Artist: JID
Album: The Never Story
Song Title: LAUDER
概要
本作「LAUDER」は、JIDのデビューアルバム『The Never Story』を締めくくる、圧倒的なリリシズムとエモーショナルな熱量が爆発するクローザー・トラックだ。J. Coleの「Procrastination (Broke)」でも知られるMac Millerプロデュース(Larry Fisherman名義)による不穏でソウルフルなビートに乗せ、JIDはアトランタという南部(South)出身のラッパーに対する「リリシストが存在しない(トラップばかりで中身がない)」という業界の偏見を、自らの超絶的なスキル(神話級のフロウ)で粉砕する。曲名は、彼が幼少期に死別した親友「Lauder」に捧げられており、ハングリーだった下積み時代、投獄された兄との関係、そして黒人コミュニティのエンパワーメントへの使命感が、限界まで張り詰めた声色で吐き出される。JIDという不世出の天才が、自己のトラウマを燃料にしてラップゲームの頂点へと駆け上がる覚悟を刻み込んだ記念碑的な一曲である。
和訳
[Chorus]
Yeah, okay, I told motherfuckers I was sick as a bitch (Yeah)
あぁ、オーケー。俺は連中に「俺は最高にヤバい(病気レベルだ)」って言い続けてきたんだ(Yeah)
※「sick」は病気と、ラップのスキルが異常に高いことのダブルミーニング。「sick as a bitch(ビッチのように病気)」は強烈な自己肯定の枕詞。
The dopest dope you smoke, gon' get you a whiff
お前らが吸う極上のウィード(ドープ)だ、一嗅ぎさせてやるよ
※自分のラップを最高品質の麻薬に例え、少し聴いた(嗅いだ)だけで中毒になると豪語している。
Watch how these niggas flip the script with the flick of they wrist
よく見とけ、連中が手首をスナップさせるだけで、どうやって台本をひっくり返す(状況をひっくり返す)かをな
※「flick of the wrist」はストリートでドラッグ(クラック)を調理する際の手首の動き、あるいは大金を数える仕草。同時に、ペンを握る手首の動き(リリックを書くこと)で自分たちの人生(script)を劇的に変えてみせるという決意。
Southern lyricists don't exist like my flow is a myth (Damn)
「南部のリリシストなんて存在しない」だって? 俺のフロウが都市伝説(神話)であるかのようにな(クソッ)
※本作の核となるパンチライン。ヒップホップ界における「南部(アトランタなど)のラッパーはトラップのノリだけでリリシズム(詩的な深み)がない」という偏見に対する強烈なアンチテーゼ。「俺のような超絶技巧の南部ラッパーは、奴らにとっては神話レベルのあり得ない存在なんだろうな」という皮肉。
[Verse 1]
Get my girl angry and pissed and give that pussy a kiss (Damn)
俺の女を怒らせてイラつかせた後、あそこにキスしてやるんだ(クソッ)
※激しい喧嘩とメイクアップ・セックス。ハングリーな状況下の荒々しい愛情表現。
Pushing the same piece of shit until I get me a Bentley
ベントレーを手に入れるまでは、同じこのポンコツ(ポンティアック)を走らせ続けるぜ
※前曲「Hoodbooger」でも言及された愛車(G6)を乗り回す底辺の現状と、高級車(Bentley)への野心。
Same niggas, same goals, same dreams and epiphanies (Damn)
いつものダチ、同じ目標、同じ夢とひらめき(エピファニー)を共有してな(クソッ)
※Spillage Villageの仲間たちとの固い絆。
Me and my niggas are same lines as symmetry, wasn't empathy (Damn)
俺とダチはシンメトリー(左右対称)みたいに同じ境界線にいる、そこに同情(エンパシー)なんてなかった(クソッ)
※同じゲットーの環境で育ち、完全に同化している仲間。綺麗事の同情ではなく、痛みを完全に共有している。
Remember we would front yard brawl with big Timothy? (Damn)
前庭でビッグ・ティモシーと大喧嘩したのを覚えてるか?(クソッ)
※フッドでの幼少期のリアルな思い出話。
Kicked them doors because we had a lot of energy (Damn)
あり余るエネルギーの発散で、あちこちのドアを蹴り破ってたよな(クソッ)
※貧困と退屈の中で、暴力や非行に走るしかなかった若き日の衝動。
My brother was locked up for shooting at the enemy (Damn)
