Artist: Michael Jackson
Album: HIStory: Past, Present and Future, Book I
Song Title: They Don’t Care About Us
概要
1995年のアルバム『HIStory: Past, Present and Future, Book I』に収録された本作は、マイケル・ジャクソンのキャリアにおいて最も直接的かつ攻撃的なポリティカル・アンセムの一つである。1993年の性的虐待疑惑に端を発する容赦ないメディア・リンチや、警察の横暴(ポリス・ブルータリティ)、そして根深く残る人種差別に対する彼の底知れぬ怒りと絶望が爆発している。パーカッシブで軍隊の行進を思わせるビートに乗せ、マイケルは迫害される弱者の代弁者としてのペルソナを纏い、権力者(They)が民衆(Us)をいかに冷遇しているかを告発した。一部の歌詞が「反ユダヤ主義的である」と激しい非難を浴びたことで後に音源が修正される事態にまで発展したが、彼自身は「あらゆる偏見への抗議」だと主張し続けた。スパイク・リー監督による2種類のミュージックビデオ(ブラジル編・刑務所編)も強烈な社会的メッセージを放ち、現在でも世界中の抗議デモで歌い継がれる、生々しい傷跡と不屈の闘志が刻まれたマスターピースである。
和訳
[Intro]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
※"they"(奴ら)は政府、警察、メディアなどの権力側を指し、"us"(俺たち)はマイケル自身を含めた虐げられる人々やマイノリティを指している。
Don't worry what people say, we know the truth
人が何を言おうと気にするな、俺たちは真実を知っているから
※マイケルの潔白を信じる親しい人物(一説には子供の声とも言われる)による励ましの言葉。
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
Enough is enough of this garbage
こんなゴミみたいな話はもうたくさんだ
※タブロイド紙がでっち上げる嘘の報道に対する強烈な吐き捨て。
(Okay, alright, alright, alright)
わかった、わかったから
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
[Verse 1]
Skinhead, dead head
スキンヘッド、死んだも同然の頭脳
※白人至上主義者(スキンヘッド)や思考停止した権力者への痛烈な批判。
Everybody gone bad
誰も彼もが腐りきっている
Situation, aggravation
最悪の状況、悪化していくばかり
Everybody, allegation
誰もが根拠のない非難を浴びせ合う
※"allegation"は証拠のない主張や嫌疑を意味し、自身が受けた疑惑報道と大衆の反応を指す。
In the suit, on the news
スーツを着込み、ニュース番組に出演して
Everybody, dog food
誰もが犬の餌にされる
※メディアの権力者(スーツを着た男たち)によって、個人の尊厳が安っぽい消費物(犬の餌)のように扱われる様を皮肉っている。
Bang, bang, shot dead
バンバンと撃ち殺される
Everybody's gone mad
全員が狂っちまったんだ
[Chorus]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
[Verse 2]
Beat me, hate me
俺を殴り、俺を憎めばいい
You can never break me
それでも俺の心を折ることは絶対にできない
Will me, thrill me
俺を操り、面白おかしく扱えばいい
You can never kill me
それでも俺の魂を殺すことは絶対にできない
Jew me, sue me
俺をユダヤ人のように迫害し、裁判にかけろ
※この "Jew me"(ユダヤ人扱いして搾取する・迫害するの意)というフレーズが反ユダヤ主義的だとして大論争を巻き起こした。マイケル本人は「偏見の犠牲になる痛みを表現するための言葉だ」と釈明したが、最終的に後のプレス盤では「Sue me, sue me」や「Do me, sue me」などに音声処理で差し替えられた。リリース当初の生々しい怒りが込められたオリジナル版の表現である。
Everybody, do me
誰もが俺を利用しようとする
Kick me, kike me
俺を蹴りつけ、ユダヤ人への蔑称で罵ればいい
※"kike" はユダヤ人に対する強烈な蔑称。これも前述の論争の的となり、後に修正を余儀なくされた。社会に存在するあらゆる差別の刃が自身に向けられているというメタファーである。
Don't you black-or-white me
白黒つけてレッテルを貼るな
※過去の名曲「Black or White」を自ら引用(リファレンス)し、人種や表面的な事象で人間を分断しようとする社会システムを拒絶している。
[Chorus]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
[Post-Chorus]
And tell me, what has become of my life?
教えてくれ、俺の人生は一体どうなってしまったんだ?
