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Dance Now - JID & Kenny Mason 【和訳・解説】

Artist: JID & Kenny Mason

Album: The Forever Story

Song Title: Dance Now

概要

JIDの最高傑作との呼び声高い3rdアルバム『The Forever Story』(2022年)のリードシングルである本作は、アトランタの過酷な現実(ストリートの罪と罰)と、成功を手にしたことによる誘惑(悪魔との契約)をテーマにしたダークで呪術的なバンガーだ。同じくアトランタ出身の盟友Kenny Masonをコーラスに迎え、Christoが手掛けたブーンバップとトラップを融合させた不穏なビートの上で、JIDは自身のキャリア、地元への愛憎、そして「銃口を足元に向けられ、踊らされる(Dance Now)」という西部劇的なメタファーを用いて、死と隣り合わせのストリート・サバイバルを描き出す。ユダヤ教の伝統的な民謡風のイントロから、アウトロでのジャマイカン・レゲエアーティストJesse Royalによるスピリチュアルな説法に至るまで、多国籍な響きを持ちながらも極めて南部的な、JIDのリリシズムが頂点に達した一曲である。

和訳

[Intro: JID]

Bum-bum-bum, ba-dum-bum, bum-bum
バン・バン・バン、バ・ドゥム・バン、バン・バン

Bum-bum-bum, ba-dum-bum, bum-bum
バン・バン・バン、バ・ドゥム・バン、バン・バン

Bum-bum-bum, ba-dum-bum, bum-bum
バン・バン・バン、バ・ドゥム・バン、バン・バン

Aye, aye, aye, a-bum-bum-bum, aye
エイ、エイ、エイ、ア・バン・バン・バン、エイ

Look, look
見な、見な
※東欧やユダヤ系(クレズマー音楽)を思わせる不気味なボーカル・サンプリング。これから始まる「悪魔とのダンス」の幕開けを告げる。

[Verse 1: JID]

J-I-D back in the city with it
J-I-Dが、ヤバいモンを引っ提げてこの街に帰ってきたぜ

Jiddy done been all across the globe
ジディ(JID)はもう世界中を飛び回ってきた

They say "JID a scribbler, he silly with it"
連中は言う。「JIDはただの落書き屋(リリシスト)だ、おかしな奴さ」

"When he spittin', I hope he don’t sell his soul"
「あいつがラップする時、自分の魂を(悪魔に)売り渡してなきゃいいけどな」

"He should be good, man, he signed to Cole"
「あいつは大丈夫だろ、J. Coleのレーベル(Dreamville)と契約したんだから」

"He from the hood, nigga, down the road"
「あいつはフッド(地元)の出身だぜ、この道の先のな」

"He was just juggin' right by the store"
「あいつも昔は、あの店のすぐそばでジャグ(麻薬の売買/詐欺)をやってたんだ」
※急激な成功を手にしたJIDに対する、地元の人間たちの様々な噂や評価(ヘイトや期待)を、周囲の視点から客観的に描写している。

Then they saw the patrol, it was time to roll
そしてパトロール(警察)の姿が見えたら、ズラかる時間だ

Saw the patrol, it was time to ride
パトロールが見えたら、車を走らせる時間だったのさ

Motor runnin' on Memorial Drive
エンジンを吹かして、メモリアル・ドライブ(アトランタの主要道路)を爆走する

Got a country cousin cruisin’ with the blammer
田舎のいとこが、ブラマー(銃)を持って車でクルージングしてる

In Savannah at the Florida-Georgia line
フロリダとジョージアの州境にあるサバンナでな

Got a couple family members in Atlanta
俺にはアトランタに何人か家族(親戚/仲間)がいる

Not Atlanta, we let Omerettà decide
いや、アトランタじゃないな、それは「Omerettà」に決めてもらおうぜ
※アトランタの女性ラッパーOmerettà the Greatの楽曲「Sorry Not Sorry」への言及。彼女はその曲で「アトランタ郊外の地域(カレッジパークやディケーター等)は真のアトランタとは呼べない」と主張し、大論争を巻き起こした。JIDも東アトランタ(郊外)出身であるため、このローカルな論争をユーモラスに引用している。

They just gon' let that Beretta fly
奴らはベレッタ(銃)の弾をブッ放すだけさ

'Cause you niggas buggin', spray pesticides
お前らが虫(バグ)みたいに鬱陶しいから、殺虫剤(ペスティサイド=銃弾)を撒いてやるんだよ

It's me and the bros, it's no extra guys
俺と兄弟たちだけだ、余計な奴ら(エキストラ)はいねえ

And they movin' weight, it's no exercise
奴らはウェイト(大量の麻薬)を動かしてる、エクササイズ(筋トレ)の話じゃねえぞ
※「moving weight」は大量の麻薬を密売するスラング。筋トレ(ウェイトトレーニング)と掛けた定番のワードプレイ。

We could pick a date to come stretch you out
俺らがお前を「ストレッチ」しに行く日を決めてもいいぜ
※「Stretch out」も筋トレ用語だが、ストリートでは「死体をストレッチャーに乗せる/殺す」という意味。