俺の兄貴は、敵を撃った罪でブチ込まれちまった(クソッ)
※「General」でも言及された兄の投獄。フッドの過酷な現実がJIDの人生に影を落とす。
Caught one nigga then caught fifteen (Damn)
一人ブチ殺して、15年(の刑期)を食らったんだ(クソッ)
※「caught one(一人殺る)」と「caught fifteen(15年の刑期を受ける)」の生々しい対比。
I ain't meet that nigga 'til I was fifteen (Damn)
俺が15歳になるまで、あの兄貴に会うことはなかったんだぜ(クソッ)
※幼い頃に兄が投獄されたため、物心ついてから思春期(15歳)になるまで、実の兄の顔すら知らなかったという壮絶な告白。
Now I'm kicking 16's with a big screen in attempt to get the big cream (Damn)
そして今、俺はビッグスクリーン(映画館・大舞台)の前の16小節(16's)を蹴り上げてる、大金(ビッグ・クリーム)を掴み取るためにな(クソッ)
※前行の「fifteen(15年・15歳)」から「16's(ラップの16小節)」へと数字をステップアップさせる高度なライミング。兄の服役期間を超え、自分はラップ(16小節)で大成功を収めるという鮮やかなコントラスト。
Little guy with a big dream, I need guidance (Damn)
デカい夢を持ったちっぽけな男、俺には導き(ガイダンス)が必要だ(クソッ)
※圧倒的な才能を持ちながらも、正しい道筋を教えてくれる大人がいなかったゲットーの若者の孤独。
'Cause if I'on succeed, I probably proceed violence (Damn)
だって、もし俺が成功しなかったら、たぶん暴力(ストリート)の道に進むしかなかったからな(クソッ)
※ラップが唯一の救命胴衣であり、それがなければ兄と同じ運命(犯罪者)を辿っていたという冷酷な自己分析。
Sippin' on the brown, no Bobby, I don't fuck with nobody
ブラウン(酒)をすすってる、ボビー(・ブラウン)じゃねぇぞ、俺は誰ともつるまねぇ
※「brown」はヘネシーなどの茶色い酒。R&Bシンガーの「ボビー・ブラウン」と掛けている。孤高のスタンス。
No team and no posse, you can catch it like Shockey (Damn)
チームも軍団(ポッセ)も必要ねぇ、お前は(俺の弾を)ショッキーみたいにキャッチするハメになるぜ(クソッ)
※NFLの伝説的タイトエンド、ジェレミー・ショッキー(Jeremy Shockey)の引用。彼はパスキャッチの名手であった。俺の言葉(あるいは弾丸)を確実に食らわせてやるというフレックス。
King of all kings, praise Haile Selassie (Damn)
王の中の王、ハイレ・セラシエを讃えよ(クソッ)
※エチオピアの元皇帝であり、ラスタファリ運動において神(ジャー)の化身と崇められるハイレ・セラシエ1世への言及。自身の神格化。
Rastafari, I don't need nobody, the God's got me (Damn)
ラスタファリ、俺には誰も必要ねぇ、神(ゴッド)が俺についてるんだ(クソッ)
※人間(業界や仲間)の助けなどなくても、神の加護と自身の才能だけで頂点に立つという絶対的な自信。
[Chorus]
Okay, I told motherfuckers I was sick as a bitch (Damn)
オーケー。俺は連中に「俺は最高にヤバい」って言い続けてきたんだ(クソッ)
※(※注釈:フックの反復。怒涛のバースの後で、この宣言がより一層の説得力を持つ。)
The dopest dope you smoke, gon' get you a whiff
お前らが吸う極上のウィードだ、一嗅ぎさせてやるよ
Watch how these niggas flip the script with the flick of they wrist
よく見とけ、連中が手首をスナップさせるだけで、どうやって台本をひっくり返すかをな
Southern lyricists don't exist like my flow is a myth (Damn)
「南部のリリシストなんて存在しない」だって? 俺のフロウが都市伝説であるかのようにな(クソッ)
[Interlude]
You ain't used to hustle, bro
お前はハッスル(過酷な労働)に慣れちゃいねぇんだよ、兄弟
※スキット。ストリートの仲間との会話。
Yeah, get that shit how you live
あぁ、自分の生き様でそいつを勝ち取るんだ
We on a trade for a trade
俺たちは等価交換(トレード・フォー・トレード)で生きてる
I do this for you, I do this for you, you know what I mean?
