Artist: Drake (feat. Kendrick Lamar)
Album: Take Care
Song Title: Buried Alive Interlude
概要
「Buried Alive Interlude」は、2011年の名盤『Take Care』に収録された特異なインタールードである。Drake自身のアルバムでありながら本人は一切声を出さず、当時ブレイク前夜だったコンプトン出身の気鋭ラッパー、Kendrick Lamarに完全にマイクを委ねている。リリックでは、Kendrickがトロントで初めてDrake(Mr. OVOXO)と対面した夜の生々しいエピソードが語られる。圧倒的な富、女性、そして名声という「毒」に直面したKendrickが、その虚栄心に魅了されながらも呑み込まれる(生き埋めにされる=Buried Alive)ことへの恐怖を描いた、極めて内省的なストーリーテリングだ。ファンの間では、後の2024年にヒップホップ史に残る凄惨なビーフを繰り広げた両者の関係性を考える上で、KendrickがDrakeを「名声の怪物」としてどのように観察し、畏怖していたかを示す最重要文献として神格化されている。
和訳
[Intro: Kendrick Lamar]
Box
箱(棺桶)
I would surely break the lock
俺ならきっと、その錠を壊すだろう
I'd jump right in and, and fall asleep, I, I fall asleep
自ら飛び込んで、そして眠りに落ちるんだ。俺は眠りに落ちる
'Cause, 'cause, 'cause you, 'cause you are the death of me
だって、だって君が、君こそが俺の「死」だからさ
※ここでの「君(You)」は特定の女性ではなく、巨大な「名声」や「誘惑」そのものを擬人化していると考察されている。
'Cause you are the—
だって君は—
If you was in a pine box, box
もし君が、松の木でできた棺桶の中にいたなら
I would surely break the lock
俺ならきっと、その錠を壊すだろう
I'd jump right in and, and fall asleep, I, I fall asleep
自ら飛び込んで、そして眠りに落ちるんだ。俺は眠りに落ちる
'Cause, 'cause, 'cause you, 'cause you are the death of me
だって、だって君が、君こそが俺の「死」だからさ
'Cause you are the—
だって君は—
The, the death of me, you, you, the death of me
俺の死そのものだ。君が、俺を破滅させるんだ
[Verse: Kendrick Lamar]
Lookin' in the mirror, I'm embarrassed
鏡の中の自分を見つめて、恥ずかしくなる
I'm feelin' like a suicidal terrorist
まるで自爆テロリストになった気分だ
React like an infant whenever you are mentioned
「君(名声)」の名前が出るたびに、赤ん坊のように感情的に反応してしまう
Mind over matter never worked for my nemesis
「精神力で乗り越える」なんて言葉は、俺の宿敵(内なる欲望)には一度も通用しなかった
I'm in the matter of man, arm wrestlin' hands I was dealt
俺は一人の男として、配られた手札(運命)と必死に腕相撲をしてるんだ
When I said the music business was all I needed
「音楽ビジネスさえあれば他に何もいらない」と言っていたのに
When I got it, I was greeted by an alien
いざそれを手に入れた途端、エイリアン(見知らぬ世界の女)に挨拶されたのさ
That said last year that she slept with a Canadian
彼女は「去年、カナダ人(Drake)と寝たわ」と言った
That gave him an addiction that'd keep him in Mercedes Benz
そのカナダ人は名声という中毒に犯されていて、メルセデス・ベンツに乗り
Bright lights and Rihanna as a lady friend
眩いスポットライトを浴びて、リアーナを女友達として連れ歩いていると
※当時、実際にDrakeとRihannaの関係がゴシップを騒がせていた。コンプトンのストリートから来たKendrickにとって、Drakeが体現する世界は「エイリアン」のように異質で狂気じみたものに見えたという描写。
My vice is similar
俺の悪癖も、それと似たようなもんだ
Women love when you're my type
女たちは俺みたいなタイプの男が大好きで
And you're winnin' from everything that your palm write
そして俺は、自分の手のひらが書いたもの(リリック)で、すべてに勝ち続けている
Put her in the Palms Hotel, sin city
彼女をシン・シティ(ラスベガス)のパームス・ホテルに泊めてやる
Devil in a dress, Platinum Chanel
ドレスを着た悪魔、プラチナのシャネルのバッグ
Live the ambiance all 'cause the audience one day said I would do it
こんな雰囲気を生きてるのは、観客がいつか俺がそうなるだろうと言ったからだ
So instead of a verse bein' read
だから、バースを読み上げる代わりに
I'ma go and get some head off the strength of my music
俺の音楽の力を使って、フェラでもしてもらおうかなんて考える
I tell a bad bitch your ass too fat, capitalize that
バッド・ビッチに言ってやる、「ケツがデカすぎるな、それをビジネスに活かせよ」と
And your weave look good with the Indian tracks
それに、インディアンの毛束を使ったウィッグもよく似合ってるぜ
Trackin' device on your used 5 Series
お前のその中古の5シリーズ(BMW)には発信機でも付いてるのか?