I have a wife and two children who love me
俺には愛してくれる妻と二人の子供がいるというのに
※楽曲制作当時の妻リサ・マリー・プレスリーとの生活や、将来の家族への思いを示唆しており、スーパースターではなく一人の人間としての平穏を望む切実な叫びである。
I am a victim of police brutality now (Hee)
今や俺は警察の暴力の犠牲者だ
※1993年の疑惑捜査時に、ロス市警から不当で屈辱的な身体検査を受けたことへの強烈なトラウマと告発。
I'm tired of bein' a victim of hate
憎しみの標的にされるのはもううんざりなんだ
You're rapin' me of my pride, oh, for God's sake
お前たちは俺の誇りを蹂躙している、ああ、お願いだからやめてくれ
※"rapin'"という極めて強い言葉を使うことで、メディアや捜査機関による人格攻撃がどれほど深く彼の精神を破壊したかを表現している。
I don't like havin' to fulfill this prophecy
こんな悲劇の予言を成就させたくなんてない
Set me free
俺を解放してくれ
[Verse 3]
Skinhead, dead head
スキンヘッド、死んだも同然の頭脳
Everybody gone bad
誰も彼もが腐りきっている
Trepidation, speculation
恐怖に怯え、憶測が飛び交う
Everybody, allegation
誰もが根拠のない非難を浴びせ合う
In the suit, on the news
スーツを着込み、ニュース番組に出演して
Everybody, dog food
誰もが犬の餌にされる
Black man, blackmail
黒人というだけで、脅迫の標的にされる
※有色人種であるがゆえに社会から不当な扱いを受けやすい現実を突きつけている。
Throw the brother in jail
同胞を刑務所にぶち込むんだ
※無実の黒人たちが不当に投獄されやすいアメリカの司法制度(マス・インカーセレーション)への批判。
[Chorus]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
[Post-Chorus]
And tell me, what has become of my rights?
教えてくれ、俺の権利はどこへ消えたんだ?
Am I invisible 'cause you ignore me?
お前たちが無視するから、俺は透明人間になったとでも言うのか?
※ラルフ・エリソンの名著『見えない人間(Invisible Man)』からの文学的引用。社会から存在を抹消され、声を聞いてもらえない黒人の苦悩を表している。
Your proclamation promised me free liberty now (Hee)
あんたたちの宣言書は、俺たちに自由を約束したはずじゃないか
※アメリカ独立宣言や奴隷解放宣言に言及し、国が掲げる理想と現実の差を痛烈に皮肉っている。
I'm tired of bein' a victim of shame
恥辱の犠牲者になるのはもううんざりだ
You're throwin' me in a class with a bad name
お前たちは俺を汚名を着せられた階級に追いやろうとしている
I can't believe this is the land from which I came
ここが俺の生まれた国だなんて信じられないよ
※アメリカの民主主義と司法への完全な絶望の吐露。
[Bridge]
You know, I really do hate to say it
なぁ、こんなことは本当に言いたくないんだが
The government don't wanna see
政府は現実から目を背けようとしている
But if Roosevelt was livin'
でも、もしルーズベルトが生きていたら
He wouldn't let this be, no, no
こんな事態は絶対に許さなかったはずだ
※フランクリン・D・ルーズベルト大統領(ニューディール政策などで弱者救済を行った)を引き合いに出し、現代の政治家たちの無策と腐敗を嘆いている。
[Verse 4]
Skinhead, dead head
スキンヘッド、死んだも同然の頭脳
Everybody gone bad
誰も彼もが腐りきっている
Situation, speculation
最悪の状況、飛び交う憶測
Everybody, litigation
誰も彼もが訴訟を起こそうとする
※金銭目的でマイケルをターゲットにする人々や、訴訟社会アメリカの病理への批判。
Beat me, bash me
俺を殴り、激しく叩けばいい
You can never trash me
それでも俺をゴミのように捨てることはできない
Hit me, kick me
俺を打ち据え、蹴りつければいい
You can never get me
それでも俺を屈服させることは絶対にできない
[Chorus]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
[Guitar Solo]
[Bridge]
Some things in life, they just don't wanna see
世の中には、奴らがどうしても直視しようとしない事実がある
But if Martin Luther was livin'
でも、もしマーティン・ルーサー・キング牧師が生きていたら
He wouldn't let this be
こんな差別は絶対に許さなかったはずだ
No, no, no, yeah, yeah, yeah, yeah
絶対に、絶対にだ
[Verse 5]
Skinhead, dead head
スキンヘッド、死んだも同然の頭脳
Everybody's gone bad
誰も彼もが腐りきっている
Situation, segregation (Hoo-hoo)
最悪の状況、終わらない人種隔離
Everybody, allegation
誰もが根拠のない非難を浴びせ合う
In the suit, on the news (Hoo-hoo)
スーツを着込み、ニュース番組に出演して
Everybody, dog food
誰もが犬の餌にされる
Kick me, kike me (We're deep in the fire)
俺を蹴りつけ、蔑称で罵ればいい、俺たちは業火のどん底にいるんだ
Don't you wrong-or-right me
勝手に善悪の判断を下すな
[Chorus]
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
We're deep in the fire (Hoo-hoo)
俺たちは地獄のような炎の中にいる
All I wanna say is that they don't really care about us
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
I'm there to remind you (Hoo-hoo)
俺はそのことを思い知らせるためにここにいるんだ
All I wanna say is that they don't really care about us (Hee-hee)
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
Don't you sit back and watch the beatin'
ただ座って、人が打ちのめされるのを傍観しているだけじゃダメだ
※リスナーに対して、無関心を捨てて不条理な社会に対して立ち上がるよう強く呼びかけている。
All I wanna say is that they don't really care about (Hoo-hoo)
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about (Hoo-hoo)
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
All I wanna say is that they don't really care about us (Hee-hee-hee)
俺が言いたいのは、奴らは俺たちのことなんて少しも気にかけちゃいないってことだ
Hee-hee, hoo-hoo
