Artist: JPEGMAFIA
Album: Veteran
Song Title: 1539 N. Calvert
概要
JPEGMAFIA(愛称:Peggy)のブレイクスルーとなった2018年のアルバム『Veteran』のオープニングを飾る本作は、彼のルーツとアティチュードを象徴する極めて重要な楽曲だ。タイトルの「1539 N. Calvert」とは、メリーランド州ボルチモアにかつて存在したDIYアートスペースでありライブハウス「Bell Foundry」の住所を指している。この場所はPeggyをはじめとする地元のアンダーグラウンド・アーティストにとっての聖地であったが、市当局によって強制的に閉鎖された。この曲は、失われたホームグラウンドへのレクイエムであると同時に、メインストリームのヒップホップシーン、政治家、そしてネット上のヘイターたちに対する痛烈な宣戦布告である。不穏でありながらもグルーヴィーなセルフプロデュースのビートの上で、プロレスラーのエントランステーマからネットミーム、マニアックな映画の引用までを縦横無尽にサンプリングし、オタク文化とストリートのリアルを融合させる彼独自の「インダストリアル・ヒップホップ / エクスペリメンタル・ラップ」の確立を高らかに宣言している。
和訳
[Intro]
Yeah
One, one
マイクチェック、ワン、ワン
Yeah (She wanna sit on my lap)
あの子は俺の膝の上に座りたがってる
Yeah, she wanna sit on my lap
あの子は俺の膝の上に座りたがってるんだ
(You think you know me)
※WWEの伝説的プロレスラーであるエッジ(Edge)のエントランステーマ曲『Metalingus』の冒頭フレーズからのサンプリング。JPEGMAFIAは熱狂的なプロレスファンとして知られ、このサンプリングは「お前ら俺の何を知ってるって言うんだ」というリスナーへの挑発的なメッセージとして機能している。
She wanna sit on my lap, yeah
あの子は俺の膝の上に座りたがってる
She wanna sit on my lap
あの子は俺の膝の上に座りたがってるんだ
(Da-damn, Peggy)
※「Damn, Peggy」は彼のシグネチャータグ(プロデューサータグ)。ファンから集めたボイスメモの一つを採用している。
(This bitch really out here gonna watch herself)
このビッチはマジでここで自分のことを見てるつもりか
She wanna sit on my lap
あの子は俺の膝の上に座りたがってる
(What? Hahahaha, what?)
(Ayy)
Yeah, she wanna sit on my lap, yeah
あの子は俺の膝の上に座りたがってる
(Like three donuts)
ドーナツ3つくらいかな
(For real, though, what, where we orderin' the food, dummy? What you order?)
マジな話、どこでメシ頼むんだよバカ? お前何頼む?
Oh God, no
おい勘弁してくれよ
Fuck Postmates (Haha)
ポストメイツなんてクソくらえだ
※Postmatesはアメリカのフードデリバリーサービス。スタジオでの仲間との何気ない会話をそのまま収録し、DIY感を強調している。
Ayy, ayy, uh, ayy, uh, what, what, what, uh, what (Look man), yeah
I need all (Let's get it)
全部いただくぜ
[Verse]
I need all my bitches same color as Drake
俺の女は全員ドレイクと同じ色じゃなきゃダメだ
※ドレイクのような「ライトスキン(肌の色の薄い黒人)」の女性を好むという、メインストリームのラップシーンにはびこるステレオタイプなクリシェを皮肉っている。彼特有のブラックユーモア。
If they not, then they gettin' rocked
もしそうじゃなきゃ、痛い目を見るぜ
Put that Pyrex in the pot (Right)
パイレックスを鍋にぶち込め
※Pyrexは耐熱ガラスのブランドで、ストリートではクラック・コカインの精製(クッキング)に使われる定番の道具。トラップミュージックの常套句をあえて使っている。
I don't give a fuck if you out there in the 6ix (Turn around)
お前がシックスにいようが知ったこっちゃねえ