Only showin’ muscle when it’s flexin' time
筋肉(力/銃)を見せるのは、フレックス(見せつける/自慢する)する時だけだ

You could see the hustle, you could recognize
俺のハッスルを見りゃ、お前にも本物だって分かるはずだ

Overcame struggle when the Devil tried
悪魔が俺を試してきた時も、苦難を乗り越えてきた

Lemme bear it all when I’m tellin' God
神に語りかける時は、俺のすべてを晒け出させてくれ

You know I'ma rant when I talk to Jah
俺がジャー(神)と話す時、どれだけ愚痴(ラント)をこぼすか、お前も知ってるだろ
※ラスタファリ運動における神の呼称「Jah(ヤハウェの短縮形)」。次バースの「rasta man」への布石。

[Pre-Chorus: JID]

Nigga say that I can't, damn lie
奴らは俺には無理だと言うが、クソみたいな嘘だ

Ain’t dappin' no hand, sanitize
誰ともダップ(握手/挨拶)はしねえ、消毒(サニタイズ)しとけ
※コロナ禍における衛生観念と、フェイクな連中と関わりたくない(手を汚したくない)というダブルミーニング。

We gon' slide on your man, landslide
お前のダチのところにスライド(襲撃)してやる、地滑り(ランドスライド)のようにな

There's a nine in my pants, hand cocked
パンツの中には9ミリ口径がある、手はすでに撃鉄(コック)にかかってるぜ

You gon' try to recant, you can't now
今さら前言撤回(リカント)しようとしても、もう遅いぜ

I could step on a ant, ant pile
蟻を踏み潰すみたいに、蟻塚ごと踏み潰してやるよ

I'ma shoot at the ground, dance now
足元の地面に向かって撃ってやるから、「今すぐ踊れ(ダンス・ナウ)」
※西部劇の悪党が、被害者の足元に銃を撃ち込んで「踊れ」と命令する古典的なステレオタイプ。他人に踊らされる(システムに搾取される)か、恐怖で踊らされる(暴力を受ける)という、この曲の最も重要なテーマ。

Dan—, ooh, dan—, pshh, dan—
踊れ…ウー、踊れ…プッシュ(銃の消音器の音)、踊れ…

[Chorus: Kenny Mason]

Oh, what a handsome gift (Yeah)
あぁ、なんて素晴らしい(ハンサムな)贈り物なんだ(イェー)

To live in the land of sin (Uh)
この「罪の国(ランド・オブ・シン)」で生きることがな(アー)
※アメリカ社会、あるいはアトランタという暴力と欲望にまみれた環境を「罪の国」と呼んでいる。

Ridin' with bags and bricks (Uh)
バッグとブリック(キロ単位のコカインの塊)を積んで車を走らせ

And my lil' nasty chick (Yeah, ah, ah, ah, ah)
俺の可愛いエロいビッチを隣に乗せてる(イェー、アー、アー)

That's what I asked of Him (Uh)
これこそが、俺があの方(神、あるいは悪魔)に願ったことさ(アー)

Told me He'd grant my wish (Yeah)
あの方は、俺の願いを叶えてくれると言ったんだ(イェー)

You dance with the devil (Oh, oh)
「お前が悪魔とダンス(契約)するならな」(オー、オー)

You'll never dance again (Oh, oh)
「お前はもう二度と、踊ることはできなくなるがな」(オー、オー)
※富や名声(素晴らしい贈り物)を手に入れる代償として「悪魔と契約(ダンス)する」という、古くからあるファウスト伝説的なメタファー。一度悪魔に魂を売れば、二度と自分自身の意志で自由に踊る(生きる)ことはできなくなるという警告。

[Post-Chorus: JID & Kenny Mason]

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan—
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan—
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan— (Ah, ah, ah, ah)
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…(アー、アー、アー、アー)

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan— (Oh, oh, oh, oh)
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…(オー、オー、オー、オー)

(I'm not a—, I'm not a—, uh)
(俺はそんなんじゃねえ…俺は…アー)

[Verse 2: JID]

I'm not a two-steppin' man, I said, "I do not dance"
俺はツーステップを踏むような男じゃない、「俺は踊らない」って言っただろ
※自分は悪魔(あるいは音楽業界の腐敗したシステム)に踊らされるような人間ではないという抵抗。

It's a gun inside my pants, and the whole world's in his hands (Dance)
俺のパンツの中には銃があり、世界全体は「彼(神)」の手の中にあるんだ(踊れ)

It depends, penny for your sins (For your sins)
状況によるさ。お前の罪の代償(ペニー)を払えよ(お前の罪のためにな)
※「Penny for your thoughts(何を考えているの?)」という慣用句をもじり、罪の代償を求めている。

Shootin' up the block, can't stop revenge (Oh)
ブロック(街)を銃撃する、復讐の連鎖は止められない(オー)

