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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

D.D. - The Weeknd 【和訳・解説】

Artist: The Weeknd

Album: Echoes of Silence

Song Title: D.D.

概要

「D.D.」は、2011年にリリースされたThe Weekndの3作目のミックステープ『Echoes of Silence』のオープニングを飾る楽曲であり、マイケル・ジャクソンの1988年の大ヒット曲「Dirty Diana」のカバーである。自身の最大のインスピレーション源としてマイケル・ジャクソンを公言してはばからないエイベル・テスファイだが、数ある名曲の中から本作を選んだ事実は非常に興味深い。熱狂的なグルーピーとの危うい関係性と名声の暗部を描いた原曲のテーマは、ドラッグや刹那的なセックス、そして虚無感を孕んだThe Weeknd特有の退廃的な世界観と完璧に共鳴している。イリヤンジェロによるダークでアンビエントなプロダクションと、マイケルを彷彿とさせるエイベルの官能的かつ悲痛なファルセットが融合することで、本作は単なるトリビュートを超え、オルタナティブR&Bの金字塔において新たな生命を吹き込まれている。

和訳

[Intro]

Oh no

Oh no

Oh no, oh no

[Verse 1]

You'll never make me stay, so take your weight off of me
君が俺を引き留めることはできない、だからその重圧をどけてくれ
※原曲のマイケル・ジャクソン同様、名声に群がるグルーピー(ダイアナ)からの執拗な誘惑に対する拒絶を示している。The Weekndの文脈においては、初期のアンダーグラウンドな生活からスターダムへと駆け上がる中で直面した、打算的な関係性への警戒とも読み取れる。

I know your every move, so won't you please let me be?
君の手口はすべて分かっている、だからもう放っておいてくれないか

I've been here times before, but I was too blind to see
これまでも何度もこういう場にいたのに、俺は盲目すぎて気づかなかった
※過去にも甘い誘惑に乗り、痛い目を見てきたことへの後悔。The Weekndの楽曲群に共通する「自業自得の苦悩」のモチーフと見事にリンクする。

That you seduce every man, this time you won't seduce me
君があらゆる男を誘惑してきたことに、でも今回は君の思い通りにはならない

[Pre-Chorus]

She's saying, "That's okay, hey baby, do what you please
彼女は言う「構わないわ、ベイビー、あなたの好きにして

I am the stuff that you want, I am the thing that you need"
私こそがあなたの欲しいものであり、あなたに必要なものなのよ」
※「stuff」という単語は、ドラッグを暗喩しているとも解釈できる。The Weekndの退廃的なサウンドスケープにおいて、女性の誘惑とドラッグの依存性はしばしば同一線上に描かれる。

She looked me deep in the eyes, she touchin' me so to start
彼女は俺の目を深く見つめ、そうやって触れながら誘ってくる

She say, "There's no turnin' back," she trapped me in her heart
彼女は言う「もう後戻りはできないわ」、そして俺は彼女の心に囚われてしまった

[Chorus]

Dirty Diana, no (No)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ
※「ダイアナ」は特定の人物を指すのではなく、スターに群がるグルーピーの総称、あるいは名声そのものが持つ抗いがたい魔力のメタファーである。ファンの間では、マイケルの原曲がロック界の熱狂を皮肉ったものであるのに対し、The Weekndのバージョンは彼自身がまさに飲み込まれつつある音楽業界の闇を象徴していると解釈されている。

Dirty Diana, no (No)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, let me be
ダーティ・ダイアナ、俺を一人にしてくれ

[Post-Chorus]

Ooh-ooh (Oh no)

(Oh no)

(Oh no)

[Verse 2]

She likes the boys in the band, she knows when they come to town
彼女はバンドマンが好きで、彼らがいつ街にやって来るかを把握している
※The Weekndの初期の活動拠点であるトロントのクラブシーンにおける、野心的な女性たちのリアルな生態を重ならせている。

