Artist: Eminem (feat. Bizarre)
Album: The Marshall Mathers LP
Song Title: Amityville
概要
ヒップホップ史に残る名盤『The Marshall Mathers LP』に収録された、エミネムとD12の盟友ビザール(Bizarre)によるホラーコア・ラップの真骨頂。タイトルは、1974年に一家惨殺事件が起き、後に有名なオカルト映画の題材となった「アミティヴィルの恐怖(The Amityville Horror)」から取られている。エミネムは自身の故郷であり、当時全米最悪の殺人発生率を記録していたデトロイトのストリートを、この呪われた館(アミティヴィル)に見立てて描写。ドラッグと狂気に蝕まれた精神状態をカートゥーン的な暴力で表現するエミネムと、近親相姦やネクロフィリアといった倫理の底を抜く不謹慎なラインを無表情で放つビザールの二人が、Dr. Dreの手がける不気味で重厚なベースラインの上で最凶のケミストリーを見せつける。ヒップホップにおける「ショック・バリュー」の限界に挑んだ、極めてダークで病的な名曲だ。
和訳
[Intro: Eminem]
(Kill, kill, kill)
(殺せ、殺せ、殺せ)
※ホラー映画の定番とも言える、不気味な囁き声によるサブリミナル的な暗示から曲がスタートする。
Da-dum, da-dum, dum
ダ・ダン、ダ・ダン、ダン
Da-dum, da-dum, da-da-da-da-da-da
ダ・ダン、ダ・ダン、ダ・ダ・ダ・ダ・ダ・ダ
※『13日の金曜日』や『ジョーズ』のテーマ曲を彷彿とさせる、不吉なリズムのハミング。スリム・シェイディの狂気の世界への案内音。
(Kill, kill, kill)
(殺せ、殺せ、殺せ)
Da-dum, da-dum, dum
ダ・ダン、ダ・ダン、ダン
Da-dum, da-dum, dum
ダ・ダン、ダ・ダン、ダン
(Get out)
(出て行け)
※映画『悪魔の棲む家(The Amityville Horror)』における象徴的な名台詞。主人公の神父が家から追い出される際に悪霊が放つ言葉であり、この曲のテーマを決定づける見事なサンプリング的演出。
[Chorus: Eminem]
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
※「アミティヴィル」はニューヨーク州の地名だが、ここではエミネムの故郷であるデトロイトの比喩として使われている。犯罪と貧困にまみれたデトロイトの環境が、彼のような「狂人(スリム・シェイディ)」を生み出したという主張。
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
※「accidentally(偶然に)」と「kill your family(家族を殺す)」という矛盾した言葉を組み合わせることで、殺意を伴わない純粋な狂気を表現している。
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
[Verse 1: Eminem]
I get lifted and spin 'til I'm half-twisted
俺はハイ(リフテッド)になって、体が半分捻じ曲がるまで回転する
※「get lifted」は大麻などでハイになること。ドラッグで意識が朦朧とし、物理的にも精神的にも歪んでいく様を描写。
Feet planted and stand with a grin full of chapped lipstick
足を踏ん張って立ち上がり、ひび割れた口紅(チャップト・リップスティック)を塗った口でニヤリと笑う
※『バットマン』のジョーカーのような、狂気に満ちた不気味なピエロ像を彷彿とさせる。
Pen full of ink, think sinful and rap sick shit
ペンにインクを満たし、罪深い(シンフル)ことを考えながら、病んだ(シックな)クソみたいなラップを吐き出す
Shrink, pencil me in for my last visit
精神科医(シュリンク)よ、俺の最後の診察の予定を書き込んどいてくれ
※「pencil me in」は「予定に入れる」の意。自分がもうすぐ完全に正気を失う(あるいは自ら命を絶つ)ことを予期しているかのようなニヒリズム。
Drink gin 'til my chin's full of splashed whiskers (Shh)
顎のヒゲがビチャビチャになるまでジンを飲みまくるんだ(シーッ)
Hash, whiskey, and ash 'til I slap bitches
ハシシ(大麻樹脂)、ウィスキー、そして灰まみれになって、ビッチどもをビンタし始めるまでな
※アルコールとドラッグに溺れ、ドメスティック・バイオレンスへと至るまでの負の連鎖。「Hash」「ash」「slap」「splashed」というA音での見事な脚韻。
Ask Bizzy, he's been here the past six years
ビジーに聞いてみな、あいつはこの過去6年間、ずっとここにいたんだからな
