Artist: Wu-Tang Clan (feat. Erykah Badu, Dhani Harrison & John Frusciante)
Album: 8 Diagrams
Song Title: The Heart Gently Weeps
概要
「The Heart Gently Weeps」は、Wu-Tang Clanが2007年に発表したアルバム『8 Diagrams』のリードシングルであり、ヒップホップ史上において歴史的な意義を持つ一曲だ。本作はThe Beatlesの名曲「While My Guitar Gently Weeps」を公式にインターポレート(再構築)したものであり、ビートルズ楽曲のサンプリング/カバーが公式に許可された極めて稀なケースである。ジョージ・ハリスンの息子であるDhani Harrisonと、Red Hot Chili PeppersのギタリストJohn Fruscianteが参加し、哀愁漂うアコースティックギターの音色を提供。さらにErykah Baduが、原曲の「Guitar」を「Heart」に置き換え、ソウルフルなフックを歌い上げている。
この美しいメロディとは対照的に、Raekwon、Ghostface Killah、Method Manの3人は、ニューヨークのゲットーにおける凄惨なドラッグディール、スーパーマーケットでの銃撃戦、そして警察の横暴という「血にまみれたストリートの現実」を生々しく描写している。崇高な音楽性と底辺のハードコアな現実が交差する、RZAのプロデュース能力とWu-Tangのマフィオソ・ストーリーテリングが到達した芸術的な金字塔である。
和訳
[Intro: Ghostface Killah]
(Shh, shh, shh, shh)
(Wu, Wu, Tang, Tang)
[Chorus: Erykah Badu]
The joy the flowers bring me
花々が私にもたらす喜び
The pain still has me sinking
痛みはまだ私を深い底へと沈ませる
All while my heart gently weeps
私の心が優しく泣いている間ずっと
※原曲の「ギターが泣く」を「心が泣く」に変更し、ストリートで失われた命や黒人コミュニティの痛みを代弁している。
Your smile has got me shrinking
あなたの笑顔は私を縮ませる
The tears in your eyes are twinkling
あなたの目の中の涙が煌めいている
Because the heart gently weeps
なぜなら心が優しく泣いているから
[Verse 1: Raekwon]
Snowy night, fiends basing
雪の夜、ヤク中たちがベースを吸っている
※「fiends」は麻薬中毒者、「basing」はフリーベース(クラック・コカイン)を吸うこと。
"A Raisin in the Sun" was amazing
「ア・レイジン・イン・ザ・サン」は素晴らしかった
※1959年の黒人家庭の苦悩を描いた有名な戯曲・映画。ゲットーの現実とリンクさせている。
The joint on the dresser, a gauge went off
鏡台の上にジョイントを置いていたら、12ゲージがぶっ放された
※「gauge」は12ゲージ・ショットガンのこと。日常の風景から一瞬で銃撃戦に突入する描写。
Jumped up, fish tank, it fell, and they stuck
飛び起きて、水槽が落ちて砕け、奴らは立ち往生した
They shot her cousin LaVon, he owed a buck
奴らは彼女のいとこのラヴォンを撃った、彼は大金の借金があったんだ
※「buck」は通常1ドルだが、ストリートスラングでは100ドル、あるいは状況によって10万ドルなどの大金を示す。
Willie was awful, pulled out the ratchet, let off two
ウィリーは酷かった、ラチェットを引き抜き、2発放った
※「ratchet」は銃のこと。
Grits fell on his leg, Kiana ripped the cold boo'
グリッツが奴の足にこぼれ、キアナは冷え切った男を切り裂いた
※「Grits」はトウモロコシの粥(ソウルフード)。食卓での血生臭い修羅場を描いている。
He violent, an Island nigga with the talent
奴は暴力的だ、アイランド出身の才能を持ったニガ
※「Island」は彼らの地元スタテンアイランド、あるいはライカーズ島刑務所のこと。
Of six killas who just came home, from straight wildin'
マジで暴れまわってムショから帰ってきたばかりの、6人の殺人鬼を合わせたような才能さ
Robbin' everything in Macy's, Lacy, short haircut
メイシーズの全てを強奪する、レイシー、ショートヘアの女
※「Macy's」は有名な老舗百貨店。
