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Holy Ghost - A$AP Rocky (feat. Joe Fox) 【和訳・解説】

Artist: A$AP Rocky (feat. Joe Fox)

Album: AT.LONG.LAST.A$AP

Song Title: Holy Ghost

概要

本作「Holy Ghost」は、2015年にリリースされたA$AP Rockyの2ndアルバム『AT.LONG.LAST.A$AP』のオープニングを飾る、極めて内省的でコンシャスなマイルストーン的トラックである。プロデューサーにDanger Mouseを迎え、1960年代のサイケデリック・ロックやブルースの要素を取り入れたダークで浮遊感のあるサウンドスケープが展開されている。リリックの主題は、現代のキリスト教会にはびこる物質主義や偽善、そして音楽業界における「魂の売買(セルアウト)」に対する痛烈な批判だ。盟友A$AP Yamsの急逝という大きな喪失を経験したRockyが、腐敗した仲介者(牧師やレーベル)を介さず、自分自身と神との純粋な精神的繋がりを再定義しようとする姿勢が描かれている。また、客演のJoe Foxは、ロンドンのソーホーの路上で弾き語りをしていたところを偶然Rockyに見出され、アルバムの最重要曲に抜擢されたという、ヒップホップにおける現代のシンデレラストーリーを体現した存在でもある。

和訳

[Intro: Wayne Duvall]

Aye! I have a message from the Most High that says: "This negra kept his soul from the Devil"
おい! いと高き方(神)からのお告げだ、「この黒人は悪魔に魂を売らなかった」とな

It's true! I guess, I mean... wait a minute now!
本当さ! たぶんね、いや… ちょっと待てよ!

Is you people really that goddamn ign'ant?
お前ら、本当にそこまでクソ無知なのか?

Really? Really?
マジで? 本当に?
※コーエン兄弟の映画『オー・ブラザー!』(O Brother, Where Art Thou?)からの音声サンプリング。ロバート・ジョンソンの「十字路で悪魔に魂を売ってブルースの才能を手に入れた」という伝説のパロディシーン。音楽業界で成功するために魂を売る(セルアウトする)現代のラッパーたちへの強烈な皮肉へのセットアップとなっている。

[Verse 1: A$AP Rocky]

Church bells and choir sounds, tell 'em, "Quiet down"
教会の鐘と聖歌隊の歌声、奴らに「静かにしろ」と伝えてくれ

Bow your head, the Most High's around
頭を垂れな、いと高き方(神)が近くにおられる

Cocktails, guys and gals miss me, ties and gowns happen now
カクテル、男も女も俺を恋しがる、今じゃネクタイとドレスのパーティさ

My entire sound's how you tryna sound, stop it now
俺のサウンドのすべてが、お前らの真似したいサウンドなんだ、もうやめとけ
※自身がメインストリームで成功した途端に、そのスタイルを安易に模倣(バイト)しようとする他のラッパーたちへの牽制。

They ask me why I don't go to church no more
なぜもう教会に行かないのかと人は聞く

'Cause church is the new club and wine is the new bub
教会は今や新しいクラブで、ワインは新しいシャンパンだからさ
※神聖なはずの教会がナイトクラブのように世俗化し、キリストの血の象徴である聖餐式のワインが、クラブで豪遊するためのシャンパン(bub=bubbly)と同列に成り下がっているという批判。

And lies is the new drugs, my sister the next stripper
嘘は新しいドラッグ、俺の妹は次のストリッパー

My brother the next victim, my usher the next tricker
俺の兄弟は次の犠牲者、案内係は次のペテン師さ
※宗教指導者たちが信者に「嘘」というドラッグを与えて思考を麻痺させ、人々を搾取している現状の描写。

Satan givin' out deals, finna own these rappers
サタンがレコード契約をバラ撒き、ラッパーどもを所有しようとしてる

The game is full of slaves, and they mostly rappers
このゲームは奴隷で溢れかえってる、そしてその大半がラッパーだ
※ここでの「サタン」は悪徳なレコード会社や業界の重役たちのメタファー。目先の金や名声(Deals)と引き換えにアーティストとしての自由を奪われる現代の奴隷制度への言及。

You sold your soul first, then your homies after
お前はまず自分の魂を売り、その後に仲間たちを売った

Let's show these stupid field niggas they could own they masters
この愚かな畑の黒人どもに、自分たちの主人を所有できるってことを教えてやろうぜ
※「field niggas(農園の奴隷)」はマルコムXの演説などで用いられる表現。「masters」は「奴隷の主人(レーベルのボス)」と「音源の原盤権(Master recordings)」というヒップホップにおける究極のダブルミーニング。搾取される側から脱却し、自身の権利(マスター)を所有すべきだというコンシャスなメッセージ。

