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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Ruckus in B Minor - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: A Better Tomorrow

Song Title: Ruckus in B Minor

概要

「Ruckus in B Minor」は、Wu-Tang Clanが結成20周年を記念して2014年にリリースした6作目のスタジオアルバム『A Better Tomorrow』のオープニングトラックである。グループ結成の地であるスタテンアイランド(Shaolin)の空気感と、亡きOl' Dirty Bastard(ODB)のアーカイブ音源を巧みに織り交ぜたRZAの重厚なプロダクションが特徴だ。タイトルは、彼らの伝説的なデビュー曲「Protect Ya Neck」の別名「The Ruckus」への回帰を示唆している。曲中では、Inspectah Deckが現代のTV番組や映画のタイトルを羅列したコンシャスなライムを披露し、GZAは宇宙の真理を語り、Raekwonは最高級の麻薬のようなライムを誇示する。さらに、RZAが各メンバーに直接語りかけるインタールードは、長年にわたる内部の対立(特にRZAとRaekwonの間の創造的な不和)を乗り越え、Wu-Tangが再び一つになったことを宣言する象徴的な瞬間である。20年の時を経てもなお「Still Number One」であることを証明する、ヒップホップ史に残る感動的なアンセムだ。

和訳

[Intro: RZA]

Huh—after all these years, what you said was true
ああ—これだけの年月が経って、お前が言ったことは本当だったな

The Shaolin and the Wu-Tang is very dangerous
少林と武当(ウータン)は非常に危険だ
※彼らのデビューアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の冒頭を飾った伝説的なカンフー映画のサンプリングフレーズを、RZA自身が20年越しに肉声で再現している。

[Interlude 1: Ol' Dirty Bastard]

Hahahahahah
ハハハハハ

It's the ODB, kid, once again, coming through your area
ODBだぜ、坊や、もう一度、お前らのエリアに乗り込んでやる

And I'm going to tell you one time; you gon' love this
そして一度だけ言ってやるよ、お前らはこいつを気に入るぜ
※2004年に他界したODBの未発表音源を使用し、彼が今もグループの魂として存在していることを示している。

[Verse 1: Inspectah Deck]

I had to get the money, said it wasn't a choice
金を稼がなきゃならなかった、選択肢なんてなかったと言っただろ

Die Hard's on the bars, Ladies lovin' the voice
バーには『ダイ・ハード』な奴らがいて、女たちはこの声を愛してる

Morphine flow, numbing your joints
モルヒネのフロウ、お前らの関節(ジョイント)を麻痺させる
※ジョイント(マリファナ)と関節のダブルミーニング。Deckのラップが鎮痛剤のように強力に効くこと。

Bomb a nigga like he number 81 from Detroit
ニガに爆弾を落とす(パスを投げる)、まるでデトロイトの背番号81みたいにな
※NFLデトロイト・ライオンズの伝説的ワイドレシーバー、カルビン・ジョンソン(別名メガトロン)へのパス(ボム)の引用。

Zombie life, World War Z
ゾンビライフ、『ワールド・ウォーZ』だ

Antidote to your virus, your highness, the world on me
お前のウイルスの解毒剤、陛下、世界が俺にのしかかる

Capital G, cool as the dude from Dos Equis
大文字のG(ギャングスタ/神)、ドスエキスの男みたいにクールだぜ
※ビールブランド「Dos Equis」のCMキャラクター「世界で最も興味深い男」の引用。

So deadly, I don't make it rain, I snow heavy
超致命的だ、俺は札束の雨(Make it rain)は降らさねぇ、大雪(コカイン)を降らせるんだ
※「Make it rain」はストリップクラブで札束をばらまくこと。「snow」はコカインの隠語。

Sick lane, Nic Cage how I ride with fire
ヤバい車線、ニック・ケイジみたいに炎をまとって走るぜ
※ニコラス・ケイジ主演の映画『ゴーストライダー』の引用。

Forever with bars, sort of like a lifer
永遠に鉄格子(バース)と共にある、終身刑の囚人みたいにな
※「bars」は刑務所の鉄格子とラップの小節(バース)のダブルミーニング。

