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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

BALD! - JPEGMAFIA 【和訳・解説】

Artist: JPEGMAFIA

Album: EP!

Song Title: BALD!

概要

本作「BALD!」は、オルタナティブ・ヒップホップシーンで圧倒的なプロデュース能力と強烈な個性で異彩を放つJPEGMAFIA(愛称:Peggy)が2020年にリリースした楽曲である。タイトルの通り、自身の「後退する生え際(ハゲ)」という多くの人間にとってのコンプレックスを逆手に取り、特大のセルフボーストへと昇華させている点が最大の特徴だ。自らのスキンヘッドをNBAの伝説的シューターであるレイ・アレンになぞらえながら、業界の怠惰なプロデューサーや、搾取的な契約に縛られるメインストリームのラッパーたち、さらには歌詞サイトを鵜呑みにする音楽メディアまでを全方位的に痛烈に批判している。彼特有のノイズや不協和音を絶妙にポップに昇華したグリッチーなビート上で、ユーモアと攻撃性が同居するJPEGMAFIAの反逆的なアティチュードが極まった一曲である。

和訳

[Intro]

Yeah

Fuck that, woah, uh
クソ喰らえだ、woah, uh

[Verse 1]

Fuck that bitch, I changed the plan
あのビッチはクソ喰らえ、計画は変更したぜ

Switch my style like I switch hands
利き手を替えるように、俺のスタイルも自在に切り替える

Block the witness, take the stand
目撃者を塞ぎ、証言台に立つ

Fuck out the way bitch, back it up
そこをどきなビッチ、下がってろ

Shit better get played in a palace (Word)
この曲は宮殿で流されるのが相応しい(マジで)

I can't treat niggas like big deals
あいつらを大物みたいに扱うなんて無理な相談だね

Why put up a front? I’m callous
なんで虚勢を張るんだ? 俺は冷酷なんだよ

Bald (Ha), I look like Ray Allen (Real)
ハゲ(Ha)、俺はレイ・アレンみたいだろ(ガチで)
※NBAの歴史的3ポイントシューターであり、綺麗なスキンヘッドがトレードマークのレイ・アレンを引き合いに出し、自身の薄毛をアイコニックなステータスとしてフリップしている。

These niggas make beats on big wheels
あいつらは子供用の三輪車に乗ってビートを作ってるようなもんだ
※「big wheels」は子供が乗るプラスチック製の三輪車のこと。機材やプラグインに頼りきった他のプロデューサーのビートメイクが、おもちゃ遊びレベルの稚拙なものだと嘲笑している。

Yo' files is not a challenge (Nah)
お前の送ってくるファイルなんて脅威でもなんでもない(Nah)

Boy, you can't rap for shit
おい、お前はラップなんてちっともできねえな

Shuttlesworth blessed me with talent
シャトルズワースが俺に才能を授けてくれたんだ
※スパイク・リー監督の映画『ラスト・ゲーム(He Got Game)』でレイ・アレンが演じた天才バスケットボール選手「ジーザス・シャトルズワース」の名前を、神(Jesus)とかけた極めて高度なダブルミーニング。

Hairline proof God needs balance
生え際が後退してるのは、神様がバランスを取ろうとした証拠だ
※前述の神(Jesus)からのラインの続き。神が俺に音楽の「才能」を与えすぎたため、世界のバランスを取る代償として「髪の毛」を奪ったのだ、という究極にポジティブでユーモラスなパンチライン。

Bald
ハゲ

[Bridge]

(I'm makin' waves, bro)
(俺は波を起こしてるんだ、兄弟)
※「waves」はトレンドやムーブメントを起こすこと、または黒人特有のウェーブがかったヘアスタイルの両方を指す皮肉。

Uh, look, I'm cashin' out
Uh、見な、俺は荒稼ぎしてるぜ

Young Darby, I'm taggin' in
若きダービー、俺がリングに上がるぜ
※プロレス団体AEWに所属する若手レスラー、ダービー・アリン(Darby Allin)のこと。重度のプロレスファンであるJPEGMAFIAが、タッグマッチで勢いよくリングに飛び込む様子をシーンの最前線に躍り出る自分と重ねている。

They gon’ bring your casket out
奴らがお前の棺桶を運び出すことになる

I hope that you fit in it (Ooh)
お前のサイズにぴったり合うといいけどな(Ooh)

What you doin', babe?
何してんだ、ベイビー?

