Artist: A$AP Rocky
Album: LONG.LIVE.A$AP
Song Title: Hell
概要
本作「Hell」は、2013年リリースのデビューアルバム『LONG.LIVE.A$AP』に収録された、ダークで内省的なアトモスフィアが漂う異色作である。プロデュースを手掛けたのは、Rockyのブレイクを牽引した天才ビートメイカー、Clams Casino。重厚なストリングスと歪んだコーラス、そしてインディー・アーティストであるSantigoldのエモーショナルなボーカルが交差するシネマティックなサウンドスケープは、ストリートの過酷さとハイファッションの煌びやかさが混在するRockyの二面性を完璧に音像化している。リリック面では、貧困と暴力が支配するフッド(地獄)から這い上がり、大金を手にした「Pretty Flacko」としての栄光を誇示しつつも、かつての仲間たちが犯罪で命を落とす現実から逃れられないという運命の受容とパラノイアが描かれている。メンフィスやシカゴのラップレジェンドたちへの敬意を織り交ぜながら、善悪の境界線で「地獄が求める新たなアイドル」として君臨する覚悟を宣言した、アルバム屈指のディープなトラックだ。
和訳
[Intro: ASAP Rocky]
Uh, uh
[Verse 1: ASAP Rocky]
We use to wear rugged boots (Uh), now it's all tailored suits (Yeah)
かつてはボロボロのブーツを履いてたが、今じゃ全身仕立ての良いスーツだ
※「rugged boots」はニューヨークのストリートの象徴であるティンバーランドのブーツなどを指す。コーナーでハッスルしていた時代から、ハイエンドなファッショニスタへの華麗な転身を表現している。
Audemars Piguets for my criminal recruits
犯罪に手を染めてる俺のダチどもにはオーデマ・ピゲをあてがってやる
※超高級時計ブランド「Audemars Piguet(AP)」。自分が成功したことで、ストリートで危険な橋を渡っているクルー全体を経済的に引き上げているというフレックス。
Champagne flutes, bumpin' rhythm and the blues (Right)
シャンパングラスを傾けながら、R&Bを爆音で鳴らす
My partner made bad moves, he might end up in the news (Uh)
俺の相棒はヘマをやらかした、ニュースのトップを飾っちまうかもな
※「bad moves」は殺しや強盗などの重犯罪。逮捕されるか殺されてニュース番組で報道される、ストリートの隣り合わせの死と暴力。
Or end up in the tombs or living in the boondocks (Uh)
それか「トムズ」送りになるか、ど田舎で身を潜めることになるかだ
※「the tombs」はマンハッタンにある悪名高い拘置所(Manhattan Detention Complex)の通称。「boondocks」は警察から逃れるために潜伏する隔離された田舎町のこと。
Ridin' by the rules, I'll abide by it soon (Yeah)
ルールの通りに生きるさ、俺もすぐにそれに従うことになる
※ストリートの掟(No Snitchingなど)や因果応報のルールから、どれほど成功しても逃れられないという運命の受容。
See the situation we sophisticated goons
この状況を見てみろよ、俺たちは洗練された悪党なんだ
※「sophisticated goons」は、ギャングスタとしてのルーツを持ちながら、ハイファッションを身に纏いアートを語るA$AP Mobの美学そのものを表す重要なフレーズ。
I know you live by the gun, then you die by it too (Right)
銃で生きるなら、銃で死ぬことになるのは分かってるさ
Niggas call me prophecy (Uh), swaggin' in philosophies (Yeah)
奴らは俺を予言者と呼ぶ、哲学を身に纏ってスワッグを見せつけるんだ
White on white wagon, call that motherfucker Socrates (Yeah)
真っ白なGワゴン、あのクソヤバい車をソクラテスと呼んでくれ
※白塗りの高級車(Mercedes G-Wagonなど)の純白さと、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの知性を掛け合わせた、Rocky特有のシュールで知的なワードプレイ。
Rat-ass niggas (Uh), fightin' for a block of cheese
ネズミ野郎どもが、チーズの塊を巡って争ってやがる
※「Rat」は密告者(スニッチ)。「cheese」は金のスラング。ストリートの端金を巡って仲間を警察に売るような、浅ましい連中への強烈な皮肉。
Catch me out in China stuntin', yeah, I'm 'bout my guapanese (Yeah)
俺が中国で豪遊してる姿を見てみな、ああ、俺はグアパニーズに夢中さ
※「guap」は大金のこと。JapaneseやChineseなどの語尾「-nese」と組み合わせた造語「Guapanese(金という名の言語)」を俺は話すんだというジョーク。