俺はお前のためにこれをやる、お前のためにこれをやるんだ、意味わかるか?
I took the risk, you took the risk, I ain't disrespect it
俺もリスクを背負ったし、お前もリスクを背負った、俺はそれをディスレスペクトしねぇよ
※互いに命を懸けてストリートをサバイブしてきた仲間への敬意。
[Verse 2]
So part of the reason I be so hard on my people
だから、俺が同胞たちにこれほど厳しく当たる理由の一つは
※スキットを受けて、JIDがなぜフッドの連中や黒人コミュニティに厳しいメッセージを投げかけるのかを説明し始める。
We never had it easy, never had a pot to pee in
俺たちの人生は決して楽じゃなかったし、小便をする壺(財産)すら持っていなかったからさ
※「not have a pot to piss in」は極貧状態を指すイディオム。どん底を知っているからこそ、甘えを許さない。
I be on my knees praying till my onomatopoeia's packing a coliseum
俺は膝をついて祈り続けるぜ、俺の擬音語(オノマトペ)がコロシアムを超満員にするその日までな
※「onomatopoeia」は「バン!」「ガン!」などの銃声やフロウの擬音。自分の繰り出すリズミカルなラップが、スタジアム級の観客を熱狂させる日を信じて神に祈っている。
Ain't no parking, I gotta see J.I.D
「駐車場がねぇよ、J.I.Dを見なきゃならねぇのに」ってな
※コロシアムが満員になり、ファンが車を停められずにパニックになるほどのスーパースターになる未来。
Gotta be there for my family, I gotta, can't try to be
俺は家族のためにそこにいなきゃならねぇ、「しようとする」んじゃなくて「絶対になる」んだ
※「try to be(努力する)」という甘えを捨て、「gotta be(絶対にならなければならない)」という逃げ場のない覚悟。
I could be out of my mind, thinking logically
論理的(ロジカル)に考えれば、俺は頭がおかしい(アウト・オブ・マイ・マインド)のかもしれねぇな
※この逆境からスタジアムを満員にするという目標は、常識的に考えれば狂気の沙汰である。
No apologies for speaking how I feel, I silently swore solemnly
自分の感情を口にすることに謝罪はしねぇ、俺は静かに、そして厳粛に誓ったんだ
※ヘイターに何を言われようと、自分の真実をラップで吐き出す意志。
That I would be the guy to make my black people proud of me
俺が、黒人の同胞たちに誇りに思ってもらえるような男になるってな
※彼が音楽をやる最大のモチベーションが、黒人コミュニティ全体のエンパワーメントであるという感動的なライン。
Roses to the mothers of anybody that doubted me
俺の才能を疑った奴らの「母親」にバラを贈ってやるよ
※自分を否定したヘイターたち自身ではなく、あえてその「母親」に敬意(バラ)を示すことで、相手を完全に子供扱いし、精神的な優位に立つ見事な皮肉。
Yo' chick want dick, bitch dove in the covers
お前の女はディックを欲しがって、ベッドカバーに飛び込んできたぜ
※ヘイターの女を寝取るというヒップホップの伝統的なフレックス。
Overseen my areas, surveyed over my brothers
自分のシマ(エリア)を監視し、俺の兄弟たちを見守ってきた
※成功してもフッドと仲間を守る「General(将軍)」としての責任感。
You touch them, you kill me, you can't get close to none of us
あいつらに指一本触れてみろ、俺を殺す気で来い、俺たちには誰一人近づかせねぇよ
※仲間を守るためなら自分の命も投げ出すという固い結束。
They still double-dribble, we going for triple-doubles
