Artist: XXXTENTACION
Album: 17
Song Title: Jocelyn Flores
概要
「Jocelyn Flores」は、XXXTENTACIONのデビューアルバム『17』(2017年)を象徴する、生々しくも痛切な名曲である。タイトルの「ジョセリン・フローレス」とは実在した彼の友人の名前だ。深刻な鬱病を患っていた彼女は、2017年の夏にフロリダに滞在中のXのもとを訪れた際、彼が席を外している間に自ら命を絶つという凄惨な結末を迎えた。このショッキングな出来事がXの精神を深くえぐり、本作を生み出す直接的な引き金となった。プロデューサーのPotsuは、Vine発のミステリアスなシンガー、Shiloh Dynastyによるアコースティック音源「I Know You So Well」をサンプリング。このローファイでメランコリックなループと、Xのむき出しの希死念慮やトラウマを語る言葉が見事にシンクロし、エモ・ラップというサブジャンルをヒップホップのメインストリームへと決定づけた。本作は単なる楽曲の枠を超え、若者たちのメンタルヘルス問題をシーンの表舞台へと引きずり出した歴史的にも重要な一曲である。
和訳
[Intro: Shiloh Dynasty]
I know you so well, so well
君のことはすごくよくわかってるよ、すごくね
I mean, I can do anything that he can
つまり、あいつにできることなら僕にもなんでもできるってことさ
I've been pretty—
僕はかなり—
※Shiloh Dynastyの弾き語り動画からのサンプリング。この物憂げで未完成なフレーズのループが、楽曲全体のどうしようもない喪失感と後悔の念を増幅させている。
[Bridge: XXXTENTACION & Shiloh Dynasty]
I know you're somewhere, somewhere
君がどこかにいるのはわかってる、どこかに
I've been trapped in my mind, girl, just holding on
俺はずっと自分の頭の中に囚われてる、なぁ、なんとか持ち堪えてるよ
I don't wanna pretend we're something, we're nothing
俺たちが特別な関係だったなんて振る舞いたくない、俺たちは何でもなかった
※Xとジョセリンの関係性について、恋人関係ではなく友人関係であった事実を明確にしている。それでも彼女の死が彼に与えた喪失感は計り知れない。
I've been stuck thinking 'bout her, I can't hold on
彼女のことばかり考えて身動きが取れない、もう耐えられないんだ
(I've been pretty—)
(僕はかなり—)
[Verse: XXXTENTACION]
I'm in pain, wanna put ten shots in my brain
苦痛だ、自分の脳天に10発の弾丸をぶち込みたい
I've been trippin' 'bout some things, can't change
変えられないようないくつかの事にずっと囚われてる
Suicidal, same time I'm tame
自殺願望がある、と同時に俺は飼いならされてるんだ
※「tame」はおとなしい、飼いならされたという意味。激しい希死念慮(Suicidal)に苛まれながらも、現実の深い憂鬱さや無力感によって実際の行動を起こすことすらできず、ただ無気力に沈み込んでいる悲痛な精神状態を表している。
Picture this, in bed, get a phone call
想像してみてくれ、ベッドにいる時に電話がかかってくる
Girl that you fucked with killed herself
お前が親しくしていた女の子が自殺したって
※このラインがジョセリンの悲劇的な死を直接描写している。ここでの「fucked with」は性的な意味ではなく、「親しく関わっていた、面倒を見ていた」というヒップホップ特有のスラング表現。
That was this summer when nobody helped
それは誰も助けられなかった今年の夏のこと
And ever since then, man, I hate myself
それ以来、俺は自分が激しく憎い
Wanna fuckin' end it, pessimistic
すべてを終わらせてしまいたい、絶望的だ
All wanna see me with no pot to piss in
誰もが俺が一文無しになるのを見たがってる
※「have no pot to piss in」は直訳すると「小便をする壺すらない」となり、極度の貧困や破滅を意味する古典的なイディオム。世間やアンチが自分の不幸や失墜を望んで冷笑しているというパラノイア的な視点。
But niggas been excited 'bout the grave I'm diggin'
だが奴らは俺が自ら掘っている墓穴を見て興奮してるんだ
Havin' conversations 'bout my haste decisions
俺の早まった決断について噂話をしてやがる
Fuckin' sickenin'; at the same time
クソ吐き気がする、と同時に
Memories surface through the grapevine
人づてに記憶が浮かび上がってくる
※「through the grapevine」は「噂で、人づてに」という意味。他人の無責任な言葉やジョセリンに関する情報が耳に入ることで、癒えない傷がえぐられていく苦悩。
'Bout my uncle playin' with a slip knot
引き結びのロープで遊んでいた叔父のこととか
※「slip knot」はいわゆる首吊り用の縄。過去に彼の叔父が首吊り自殺を図ったという壮絶なトラウマが、ジョセリンの死によってフラッシュバックしていることを生々しく明かしている。
Post-traumatic stress got me fucked up
PTSDで俺は完全にイカれちまった
Been fucked up since the couple months they had a nigga locked up
あいつらに数ヶ月間ブタ箱にぶち込まれて以来、ずっと頭がおかしいんだ
※過去の暴行事件等で彼が刑務所(または少年施設)に収監されていた時期のトラウマを指す。システムに自由を奪われた経験が、彼のパラノイアや精神的な不安定さを決定的に悪化させた要因の一つであることが示唆されている。
[Chorus: XXXTENTACION]
I'll be feelin' pain, I'll be feelin' pain just to hold on
痛みを抱え続ける、ただ持ち堪えるためだけに痛みを抱え続ける
And I don't feel the same, I'm so numb
もう昔のようには感じられない、完全に麻痺してるんだ
I'll be feelin' pain, I'll be feelin' pain just to hold on
痛みを抱え続ける、ただ持ち堪えるためだけに痛みを抱え続ける
And I don't feel the same, I'm so numb
もう昔のようには感じられない、完全に麻痺してるんだ
※「numb(麻痺した)」はアルバム『17』全体を貫く重要なテーマであり、Sad Boy/エモ・ラップ界隈のコアなマインドセット。過剰な痛みから精神を保護するために、意図せずして感情が完全に抜け落ちてしまった空虚さを歌っている。
[Outro: Shiloh Dynasty]
I know you so well, I know you well
君のことはすごくよくわかってるよ、よくわかってる
I mean, I can do anything
つまり、僕にはなんでもできる
I can do he can
あいつにできることならなんだって
I've been pretty—
僕はかなり—
I know you so well
君のことはすごくよくわかってるよ