My shoe game serious, so serious, Wapanese
俺のシューズゲームはガチだ、マジで真剣なんだよ、ワパニーズさ
※「shoe game」はスニーカーのコレクション。「Wapanese」は元々日本文化に傾倒する白人(Weeaboo)を指すネットスラングだが、ここでは日本発のハイエンドなストリートウェア(BAPEやVisvimなど)への深い愛好を表す意味と、前の行のGuapaneseとの韻踏みとしてヒップホップファンの間では解釈されている。
Niggas say I'm blessed, my bad, I forgot to sneeze (Achoo)
皆が俺は恵まれてるって言うが、わりぃ、くしゃみをするのを忘れてたぜ、ハクション
※英語圏ではくしゃみをした人に「Bless you(お大事に/神のご加護を)」と声をかける習慣がある。大金を手にして「Blessed(祝福された)」状態であることをくしゃみと掛けた、極めてスマートなパンチライン。
There your reasons go, bitch (Yeah)
これがその理由だ、ビッチ
I got some tissues for your issues, tell 'em blow this
お前の問題を拭くためのティッシュを持ってるぜ、これで鼻でもかみな
※「issues」はヘイターたちが抱える不満や嫉妬のこと。泣き言を言う連中にティッシュを差し出すという煽り。
Bitch
ビッチめ
[Chorus: Santigold]
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
※過去や周囲の雑音にとらわれず、自身の野望だけを見据えて突き進む姿勢。
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
※ヘイターや批評家たちが、Rockyが失脚する日を今か今かと待ち望んでいる様子。
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long (Yeah)
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
[Verse 2: ASAP Rocky & Santigold]
Roger, Roger, tell 'em roger that (It will hit you on the head, uh)
ラジャー、ラジャー、奴らに了解したと伝えてくれ(頭をガツンと殴られるような衝撃が来るわよ)
It's the gold teeth, French braids, call me Project Pat (You don't even gotta hate me now, babe, yeah)
金歯にフレンチ・ブレイズ、俺をプロジェクト・パットと呼んでくれ(もう私を憎む必要なんてないのよ、ベイビー)
※テネシー州メンフィスの重鎮グループThree 6 Mafiaの関連メンバーであり、南部ヒップホップの伝説的存在であるProject Patへの多大な敬意。彼のトレードマークである金歯と編み込みヘア(フレンチブレイズ)に自身の姿を重ねている。
With the stocking cap, Jason mask on, probably strapped (Just as sheeps get led, oh, uh)
ストッキングのキャップにジェイソンのマスク、当然銃も持ってるぜ(羊たちが導かれていくように)
※強盗の典型的な服装。ハイファッションに身を包むようになっても、ストリートの冷酷なハスラーとしてのルーツを忘れていないことの誇示。
It's the Rocky cat, turn my swag on, holler back (You could see where I'm going, yeah)
ロッキー・キャットの登場だ、俺のスワッグのスイッチを入れる、連絡してきな(私がどこへ向かっているのか、あなたにも見えるはず)
※Soulja Boyのヒット曲「Turn My Swag On」へのオマージュ。
Throw a dollar at a bidd-itch, tell 'er suck my di-dick (Uh)
ビッチに1ドル札を投げつけて、俺のイチモツをしゃぶれと言ってやる
※E-40やSnoop Doggらが多用した「-izzle」や「-idd」といった西海岸~南部特有のスラング発音(bitch→bidd-itch、dick→di-dick)を意図的に使用し、多彩なフロウをアピールしている。
'Cause they hatin' on my clid-dick
奴らは俺のクリックを妬んでるからな
※「clid-dick」はclique(仲間、派閥=A$AP Mob)のこと。
'Cause we made it when we did it (Right), hate it 'cause they didn't
俺たちがやってのけて大成功したからさ、奴らは自分たちができなかったから妬んでるんだ
My mama always told me, "Keep your mind on your money (Uh)
ママはいつも俺に言っていた、「お金のことから気を逸らすな」と
Boy, you better pay attention" (Uh)
「坊や、しっかり気を配りなさい」ってな
