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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

I Gotta Quit - Ella Langley 【和訳・解説】

Artist: Ella Langley

Album: Dandelion

Song Title: I Gotta Quit

概要

本楽曲は、Ella Langleyのアルバム『Dandelion』に収録された、別れた恋人への執着を断ち切れないフラストレーションを、軽快かつユーモラスなサザン・ロックのビートに乗せて歌い上げた失恋ソングである。カントリー・ミュージックにおいて失恋は悲哀たっぷりに歌われることが多いが、本作では「パンティーがよじれる(イライラする)」といった南部特有の俗語や、「ローラースケートを履いた水牛」といったシュールな比喩を連発し、自身の滑稽なまでの未練を自嘲気味に描いている。ラングラーのジーンズを履いたテネシー出身の金髪の男という、典型的なカントリー・ボーイの幻影に悩まされる姿は、聴く者に共感と笑いを誘う。未練を断ち切りたい(I gotta quit)と叫びながらも、記憶の呪縛から逃れられない人間の可笑しみと愛らしさを、アラバマ出身の彼女らしい泥臭くもパワフルなストーリーテリングで見事に表現した一曲だ。

和訳

[Verse 1]

When I'm walking down the road, when I'm staring at the sky
道を歩いている時も、空を見つめている時も

When I'm gettin' too low and I'm gettin' too high
ひどく落ち込んでいる時も、ハイになりすぎている時も

If my days goin' good and my days goin' bad
調子がいい日も、最悪な日も

If I'm mad at the world or I'm mad at my dad
世界に腹を立てている時も、親父にムカついている時も
※「mad at my dad(父親に腹を立てる)」。カントリー音楽における「父親」は絶対的な権威や家族の絆の象徴だが、ここではごくありふれた日常の苛立ちの引き合いに出されている。どんなに身近で些細な感情の起伏の中にも、元恋人の記憶が侵入してくることの表現である。

When I'm all pissed off and my panties in a wod
ブチギレて、ひどくイライラしてる時だって
※「have one's panties in a wad(パンティーが丸まって食い込む)」は、「些細なことでイライラする、怒りっぽい」を意味するアメリカ南部の口語表現。女性ボーカルのカントリーソング特有の、気取らない泥臭いユーモアが光るフレーズだ。

And I can't find the words, just "Oh my God"
言葉も見つからなくて、ただ「オー・マイ・ゴッド」って呟くしかない時も

Hate to say it that loud, wish it wasn't true
大声でこんなこと言いたくないし、嘘だったらいいのにって思うけど

Damn it, I gotta quit thinkin' bout you
クソッ、あんたのこと考えるのを、もうやめにしなきゃ

[Chorus]

Everywhere I go, everything I see
どこへ行っても、何を見ても

Even in my dreams, it’s haunting me
夢の中でさえ、あんたの記憶が私に憑りついてくる
※「haunting(幽霊が出没する、つきまとう)」という単語は、南部ゴシックの文学的伝統においてもよく使われる表現。別れた恋人の記憶が、まるでポルターガイストのように彼女の日常を呪縛している状態を示唆している。

Tell me what I gotta say, tell me what I gotta do
ねえ、何を言えばいいの、どうすればいいか教えてよ

'Cause damn it, I gotta quit thinking about you
だってクソッ、あんたのこと考えるのを、もうやめにしなきゃいけないんだから

[Verse 2]

If I'm heading to the beach, if I'm heading to the lake
ビーチに向かってる時も、湖に向かってる時も

If I'm on a buffalo in a rollerskate
ローラースケートを履いた水牛に乗ってる時でさえね
※「buffalo in a rollerskate」は、カントリーの伝説的シンガーRoger Millerの1965年のヒット曲「You Can't Roller Skate in a Buffalo Herd(水牛の群れの中でローラースケートは滑れない=不可能なことの例え)」へのオマージュである可能性が高い。どんなにあり得ない、シュールで無茶苦茶なシチュエーションに身を置いたとしても、彼のことが頭から離れないというユーモア溢れる誇張表現だ。