あいつらはいまだにダブルドリブル(反則)をしてるが、俺たちはトリプルダブルを狙いに行く
※バスケのメタファー。「ダブルドリブル」は初歩的なミスや反則。「トリプルダブル」は得点・リバウンド・アシストなどで3つの二桁を記録する大活躍。他のラッパーとの圧倒的なレベルの差。
Triple up on your investment fuckin' with us
俺たちに投資すれば、3倍にして返してやるぜ
※Dreamvilleや出資者に対する、自分の才能が絶対に利益を生むというビジネスライクな自信。
Probably have to rock that vest shit, you fuckin' with us
俺たちに喧嘩を売るなら、防弾チョッキ(ベスト)を着込むことになるだろうな
※「fuckin' with us」を前行の「投資する」から「喧嘩を売る」という意味に反転させている。
Wait (Nah bro) Huh? (What you talkin' 'bout, homes?)
待てよ(いや兄弟)ハァ?(何言ってんだよ、ホームズ?)
※「EdEddnEddy」のイントロの音声をサンプリング。シリアスなムードを一旦リセットする。
[Chorus]
Okay, I told motherfuckers I was sick as a bitch (Damn)
オーケー。俺は連中に「俺は最高にヤバい」って言い続けてきたんだ(クソッ)
※(※注釈:フックの反復。)
The dopest dope you smoke gon' get you a whiff
お前らが吸う極上のウィードだ、一嗅ぎさせてやるよ
Watch how these niggas flip the script with the flick of they wrist
よく見とけ、連中が手首をスナップさせるだけで、どうやって台本をひっくり返すかをな
Southern lyricists don't exist like my flow is a myth (Damn)
「南部のリリシストなんて存在しない」だって? 俺のフロウが都市伝説であるかのようにな(クソッ)
[Verse 3]
Okay but fuck that shit, I gotta get it, I gotta get 'em
オーケー、でもそんなこたぁどうでもいい。俺は手に入れなきゃならねぇ、奴らを仕留めなきゃならねぇんだ
※最後の怒涛のバースへの突入。理性を投げ捨てて本能のままにラップし始める。
Tired of picking these locks, you don't respect my existence
この鍵をピッキングする(業界の扉をこじ開ける)のにはもうウンザリだ、お前らは俺の存在をリスペクトしちゃいねぇ
※正当に評価されないフラストレーション。
I used to sleep in my car, never a park or a bench
俺は自分の車の中で寝泊まりしてた、公園やベンチじゃないだけマシだったがな
※ホームレス同然の車上生活時代(The Never Storyの原点)。
But damn a nigga was broke, damnit if I didn't get it
でもクソッ、俺は完全に文無し(ブローク)だったんだ、これで成功しなきゃマジで終わってた
※背水の陣の告白。
Them niggas was thinking that it was just a wrap for the kid
連中は、このガキ(俺)の人生はもう終わり(ラップ)だと思ってたんだろうな
※周囲からの見下し。
One day they gon' hit my phone, hit the show, scream, clap for the kid
だがいつか、奴らは俺の電話を鳴らし、ショーにやって来て、俺のために叫び、拍手(クラップ)するようになるのさ
※どん底からの逆転のヴィジョン。
Let's get it poppin', they're pulling pistols on Apostle Paul
さぁ派手にやろうぜ、連中は使徒パウロにピストルを向けてきやがる
※「Apostle Paul(使徒パウロ)」は新約聖書においてキリスト教を迫害から守り広めた重要人物。神聖な使命(ラップによる人々の救済)を持った自分に対し、無知な連中が銃(批判)を向けてくるという宗教的なメタファー。