※Snoop Doggの名曲「Gin and Juice」の有名なフレーズ「With my mind on my money and my money on my mind」を意識した、西海岸カルチャーへのリファレンス。
Ride with the pretty nigga, hoopty, no chauffeur
このイケてる男とドライブしようぜ、ボロ車だがなお抱え運転手はいない
※「hoopty」はガタのきた中古車。高級車だけでなく、かつて乗っていたようなボロ車でも最高にクールに乗りこなすという「Pretty Flacko」の美学。
Paint lookin' like a drippin' smoothy, no coaster (Yeah)
車の塗装は滴るスムージーみたいに艶やかだ、コースターはいらねえ
※南部のキャンディーペイント(光沢のある車の塗装)の艶やかさをスムージーに例えている。
The game's full of posers, big dog bulldozer
このゲームは偽物ばかりだ、ビッグ・ドッグのブルドーザーのお通りだ
Pop up on 'em like toasters, wake 'em up like Folgers (Yeah, right)
トースターみたいに奴らの前に飛び出して、フォルジャーズのコーヒーみたいに目を覚まさせてやる
※「Pop up」はトースターのパンが飛び出す様子と、銃撃戦(Pop)のダブルミーニング。「Folgers」はアメリカで最も有名なインスタントコーヒーのブランド。寝惚けたヘイターどもに現実を突きつけるという秀逸な比喩。
'Cause Heaven need a villain like Hell need a newer idol (Uh)
なぜなら地獄に新しいアイドルが必要なように、天国にも悪役が必要だからさ
※本作のタイトル「Hell」を回収する最大のハイライト。善人ぶったシーン(天国)にはRockyのような規格外のヴィランが必要であり、アンダーグラウンド(地獄)には彼のような新たなカリスマが必要であるという、強烈な自己肯定のパンチライン。
You could bet the crib and car, just renew the title (Uh)
家でも車でも賭ければいいさ、名義を新しく書き換えておきな
For now I'm po-pimpin' like them Do or Die dudes
今の俺はDo or Dieの奴らみたいに華麗にハッスルしてるぜ
※シカゴの伝説的ラップグループDo or Dieの1996年の大ヒット曲「Po Pimp」への強烈なシャウトアウト。あらゆる地域のクラシックを自らの血肉としている。
Smokin' killer, but my doors still suicidal
極上のマリファナを吸いながら、車のドアは依然としてスーイサイダルのままだ
※「killer」は強力なウィードのこと。「suicidal」は高級車(ロールスロイスなど)に採用される観音開きのドア「スーサイド・ドア」のこと。ドラッグと死(suicide)というダークなワードを、ラグジュアリーなカーカルチャーと結びつける芸術的な修辞。
[Chorus: Santigold]
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
[Bridge: Santigold]
It will hit you on the head
頭をガツンと殴られるような衝撃が来るわよ
You don't even gotta hate me now, babe
もう私を憎む必要なんてないのよ、ベイビー
Just as sheeps get led, oh
羊たちが導かれていくように
You could see where I'm goin', oh
私がどこへ向かっているのか、あなたにも見えるはず
How you gonna feel now? You know what they say
今どんな気分? 奴らがなんて言うか知ってるでしょ
Really you know that we don't come how we get down
私たちがどうやってここまで来たか、本当は分かってるはずよ
Everyone say, "Rocky ahead"
誰もが言うわ、「Rockyが先頭を走ってる」って
They rollin', do what he said, no they can't get it wrong
彼らは車を転がし、彼の言う通りにする、絶対に間違いなんて起きないわ
[Chorus: Santigold]
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
Make my money, walk straight ahead now
俺の金を稼いで、今はただまっすぐ前を歩く
They countin' every day down, waitin' on me long
奴らは毎日カウントダウンしながら、俺のことをずっと待ち構えてる
You know your way? Where you headin' now?
自分の道が分かってるのか? 今どこへ向かってるんだ?
Me, I want everything (Bitch) it won't take me long (Uh)
俺か? 俺はすべてを手に入れたいんだ、ビッチ、それほど時間はかからないさ
