Artist: A$AP Rocky (feat. Joe Fox)
Album: AT.LONG.LAST.A$AP
Song Title: Pharsyde
概要
本作「Pharsyde」は、2015年にリリースされたA$AP Rockyの2ndアルバム『AT.LONG.LAST.A$AP』に収録された、極めて内省的でサイケデリックな哀愁漂うトラックである。プロデューサーにDanger Mouseを迎え、ロンドンの路上で発掘されたシンガーJoe Foxのオーガニックなボーカルと、アンビエントなギターの音色がメランコリックな世界観を構築している。タイトルの「Pharsyde」は、90年代の西海岸オルタナティブ・ヒップホップグループ「The Pharcyde」へのオマージュであると同時に、「Far Side(向こう側、あの世、あるいは幻覚の果て)」を意味するダブルミーニングとなっている。リリックでは、地元ニューヨーク・ハーレムのジェントリフィケーション(地域の高級化・再開発)によるコミュニティの分断、ストリートにはびこる凄惨な暴力と死、そしてLSD体験を通じて得た精神的な覚醒と虚無感が赤裸々に語られる。トップスターへと登り詰めたRockyが、自らのルーツと内面の闇に深く向き合ったポエティックな名曲である。
和訳
[Chorus: Joe Fox & A$AP Rocky]
Love on the low, love everywhere, I go
ひそかな愛、俺がどこへ行こうとも、愛はそこにある
And I can't face, that all I need, is right where I, belong
そして俺は直視できないんだ、俺に必要なものはすべて、俺の居場所にあるってことを
※世界中を飛び回って名声を得ても、結局本当に大切なものは自分のルーツ(地元や仲間)にあるという気づきと、それに向き合うことの恐れ。
Love on the low (Yeah, yeah), love everywhere, I go (Yeah, uh)
ひそかな愛、俺がどこへ行こうとも、愛はそこにある
And I can't face, that all I need, is right where I, belong (Uh, uh, yeah)
そして俺は直視できないんだ、俺に必要なものはすべて、俺の居場所にあるってことを
Yeah, yeah, yeah
So (Uh, yeah), so (Uh, yeah, yeah, uh, uh, yeah)
だから、だから
[Verse 1: A$AP Rocky]
My ears are ringing, my palms are shaking, my heart is racing
耳鳴りがして、手のひらは震え、心臓が激しく鼓動する
Somebody's mama's heart is aching, can't take it, partly fainted
どこかの母親の心が痛みに引き裂かれている、耐えきれず、半ば気を失っている
※ストリートで若者が命を落とし、その母親が絶望する凄惨な現場のフラッシュバック。
Found his body parts in awkward places
奴のバラバラになった遺体が、とんでもない場所で見つかった
Like apartments, basements
アパートや、地下室のようにな
Garbage, vacant lots, garaging spaces
ゴミ捨て場、空き地、それに車庫のスペース
Harlem's far too spacious
ハーレムってのは、あまりにも広すぎるんだよ
Sometimes I wish I could get away and charter spaceships
時々、宇宙船をチャーターしてどこか遠くへ逃げ出せたらと思う
To get away from my inhuman race with hearts of Satans
サタンの心を持った、この非人間的な人種から逃げ出すためにな
※同じ黒人(人間)同士で残虐に殺し合うストリートの環境に対する深い絶望と嫌悪。
Kick off my Maison Martin's, lay on back like Martha Mason
メゾン・マルタンを脱ぎ捨てて、マーサ・メイソンのように仰向けに寝転がる
※「Maison Martin's」はMaison Martin Margielaの靴。「Martha Mason」は小児麻痺により「鉄の肺(Iron Lung)」と呼ばれる人工呼吸器の中で何十年も仰向けのまま生きた実在の女性。ハイブランドの靴を脱ぎ捨てて安らぎを求める様子と、身動きが取れない閉塞感を掛けている。
Smoke away my iron lung to later die at 71, uh
俺の鉄の肺を煙で燻し、後に71歳で死ぬのさ
※「iron lung(鉄の肺)」は、マリファナを大量に吸い込める強靭な肺を意味するヒップホップスラング(Wu-Tang Clanの楽曲などでも知られる)。マーサ・メイソンが71歳で亡くなった事実と掛け、自分も死ぬまでマリファナを吸い続けるだろうというポエティックなパンチライン。
[Refrain: Joe Fox & A$AP Rocky]
I lay down now
俺は今、横になる
There's so much dirt up in the streets
このストリートには、あまりにも多くの汚れが満ちているからな
※「dirt」は泥、犯罪、不正、あるいは死体のこと。
You gotta keep a piece, peace
ピースを保つために、ピースを持ち歩かなきゃならないんだ