So pay the piper or meet the sniper, legend of the fall
だから笛吹き(パイパー)に代償を払うか、スナイパーに会う(撃ち殺される)か選べよ、秋の伝説(レジェンド・オブ・ザ・フォール)さ
※「Pay the piper」は行動のツケを払うというイディオム。「legend of the fall」はブラッド・ピット主演の映画タイトル(邦題『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』)であり、「fall(転落、秋)」という言葉で敵の破滅を予言している。
I knew in diapers you and I was nothing alike at all
おむつ(ダイパー)を穿いてた頃から、俺とお前は全く似てない(レベルが違う)ってわかってたぜ
※前行の「piper」「sniper」から「diaper(おむつ)」へと韻を繋ぐ。
I do or die, you do it to die, I'm really making calls
俺は「死に物狂い(Do or die)」でやるが、お前は「死ぬため(Do it to die)」にやってるんだ。俺はマジで指示を出してる(メイク・コールズ)んだよ
※目的意識の違い。自分は生き残るための決死の覚悟だが、フェイクな連中は自滅に向かっているだけ。俺がこのゲームの支配者(指示出し役)だという宣言。
You couldn't kill it and take it out of me, the ideology
お前らがそれを殺して、俺の中から奪い取ることはできなかったな、このイデオロギー(思想)をさ
※どれだけ苦境に立たされても、折れなかった信念。
This the Odyssey, I'm Odysseus, you gotta follow me
これは『オデュッセイア』だ、俺はオデュッセウスさ、お前らは俺について来い
※ホメロスの古代ギリシャ叙事詩『オデュッセイア』。苦難の旅を経て故郷の王座を奪還する英雄オデュッセウスに自身を重ね合わせ、リスナー(あるいは同業者)を導くという壮大なマニフェスト。
Watch how I maneuver, I influence the influencers
俺の巧みな動き(マニューバ)を見とけ、俺はインフルエンサーたちにすら影響(インフルエンス)を与えるんだ
※トレンドを追うのではなく、トレンドを作る側であるという圧倒的なカリスマ性。
The flow is like a fluent influenza going through the motion
このフロウは流暢(フルエント)なインフルエンザみたいに、動きに乗って伝染していく
※「fluent(流暢な)」「influenza(インフルエンザ)」「influence(影響)」の怒涛の言葉遊び。自身のラップがウイルスのごとく世界中に蔓延していくという病的な表現。
So I motivate all of my niggas, they tell me kill 'em with kindness
だから俺はすべてのダチをモチベートする、連中は俺に「優しさで奴らを殺せ」って言うんだ
※「Kill 'em with kindness」は親切にして敵を黙らせるというイディオム。
I'd rather kill 'em and they other significants
俺なら、奴らとそいつらの大切な連中(シグニフィカント・アザー)をまとめて殺してやるけどな
※優しさなど捨てて、敵とその身内まで物理的(あるいはリリック)に根絶やしにするという凶暴な本性への回帰。
Writing lyrics in the city with pretty booties and titties
可愛いケツと乳房(ティティーズ)が溢れる街で、リリックを書き綴る
※アトランタ(ストリップクラブ文化などで有名)の享楽的な情景。
Don't get the cooties, it ain't like the movies
クーティーズ(ばい菌)をうつされるなよ、映画みたいにはいかねぇんだ
※「cooties」は子供が言う架空のばい菌(転じて性病など)。華やかに見える世界も、現実(ストリート)は映画のように甘くはないという警告。
It kinda is 'cause they shooting, kind of shit is you moving?
