Artist: JPEGMAFIA (feat. Yung Midpack)
Album: Veteran
Song Title: Rainbow Six
概要
JPEGMAFIAの2018年のブレイクスルー・アルバム『Veteran』に収録された本作は、彼の持つ矛盾と多面性が最もカオティックに交差する実験的なトラックだ。タイトルは人気タクティカルFPSゲーム『Rainbow Six』に由来するが、同時に冒頭でサンプリングされるKevin Avianceのハウス・クラシック『Cunty』(クィア・カルチャーの象徴)が内包する「レインボー(虹)」とも暗にリンクしている。Yung Midpackによるドリル的でステレオタイプなギャングスタラップで幕を開けるが、Peggyのバースに入ると不穏なR&B調のメロディへと変貌し、さらに音楽メディアの批評家(Pitchforkなどのライター)への痛烈な批判へとスライドしていく。安全圏からアーティストを評価するメディアを「ディーラー」に見立て、自身を「キラー」と呼称する鋭い毒舌を展開する一方で、アウトロでは突如として自身のトラウマと孤独感を震える声で吐露する。マチズモ、クィア・カルチャー、ゲームオタク、メディア批判、そしてSad Boy的な脆弱性という相反する要素を一つの楽曲にパッケージした、極めて先鋭的で多層的なマスターピースである。
和訳
[Intro: Kevin Aviance and JPEGMAFIA]
Cunty, cunty, cunty, cunty
最高にイケてる、最高にイケてる、最高にイケてる、最高にイケてる
※Kevin Avianceの1996年のドラァグ/ハウス・アンセム『Cunty』からのサンプリング。ボール・カルチャー(LGBTQ+のアンダーグラウンド文化)において、「完璧で、女性的で、圧倒的に美しい・イケている」状態を称賛する究極の褒め言葉。ヒップホップ特有のホモフォビア(同性愛嫌悪)やマチズモをあえて冷笑し、攪乱するために配置されている。
Cunty, cunty, cunty, cun—
最高にイケてる、最高にイケてる、最高にイケてる、最高に…
Cunty, cunty, cunty, cunty, cun—, cun—
最高にイケてる、最高にイケてる、最高にイケてる、最高にイケてる、最高に…最高に…
Yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah
(You think you know me)
お前ら俺の何を知ってるって言うんだ
※JPEGMAFIAのシグネチャータグ。WWEのプロレスラーであるエッジの入場曲からのサンプリング。
[Chorus: Yung Midpack]
Boolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでたむろしてるぜ
※「Boolin'」はChillin'のBlood(ギャング)訛り。「C」から始まる言葉を避けて「B」に置き換える西海岸由来のスラング。
And you should know I got the straight drop
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
※「straight drop」は混ぜ物のない高品質なコカイン(クラック)のこと。
Boolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでたむろしてるぜ
And you should know I got the straight drop
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
Boolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでたむろしてるぜ
And you should know I got the straight drop
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
Boolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでたむろしてるぜ
And you should know I got the straight drop
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
[Verse 1: Yung Midpack]
Pull up on yo' block with the pistol
ピストルを持って、お前のブロックに乗り込む
Slap you up nigga, little boy, just dismiss you
お前を引っぱたいてやるよ、坊や、さっさと消えな
I don't give a fuck, right punch you, it's official
知ったこっちゃねえ、右ストレートを食らわす、これで本決まりだ
I don't give a shit, lil' nigga, you need tissue
知るかよ、チビ野郎、お前にはティッシュが必要だぜ
For your fucking face 'cause it's full of the blood
お前のその顔を拭くためにな、血まみれだからよ
Blood, bloody, bloody, bloody, bloody, bloody, blood
血、血まみれ、血まみれ、血まみれ、血まみれ、血まみれ、血だ
Smack you fuckin' up, nigga, I take a stub
お前をボコボコにして、ナイフで刺してやる
※「stub」は文脈からstab(刺す)の訛り、あるいはタバコの火を押し付ける行為などを指す。
Grab you fuckin' up, nigga, put you in the trunk
お前を捕まえて、車のトランクにぶち込んでやる
Fuck with me, nigga, I take you to the dump
俺に手を出してみろ、ゴミ捨て場に連れて行ってやるよ
Me, nigga, I—
俺が、俺は…
[Verse 2: JPEGMAFIA and 21 Savage]
What you niggas want? Huh
お前ら何が欲しいんだ? あぁ?
