペニー(1セント)、ダイム(10セント)を狙ってな
※「Nickels, penny, dimes」は小銭だが、同時に薬物の量り売り(ダイムバッグなど)や銃弾を指すストリートの隠語。
Nigga shot him, but, shit, he got minimized
奴がそいつを撃ったが、クソッ、最小化(ミニマイズ)されちまった
※銃で撃たれて命を落とし、物理的・存在的に塵のように小さくなった(消された)という表現。
We was livin' by, Ma would go inside behind the window, hide
俺らはすぐそばに住んでた。ママは家に入り、窓の後ろに隠れたもんさ
Fee-fi-fo, niggas slide
フィー・ファイ・フォー、奴らがスライド(襲撃)してくる
※イギリス童話『ジャックと豆の木』の巨人のセリフ「Fee-fi-fo-fum(人間の血の匂いがする)」をサンプリングし、巨人のように恐ろしい襲撃者が来る様子を描写。
Tryna dodge bullets from a Dodge
ダッジ(車)から放たれる弾丸をダッジ(避ける)しようと必死だった
※車メーカーの「Dodge」を用いたドライブバイ・シューティングの描写と、「避ける(dodge)」の同音異義語。
God left when the winter came, then the summer died
冬が来た時に神は立ち去り、そして夏が死んだ
Rain, rain, come another time
雨よ、雨よ、また別の時に降ってくれ
※マザーグースの童謡「Rain, Rain, Go Away(雨、雨、あっちへ行け)」の引用。ストリートの銃弾(雨)に対する悲痛な願い。
I'll be rappin' 'til I'm mummified
ミイラになるまで俺はラップし続けるぜ
Tell your favorite rapper it's pajama time
お前のお気に入りのラッパーに、パジャマの時間(寝る時間)だって伝えてやれ
He a ugly bastard, but a son of mine
あいつはブサイクなクソ野郎だが、俺の息子(俺のパクリ)さ
It's over for you, but it's underlined
お前はもう終わりだ。しかもその事実に下線(アンダーライン)が引かれてるんだよ
※「Over」と「Under」の対比。「終わっている」という事実に下線が引かれ、強調(確定)されているというパンチライン。
I come before you with a humble mind
俺は謙虚な心で、お前の前にやって来た
And a stomach growl, plus I smell foul
腹は鳴ってるし、おまけに嫌な(ファウル)匂いもプンプンさせてるぜ
Takin' big shits from the humble pies (Ayy, ayy, ayy)
ハンブル・パイ(屈辱)から、デカいクソをひねり出すんだ(エイ、エイ、エイ)
※「Eat humble pie(甘んじて屈辱を受ける)」というイディオム。受けた屈辱を消化し、強烈なラップ(クソ)として排泄(アウトプット)するという強烈な比喩。
[Chorus: Kenny Mason]
Woke up at six (Six), pray to a .9 (.9)
朝6時に目覚め、9ミリ口径に祈りを捧げる
Twelve (Twelve), was already runnin' from twelve, a nigga was flyin'
12歳で、すでにサツから逃げ回ってた。俺は飛ぶように走ってたのさ
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time
エイ、今日はたっぷり時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time (Time)
エイ、今日は時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな(時間をな)
Aim at the moon, shoot up the sky (Sky)
月を狙い、空を撃ち抜け(空をな)
2:45, bought two new .45s
2時45分、新品の45口径を2丁買ったぜ
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time
エイ、今日はたっぷり時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな
Ayy, I got the time today, bitch, I got the time
エイ、今日は時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな
[Post-Chorus: Lil Wayne]
Yeah, I got the time today, bitch, I got the time
イェー、今日はたっぷり時間があるぜ、ビッチ。たっぷりな
I got the time today, bitch, uh
今日はたっぷり時間があるぜ、ビッチ、アー
[Verse 2: Lil Wayne]
Time is of the essence, I'm a blessin' in Balenciaga
時は金なり、俺はバレンシアガを着た神からの祝福だ
※ここからLil Wayneの驚異的なヴァースがスタート。冒頭から「Time」という単語を極限まで使い倒すライミングが展開される。
Diamonds are impressive, but their best friends are expensive drama
ダイヤモンドは印象的だが、そいつの親友は高くつくトラブル(ドラマ)さ
※マリリン・モンローの有名な楽曲「Diamonds Are a Girl's Best Friend」をもじり、高価な宝石には強盗などのトラブルが付き物だというストリートの事実。
I was a perfection, no protection, I'm with and without it
俺は完璧そのものだった。プロテクションなしで、着けてようが着けてまいがヤるぜ
※「Protection」はコンドームとボディガード(または銃)のダブルミーニング。
"Why am I so reckless?" is a question that don't get responses
「なぜ俺はこんなに無謀なのか?」ってのは、決して答えの出ない問いだ
Tie 'em down, inspect 'em, disconnect 'em if there's any power
奴らを縛り上げ、調べ上げろ。もし少しでも力(権力/電源)があるなら切断(ディスコネクト)してやれ