※「Bizzy」は客演のBizarre(ビザール)のこと。エミネムがブレイクする以前のアンダーグラウンド時代から、共にデトロイトのどん底(アミティヴィル)をサバイブしてきたD12の盟友であることを示している。
Mash with me again and imagine this
また俺と一緒に暴れ(マッシュ)回って、この光景を想像してみな
[Chorus: Eminem]
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
[Verse 2: Bizarre & Eminem]
Fucked my cousin in his asshole, slit my mother's throat (Ah; hehe)
俺のいとこのケツの穴を犯し、母親の喉を切り裂いてやった(アァ、ヘヘッ)
※Bizarre(ビザール)のヴァース。D12のメンバーの中でも群を抜いてグロテスクで反道徳的なリリックを書く彼らしく、近親相姦と同性愛嫌悪、尊属殺人をたった1行に詰め込むという異常なオープニング。
Guess who Slim Shady just signed to Interscope
スリム・シェイディがインタースコープ(レコード会社)と契約させたのが誰か、当ててみな
※エミネムのブレイクにより、Bizarreを含むD12のメンバー全員がメジャーレーベルと契約できたことへの言及。こんなイカれた男をメジャーデビューさせたことに対する世間への挑発。
My little sister's birthday, she'll remember me
妹の誕生日だ、あいつはきっと俺のことを忘れないだろうよ
For a gift I had ten of my boys take her virginity
だってプレゼントとして、俺のダチ10人に彼女の処女を奪わせたんだからな
※Reddit等でも「ヒップホップ史上最も胸糞の悪いラインの一つ」として頻繁に議論される、Bizarreの真骨頂とも言える悪趣味なパンチライン。
And bitches know me as a horny-ass freak
ビッチどもは俺のことを、発情しきった変態(フリーク)として知ってるぜ
Their mother wasn't raped, I ate her pussy while she was sleep
あいつらの母親はレイプされたんじゃない。寝てる間に俺があの女のアソコを舐め回してやったのさ
Pissy-drunk, throwin' up in the urinal
ションベン臭くなるまで泥酔して、小便器の中にゲロを吐き散らしてる
(You fuckin' homo) That's what I said at my dad's funeral
(このクソオカマ野郎が)——それが、俺が親父の葬式で言ってやった言葉さ
※エミネムからの合いの手(You fuckin' homo)を受け、それを自分の父親の葬式での弔辞(暴言)として落とすという、モラルの欠片もない衝撃的なエンディング。
[Chorus: Eminem]
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
[Verse 3: Eminem]
That's why the city is filled with a bunch of fuckin' idiots still (Still)
だからこの街は、未だにクソみたいな大バカ野郎どもで溢れ返ってるのさ(未だにな)
※ここからエミネムが再びマイクを握り、故郷デトロイトのリアルな惨状を語り始める。
That's why the first motherfucker poppin' some shit, he gets killed (Killed)
だから、最初にイキがって戯言を抜かしたクソ野郎は、即座に殺されるんだよ(殺されるんだ)
That's why we don't call it Detroit, we call it Amityville (Ville)
だから俺たちはここをデトロイトとは呼ばねえ、「アミティヴィル」って呼ぶんだ(アミティヴィルにな)
※映画『悪魔の棲む家』で描かれたような、血塗られた呪われた土地としてデトロイトを再定義している。
You can get capped after just havin' a cavity filled (Ahahahaha)
歯医者で虫歯(キャビティ)を治した(フィルド)直後に、頭を撃ち抜かれる(キャップト)こともあるぜ(アハハハハ)
※「cavity filled(歯の詰め物をする)」と「capped(歯に銀歯を被せる/銃で頭を撃ち抜かれる)」の秀逸なダブルミーニング。デトロイトでは日常的に、何気ない瞬間に理不尽な死が訪れるというブラックジョーク。
That's why we're crowned the murder capital still (Still)
だから俺たちの街は、未だに「殺人の首都(マーダー・キャピタル)」の王冠を被ってんのさ(未だにな)