I don't call back, just blame it on your Canadian
折り返し電話はしない、全部お前のカナダ人(Drake)のせいにしとけ
The same day we say we in the area cruisin' in Toronto
同じ日、俺たちが「今トロントをクルージングしてる」って言った時
Hit me on the cellular, thought he was gonna sell me a false word like the rappers I know
携帯に彼(Drake)から連絡が来た。俺が知ってる他のラッパーみたいに、どうせ嘘八百を並べるんだろうと思ってたんだ
Sat down with a few drinks, located where you can't see us
数杯の酒と共に席に座った、誰の目にもつかない隠れ家のような場所でな
A white waitress on standby when we need her
白人のウェイトレスが、俺たちが呼べばすぐ来るようにスタンバイしてる
A black Maybach, 40 pulled up Jeep
黒のマイバッハ。40(Noah "40" Shebib)はジープで乗り付けてきた
No doors, all that nigga was missin' was Aaliyah
ドアのないジープだ。あいつに足りないのはアリーヤ(Aaliyah)だけだったな
※Drakeの右腕であるプロデューサーの40が、ドアを外した無骨なジープで現れた情景。亡きR&BシンガーAaliyahのMV(「Back In One Piece」など)を彷彿とさせるスタイルであり、OVO陣営のアリーヤへの異常な傾倒を暗示するシニカルな観察。
Felt like the initiation, a reality livin' in the matrix
まるで入団儀式みたいだった、マトリックスの中で現実を生きているような
We talk casually about the industry
俺たちは業界についてカジュアルに話した
And how the women be the tastemakers for the shit we makin'
そして、俺たちが作る音楽のテイストメイカー(流行の決定者)は女たちだってことについてもな
※Drakeの音楽がいかに女性ファン層をターゲットに最適化されているかという戦略を、Kendrickが冷徹に分析しているライン。
Then he said that he was the same age as
それから彼は言った、俺と同じ歳なんだと
Myself, and it didn't help 'cause it made me even more rude and impatient
俺自身とな。だがその事実は何の助けにもならず、俺をさらに無礼で短気(焦燥感に駆られる状態)にさせた
※Drake(1986年生)とKendrick(1987年生)は同世代。すでに頂点に君臨するDrakeを前に、強烈な対抗心と焦りを感じたことを赤裸々に告白している。
So blame it on Mr. OVOXO
だから、ミスターOVOXOのせいにしとけ
※当時のDrakeとそのクルー(The Weekndを含む)を象徴するブランド名。
The reason why I'm breathin' all the vanity I know
俺が知る限りのすべての虚栄心(バニティ)を呼吸している理由を
The reason why my best friend say she love me more than life
親友(地元の恋人)が「命以上に愛してる」と言ってくれるのに
But I live a double life and need to let her go
俺が二重生活を送っていて、彼女を手放さなきゃならない理由を
※名声の世界に染まり、故郷の純粋な愛を失っていくSad Boy的な葛藤。それをDrakeの世界観に当てはめて表現している。
The reason why the highlight was when he said
そして、あの日一番のハイライトが、彼がこう言った時だった理由を
You belong to the people when you outside
「一歩外に出れば、お前はもう大衆(人々)のものなんだ」
※DrakeからKendrickへの重い忠告。スーパースターになればプライバシーは消滅し、世間の消費物になるという残酷な真理。
So dig a shovel full of money, full of power, full of pussy
だから、シャベルで掘れ。金と、権力と、女と
Full of fame and bury yourself alive, then I died
名声でいっぱいの穴を。そして自分を生き埋めにしろ。そうして、俺は死んだのさ
※圧倒的な成功がもたらすプレッシャーと快楽の波に呑まれ、「一人の人間としての自分」が死ぬ(生き埋めにされる)という鮮烈なエンディング。後の両者の確執を知る現代のヘッズからすれば、KendrickがDrakeの生きる「ポップスターの虚栄の世界」に決して魂を売らないと決意した瞬間(あるいはその死の恐怖を仮想体験した瞬間)とも解釈できる、ヒップホップ史に残る恐ろしいバースである。