※「6ix」はトロントの愛称であり、ドレイクの地元を指す。直前のドレイクのラインから繋がり、業界のトップスターであっても媚びないというスタンスの表明。
Suck a dick, pussy boy you gettin' hit with the (Woo, uh, uh, uh)
俺のイチモツをしゃぶれ、腰抜け野郎、お前はこれで撃たれるんだ
And I'm really with the shits, so you not gon' take my hits
俺はマジでヤバい奴だから、俺のヒットは奪わせないぜ
※「with the shits」はストリートの揉め事や危険な状況にいつでも応じるというスラング。「hits」はチャートの「ヒット曲」と、殺し屋の「ヒット(暗殺・攻撃)」のダブルミーニング。誰にも自分の成果や命は奪わせないという意味。
Break my heart while I break yo' bitch (Right)
お前が俺の心を折る間に、俺はお前の女を抱く
Two black cards, let me cloak my wrist (Okay)
2枚のブラックカード、手首を隠させろ
※ブラックカードは富の象徴。手首を隠す(cloak)は、ラッパーたちが高級時計を見せびらかすのに対し、自分はあえて隠す、あるいは見せつける必要がないというアンチ・フレックスの姿勢を示している。
Fuck a diss, boy, I'm draggin' bodies like it's Metal Gurr
ディスなんてクソくらえだ、メタルギアみたいに死体を引きずってやる
※小島秀夫監督のステルスアクションゲーム『Metal Gear Solid』の引用。敵に見つからないよう死体を引きずって隠すゲームシステムに例え、ビーフでディス曲を出すような生ぬるいことはせず、完全に抹殺するというメタファー。
I don't curr 'bout your fuckin' status, Peggy got no furr, yeah (Okay)
お前のステータスなんて気にしねえ、ペギーに恐怖はねえんだよ
※「curr」はcare、「furr」はfearの発音をワザと崩して韻を踏んでいる。インディペンデントとしての誇り。
Ooh, yeah, ooh, yeah, yeah
Jugg and I come with them bands, ayy
強盗して札束を手に入れるぜ
※「Jugg」は窃盗、強盗、詐欺などで金を稼ぐことを意味するストリートスラング。「bands」は札束。
Gun do not come with no plan, ayy (Okay)
銃を抜くのに計画なんていらねえ
Keep a Kimber at the pad, ayy
家にはキンバーを置いてある
※Kimberは高級な1911ピストルなどを製造する銃器メーカー。「pad」は自分の家やアジトのこと。常に武装して身構えている状態。
Crackers never get a pass, wait (Turn around)
白人どもにフリーパスは絶対にやらねえ、待てよ
※「Cracker」は白人を指す蔑称。白人がNワードを安易に使ったり、ブラックカルチャーを搾取したりすることに対する極めて厳しいスタンスを提示している。ヒップホップファンの間では、彼のライブに来る白人のファン層に対するアイロニーとしても解釈されている。
Credit like my name was Chad, ayy
チャドって名前みたいにクレジットがある
※「Chad」は白人の典型的な名前。アメリカ社会において「白人男性(Chad)」が持っている無条件の特権や社会的信用の高さ(クレジットスコア)を皮肉り、自分もそれと同等の力を持っていると誇示している。また、ネットスラングの「アルファメイル(強者)」としてのChadの意味も含む。
Watch who you fuckin' tag, babe (Alright)
誰をタグ付けするか気をつけな
※SNSでむやみに彼を巻き込もうとするヘイターやネット上の厄介な連中への警告。
Okay, get yo' demo out my face
お前のデモ音源なんて俺の目の前からどけろ
Shawty, tryna give that dick to Kelly Conway
ケリー・コンウェイにこのナニをブチ込んでやりてえ
※Kellyanne Conway(ケリーアン・コンウェイ)は、ドナルド・トランプ政権で大統領顧問を務めた保守派の政治家。JPEGMAFIAは自身の曲で度々右翼系の人物や政治家を過激にネームドロップして挑発するスタイルをとっている。
Pull my case, boy (Okay), I beat that shit like Lennon beat his bae
