Artist: JPEGMAFIA (feat. Bobbi Rush)
Album: Veteran
Song Title: DD Form 214
概要
JPEGMAFIAのキャリアを決定づけた2018年のアルバム『Veteran』の核心であり、タイトルの意味を直接的に回収する象徴的なトラックだ。曲名の「DD Form 214」とは、アメリカ国防総省が発行する「除隊証明書」を指し、Peggy自身が空軍に所属してイラクやアフガニスタンに赴任した本物の「退役軍人(Veteran)」であるという事実を突きつけている。不協和音やインダストリアルなノイズが渦巻くアルバムの中で、Bobbi Rushの甘く官能的な90年代R&B風のボーカルが際立ち、美しさと不穏さが同居する異様なコントラストを生み出している。Peggyは自身の過酷なバックグラウンドを語りつつ、ゲームやプロレス、ギリシャ神話といったナードなメタファーを駆使して、シーンの有象無象を蹴散らす圧倒的な「階級(ランク)」の違いを見せつける。ヒップホップにおける「タフネス」の定義を、ストリートのギャングスタから「実戦を経験した元軍人」という極めて特異なリアルへと書き換えた、彼にしか作り得ないマスターピースである。
和訳
[Intro: Bobbi Rush]
Say it baby
言ってよ、ベイビー
Say it baby
言ってよ、ベイビー
You know it baby
分かってるでしょ、ベイビー
Show it baby
見せてよ、ベイビー
Slower baby
もっとゆっくり、ベイビー
Say it baby
言ってよ、ベイビー
[Bridge: Bobbi Rush]
Call me, call me
電話して、電話してよ
When you get lonely
寂しくなった時は
Darlin' you don't have to worry
ダーリン、心配なんていらないわ
I'll be there
私がそこに行くから
Be there in a hurry
急いで駆けつけるわ
Say it
言ってよ
Say it and I got you
言ってくれたら、私がついているから
Alright, I'll do it over
いいわ、もう一度やるから
No need to worry
心配なんていらない
Oh
Oh, oh, oh, oh
I get
Mmmmmm
Mmmmmm
Mmmmmmm
I don't
I get so lonely
とても寂しくなるの
I can't let just anybody hold me
誰にでも抱きしめさせるわけにはいかないわ
※90年代のR&B(Aaliyahなど)を彷彿とさせる甘くソウルフルなボーカル。過激なノイズラップが続くアルバム全体に対する一種のオアシスとして機能しつつ、後続のハードコアなバースとの不気味なコントラストを生み出している。
[Chorus: Bobbi Rush]
You are the one
あなただけよ
That lives in me
私の中で生きているのは
My dear
愛しい人
I don't want no one but you
あなた以外誰もいらない
I don't want no one but you
あなた以外誰もいらない
[Verse: JPEGMAFIA]
I really am, yeah, look
俺はマジでそうなんだ、見ろよ
I'm doing favors for petty pay
はした金のために骨を折ってやってるんだ
※音楽業界の底辺やアンダーグラウンドでの不当な扱い、あるいは軍隊時代に安い給料で命を懸けていた過去への皮肉な言及。
Run through the track like I'm Cirque du Soleil
シルク・ドゥ・ソレイユみたいにこのトラックを駆け抜ける
※世界最高峰のサーカス集団のように、複雑でアクロバティックなフロウやビートを軽々と乗りこなすというアピール。
All of this pain that I feel inside
俺が内側に抱え込んでいるこの痛みすべて
Baby you's got to be shitting me
ベイビー、ふざけてるのかよ
Sicker than all of your sickest shit
お前らの最高にヤバい曲よりも、俺のほうが病んでるぜ
※「sick」をヒップホップ的な「かっこいい/ヤバい」という意味と、凄惨な経験からくるトラウマやPTSDによる「病み」という本来の意味で掛けたダブルミーニング。
Flipping your heart like I'm flipping bricks
ブリックをさばくように、お前の心をひっくり返す
※「flip bricks」は大量のコカイン(レンガ状の塊)を密売するストリートの常套句。トラップミュージックのクリシェを用いながら、対象を麻薬ではなく「心(感情)」にすり替える彼特有の言葉遊び。
Niggas be talking that triple shh
あいつらはトリプルなんちゃらについて語りたがる
Like triple six, don't exist
トリプル・シックスなんて存在しないのにな
※「triple six (666)」は悪魔の数字。悪魔崇拝やオカルトを気取って恐ろしさをアピールするラッパーたち(あるいはホラーコアの系譜)に対する、「現実の戦争という本物の地獄を知らないくせに」という冷笑的なスタンス。
I am more Hades than Heracles
俺はヘラクレスというよりハデスだ
※ギリシャ神話の英雄(正義の味方)ではなく、冥界の王(死の支配者)であると自認している。戦地で死と隣り合わせだった彼のバックグラウンドを暗に示すライン。
Baggin' these bitches, I'm Birkin, b
このビッチどもをバッグに詰める、俺はバーキンだぜ、なぁ
※エルメスの最高級バッグ「Birkin」と、敵の死体を死体袋に詰める(bodybagging / 完膚なきまでに叩きのめす)ことを掛けた残酷で鮮やかなパンチライン。
You think your **** is hurting me? (Nah)
お前の〇〇が俺を傷つけるとでも思ってるのか?