Every musician's fan after the curtains come down
幕が下りた後なら、彼女はどんなミュージシャンのファンにだってなる
※音楽やアートへの敬意ではなく、アーティストのステータスや富そのものに執着する空虚さを皮肉っている。

She waits at backstage doors for those who have prestige
彼女は名声を持つ者たちをバックステージのドアで待ち構えている

Who promise fortune and fame, a life that's so carefree
富と名声、そして気楽な人生を約束してくれる者たちを

[Pre-Chorus]

She's saying, "That's okay, hey baby do what you want
彼女は言う「構わないわ、ベイビー、あなたの好きにして

I'll be your night lovin' thing, I'll be the freak you can taunt
夜の慰み者にもなるし、あなたに弄ばれる変態にだってなるわ
※自己犠牲を払ってでもスターダムに近づこうとする執念。The Weekndの楽曲に頻出する、自己破壊的な関係性の究極の形である。

And I don't care what you say, I want to go too far
あなたが何を言おうと気にしない、私はとことんまでイキたいの

I'll be your everything if you make me a star"
私をスターにしてくれるなら、あなたのすべてになるわ」
※関係性が愛情ではなく、完全な「取引」であることが露呈する一節。

[Chorus]

Dirty Diana (Oh), no (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana (Oh), no (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana (Oh), no (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana (Oh, oh, oh)
ダーティ・ダイアナ

Dirty Diana (Oh), mh (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ

Dirty Diana (Oh), no (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana (Oh), no (Oh, oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana (Oh), let me be (Oh)
ダーティ・ダイアナ、俺を一人にしてくれ

[Post-Chorus]

Ooh-ooh (Oh no)

(Oh no)

(Oh no)

[Verse 3]

She said, "I have to go home, 'cause I'm real tired you see
彼女は言った「もう帰らなきゃ、本当に疲れているの
※ここからダイアナの狡猾な罠が本格的に描かれる。拒絶する男を心理的に揺さぶるための、巧妙に計算されたセリフである。

But I hate sleepin' alone, why don't you come with me?"
でも一人で眠るのは嫌なの、一緒に来てくれない?」

I said, "My baby's at home, she's probably worried tonight
俺は言った「家で恋人が待ってるんだ、今夜はきっと心配しているはずだ

I didn't call on the phone to say that I'm alright"
無事だという電話すらしていないからな」

Diana walked up to me, she said, "I'm all yours tonight"
ダイアナは俺に歩み寄り言った「今夜はすべてあなたのものよ」

At that I ran to the phone sayin', "Baby I'm alright"
それを聞いて俺は電話に駆け寄り言った「ベイビー、俺は無事だよ」
※恋人に安心させる電話をかける行為は、実はダイアナの誘惑に完全に屈し、外泊することを決意したことの裏返しである。道徳的な崩壊の瞬間を見事に切り取っている。

I said, "Unlock the door 'cause I forgot the key"
俺は言った「ドアの鍵を開けておいてくれ、鍵を忘れたから」

She said, "He's not coming back because he's sleeping with me"
彼女は言った「彼は戻らないわよ、今私と一緒に寝ているから」
※衝撃的な結末。ダイアナが俺の恋人からの電話(あるいは折返し)に勝手に出たことで、決定的な事実を突きつける。最終的に男はダイアナの罠に完全に絡め取られ、本来の愛すべき居場所を破壊されてしまう。マイケル・ジャクソンからThe Weekndへと見事に継承された、ファム・ファタールの恐ろしさを描く究極のパンチラインである。

[Chorus]

Dirty Diana, no (Ooh-ooh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no (Oh-oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no (Oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no (Dirty, dirty Di-)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, no (Oh)
ダーティ・ダイアナ、やめてくれ

Dirty Diana, let me be
ダーティ・ダイアナ、俺を一人にしてくれ

[Post-Chorus]

Ooh-ooh

(Oh no...)

(Oh no...)

(Oh no...)