Artist: Ella Langley
Album: Dandelion
Song Title: Speaking Terms
概要
本楽曲は、Ella Langleyのアルバム『Dandelion』に収録された、神への信仰と大人になることの代償を描いた内省的なバラードである。キリスト教の教えが生活の根底に根付くアメリカ南部(バイブル・ベルト)において、神との繋がりを見失うことは深刻なアイデンティティの喪失を意味する。Langleyは、純粋無垢だった幼少期の祈りと、困った時にしか神に頼らない大人の身勝手さを対比させ、神との関係を「on speaking terms(言葉を交わせる仲、絶縁していない状態)」という俗っぽい人間関係のイディオムで表現した。神聖な祈りを泥臭い日常の言葉に落とし込むことで、沈黙する神への切実な渇望と、信仰の揺らぎに対する罪悪感を極めて人間臭く描き出したアメリカーナの秀作である。
和訳
[Verse 1]
I used to kneel beside my bed at night when I was small
私がまだ小さかった頃、夜になるとベッドの傍らでひざまずいたものさ
※「kneel beside my bed(ベッドの傍らでひざまずく)」は、アメリカ南部の保守的なキリスト教家庭における典型的な子どもの就寝前の祈りの風景である。純粋無垢で疑うことを知らなかった幼少期の信仰心を象徴する描写だ。
It was easy as breathing, believing wasn't hard at all
それは息をするのと同じくらい簡単で、信じることなんて全く難しくなかった
I knew that You were there close as my next prayer
次の祈りを唱えるのと同じくらい、神様がすぐそばにいるって分かってたから
※「You(あなた)」が大文字で表記されていることから「神(God)」を指している。かつては物理的な距離感さえ感じるほど親密だった神との関係性を、南部特有の素朴な言葉遣いで表現している。
The world it'll break you down, break your heart
でもこの世界は、人を打ちのめし、心を砕き
And shake your faith but now you feel so far away
信仰心すら揺さぶってくる、そして今、あなたはひどく遠くに感じるんだ
I don't know who's to blame
誰のせいなのかは分からないけど
I don't talk to You as much, maybe that's part of growing up
前ほどあなたに話しかけなくなった、たぶんそれも大人になるってことの一部なんだろうね
※信仰の喪失や神との距離を「growing up(大人になること)」の避けられない代償として受け入れようとする、諦観に満ちたライン。カントリー音楽において、純真な信仰心と過酷な世俗的現実との葛藤は極めて重要なテーマである。
[Chorus]
I carry on this one way conversation
私はこの一方通行の会話を続けてる
※「one way conversation(一方通行の会話)」。かつては対話として成立していたはずの「祈り」が、大人になった今では神の沈黙に対する虚しい独り言のように感じられているという残酷な現実の描写。
I'm listening but You don't say a word
耳を澄ませているのに、あなたは一言も発してくれない
If your answer's in the silence, I'll be patient
もしその沈黙の中にあなたの答えがあるのなら、私はじっと耐えて待つよ
But it's hard to know my prayers are being heard
でも、自分の祈りが本当に届いているのかどうか、それを知るのは難しいんだ
I'm waiting on a whisper, just something to confirm that
ほんの小さな囁きでいいから待ってるんだ、確信を持たせてくれる何かを
You and me are still on speaking terms
あなたと私が、今でも「言葉を交わせる関係(口をきく仲)」であるってことをね
※「on speaking terms」は通常、喧嘩した恋人や疎遠になった友人同士が「まだ口をきく関係にある(完全に縁が切れてはいない)」ことを示すイディオム。神に対する畏れ多い祈りではなく、泥臭い人間関係の延長線上の言葉で神との繋がりを確認しようとする、Ella Langleyのソングライターとしての卓越したセンスが光るタイトル・フレーズである。
[Verse 2]
I mostly come around now when things aren't working out
今じゃ私が顔を出すのは、たいてい物事が上手くいかない時ばっかりだ
※「come around(顔を出す、寄り付く)」。教会に行ったり祈りを捧げたりするのが、自分が困った時の「神頼み」になってしまっていることへの罪悪感の吐露。信仰を都合よく消費する現代人の利己的な姿を率直に認めている。
I show up with my questions, my stumbles, and my doubts
疑問と、つまづきと、疑念ばっかり抱えて現れるんだ
Always thinking of myself, and always asking You for help
いつだって自分のことしか考えてなくて、いつだってあなたに助けを求めてばかり
[Chorus]
So I carry on this one way conversation
だから、私はこの一方通行の会話を続けてる
I'm listening but You don't say a word
耳を澄ませているのに、あなたは一言も発してくれない
If your answer's in the silence, I'll be patient
もしその沈黙の中にあなたの答えがあるのなら、私はじっと耐えて待つよ
But it's hard to know my prayers are being heard
でも、自分の祈りが本当に届いているのかどうか、それを知るのは難しいんだ
I'm waiting on a whisper, just something to confirm that
ほんの小さな囁きでいいから待ってるんだ、確信を持たせてくれる何かを
You and me are still on speaking terms
あなたと私が、今でも言葉を交わせる関係であるってことをね
[Bridge]
Even though I know You're more than I deserve
あなたが私にはもったいないくらい、分不相応な存在だってことは分かってるけど
※「more than I deserve(私に値する以上)」。プロテスタントにおける「神の恵み(Grace)」の概念、すなわち人間の罪深さに対して神の愛は無条件であり、人間には到底値しないものであるという神学的な理解がベースにある。
I want to get back to how we were
あの頃の、昔の私たちの関係に戻りたいんだ
※「how we were(私たちがどうであったか)」。世俗の垢にまみれる前の、かつての子どもの頃の無垢な信仰心への切実な回帰願望。
[Chorus]
So I carry on this one way conversation
だから、私はこの一方通行の会話を続けてる
I'm listening but You don't say a word
耳を澄ませているのに、あなたは一言も発してくれない
If your answer's in the silence, I'll be patient
もしその沈黙の中にあなたの答えがあるのなら、私はじっと耐えて待つよ
But it's hard to know my prayers are being heard
でも、自分の祈りが本当に届いているのかどうか、それを知るのは難しいんだ
I'm waiting on a whisper, just something to confirm that
ほんの小さな囁きでいいから待ってるんだ、確信を持たせてくれる何かを
You and me are still on speaking terms
あなたと私が、今でも言葉を交わせる関係であるってことをね
Yeah, that You and me are still on speaking terms
あぁ、あなたと私が、今でも言葉を交わせる関係であるってことを