※ネット上のディスや業界からの冷遇など、安全圏からの些細な攻撃では微塵もダメージを受けないという絶対的なタフネス。
Homie, come back when you get to my rank
ナァ、俺と同じ階級まで上がってきたらまた来な
※軍隊用語の「rank(階級)」。音楽的な実力や、人生の修羅場をくぐってきた経験値の圧倒的な差を見せつけている。
Call me young Peggy the skank
若きペギー・ザ・スカンクと呼んでくれ
I get the Ratchet and Clank
ラチェットとクランクを手に入れる
※PlayStationの人気アクションゲーム『ラチェット&クランク』の引用。「Ratchet」は銃を意味するスラングでもあるため、武器を調達して敵を撃つというギャングスタ的な文脈にゲームタイトルを巧みに落とし込むナードなギミック。
I whip that ass like Sasha Banks (Yuh, aha)
サーシャ・バンクスみたいにそのケツを引っぱたいてやる
※WWEの人気女性プロレスラー(現メルセデス・モネ)の引用。極度のプロレスオタクである彼らしいネームドロップ。
I whip yo ass like I'm Bruce Wayne with the cape, nigga
マントを着けたブルース・ウェインみたいにお前を叩きのめすんだよ
※バットマン(ブルース・ウェイン)のように、暗闇から現れて悪党(ヘイターたち)を容赦なく制裁するという宣言。
I can’t be sullied, (Uh, girl) and ain’t a damn thing changed on 'em
俺の名誉が汚されることはないし、あいつらに対して俺のスタンスは何も変わっちゃいねえ
I won’t be bullied (Girls, you know what I mean)
俺がいじめられることなんて絶対にない
Y'all know what the fuck I mean
俺が何を言ってるか、お前らなら分かるだろ
[Chorus 2: Bobbi Rush]
You know just how it goes so
どうなるか分かってるでしょ
Just so your own you know it
自分自身のことは分かってるはずよ
I'm giving you water
あなたに水を与えるわ
Baby, I'm a veteran
ベイビー、私はベテランよ
Baby, I'm a veteran
ベイビー、私はベテランよ
Baby, I'm a veteran
ベイビー、私はベテランよ
※曲のテーマであり、アルバムタイトルである「Veteran(退役軍人 / 経験豊富な者)」の連呼。Peggyのアイデンティティと誇りを、Bobbi Rushが神聖な響きをもって代弁している。
There's no need to question
疑う必要なんてない
There's no second guessing
迷う必要もないわ
Baby, I'm a veteran
ベイビー、私はベテランよ
Baby, I'm a veteran
ベイビー、私はベテランよ
[Outro]
Fuck, come on
クソ、来いよ
Woo shit, ahh
Girls, ah
Wait a minute, ma
ちょっと待ってくれよ
Mm, hmm
Man, ooh shit
おい、すげえな
Wait a minute mother fuck
ちょっと待てよ、クソが
Wait, ooh
待て
Work this son of a bitch, you
このクソ野郎をこき使ってやれよ
Ah, girls
Wait a minute...
ちょっと待ってくれ…
Girls
I then changed positions
それから体位を変えたんだ
I put one leg on the ceiling
片足を天井に上げて
And the other one just across the closet door
もう片方はクローゼットのドアに引っ掛けた
Ahh, fuck me
あぁ、たまんねえ
Ahh, just
※アウトロはポルノ映画やセックステープの実況を彷彿とさせる過激で生々しいモノローグ。ハードコアなミリタリーや暴力のメタファーと、極端に生々しい性の描写をシームレスに同居させるPeggyの歪んだユーモアと前衛的なアート性が表れている。