With long arms, who fuck niggas, got four babies
長い腕を持ち、ニガどもとヤッて、4人の赤ん坊がいる女だ
Yvette jabbed her, slapped her wig off, ran in the crib
イヴェットが彼女を突き飛ばし、ウィッグを引っ叩いて落とし、家の中に駆け込んだ
She did the dumb shit, my nigga done clapped her
彼女は馬鹿なことをした、俺のダチが彼女を撃ち殺したぜ
※「clapped」は銃で撃つこと。
Lester, smoked Chester sister Vest, I heard it was a mess
レスターはチェスターの妹のヴェストをハジいた、凄惨な現場だったと聞いたぜ
※「smoked」は殺すこと。Raekwon特有の複雑な人間関係の固有名詞を羅列するマフィオソ・ストーリーテリング。
They ripped the apple out her throat, blessed her
奴らは彼女の喉から喉仏をえぐり出し、祝福を与えた
Hungry hyenas from Medina, all A-trainers
メディナから来た飢えたハイエナたち、全員がAトレインの乗客だ
※「Medina」はFive-Percent Nationのスラングでブルックリンのこと。「A-trainers」はブルックリンを走るA線の地下鉄に乗ってやってきた強盗たち。
Who got reluct', think fast and blast for Beamers
躊躇した奴ら、一瞬で思考し、ビーマーのためにぶっ放す
※「Beamers」はBMW。高級車を奪うための冷酷な銃撃。
[Verse 2: Ghostface Killah]
Yeah, yo, I brought my bitch out to Pathmark, she's pushin' the cart
ああ、俺は女をパスマークに連れて行った、彼女はカートを押している
※「Pathmark」はニューヨーク圏のスーパーマーケットチェーン。Ghostfaceの得意とする、日常の極めて具体的な情景描写の始まり。
Headed to aisle four, damn, I got milk on my Clark's
4番通路に向かう、クソ、俺のクラークスにミルクがかかっちまった
※「Clark's」はクラークス社のワラビー。Wu-Tangメンバーが溺愛するアイコニックなシューズを汚されて苛立つ様子。
That's what I get, not focusin' from hittin' that bark
それが報いさ、あのバークを吸って集中してなかったからな
※「bark」はマリファナ(木や樹皮=tree/barkの比喩)。
My mouth dried, need plenty water quick, I feel like a shark
口がカラカラだ、すぐに大量の水が必要だ、サメになった気分だぜ
In the aisle, bustin' them paper towels and wipin' my Wally's down
通路でペーパータオルを破り取り、俺のワラビーを拭き取る
※「Wally's」はワラビーのこと。
I stood up to face a barrel, he's holding a shiny pound
立ち上がると銃口が目の前にあった、あいつは光り輝くパウンドを握っている
※「pound」は銃。靴を拭いて顔を上げた瞬間、銃を突きつけられるという緊迫した映画的展開。
It's him, he want revenge, I murdered his Uncle Tim
奴だ、復讐したいんだ、俺は奴のティム叔父さんを殺したんだ
I sold him a bag of dope, his wife came and copped again
叔父さんにドープを1袋売って、彼の妻がまた買いに来た
That bitch is crazy
あのビッチはイカれてる
And, uh, she brought her baby
しかも、赤ん坊まで連れてきやがった
She knew I had the murders a smack, it killed her man though
俺が殺人級のスマックを持ってるって知ってたんだ、それが彼女の男を殺したんだけどな
※「smack」はヘロイン。強力すぎて過剰摂取で死者が出るほどの極上のドラッグを売っていたというハスラーの暗い自慢と因果応報。
Now I got his fuckin' nephew grippin' his gat
今じゃそいつのクソ甥っ子がチャカを握りしめている
You's a bitch
お前はビッチだ
You better kill me
俺を殺したほうがいいぞ
You know you booty
お前がクソザコなのは分かってる
※「booty」はダサい、弱いこと。
You pulled your toolie out on me
俺にトゥーリーを抜きやがって
※「toolie」は銃。
Motherfucker!
マザーファッカー!