※デトロイトは長年、全米で最も殺人発生率が高い都市の一つとして知られている悲しい現実。
This ain't Detroit, this is motherfuckin' Hamburger Hill (Hill)
ここはデトロイトじゃねえ、クソみたいな「ハンバーガー・ヒル」なんだよ(ハンバーガー・ヒルさ)
※ベトナム戦争における最も過酷な激戦地の一つを描いた1987年の映画『Hamburger Hill』への言及。デトロイトのストリートがまるで戦場のように血肉がミンチ(ハンバーガー)になる場所であることを示している。
We don't do drive-bys, we park in front of houses and shoot (Shoo)
俺たちはドライブバイ(車で通り抜けざまの銃撃)なんてしねえ。家の前に堂々と駐車して撃ちまくるんだ(撃ちまくるんだ)
※ギャングの抗争において、デトロイトのストリートが他都市よりも遥かに凶暴で、逃げ隠れせずに正面から殺し合う無法地帯であることを誇張している。
And when the police come we fuckin' shoot it out with 'em too (Too)
で、サツ(警察)がやって来たら、連中ともクソみたいに撃ち合うのさ(撃ち合うんだよ)
That's the mentality here (Here), that's the reality here (Here)
それがここの精神状態(メンタリティ)であり、ここの現実(リアリティ)なんだ(ここじゃな)
Did I just hear somebody say they wanna challenge me here? (Huh?)
今、誰かがここで俺に挑戦したい(チャレンヂ)って言ったのが聞こえたか?(あ?)
While I'm holdin' a pistol with this many calibers here? (Here?)
俺がこれだけの口径(キャリバー)のピストルを握りしめてるってのにな?(ここで?)
※「mentality」「reality」「challenge me」「calibers」という、リズミカルで完璧な多音節韻のコンボ。
Plus a registration that just made this shit valid this year? (Year?)
おまけに、今年になってこの銃を正当化(バリッド)する許可証(レジストレーション)まで手に入れたってのにな?(今年にな)
※かつて銃の不法所持で逮捕されたエミネムが、富と名声を得たことで合法的に銃を所持できるようになった(法的にも無敵になった)という皮肉なボースト。
'Cause once I snap, I can't be held accountable for my actions
だって、一度俺がキレ(スナップ)ちまったら、自分の行動に責任なんて持てねえからな
That's when accidents happen (Happen), when a thousand bullets come at your house
その時こそ「事故(アクシデンツ)」が起きるのさ(起きるんだ)。千発の弾丸がお前の家に向かって飛んできて、
※コーラスで歌われていた「Accidentally kill your family(過って家族を殺す)」というフレーズへの伏線回収。
And collapse the foundation around you and they found you
お前の周りの建物の基礎(ファウンデーション)を崩壊させ、そして連中が瓦礫の中からお前を見つけ出す。
And your family in it (Ah), goddammit, he meant it when he told you
お前の家族も一緒に巻き込まれてな(アァ)。クソッ、あいつがお前に予告した時は、マジ(本気)だったんだってな
※ただのブラックジョークだと思っていたスリム・シェイディの狂気が、現実の暴力となって襲いかかってくる恐怖を描き出し、曲を締めくくる。
[Chorus: Eminem]
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男だ
(He'll) Accidentally kill your family still
(あいつは)過って、それでもお前の家族を皆殺しにするだろうよ
Thinkin' he won't, goddammit, he will
あいつには無理だと思ってるかもしれないが、クソッ、あいつはやりやがるぜ
(He's) Mentally ill from Amityville
(あいつは)アミティヴィルから来た、精神を病んだ男なんだ
[Outro: Eminem]
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum, ta-dum, ta-da-da
ダン、タ・ダン、タ・ダ・ダ
Dum (Wah)
ダン(ワー)
※イントロで鳴り響いていた不吉なハミングが再びリフレインし、スリム・シェイディの狂気の世界からリスナーを現実へと突き返す。