※「piece(銃)」と「peace(平和・命の安全)」のダブルミーニング。平和に生きるために武器を持たざるを得ないゲットーの矛盾。
Lay down now
今、横になる
As I lay me down to sleep
眠りにつくために横たわる時
I pray to God I rest in peace
俺が安らかに眠れるよう、神に祈る
I pray the Lord my soul to keep
主が俺の魂を守ってくれるように祈るんだ
※「Now I lay me down to sleep...」から始まる英語圏の伝統的な子供の就寝時の祈りの言葉を引用し、いつ死んでもおかしくないフッドの恐怖を表現している。
[Verse 2: A$AP Rocky & Joe Fox]
Gentrification split the nation that I once was raised in
ジェントリフィケーションが、俺がかつて育った国(コミュニティ)を分断した
※ジェントリフィケーション(地域の高級化)により、ハーレムから古くからの貧しい住人が追い出され、街の姿が変わってしまったことへの嘆き。
I don't recall no friendly neighbors face on my upraisin'
俺が育つ過程で、親切な隣人の顔なんて思い出しちゃいないがな
Back in my younger days of razor blades with gangs who bangin'
カミソリの刃を持ち歩き、ギャングが抗争していた俺の若い頃
Never stood a chance, them boys don't dance, but left 'em Harlem Shaking
生き残るチャンスなんてなかった、あの連中はダンスなんてしなかったが、奴らをハーレム・シェイクさせてたぜ
※「Harlem Shake」は肩を揺らす有名なダンスだが、ここでは銃撃されて地面で痙攣する死に際の姿の凄惨なメタファーとして使われている。
On the pavement, man, my generation fucked, and my society
舗装道路の上でな、なあ、俺の世代は終わってる、俺の社会もだ
Very trippy pages in my diary
俺の日記には、最高にトリッピーなページが刻まれてる
It's the irony, how LSD inspired me, to reach the higher me
皮肉なもんさ、LSDが俺にインスピレーションを与え、より高次の自分へ到達させてくれるなんて
※過酷な現実からの逃避として使用した幻覚剤(LSD)が、結果的に精神的な覚醒やアーティストとしての進化をもたらしたという告白。
Used to never give a damn, now I don't give a fuck entirely
昔から気になんてしちゃいなかったが、今じゃ完全にどうでもよくなった
I think my pride died in me, somewhere inside of me
俺の中のプライドは死んだと思う、俺の内側のどこかで
It's gotta be, a whole 'nother side of me
それはきっと、俺の全く別の側面(Pharsyde)なんだろうな
If you seen the shit that I done seen in 26 years of livin'
もしお前が、俺がこの26年の人生で見てきたものを見たとしたら
That's how many fucks I've given... (Fuck)
それが俺がこれまで気にしてきた(気にするのをやめた)数と同じだ…(クソ)
※「give a fuck(気にする)」と掛け、26年間で無数の惨劇を見てきたため、今ではもう完全に感情が麻痺してしまった(Zero fucks given)という虚無感の表れ。
So
だから
[Chorus: Joe Fox & A$AP Rocky]
Love on the low (Yeah, yeah, so), love everywhere I go (Yeah, uh, so)
ひそかな愛、俺がどこへ行こうとも、愛はそこにある
And I can't face that all I need is right where I belong (Yeah, yeah, uh, yeah)
そして俺は直視できないんだ、俺に必要なものはすべて、俺の居場所にあるってことを
[Refrain: Joe Fox & A$AP Rocky]
I lay down now
俺は今、横になる
There's so much dirt up in the streets
このストリートには、あまりにも多くの汚れが満ちているからな
You gotta keep a piece, peace
ピースを保つために、ピースを持ち歩かなきゃならないんだ
Lay down now
今、横になる
As I lay me down to sleep
眠りにつくために横たわる時
I pray to God I rest in peace
俺が安らかに眠れるよう、神に祈る
So (So), so (So)
だから、だから
[Outro: Joe Fox]
Love on the low, love everywhere I go
ひそかな愛、俺がどこへ行こうとも、愛はそこにある
And I can't face that all I need is right where I belong
そして俺は直視できないんだ、俺に必要なものはすべて、俺の居場所にあるってことを