With the son of anarchy, I be breaking bad
無政府状態の息子(『サンズ・オブ・アナーキー』)と共に、俺は悪に染まる(『ブレイキング・バッド』)

Walking dead, day dreaming of making a band
歩く屍(『ウォーキング・デッド』)、バンド結成(『メイキング・ザ・バンド』)を白昼夢に見る

Dancing with the stars, Americans idol me
スターたちと踊る(『ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ』)、アメリカ人たちは俺を崇拝する(『アメリカン・アイドル』)

The mentalist with the Big Bang Theory
メンタリスト(『THE MENTALIST』)、ビッグバン・セオリー(『ビッグバン★セオリー』)と共にな
※Deckのこのバースは、当時の人気TVドラマや映画のタイトルを怒涛のように羅列する高度な言葉遊び(Wordplay)となっている。

[Hook: Method Man]

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

[Verse 2: U-God]

The most duplicated, anticipated, validated
最もコピーされ、最も期待され、最も正当性を証明された存在

Urban legends in the books with the ones who made it
歴史の本に載る都市伝説、成功を収めた者たちと共にな

Highly celebrated, everything was work related
大いに称賛され、すべてが仕事に関連していた

Current top 40 got the Wu deep in their all business
今のトップ40の連中は、そのビジネスの深層にWuの要素を取り入れてる

20 years Killa Beez, yeah, we hold the pennant
20年間のキラー・ビーズ、ああ、俺たちがペナント(優勝旗)を握っている
※Wu-Tang結成から20年、常にヒップホップの頂点に立ち続けているという自負。

Monumental stance on the cover with my co-defendants
共犯者たちと一緒に、雑誌の表紙で記念碑的なポーズをとる

Drop her sentence, in remembrance
彼女の判決を下す、記憶のために

Construct these jewels so they can live through my descendants
この宝石(知識)を構築する、俺の子孫たちの中で生き続けられるようにな

[Bridge: Method Man]

Youngun, I can see your draws, pull your pants up
若造、お前のパンツが見えてるぜ、ズボンを上げな
※腰パン(Sagging)をしている若手ラッパーに対する、ベテランからの説教。

Can't even call yourself a man until you man up
男らしくなるまで、自分を男だなんて呼べないぜ

And if you call yourself a fan you need to stand up
もしお前がファンを自称するなら、立ち上がる必要がある

This ain't a party, it's a jux, keep your hands up
これはパーティーじゃない、強盗(jux)だ、手を挙げたままにしておけ
※「jux」は強盗、襲撃のストリートスラング。Wu-Tangのライブは単なるお遊びではなく、魂を奪うハードコアな体験だということ。

And I don't care who run the city when the summer come
夏が来た時、誰がこの街を仕切っていようが知ったこっちゃない

Your summer's done, Wu forever, and we're
お前らの夏は終わったんだ、Wuは永遠、そして俺たちは

[Hook: Method Man]

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

[Verse 3: Cappadonna]

Picture a nigga on the strip getting rich off the drug shit
ストリップ(通り)でドラッグを売って金持ちになってるニガを想像してみろ

Putting other niggas on, teaching ‘em thug shit
他のニガどもをフックアップし、サグのやり方を教えてやってる

Then they want stick 'em up, then they get slugs quick
そしたら奴らはそいつをホールドアップしようとする、そしてすぐに銃弾(slugs)を食らうんだ

Hood-type niggas always living that crime life
フッドのニガどもは、いつだってその犯罪の人生を生きてる

Jealous-ass grimy niggas seeing the limelight
嫉妬に狂った薄汚いニガどもが、脚光を浴びるのを見ている

Slimy old nigga like fucking your man’s wife
ダチの嫁とヤるような、ぬるぬるした薄汚い老いぼれのニガだ

Fool shouldn't use the word brother, he man dyke
あんなバカは兄弟なんて言葉を使うべきじゃない、あいつは男のダイク(レズビアン)だ
※裏切り者や嫉妬深い人間に対する強烈なディス。

[Verse 4: Ghostface Killah]