Holy smokes, I think my pastor was the only folk
なんてこった、俺の教会の牧師こそが唯一の人間だったみたいだ

To own the Rollie, Ghost and Rolls Royces with no Holy Ghost
聖霊も持たずに、ロレックスやロールスロイス・ゴーストを所有してる奴はな
※「Holy Ghost(聖霊)」を持たず、信仰心を金儲けの道具にして「Rolls Royce Ghost」を乗り回すメガチャーチの牧師の腐敗ぶりを、完璧な韻で痛烈に皮肉っている。

And get your shit prepared, face your fears, all you niggas scared
さあ準備を整えな、自分の恐怖と向き合え、お前ら全員ビビってるんだろ

Say your prayers, pray you fit upstairs, it's our only hope
祈りを捧げろ、天国に行けるように祈るんだ、それが俺たちの唯一の希望さ
※「fit upstairs」は上の階(天国)へ行くこと。

[Refrain: A$AP Rocky & Wayne Duvall]

Church bells and choir sounds, tell 'em, "Quiet down"
教会の鐘と聖歌隊の歌声、奴らに「静かにしろ」と伝えてくれ

Bow your head, the Most High's around, Lord
頭を垂れな、いと高き方(神)が近くにおられる、主よ

(These things are not right, these things is not right, Hell!) Lord
(こんなの間違ってる、こんなの正しくない、地獄だ!)主よ

(Nobody's ever defined) Lord
(誰も定義なんてしちゃいない)主よ

[Verse 2: A$AP Rocky]

The pastor had a thing for designer glasses
あの牧師はデザイナーズのメガネがお気に入りだった

Yeah, I'm talkin' fancy plates and diamond glasses
ああ、豪華な皿にダイヤモンドのグラスのことさ
※「glasses」を視力矯正の眼鏡と、酒を飲む高級グラスで掛けている。聖職者にあるまじき豪奢な生活の描写。

The ushers keep skimmin' the collection baskets
案内係は献金カゴから金をくすね続けてる

And they tryna dine us with some damn wine and crackers
それなのに奴らは、ちっぽけなワインとクラッカーで俺たちをもてなそうとするんだ
※信者から金を搾取しておきながら、教会の儀式(聖餐式)では原価の安いワインとクラッカー(キリストの血と肉の象徴)しか分け与えない偽善。

Who's more important than your Lord and Savior?
お前の主であり救い主よりも重要な存在がどこにいる?

Won't let the pearly gates up in this probably due to all your poor behavior
お前のその酷い行いのせいで、真珠の門をくぐることはできないだろうよ
※「pearly gates」は天国への門。

My mental got a couple tips to save ya
俺の頭には、お前を救うためのちょっとした知恵がある

Just be sure to count it as my only favor, thank me later, uh
これを俺からの唯一の恩恵だと思えよ、感謝は後でいい

Every night, I stayed up sayin' prayer, made me greater, uh
毎晩遅くまで起きて祈りを捧げたことが、俺を偉大にしたんだ

Let's savior chasin' green for collard greens and baked potatoes
カラードグリーンとベイクドポテトのために、札束を追いかけるのをやめにしようぜ
※「savior」は救世主だが、ここでは「savor(味わう)」や「save ya(お前を救う)」の掛詞。「green(金)」への執着を捨て、ソウルフードである「カラードグリーン」などの素朴な食事で満たされる生き方を見直そうという提案。

On the table, pray for cable, hit the label, now, we major, high
食卓で、ケーブルテレビが見れるように祈ってた俺が、レーベルと契約し、今じゃメジャーでハイになってる
※かつての貧困時代(テレビの契約すらできなかった)から、メジャーレーベルと契約し大成功を収めた自身の軌跡の対比。

I got my own relationship with God, Lord
俺には俺自身の、神との関係があるんだ、主よ
※腐敗した牧師や形骸化した教会という「仲介者」を通さずとも、自分は神と直接繋がり、祈りを通じて自己を確立しているという崇高な宣言。

[Chorus: Joe Fox & A$AP Rocky, Joe Fox]

Holy Ghost, I'm on my knees, I'm on my knees
聖霊よ、俺はひざまずいている、ひざまずいている

Holy Ghost, you're all I need, you're all I need
聖霊よ、俺に必要なのはあなただけだ、あなただけなんだ

Holy Ghost, I'm on my knees, I'm on my knees
聖霊よ、俺はひざまずいている、ひざまずいている

Holy Ghost, (Let me down, let me down, let me down) you're all I need, you're all I need (Let me down, let me down, down)
聖霊よ、(俺を見捨てないでくれ)俺に必要なのはあなただけだ、あなただけなんだ(俺を見捨てないでくれ)
※バックボーカルの「Let me down」は「Don't let me down(失望させないでくれ)」の意として機能し、神への切実な祈りとすがりつくような感情を増幅させている。

Holy Ghost, (Let me down, let me down, let me down) I'm on my knees, I'm on my knees (Let me down, let me down, down)
聖霊よ、(俺を見捨てないでくれ)俺はひざまずいている、ひざまずいている(俺を見捨てないでくれ)