Artist: Wu-Tang Clan
Album: A Better Tomorrow
Song Title: Felt
概要
「Felt」は、Wu-Tang Clanが2014年にリリースした結成20周年記念アルバム『A Better Tomorrow』に収録されている楽曲だ。グループの実質的リーダーであるRZAがプロデュースを手がけ、Masta Killa、Cappadonna、Ghostface Killah、Method Manがマイクリレーを展開する。楽曲のタイトル「Felt(感じた)」が示す通り、各MCが過去の経験、ストリートでの闘い、そして自分たちの音楽がシーンやリスナーに与えた「感覚」について深く掘り下げている。特にMasta KillaとMethod Manは、彼らのデビュー曲「Protect Ya Neck」を初めて聴いた時の衝撃をリスナーに問いかけ、Ghostface Killahはカンフー映画さながらのシュールな夢の世界を描き出す。円熟味を増したベテランたちが、自らの歩んできた歴史と感情の軌跡をソウルフルなビートに乗せて語る、内省的かつ叙情的な一曲である。
和訳
[Intro: RZA]
Feelings. The emotional side of a man, woman or a child's character. A response or tendency to respond. A belief, which can be vague, illogical, but mostly, irrational
感情。男、女、または子供の性格の感情的な側面。反応、あるいは反応する傾向。曖昧で非論理的、しかし多くの場合、非合理的な信念。
※RZAによるイントロ。感情(Feeling/Felt)というテーマを哲学的に定義づけ、理性や論理を超えた人間の本質的な反応について語っている。
[Verse 1: Masta Killa]
I never gave a fuck on how the next nigga felt
隣のニガがどう感じようが、俺は一切気にしなかった
I rocked a heavyweight belt cause that's the way I felt
ヘビー級のベルトを巻いた、それが俺の感じたやり方だったからだ
Still feel, so inspired to write a rhyme that's ultimately
今でも感じている、究極のライムを書くためにこれほどまでにインスパイアされていると
No other emcee could get with me, is way I felt
他のどのMCも俺には太刀打ちできない、そう感じたんだ
Don't forget the first time you heard me rhyme the way
俺がライムするのを初めて聞いた時のことを忘れるな
The first time you heard "Protect Ya Neck", the way you felt
初めて「Protect Ya Neck」を聞いた時、お前がどう感じたかをな
※Wu-Tang Clanの伝説的なデビューシングル「Protect Ya Neck」。初めてその衝撃を「感じた」リスナーの記憶を呼び起こしている。
Like no other hip hop record ever made you felt
他のどのヒップホップのレコードでも感じられなかったような感覚だ
Cards dealt, played my handle, when no matter how I felt
配られたカードで勝負した、自分がどう感じようともな
※配られた手札(運命や環境)を受け入れ、ストリートで自分の役割を果たしてきたという決意の表現。
[Verse 2: Cappadonna]
Every time we touch the mic, you know our lyrics is felt
俺たちがマイクを握るたび、お前らは俺たちのリリックを感じるはずだ
Worldwide, live, polaroid shit, all my homies is
世界中にな、生で、ポラロイド写真のように鮮明に、俺のダチ全員がそうだ
And we ride out to all of our music is
そして俺たちは、俺たちのすべての音楽へと乗り出していく
Yeah, we gets busy, teach the youth because we know how it felt
ああ、俺たちは忙しく動き回る、若者たちに教えるんだ、それがどんな感覚か俺たちは知っているからな
Give em Knowledge of self expressing in a way that it's felt
彼らに自分自身の知識を与える、それが心に響くような表現方法でな
※「Knowledge of self」はWu-Tangの精神的支柱であるFive-Percent Nationの教義の核心。自分自身が神であり宇宙の一部であると認識すること。
So each and every person to recognize what they felt
そうして一人一人が、自分の感じたことを認識できるようにするんだ
Watch your mind state because the evil could be felt
自分の精神状態に気をつけろ、邪悪なものは感じ取られる可能性があるからな
You never know, how when I first came out, how my brothers felt
俺が最初に出てきた時、俺の兄弟たちがどう感じていたか、お前らには決して分からないだろう
I've been going through it, plus a lot of deep pain was felt