How you get caught with no Gat? (Yeah, yeah)
なんで銃も持たずに捕まってんだ?(Yeah, yeah)

You niggas must got no pride
お前らにはプライドってものが微塵もないんだろうな

Peggy gon' give you no slack, for real
ペギーは一切容赦しないぜ、マジで
※「Peggy」はJPEGMAFIA自身の愛称。

'Cause you pussy
だってお前らは臆病者だからな

[Verse 2]

Woah, woah, woah

Keep my business off the 'Gram
俺のビジネスをインスタに乗せるんじゃねえよ

Switch my style like I switch hands
利き手を替えるように、俺のスタイルも自在に切り替える

Goin' to war on foreign land
異国の地で戦争に赴く
※米軍の空軍兵としてイラクやクウェートに従軍していたJPEGMAFIA自身のリアルな経歴に基づいている。

Fuck out the way bitch, back it up
そこをどきなビッチ、下がってろ

Shit better get played in a palace
この曲は宮殿で流されるのが相応しい

Wait, uh, I can't treat niggas like big deals (Yeah)
待てよ、uh、あいつらを大物みたいに扱うなんて無理な相談だね(Yeah)

These toys don’t come with no kid's meal
このおもちゃはキッズセットには付いてこないぜ
※おもちゃ(toy)はストリートでは銃を意味する。ファストフードのオマケ(Kid's Meal)で喜んでいるような子供騙しのラッパーたちとは違い、自分の持つ武器(音楽と攻撃性)は本物で危険だという警告。

Been there, done that, done seen it
あそこにも行ったし、あれもやったし、すでに見尽くしたよ

Not my girl but I fuck her like she is (Sad)
俺の女じゃないが、彼女みたいに抱いてやるよ(Sad)

They be fucking up my lyrics on Genius
あいつらGeniusで俺の歌詞をめちゃくちゃにしやがる
※世界最大の歌詞解説サイト「Genius」で、ユーザーたちが自分の複雑な歌詞や意図を間違って書き起こし、浅い解釈をしていることへの直接的な怒り。

And these pussy ass critics repeat it
そしてクソみたいな評論家どもがそれをオウム返しにする
※自分で取材や深い考察をせず、Genius等のネットに書かれた間違った解釈をそのままコピペして記事を作る音楽メディアやレビュアーの怠慢を痛烈に批判している。

Been the same since Even Stevens
『おとぼけスティーブンス一家』の頃からずっと何も変わらねえ
※2000年代初頭のディズニー・チャンネルのコメディ番組『Even Stevens』(シャイア・ラブーフ主演)を引用し、大昔からこの業界の幼稚でクソな構造が変わっていないことを嘆いている。

Y'all niggas switch like the seasons (Facts)
お前らは季節みたいにコロコロ態度を変えやがる(Facts)

Y’all lives ain’t got no meanin' (Why)
お前らの人生には何の意味もねえよ(Why)

And them deals ain’t got no freedom
そしてお前らのレコード契約に自由なんてない
※メジャーレーベルと搾取的な契約(360度契約など)を結び、目先の金と引き換えにクリエイティブの主導権を奪われているメインストリームのラッパーたちへの冷笑。JPEGMAFIAは徹底したインディペンデント精神を持つ。

I can't just loop it and leave it
俺はただループさせて放置するなんてできないんだ
※既存の曲の4小節を適当に切り取ってループさせるだけの怠惰なビートメイカーへの批判。彼自身のプロダクションは、サンプリングソースを原形をとどめないほど複雑に切り刻み(チョップ&フリップ)、再構築することで知られる。

Gotta smack it up, rip it up, and eat it (Yeah, ha)
叩きのめして、引き裂いて、食っちまわないとな(Yeah, ha)

[Outro]

Hah!

You can't feed your kid 'cause you spent that shit on your car (You broke)
お前は車に金を溶かしたせいで、自分の子供にメシも食わせられないんだろ(お前は一文無しだ)

Tape my hands, I’m going over squares' heads like a VCR (Ha)
手にテーピングを巻け、VCRみたいにダサい奴らの頭上を飛び越えていくぜ(Ha)
※ヒップホップ屈指の天才的なワードプレイ。「Tape(テーピング/ビデオテープ)」「squares(四角い頭のつまらない奴ら/四角いビデオカセット)」「going over heads(理解の範疇を超えている/ビデオデッキのヘッド上をテープが通過する)」という3つの意味が完璧に重なっている。ボクシングの試合前に手をテーピングで巻く戦闘態勢の比喩と、自分の高度なリリシズムが凡人(Squares)には到底理解できない(Go over heads)ことを、古いVCRの構造にかけて表現している。

Bald
ハゲ