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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

St. Tropez - J. Cole 【和訳・解説】

Artist: J. Cole

Album: 2014 Forest Hills Drive

Song Title: St. Tropez

概要

J. Coleの3rdアルバム『2014 Forest Hills Drive』に収録された「St. Tropez」は、成功への恐れと未知の世界への憧れが交錯する内省的なトラックである。タイトルの「St. Tropez(サントロペ)」は南フランスの高級リゾート地を指し、ノースカロライナ州フェイエットビルという地方都市から這い上がった彼にとって、途方もなく遠い富と名声の象徴となっている。ビートはエスター・フィリップスの「That's All Right With Me」から見事なサンプリングを施しており、ジャジーでメロウなサウンドが彼特有の語り口を美しく引き立てている。ハリウッドの華やかな世界へと足を踏み入れる際、彼が抱いた「高み」へ到達することへの恐怖や、地元を離れて自分を見失うかもしれないという不安が赤裸々に描かれている。ヒップホップにおける物質主義的な成功を手放しで喜ぶのではなく、その裏にある精神的な葛藤を浮き彫りにした、コンシャス・ラッパーとしてのColeの人間臭さが滲む名曲である。

和訳

[Verse 1: J. Cole & TS, J. Cole]

Roll up and smoke my sins away
マリファナを巻いて、俺の罪を吸い飛ばす
※「Roll up」はマリファナを巻くこと。過去の過ちやプレッシャーから逃れるための行為。

I'd like to go to St. Tropez
サントロペに行ってみたいな
※南フランスの高級リゾート地。フッドの若者にとって、想像もつかないような別世界(大成功)の象徴。

Maybe I'll go, maybe I'll stay (Maybe I'll stay)
行くかもしれないし、残るかもしれない(残るかもしれない)

She asked me if I'm scared to fly
彼女は俺に、飛ぶのが怖いのかって聞いた

To tell the truth, I'm terrified
本当のことを言うと、ひどく怯えてるんだ

I never been that high before
これまであんな高いところへ行ったことがないから
※「high」は飛行機で飛ぶ「高度」と、マリファナによる「陶酔感」、そして音楽シーンの「頂点(トップスターとしての地位)」を掛けた見事なトリプルミーニング。未知の成功領域へ踏み込むことへの本能的な恐怖を吐露している。

Very bad reason not to go
行かない理由としては最悪だな

Terrible reason not to go
行かない理由としてはひどすぎる

[Chorus: J. Cole & TS]

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ
※ここから三人称視点(TSらによるコーラス)となり、周囲が成功の階段を登っていくColeを見つめている構図になる。

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

Show him the way, he's 'bout to get paid
彼に道を教えてやってくれ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

[Verse 2: J. Cole]

Ayy, from the door I showed you my scars
なぁ、最初から俺は自分の傷跡を君に見せてきた
※「from the door」は「最初から、玄関をくぐった時から」という意味のAAVE。デビュー当初から隠し事なく、自分のトラウマや弱さをさらけ出してきたという彼自身のコンシャスなスタンスを指す。

And I told you girl, "I won't lie-ie-ie"
そして君に言ったんだ、「俺は嘘はつかない」って

If we at war, then this is a war
もし俺たちが戦争状態にあるなら、これは戦争だ

That I can't afford, no I, I, I
俺には代償を払いきれない戦争だ、いや、俺には
※ハリウッドの虚飾の世界や、名声によって生じる人間関係の摩擦(war)を戦い抜く精神的余裕がないことを示している。

I wanted more but that was before
もっと多くを望んでいたけど、それは昔の話さ

Lord knows I'm torn, so I–I cry (No I, I, I)
神は俺が引き裂かれているのを知っている、だから俺は泣くんだ(いや、俺は)

From the corner of my eye, baby
目の端からな、ベイビー
※泣いていることを悟られたくない、あるいは涙がこぼれるのを必死にこらえている情景。

It's been hard for me to smile-ile
最近、笑うのが難しくなっちまった

Lately, it's been hard for me to smile-ile
最近、笑うのが難しくなっちまったんだ

Lately, it's been hard for me to smile-ile
最近、笑うのが難しくなっちまった

Lately, it's been hard for me to smile
最近、笑うのが難しくなっちまったんだ
※ずっと成功を夢見ていたはずなのに、いざその目前に立つとプレッシャーと虚無感で笑顔になれないという名声のパラドックス。

[Interlude: TS & Esther Phillips]

Ooh, ooh, ooh

Ooh, ooh, ooh

If you won't take me in your home
あなたが私を家に入れてくれないなら
※エスター・フィリップスの楽曲「That's All Right With Me」からのボーカルサンプリング。原曲の文脈を借りつつ、ヒップホップ業界やハリウッドという「新しい家」が自分をありのままに受け入れてくれるのかという不安、あるいは故郷(実家の2014 Forest Hills Drive)への強い思慕を暗喩しているとファンの間では解釈されている。

If you won't take me in your home
あなたが私を家に入れてくれないなら

If you won't take me in your home
あなたが私を家に入れてくれないなら

If you won't take me in your home
あなたが私を家に入れてくれないなら

[Chorus: TS]

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

Show him the way, he's 'bout to get paid
彼に道を教えてやってくれ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ

He's on his way, he's 'bout to get paid
彼は向かっているところだ、大金を手にする寸前さ

He's on his way to Hollywood
彼はハリウッドへと向かっているところだ