※ここからPeggyのバース。荒々しいMidpackのバースから一転し、不気味なほど滑らかでR&Bライクなフロウに変化する。
Got that thang in the trunk, huh
トランクにあのヤバいブツ(銃)を積んでるぜ
What you niggas need? (Yeah) Huh
お前ら何が必要なんだ?
Pills, crack, coke, weed, huh
錠剤、クラック、コカイン、ハッパか
Pressure, pressure (Lord forgive me, I'm sorry)
プレッシャー、プレッシャー(主よ、お許しください、申し訳ありません)
※背後で流れる21 Savageのサンプリング音声。殺人を犯したギャングスタの懺悔(あるいは冷酷なサイコパス的アティチュード)を借用し、楽曲の不穏さを増幅させている。
I don't wanna hit 'em with the K
K(AK-47)で奴らを撃ちたくないんだ
※「K」はアサルトライフルのカラシニコフ。
I don't wanna hit 'em with the K (Hit 'em all in the body)
Kで奴らを撃ちたくないんだ(奴らの全身を撃ち抜け)
I'ma have to go and be the bad man
俺は行って、悪党にならなきゃいけない
Baby, I'ma put him in his place
ベイビー、あいつの身の程を思い知らせてやるよ
I'ma have to do it to you, baby (I just caught another body)
お前にそうしなきゃいけないんだ、ベイビー(俺はまた一人死体を増やしちまった)
I'ma have to give him something 'mazing (Hit 'em all in the body)
あいつに何かスゴいものを食らわせてやらないとな(奴らの全身を撃ち抜け)
Tell 'em when I'm talking to my baby (Lord forgive me, I'm sorry)
俺がベイビーと話してる時に奴らに言ってやれ(主よ、お許しください、申し訳ありません)
[Chorus: JPEGMAFIA]
Coolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでくつろいでるぜ
※Midpackの「Boolin'」が、ここでは本来の「Coolin'」に戻っている。
And you know I got the straight drop (Straight drop)
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
Coolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでくつろいでるぜ
And you should know I got the straight drop (Straight drop)
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
Coolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでくつろいでるぜ
And you know I got the straight drop (Straight drop)
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
Coolin' on the block with the Glock cocked
グロックの撃鉄を起こして、ブロックでくつろいでるぜ
And you know I got the straight drop (Straight drop)
俺が純度100パーセントのヤバいブツを持ってるってことは分かってるだろ
[Verse 3: JPEGMAFIA]
Look, it's the young alt-right menace
見ろよ、若きオルタナ右翼の脅威のお出ましだ
※自身を「オルタナ右翼の脅威(または敵)」と呼称し、極右思想に対するアンチテーゼとしてのペルソナを提示。彼特有の政治的なトローリング。
What's the pistol to a pennant?
ペナント(ペン)に対して、ピストルがなんだって言うんだ?