Yo, I spin my web all across New York
Yo、俺はニューヨーク中に自分のクモの巣を張り巡らせる

Get it out in all types of ice, there's a sport
あらゆる種類のジュエリーで着飾る、それがスポーツなんだ

One chain, two chain, three chain, four
チェーン1本、チェーン2本、チェーン3本、4本
※当時のトレンドだったラッパー「2 Chainz」の名前を皮肉り、俺はさらにその倍のチェーンをつけているというフレックス。

Niggas mouth's drop like the leaves in the fall
秋の落ち葉みたいに、ニガどもの口がポカンと開くぜ

Tone got that WBC
トーン(俺)はあのWBC(チャンピオンベルト)を持ってる
※「Tone」はGhostfaceの別名(Tony Starks)。世界ボクシング評議会の王者のような圧倒的な存在。

I take off heavy in air balloons and land in the Fiji's
俺は重たい気球で飛び立ち、フィジーに着陸する

That's my bird and that's my word
あれは俺の鳥だ、そしてそれが俺の言葉だ

You faggots keep fucking around and get curbed
お前らオカマ野郎どもはふざけ回って、縁石に叩きつけられるんだ
※「curbed」は映画『アメリカン・ヒストリーX』などで知られる、縁石に顎を乗せさせて踏みつける残虐なリンチ(カーブ・ストンプ)。

(I came to town)
(俺が街にやって来たぜ)

[Verse 5: GZA]

Forms circles like the rings of Saturn
土星の輪のように円を形成する

Dust rocks and ice in a particular pattern
特定のパターンで配置された塵、岩、そして氷

Then this fascinating picture has emerged from surface
そして、この魅力的な絵が表面から浮かび上がる

A wonder of the young world with an urgent purpose
差し迫った目的を持った、若き世界(ヒップホップ)の驚異だ
※GZA特有の宇宙や科学をモチーフにしたコンシャスなリリック。Wu-Tangというグループの結成と彼らが生み出した完璧な宇宙的調和を表現している。

A wild fire engulfing every home
すべての家を飲み込む山火事

It's history chiseled and carved in every stone
それはすべての石に彫り込まれ、刻まれた歴史だ

A workshop where skills are learned
スキルが学ばれるワークショップ(工房)

Handcrafted and drafted, written works the main concern
手作りで起草され、書かれた作品こそが主な関心事だ

Urban center provided with a social structure
社会的構造を備えた都市の中心部

And a curious culture full of superconductors
そして超伝導体に満ちた、好奇心旺盛な文化
※「superconductors(超伝導体)」は電気抵抗がゼロになる物質。Wu-Tangのメンバー同士が抵抗なくエネルギーを共有し、無限のクリエイティビティを発揮していることの比喩。

Each stain is part of a scene with
それぞれの汚れ(過去の傷や経験)は、一つのシーンの一部であり

Intricate geometric raps on a larger screen
より大きなスクリーンに映し出される、複雑な幾何学的ラップだ

Spell bounding, marvelous and it's surrounding
魔法にかかったように、素晴らしく、そしてそれは周囲を取り囲んでいる

Viewpoints remain the same, it's all astounding
視点は同じままだ、すべてが驚異的さ

A place where the forgotten art is so powerful
忘れ去られた芸術が、これほどまでに強力な場所

A striking image is something that's so valuable
印象的なイメージとは、それほどまでに価値のあるものなんだ

[Interlude 2: Ol' Dirty Bastard]

This one's the blackout! Three-fifty-seven to your mouth!
こいつはブラックアウト(記憶喪失/停電)だ! お前の口に357マグナムを突っ込むぜ!

[Interlude 3: RZA]

GZA, this is called Ruckus In B Minor
GZA、これは「ロ短調の騒動(Ruckus in B Minor)」って曲だ
※RZAからメンバーへの直接的な語りかけ。1stアルバムの「The Ruckus」へのオマージュ。

Rae, all those bad times is behind us
Rae、あの悪い時期はもう俺たちの後ろ(過去)にあるんだ
※アルバム制作時、RZAの独裁的なプロデュース方針に対しRaekwonが反発し、グループは解散の危機にあった。RZAがここで「和解」を宣言する、ファンにとって最も胸を打つシーン。

Ghost, put that mask on to remind us
Ghost、俺たちに思い出させるために、あのマスクを被ってくれ
※初期のGhostface Killahは顔を隠すためにストッキングのマスクを被っていた。