俺はそれを潜り抜けてきた、それに加えて多くの深い痛みを感じてきたんだ
We would last for a night, but a better tomorrow
俺たちは一晩を耐え忍び、より良い明日を迎えるのさ
※アルバムのタイトル『A Better Tomorrow』にかけたライン。ジョン・ウー監督の香港マフィア映画『男たちの挽歌(原題:A Better Tomorrow)』からの引用でもある。
[Verse 3: Ghostface Killah]
I felt the angel of death breathe
俺は死の天使の息吹を感じた
When I felt the four fifths something told me squeeze
俺が45口径を感じた時、何かが俺に引き金を引けと告げたんだ
※「four fifths」は45口径の拳銃のこと。
I felt like it was the end of a dynasty
まるで一つの王朝の終わりであるかのように感じた
Like I was fighting a clique of five Chinese thieves
5人の中国人の盗賊の集団と戦っているような気分だった
Karate slippers with slip on's so I kept slippin'
スリッポンの空手シューズを履いてたから、俺は滑り続けたんだ
※Ghostface Killahらしい、カンフー映画のアクションシーンのような鮮烈でコミカルな情景描写。
The floor was too smooth felt like I couldn't catch a grip in
床が滑らかすぎて、グリップが効かないように感じた
Felt like Dragonfly Jones, was Dragonfly Tone
ドラゴンフライ・ジョーンズのような気分だった、俺はドラゴンフライ・トーンだったのさ
※「Dragonfly Jones」は90年代のコメディ番組『マーティン・ローレンス・ショー』に登場するインチキなカンフーの達人。「Tone」はGhostfaceの別名Tony Starksにかけている。
So I kept spitting, woke up when I heard the phone
だから俺はツバを吐き続けた、電話の音を聞いて目が覚めたんだ
※これまでの壮絶なカンフーアクションのような戦いが、実は夢であったという夢オチ。
[Verse 4: Method Man]
I never gave a what on how the next rapper felt
隣のラッパーがどう感じようが、俺は一切知ったこっちゃなかった
I take that rapper's belt myself, I feel how Cappa felt
そいつのチャンピオンベルトは俺が奪い取る、キャパがどう感じたか俺には分かるぜ
※Verse 2でCappadonna(Cappa)が語った痛みや決意に共鳴し、Masta Killaの「ベルト」のラインを回収している。
I don't really need help, use a sharpie, don't need the felt
助けなんて本当に必要ねぇ、シャーピーを使うさ、フェルトペンはいらねぇ
※油性マーカーの定番「Sharpie」と、フェルトペン(felt-tip pen)をかけたワードプレイ。楽曲のタイトル「Felt」に掛けている。
Marker, walk on water, I see how Jesus felt
マーカー、水の上を歩く、ジーザスがどう感じたか分かるぜ
※奇跡を起こす(水の上を歩く)キリストのように、自分のラップスキルが神懸かっているという誇示。
No rhyme or reason, just bleeding, my every breathing's felt
韻も理由もねぇ、ただ血を流しているだけだ、俺のすべての呼吸が感じ取られる
This about a thesis that even paraplegics felt
これは下半身不随の奴らでさえ感じ取った論文についての話だ
※「paraplegics」は対麻痺患者。感覚を持たないはずの者たちにすら何かを感じさせるほど、強烈なメッセージ(論文/ラップ)であるという比喩。
These boys ain't needing, they barely breathing, believe it, seen it
このガキどもには必要ない、奴らはかろうじて息をしてるだけだ、信じろ、この目で見たんだ
Till you got cheated, you couldn't tell me how cheating felt
自分が騙されるまで、騙されるのがどんな気分か俺に語ることはできないはずだ
I'm not a failure, I couldn't tell ya how losing felt
俺は負け犬じゃねぇ、だから負けるのがどんな気分かお前には語れない
Might not have nailed her, but I can tell ya how spooning felt
彼女をモノにはできなかったかもしれないが、スプーニングがどんな気分だったかは語れるぜ
※「nail」はセックスすること。「spooning」は男女が重なるように寝る姿勢(スプーンのように抱きしめること)。
Remember when you first heard the rap and the way it felt
初めてあのラップを聞いた時のこと、そしてどんな風に感じたかを思い出せ
I burned the track with a murder rap and I know it's felt
俺は殺人級のラップでトラックを燃やし尽くした、それが心に響いたのは分かってるぜ
[Outro]