俺の過去を調べてみろよ、レノンが嫁を殴ったようにそのビートを叩きのめしてやる
※ジョン・レノンが最初の妻シンシアに対してDVを働いていたという事実を引き合いに出し、音楽を作る(ビートを叩く/乗る)ことの凄まじさをブラックジョークとして表現している。タブーを恐れない彼らしいパンチライン。
Young O'Shea (Young Ice Cube on the map, motherfucker, turn around)
若きオシェアだ
※O'Shea Jacksonは西海岸の伝説的グループN.W.A.のメンバー、Ice Cubeの本名。N.W.A.時代のIce Cubeのような過激で反体制的、かつ社会派なスタンスを自身に重ね合わせている。
I need a bitch with long hair like Myke C-Town (Yeah)
マイク・C・タウンみたいなロン毛の女が必要だ
※Myke C-TownはYouTubeの有名なヒップホップレビューチャンネル「Dead End Hip Hop」のメンバーで、ドレッドの長髪がトレードマーク。音楽レビュアーをいじりつつシャウトアウトしている。
You talking shit (Look), I'm talking shit, you catch a beat down (Yeah, okay)
お前はクソみたいな文句を垂れる、俺もトラッシュトークをする、そしてお前はボコボコにされる
I know you never in the hood or in the streets now (Hey, turn around)
お前がフッドやストリートにいたことなんてないのは分かってるぜ
※ネット上でギャングスタを気取っているだけのキーボードウォーリアー(ネット弁慶)に対する痛烈なディス。
And still, I'm hearin' that you really want some beef now? (Uh, uh, uh, alright)
それなのに、いっちょ前にビーフを求めてるって噂を聞いたぞ?
Bruh, take your tree out my backwood
おい、俺のバックウッズからお前の安い葉っぱをどけろ
※Backwoodsはブラント(中身を抜いてマリファナを詰めるための葉巻)として人気のあるブランド。「tree」はマリファナを指すスラング。純度の低い安物のマリファナを、自分の上質なブラントに混ぜるなという拒絶。転じて、自分の周りにフェイクな人間を近づけないという意味。
Made the beat 'cause I'm that good (Damn)
俺がこのビートを作った、それだけ俺はヤバいってことだ
※JPEGMAFIAはラッパーであると同時に、卓越したビートメイカー・プロデューサーでもある。完全なセルフプロデュース能力への自信の表れ。
Got your girl on her hands (Eugh), Johnny 5 with the cans (Okay)
お前の女を四つん這いにさせる、ジョニー5みたいに缶を持ってるぜ
※Johnny 5は1986年の映画『ショート・サーキット』に登場するロボットキャラクター。「cans」はヘッドホンのイヤーカップ、あるいは銃のサイレンサー(サプレッサー)、さらには女性の胸を指すスラングなど、極めて高度なマルチ・ミーニングとしてファンコミュニティで考察されている。
Fuck a blog, fuck a fan, hope my record get panned (Look)
ブログなんてクソくらえ、ファンもクソくらえだ、俺のレコードなんて酷評されちまえ
※音楽メディア(Pitchforkやブログなど)の評価や、一部の有害なファンカルチャーへの媚びを一切否定。あえて酷評されること(panned)を望むほどの強烈なパンク精神を示している。
'Least I made you niggas dance
少なくともお前らを踊らせてやったからな
Fuck 12, nigga, stamp
サツなんてクソくらえだ、これこそが俺のスタンプだ
※「12」は警察を指すストリートスラング。元々は麻薬捜査局(Narcotics)を指すとも言われる。「stamp」はストリートにおいて品質や本物であることを「承認・保証する」こと。警察への反骨精神こそが自分のリアルな保証印であるという宣言。
[Outro]
Oh, your body, oh, you got it
ああ、君の体、ああ、君は持ってる
On my body, my body, on my body
俺の体の上に、俺の体、俺の体の上に
Oh, your body, oh, you got it
ああ、君の体、ああ、君は持ってる
(Here to i–)
ここに…