※「pennant」を「ペン(批評家の武器)」と掛けたメタファー。「ペンは剣(銃)よりも強し」という概念に対し、音楽ライターの書く記事と、ストリートのラッパーが持つ銃のリアルな力関係を問いかけている。
Treat a writer like a cynic, nigga, huh
ライターどもをシニカルなひねくれ者として扱ってやるよ
Surface level niggas never get it
表面しか見れない奴らには絶対に理解できねえ
Fuck a rating and a cynic (Ooh)
メディアの点数評価も批評家もクソくらえだ
※Pitchforkなどに代表される、音楽メディアによる数値化されたスコア評価への拒絶。
Always talking, never livin', nigga, huh
口先ばかりで、自分の人生を生きてねえんだよ
I don't make no music for these niggas (Ooh)
俺はこんな奴らのために音楽を作ってるわけじゃねえ
Say they wanna be a critic
いっちょ前に批評家になりたいとかほざいてるが
But they cannot take no criticism, huh
奴ら自身は少しの批判にも耐えられないんだぜ
※安全圏から他人の作品を批判するライターたちが、いざ自分が攻撃されると脆いという核心を突くパンチライン。
Nigga, we the junkies, they the dealers
なぁ、俺たちアーティストがジャンキーで、メディアがディーラーなんだよ
※アーティストがメディアの「評価」という麻薬に依存し、メディアがそれを供給して権力を握っているという業界の歪んだ構造の告発。
I be rappin', they be triggered
俺がラップすれば、奴らは勝手にブチギレる
You be writin', I'm a killer, nigga what?
お前らは記事を書いてるだけだが、俺はキラーなんだよ、何だ文句あるか?
Fuck is this song? Fuck is my whip?
この曲が何だって? 俺の車が何だって?
Fuck up your streams, I got the rips
お前らのストリーミングなんてぶっ壊してやる、俺にはリッピング音源がある
※ストリーミングサービスの再生回数(商業的な指標)に依存せず、違法ダウンロードやBandcampなどのアンダーグラウンドな手法でサバイブするというインディペンデント精神。
Skinny and paid, I'm Taylor Swift
ガリガリで金持ち、俺はテイラー・スウィフトだ
※白人の頂点に立つポップスターの名前を使い、資本主義的な成功をブラックジョークとしてフレックスしている。
We at your job, catch you on shift
お前の職場に乗り込んで、シフト中のところを捕まえてやる
Nigga, you gone
お前はもう終わりだ
I don't like you (Nigga, I'm—)
お前らなんて嫌いだ
Niggas don't want it (Fuck, oh)
奴らはこんなこと望んじゃいない(クソッ)
[Bridge: 21 Savage and JPEGMAFIA]
Lord forgive me, I'm sorry (Yeah, yeah, yeah, yeah)
主よ、お許しください、申し訳ありません
Hit 'em all in the body (Yeah, yeah, yeah, yeah)
奴らの全身を撃ち抜け
Lord forgive me, I'm sorry
主よ、お許しください、申し訳ありません
I just caught another body
俺はまた一人死体を増やしちまった
Hit 'em all in the body
奴らの全身を撃ち抜け
I had to get some money (Yeah, yeah, yeah, yeah)
金を稼がなきゃいけなかったんだ
Hit 'em all in the body
奴らの全身を撃ち抜け
[Outro: JPEGMAFIA]
I don't wanna be alone
一人ぼっちにはなりたくないんだ
It's so hard for me to trust you, baby
君を信じることが俺にはとても難しいんだよ、ベイビー
※ここから突如、攻撃的なペルソナが崩れ落ち、極度にパーソナルで脆弱な感情が溢れ出す。
I'm around you, baby
俺は君のそばにいる
I got so much on me
俺はあまりにも多くのものを抱え込みすぎているんだ
※退役軍人としてのPTSD、アンダーグラウンドでの苦闘、ネット上でのヘイトなど、彼にのしかかる精神的な重圧。
40, I'd drown you, baby
40口径、君を溺れさせてしまうかもしれない
I don't wanna drown you, baby
君を溺れさせたくなんてないんだ
I just wanna love you, baby
ただ君を愛したいだけなんだよ
I got too much for me
俺には抱えきれない
Oh my God, I'm so weak
ああ神様、俺はなんて弱いんだ
Holy fuck, I'm lonely
クソッ、孤独で死にそうだ
※ギャングスタやキラーを演じていたアルバムの終盤に、自己嫌悪と圧倒的な孤独感を突きつける。この剥き出しの人間性こそが、JPEGMAFIAの表現の核である。