まぁある意味(映画)みたいかもな、だって奴らは撃ち合ってる(シューティング)んだから。お前はどんなクソみたいな事に関わって動いてるんだ?
※映画撮影の「シューティング」と、現実の銃撃の「シューティング」を掛けたダブルミーニング。ストリートの現実はギャング映画よりも残酷である。
Shit I'm pushing empower the people, life where I grew up
俺が推進してるクソ(音楽)は、人々をエンパワー(力づける)するんだ、俺が育った場所の人生をな
※先述の「黒人コミュニティのエンパワーメント」という使命の再確認。
Someone tutored the students, these niggas stupid is as stupid does, stupid shit
誰かがこの生徒たちを指導(チューター)してやらなきゃな、こいつらは『フォレスト・ガンプ』みたいに「バカな真似をする奴がバカ」なんだよ、クソバカどもが
※「Stupid is as stupid does」は映画『フォレスト・ガンプ』の有名なセリフ。学ばない無知なラッパーたちを自分が啓蒙してやるという皮肉。
Sick as a bitch, flick of the wrist, my pen cleanse my many sins
ビッチのように病気(シック)だ、手首をスナップさせる(ペンを走らせる)のさ、俺のペンが、俺の数多くの罪を浄化(クレンズ)してくれるんだ
※犯罪や暴力に満ちた過去の罪(sins)を、ラップ(ペンで書くリリック)によって神聖に昇華しているという感動的なカタルシス。
The irony, the iron can straighten out any wrinkle in existence
皮肉(アイロニー)なもんだな、アイロン(鉄・銃)は、存在しているどんなシワ(問題)でも真っ直ぐに伸ばして(解決して)くれるんだから
※「irony(皮肉)」と「iron(アイロン・鉄・銃)」のワードプレイ。ペンで罪を浄化すると言いながらも、結局ゲットーの問題(シワ)を最も早く解決するのは「銃(iron)」の暴力であるという、ストリートの冷酷なパラドックス。
Ripple in time triple my eyes, realistically sick in the mind
時の波紋(リップル)が俺の目(視界)を3倍(トリプル)に広げる、現実的に俺の頭は病んでるんだ
※過去・現在・未来を見通す第三の目(あるいは幻覚)。天才ゆえの精神的な限界。
Sick in the head, wish I was dead
頭が病んでる、死ねばよかったのにって思うよ
※極度のプレッシャーとトラウマからくる希死念慮の吐露。
Sick on a med, -dicted, my lead
薬(メッド)で病んでる、中毒(ディクテッド)だ、俺の鉛(レッド)を
※「-dicted」は「addicted(依存症)」の略。「lead」は鉛=銃弾。ドラッグ中毒と暴力への依存。
Sick 'em, give 'em, send 'em to hell, eh
嗾(しか)けろ(シック・エム)、奴らにくれてやれ、地獄へ送ってやるんだ、エイ
※「Sick 'em」は犬に「噛みつけ!」と命じる言葉。狂気の頂点に達し、すべてを破壊して終わらせようとする絶叫。
[Outro]
Okay, okay, I told motherfuckers I was sick as a— (Damn)
オーケー、オーケー、俺は連中に「俺は最高にヤバい(病気)」だって言い続けて…(クソッ)
※(※注釈:フックを歌い直そうとするが、もはや呼吸も荒く、言葉が続かない。)
Okay, I told motherfuckers I— (Damn)
オーケー、俺は連中に…(クソッ)
※(※注釈:限界まで絞り出したエネルギーが尽き果てる。)
Bitch
ビッチ
※(※注釈:マイクを投げ捨てるような最後の吐き捨て。こうしてJIDの魂の叫び『The Never Story』は、完璧な余韻と衝撃を残して幕を閉じる。)