Cowards talk excessive, piss-terine is what I rinse they mouth with
臆病者どもはよく喋る。「ピステリン」が、俺が奴らの口をゆすぐ時に使う液体さ
※うがい薬の「Listerine(リステリン)」と「Piss(小便)」を合成したWayne特有の造語。くだらないことを言う口を小便で洗ってやるという強烈なパンチライン。
Tired of contestants, invest in the winner's column
挑戦者たちにはウンザリだ、勝者の欄(コラム)に投資しな
I'm so timeless, but I got plenty time
俺は時代を超越(タイムレス)してるが、時間はたっぷりあるぜ
No sinus, but I got plenty slimes
副鼻腔炎(サイナス)じゃねえが、スライム(仲間)はたっぷりいるぜ
※Young Thugなどが使う仲間の呼称「Slime」と、緑色の鼻水(Sinus=副鼻腔)を掛けたワードプレイ。
More commas than a long sentence, slime
長文(ロング・センテンス)よりも多くのコンマを持ってるぜ、スライム
※「Comma」は文章のカンマと金額の桁区切り(大金)。「Sentence」は文章と「刑期」のダブルミーニング。
No problem to kill 'em, that's killin' time
奴らを殺すことなんて問題ねえ、暇潰し(キリン・タイム)さ
I done did my time
俺は自分の刑期(タイム)を務め上げた
But you know they still be tryna give me time 'til the end of time
でも、奴らは時の終わり(エンド・オブ・タイム)まで、俺に刑期を与えようとしてるんだ
※Lil Wayneが実際に銃器不法所持等で刑務所に服役した過去と、今なお司法システムから狙われているという自覚。
Since the beginnin' of time, I put in the time
時の始まりから、俺はずっと時間(努力)を注ぎ込んできた
And that's all the time, that's in time
そしてそれが全ての時間だ、間に合うようにな
Put it on the line 'til the finish line
フィニッシュライン(ゴール)まで、すべてを懸ける(プット・イット・オン・ザ・ライン)
Never crossed the line, stay within the lines
一線を越えることはない、常にライン(境界線/ラップの小節)の中に留まる
I don't marginalize, I don't sympathize
俺は過小評価(マージナライズ)しないし、同情もしない
And if it's on his mind, I help him decide
もし奴が悩んでるなら、俺が決断を手伝ってやるよ
If that's your homie's side, then defend his side
もしそれがお前のダチの陣営(サイド)なら、そっちを守り抜け
Or we gon' storm your side and then rinse you dry
さもなきゃ俺たちがお前の陣営を急襲(ストーム)して、カラカラになるまで洗い流す(リンス・ドライ)ぜ
That's homicide, that's genocide
それは殺人(ホミサイド)だ、大虐殺(ジェノサイド)だ
I'm large in size, they minimized
俺のサイズは巨大だが、奴らは最小化(ミニマイズ)された
I'm armed this time, can't miss this time
今回は武装してる。今回は絶対に外さねえ
I got time today, and you just in time, yeah
今日は時間があるぜ。お前もちょうどいいタイミング(ジャスト・イン・タイム)で来たな、イェー
[Verse 3: JID]
I'm at the line of scrimmage, know the scrimmage line
俺はスクリメージ・ライン(攻撃開始線)にいる。そのラインを熟知してるんだ
※Verse 1でも登場した、JIDが大学のアメフト選手だった過去を示す比喩。
With a large spliff, it's decriminalized
デカいスプリフ(大麻)を持ってるが、こいつは非犯罪化(ディクリミナライズ)されてるぜ
I gotta party like the nigga on Timba's side
俺はティンバランドの隣にいる黒人みたいにパーティーしなきゃなんねえ
※大物プロデューサーTimbalandの相棒であったラッパーMagooのこと。彼らのヒット曲「Up Jumps da Boogie」などに代表されるパーティーバイブスを表現。
He got a stick and a rod, he said "Get in the ride"
あいつはスティック(自動小銃)とロッド(銃)を持ってる。「車に乗れ」って言ったんだ
There's no thinkin' about it 'til the finish line
フィニッシュラインに着くまで、あれこれ考える余裕なんてねえ
We got plenty time, we got plenty rhymes
俺たちにはたっぷり時間があるし、ライムも山ほどある
Tell Tim' and Swizz to hit the Insta' Live
ティンバ(ランド)とスウィズ(・ビーツ)に「インスタライブを始めろ」って伝えてくれ
※TimbalandとSwizz Beatzがコロナ禍に立ち上げたオンラインのビートバトル企画「Verzuz(ヴァーサス)」への言及。
I put a milli' on us vers' anybody
俺たちと誰かのバトル(vers')に、100万ドル(ミリオン)賭けてやるよ
※「vers'」は「versus」と「Verzuz」のダブルミーニング。誰が相手でも絶対に勝つという自信。
That's plenty dimes, niggas been advised
それってかなりの大金(ダイム)だぜ。お前らには警告したからな
That's a warnin' sign, I just got into the game to gentrify
警告のサインだ。俺はこのゲーム(ラップ業界)をジェントリフィケーション(高級化)するために参入したんだ
What's a modern rapper to a renaissance?
ルネサンス(文芸復興期)において、現代のラッパーなんて何の意味がある?
Nigga, I'll be snappin' 'til the end of time (Time)
俺は時の終わりまで、ブチギレ(スナッピン/最高のラップを)し続けるぜ(時間をな)