First thought was to snatch the ratchet
最初の考えはラチェットを奪い取ることだった
※「ratchet」も銃の別称。
Said fuck it and fuckin' grabbed it
クソ食らえと言って、そいつを掴み取った
I ducked, he bucked twice, this nigga was fuckin' laughin'
俺がしゃがむと、奴は2発撃ちやがった、このニガは笑ってやがったんだ
※「bucked」は発砲すること。
I wrestled him to the ground, tustle, scuffle, constantly kicked him
奴を地面に組み伏せ、揉み合い、取っ組み合い、絶え間なく蹴りを入れた
He wouldn't let go the joint, so I fuckin' bit him
奴がジョイントを放さないから、俺は奴を噛みちぎってやった
※「joint」はここでは銃のこと。
Shots was whizzin', hittin' Clorox bottles
銃弾が飛び交い、クロロックスのボトルに命中する
※「Clorox」はアメリカで最も有名な漂白剤のブランド。スーパーの洗剤売り場での生々しい銃撃戦の情景描写。
Customers screamin', then the faggot ran out of hollows
客たちが悲鳴を上げる、そしてそのオカマ野郎はホローポイント弾を撃ち尽くした
※「hollows」は人体内で拡張して致命傷を与えるホローポイント弾。
I had to show him what it's all about
奴に現実ってやつを教えてやらなきゃならなかった
Next thing you read in the paper:
次にお前が新聞で読む記事はこうだ:
"A man who came to kill gets knocked out"
「殺しに来た男、返り討ちにあってノックアウト」
[Interlude: Erykah Badu & Method Man]
I don't know why nobody told you
なぜ誰もあなたに教えなかったのか分からない
Man's not supposed to cry
男は泣くべきじゃないと
Though we're just babies and it's so crazy
私たちはほんの赤ん坊に過ぎないのに、とても狂っている
How tears of joy bring so much life
喜びの涙がどれほど多くの命をもたらすか
(Yo, ayo, yo, yo)
[Verse 3: Method Man]
You on your way to the store? Nigga grab me a Dutch, I'm mad as fuck, my dude
店に行く途中か? ダッチを買ってきてくれ、俺はクソほどムカついてるんだ、兄弟
※「Dutch」はダッチマスターズの葉巻。中身のタバコ葉を抜いてマリファナを詰める(ブラント)ためのお決まりのアイテム。
My count was short when I was baggin' it up
パケに詰めてた時、計算が合わなかったんだ
Now I need liquor, nigga pass me a cup, what's up with Officer Brown?
今は酒が必要だ、カップを回せ、ブラウン巡査の野郎はどうした?
The other day, he tried to shackle me up
この前、あいつは俺に手錠をかけようとしやがった
He killed Kase and now he hassling us, this motherfucker got balls
あいつはケイスを殺して、今度は俺たちに嫌がらせしてきやがる、このクソ野郎はいい度胸してるぜ
Even the gall to try and patting me up
俺をボディチェックしようとする図々しさまであるんだ
※汚職警官や過剰な取り締まりを行う警察(Officer Brown)に対するストリートのリアルな怒りと緊張状態。
Time to re-up, let these niggas know we back on the block
再び仕入れる時間だ、俺たちがブロックに戻ってきたってことを奴らに知らせてやれ
※「re-up」はドラッグの在庫を再補充すること。
With three hundred off a G-pack, crack in the spot
Gパックから300ドルの利益を出し、この場所でクラックをさばくんだ
※「G-pack」は1000ドル分(1 Grand)のドラッグをまとめたパッケージ。ストリートの最前線でハスリングを再開するという決意表明。
[Interlude: Erykah Badu]
I don't know why nobody told you
なぜ誰もあなたに教えなかったのか分からない
A man's not supposed to cry
男は泣くべきじゃないと
Though we're just babies, and it's so crazy
私たちはほんの赤ん坊に過ぎないのに、とても狂っている
How tears of joy bring so much life
喜びの涙がどれほど多くの命をもたらすか
[Chorus: Erykah Badu]
The joy the flowers bring me
花々が私にもたらす喜び
The pain still has me sinking
痛みはまだ私を深い底へと沈ませる
All while my heart gently weeps
私の心が優しく泣いている間ずっと
Your smile has got me shrinking
あなたの笑顔は私を縮ませる
The tears in your eyes are twinkling
あなたの目の中の涙が煌めいている
Because the heart gently weeps
なぜなら心が優しく泣いているから
[Outro]
