Artist: Ella Langley
Album: Dandelion
Song Title: It Wasn’t God Who Made Honky Tonk Angels
概要
本楽曲は、カントリー・ミュージックの歴史において極めて重要なマイルストーンであるKitty Wellsの1952年の大ヒット曲のカバーである。原曲は、Hank Thompsonの「The Wild Side of Life」(女性が愛を捨ててホンキートンクの享楽に走ったと非難する歌)に対する強烈な「アンサーソング」として書かれた。既婚男性の不誠実さこそが「善良な女性(Good girl)」を「堕落した天使(Honky Tonk Angel)」に変えるのだと男尊女卑的なダブルスタンダードを痛烈に批判したこの曲は、女性ソロアーティストとして初のビルボード・カントリーチャート1位を獲得したフェミニズムの記念碑的作品である。Ella Langleyが自身のアルバム『Dandelion』にこの曲を収録した意図は、単なる懐古趣味ではない。現代のサウスにおいて「ワイルドな側」を生きるタフな自立した女性としての彼女のアイデンティティが、カントリー音楽における偉大な家母長(ルーツ)たちの闘争の歴史に直接連なっていることを宣言する、極めて重要なステートメントなのだ。
和訳
[Verse 1]
As I sit here tonight, the jukebox playing
今夜、ここ(酒場)に座っていると、ジュークボックスから流れてくる
A tune about the wilder side of life
人生の「ワイルドな側面」について歌ったあの曲がね
※「the wilder side of life」は、Hank Thompsonの1952年のヒット曲「The Wild Side of Life」への直接的な言及。同曲は、ホンキートンク(アメリカ南部の安酒場)の華やかな生活に惹かれて真実の愛を捨てた女性を被害者面で非難する内容だった。ここから歴史的なアンサーソングの幕が開ける。
And as I listen to the words that you are saying
そして、あんたが歌うその歌詞に耳を傾けていると
Brings memories of when I was a trusting wife
私がまだ、夫を信じきっていた純情な妻だった頃の記憶が蘇ってくるのさ
※ここで語り手は、自分が元から「ホンキートンクをうろつく女」だったわけではなく、かつては家庭を信じる「trusting wife(貞淑な妻)」であったことを明かす。女性が「堕落」したとされる結果の裏には、語られざるプロセスが存在することを提示している。
[Chorus]
It wasn't God who made honky tonk angels
「ホンキートンク・エンジェル」を創ったのは、神様なんかじゃない
※「honky tonk angels」は、酒場に入り浸る女性、あるいはそこで男性の相手をする女性(暗に娼婦や浮気相手を指すこともある)の婉曲表現。そういった「堕落した女」が存在するのは神の創造(生まれつきの性質)ではなく、社会や人間の所業であるという強烈なパンチライン。
Like you said in the words of your song
あんたがあの歌の中で言っていたようにはね
Too many times married men think they're still single
世の既婚男たちは、自分をまだ独身だと勘違いしすぎなのさ
※本楽曲の核心を突くテーゼ。1950年代のアメリカ南部において、既婚男性が夜な夜なバーで飲み歩き、独身のように振る舞うことは半ば黙認されていたが、女性が同じことをすれば社会的に抹殺された。この強固な家父長制の欺瞞を、カントリー音楽のフォーマットを使って真正面から撃ち抜いている。
That has cause many a good girl to go wrong
そのせいで、どれだけ多くの善良な女たちが道を踏み外したことか
※「go wrong(道を踏み外す)」。男たちの身勝手な誘惑や裏切りこそが、家庭的だった女性たちを傷つけ、酒場へと追いやる元凶であるという因果関係の逆転。
[Verse 2]
It's a shame that all the blame is on us women (Haha)
全ての責任が私たち女に押し付けられるなんて、ホント笑えちゃうわよね(ハハッ)
※「(Haha)」という乾いた笑い声は、Ella Langleyのバージョンにおける現代的なアウトロー・アティテュードを象徴している。Kitty Wellsの時代の静かなる怒りを、現代の自立した南部女性の「皮肉と呆れ」へと見事にアップデートしている。
It's not true that only you men feel the same
男のあんたたちだけが被害者ヅラしてるなんて、そんなの嘘っぱちさ
From the start, most every heart that's ever broken
最初から、胸を打ち砕かれた女たちのほとんどは
Was because there always was a man to blame
いつだって責任を問われるべき「男」のせいだったんだから
※カントリー音楽における定番の「失恋して酒を飲む可哀想なカウボーイ」というロマンチックな悲恋のトロープを解体するフレーズ。女性の心が壊れる背景には、常にそれを引き起こした加害者たる男性が存在することを突きつけている。
[Chorus]
It wasn't God who made honky tonk angels
「ホンキートンク・エンジェル」を創ったのは、神様なんかじゃない
Like you said in the words of your song
あんたがあの歌の中で言っていたようにはね
Too many times married men think they're still single
世の既婚男たちは、自分をまだ独身だと勘違いしすぎなのさ
That has cause many a good girl to go wrong (All right now)
そのせいで、どれだけ多くの善良な女たちが道を踏み外したことか(さあ、いくよ)
[Instrumental Break] [Chorus]
It wasn't God who made honky tonk angels
「ホンキートンク・エンジェル」を創ったのは、神様なんかじゃない
Like you said in the words of your song
あんたがあの歌の中で言っていたようにはね
Too many times married men think they're still single
世の既婚男たちは、自分をまだ独身だと勘違いしすぎなのさ
That has cause many a good girl to go wrong
そのせいで、どれだけ多くの善良な女たちが道を踏み外したことか
Yeah, that has cause many a good girl to go wrong
あぁ、男のせいで、どれだけ多くの善良な女たちが道を踏み外したことか