If I'm ridin' down the road in a red corvette
真っ赤なコルベットに乗って、道路をすっ飛ばしてる時も
※「red corvette」はPrinceの名曲「Little Red Corvette」などを連想させる、自由やスピード、新しい刺激的な恋愛の象徴。そんなスリリングな瞬間でさえ、過去の男の記憶に引き戻されてしまう。

I can smell a cigar or a cigarette
葉巻やタバコの匂いがするのさ

And a random pair of wranglеr jeans
それに、その辺を歩いてる見ず知らずの男のラングラー・ジーンズに
※「Wrangler jeans」はカウボーイや南部の男たちの公式ユニフォームとも言えるアイテム。カントリーソングにおける記号的な「忘れられない男のシルエット」であり、街中のありふれたファッションを見るだけで発作的に記憶が蘇る様子を描いている。

Every blonde hairеd, blue eyed from Tennessee
テネシー出身の、金髪碧眼の男を見るたびにね
※「Tennessee」出身の男。ナッシュビルに代表されるカントリー・ミュージックの聖地から来た、典型的なハンサムなカントリー・ボーイのステレオタイプ。彼女がどのような男に心を奪われ、未練を引きずっているのかが視覚的に明示されている。

Got me comin' undone, got a few screws loose
頭がおかしくなりそうだし、ネジが数本ぶっ飛んじまったみたいだ

Damn it, I gotta quit thinkin' bout you
クソッ、あんたのこと考えるのを、もうやめにしなきゃ

[Chorus]

Everywhere I go, everything I see
どこへ行っても、何を見ても

Even in my dreams, it’s haunting me
夢の中でさえ、あんたの記憶が私に憑りついてくる

Tell me what I gotta say, tell me what I gotta do
ねえ、何を言えばいいの、どうすればいいか教えてよ

'Cause damn it, I gotta quit thinking about you
だってクソッ、あんたのこと考えるのを、もうやめにしなきゃいけないんだから

[Bridge]

Quit thinkin' 'bout your eyes
あんたの瞳のことを考えるのはやめだ

Quit thinkin' 'bout your arms
あんたの腕のことを考えるのもやめだ

Quit thinkin' 'bout the mine on your grandpa's farm
あんたのじいちゃんの農場にあった、あの鉱山(思い出)のこともね
※「grandpa's farm(祖父の農場)」。アメリカ南部の恋愛において、相手の実家や祖父母の広大な土地で過ごす時間は、最も親密でノスタルジックな記憶として刻まれる。都会の恋愛とは違う、土着的な思い出の強固さを表している。

All the sweet nothings whisper in my ear
私の耳元で囁かれた、あの甘い戯言の全てもさ

Oh, how I wish your memory would disappear
あぁ、あんたの記憶なんて、消えてなくなればいいのに

Scram, get it
しっ、あっちへ行け

Get out of here now!
今すぐ私の頭から出て行け!
※「Scram(とっとと失せろ、あっちへ行け)」という野良犬や厄介者を追い払うような粗野な言葉遣い。自身に取り憑く元恋人の幻影(記憶)に対して、物理的に怒鳴り散らしているようなコミカルかつ切実な叫びである。

[Chorus]

Everywhere I go, everything I see
どこへ行っても、何を見ても

Even in my dreams, it’s haunting me
夢の中でさえ、あんたの記憶が私に憑りついてくる

Tell me what I gotta say, tell me what I gotta do
ねえ、何を言えばいいの、どうすればいいか教えてよ

Damn it, I gotta quit thinking about you
クソッ、あんたのこと考えるのを、もうやめにしなきゃ

[Outro]

Oh Lord, maybe I'll quit thinkin' about you baby
あぁ神様、たぶんそのうち、あんたのことを考えるのもやめられるよね、ベイビー
※「I gotta quit(やめなきゃ)」というこれまでの強い決意から一転し、「maybe I'll quit(たぶんやめられるだろう)」と急激に弱気になり、しかも最後には「baby」と愛称で呼んでしまっている見事なオチ。結局のところ、まだまだ彼への未練から抜け出せないという人間臭い結末が、カントリー特有のユーモアで締めくくられている。