Method Man, let 'em know who's New York's finest
Method Man、誰がニューヨークの最高峰(Finest)か、奴らに教えてやれ

[Bridge: Method Man]

Youngun, I can see your draws, pull your pants up
若造、お前のパンツが見えてるぜ、ズボンを上げな

Can't even call yourself a man until you man up
男らしくなるまで、自分を男だなんて呼べないぜ

And if you call yourself a fan you need to stand up
もしお前がファンを自称するなら、立ち上がる必要がある

This ain't a party, it's a jux, keep your hands up
これはパーティーじゃない、強盗だ、手を挙げたままにしておけ

And I don't care who runs the city when the summer come
夏が来た時、誰がこの街を仕切っていようが知ったこっちゃない

Your summer's done, Wu forever, and we're still number one
お前らの夏は終わったんだ、Wuは永遠、そして俺たちは今でもナンバーワンだ

[Hook: Method Man]

Still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

Still number one, still number one, still number one, one, one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

[During hook: Ol' Dirty Bastard]

Now I'mma let all you motherfuckers know
今、お前らマザーファッカー全員に教えてやるぜ

Whether you from Brooklyn, whether you from Manhattan
お前がブルックリン出身だろうが、マンハッタン出身だろうが

You from Queens nigga
クイーンズ出身のニガだろうがな

I don't give a fuck, where you be motherfucker!
俺の知ったことかよ、お前らがどこの出身であろうとな、マザーファッカー!

[Verse 6: Raekwon]

My lines is like Peruvian coke, go ahead and try one
俺のライン(ライム)はペルー産のコカインみたいだ、さあ、一つ試してみな

My recipe is A1 remarkable with my mixture
俺のレシピはA1(最高級)だ、俺の調合で驚くべきものになる

Rainman mathematician, this city slicker
レインマンの数学者、この都会の洗練された男だ
※映画『レインマン』のダスティン・ホフマンのように、異常なまでの計算能力(ドラッグの計量や金の計算)を持つハスラー。

The finest threads cover my frame, the cloths of royalty
最高級の糸が俺の体を包み込む、王族の衣服だ

Strive with an army of winners and no pretenders
勝者の軍隊と共に奮闘する、そこに偽物(プリテンダー)はいない

(*One*) We live free and achieve more
(一番だ)俺たちは自由に生き、より多くを成し遂げる

But first we gotta win with no stalemate
だがまず、行き詰まり(ステイルメイト)なしで勝たなきゃならない
※チェスにおいて引き分けになる状態。グループ内の膠着状態を打破し、完全な勝利を収めるという決意。

The all eye seeing is victorious biz to the sound man
すべてを見通す目は、サウンドマンにとって勝利のビジネスだ
※「all eye seeing(万物を見通す目)」はプロデューサー(RZA)の俯瞰的な視点。彼とRaekwonの和解がグループに勝利をもたらす。

[Verse 7: Masta Killa]

Armored trucks, tanks are bulletproof, been the truth
装甲車、戦車は防弾仕様だ、それが真実であり続けてきた

Loot the track, clear the booth, my thought ready, aim, shoot
トラックを略奪し、ブースを片付けろ、俺の思考は準備完了だ、狙え、撃て

My knowledge one twenty proof, let's tear the roof off
俺の知識は120プルーフだ、屋根を吹き飛ばそうぜ
※「proof」は酒の度数(120プルーフはアルコール度数60%)。強烈な知識(Knowledge)で現場を熱狂させる。

Let's spray, M-A-S-T-A
ぶっ放そうぜ、M-A-S-T-A

King I Love-Love club, pack stadium rock
キング・アイ・ラブ・ラブ・クラブ、満員のスタジアムをロックする
※Masta Killaのペルソナの一つと、彼らがクラブレベルからスタジアム級のスターであることを示す。

I hold the mic snug, split a slug
俺はマイクをキツく握りしめ、銃弾(スラッグ)を真っ二つに割る

Black ninja, mask and gloves
黒い忍者、マスクと手袋だ

[Hook: Method Man]

Still number one, still number one
今でもナンバーワン、今でもナンバーワンだ

[Outro]