Nappy dreadlocks like a rasta man (Rasta man)
ラスタマンみたいに縮れたドレッドヘアを揺らしてな(ラスタマン)

Where the story ends and the plot begins
物語(ストーリー)が終わり、陰謀(プロット)が始まる場所

Uh, look, momma said, "The messiah's in moccasins
アー、見な、ママは言った。「救世主(メシア)はモカシン(靴)を履いて

Tryna save the kids in them apartments
あのアパートの子供たちを救おうとしてるのよ

And show a way to live with other options"
そして、他の選択肢(犯罪以外)で生きる道を示そうとしているんだ」ってな
※JID自身が、貧困層の子供たちにとっての救世主(ロールモデル)になるべきだという母親からの教え。

Opulence, decadence, black excellence and lots of it
富(オピュレンス)、退廃(デカダンス)、黒人の卓越性(ブラック・エクセレンス)、そしてその数々

I could cop the newest Beamer, Bentley or Balenciaga's
俺は最新のBMW(ビーマー)やベントレー、バレンシアガだって買える

I could pay for this lil' nigga scholarship
この若い黒人のガキの奨学金(スカラシップ)を払ってやることだってできるんだ
※私欲(車やブランド品)を満たすこともできるが、ママの教え通り、次世代のために還元することもできるという選択肢。

I ain't caught up in rap nigga politics
俺はラッパー同士のクソみたいな政治(派閥争いやビーフ)には巻き込まれねえ

Play with me and you playin' yourself
俺にちょっかいを出すなら、自分の身を滅ぼす(遊ばれる)ことになるぜ

Playin' with death, say him a prayer
死神と遊んでるようなもんだ、あいつのために祈ってやれよ

Cathy and Carl got a K on the shelf
キャシーとカールは、棚にAK-47を隠し持ってた
※JIDの両親の名前。彼らが自分たちを守るために武器を常備しなければならない環境で育ったことを示している。

I'm in DeKalb County open-carryin', caterin', chef
俺はディカーブ郡(地元)で銃を公然と携帯(オープン・キャリー)し、ケータリングを提供するシェフさ
※「Catering」と「Chef」は、上質な音楽(または麻薬)を調理して提供するというヒップホップ特有のメタファー。ジョージア州の緩い銃規制(オープンキャリー)も反映している。

Cookin' up another plate of the best
最高の一皿(曲)を調理してるんだ

Me and Christo got it poppin' like it's Crisco
俺と(プロデューサーの)クリストで、クリスコ(料理用油)みたいにパチパチと弾けさせてるぜ

Fried chicken, I'm lickin' her thighs
フライドチキンみたいにな、俺は彼女の太もも(サイ/鶏もも肉)を舐め回す

Then I put my face in her breasts
それから彼女の胸(ブレスト/鶏むね肉)に顔を埋めるのさ
※前のラインの「クリスコ(油)」「フライドチキン」から連想し、女性の部位(太もも、胸)を鶏肉の部位に例えたワードプレイ。

I took a drive, my plug on the West side
ドライブに出かけた、俺の売人(プラグ)はウェストサイドにいる

Of Atlanta, he known to finesse guys
アトランタの西側だ、あいつは他人を騙す(フィネスする)ことで有名だ

With the hammer on Campbellton, headshots
キャンベルトン・ロードでハンマー(銃)を構え、ヘッドショットを食らわせる

On the camera, knock out a dreadlock
防犯カメラの前で、ドレッドヘアの奴をノックアウトする

That's a felony charge, he caught a F
そいつは重罪(フェロニー)だ、あいつは「F(重罪判決)」を食らったぜ
※「caught a F」はFelony(重罪)で捕まったこと。学生が落第点(F)を取ることと掛けている。

Niggas come to the A and get X'd out (Facts)
奴らが「A(アトランタ)」にやって来れば、「X(消される/殺される)」されるのさ(事実だ)
※「A」から「X」へ、アルファベットを用いた言葉遊び。アトランタがどれほど危険な街であるかを示している。

But I only been here 'cause I'm tryna help
でも、俺がずっとここにいるのは、誰かを助けようとしてるからなんだ

Only one you can help is yourself now
だが今、お前が助けられるのは、お前自身しかいねえんだよ

[Pre-Chorus: JID]

Nigga say that I can't, damn lie
奴らは俺には無理だと言うが、クソみたいな嘘だ

Ain't dappin' no hand, sanitize
誰ともダップはしねえ、消毒しとけ

We gon' slide on your man, landslide
お前のダチのところにスライドしてやる、地滑りのようにな

There's a nine in my pants, hand cocked
パンツの中には9ミリ口径がある、手はすでに撃鉄にかかってるぜ

You gon' try to recant, you can't now
今さら前言撤回しようとしても、もう遅いぜ

I could step on a ant, ant pile
蟻を踏み潰すみたいに、蟻塚ごと踏み潰してやるよ

I'ma shoot at the ground, dance now
足元の地面に向かって撃ってやるから、「今すぐ踊れ」

Dan—, ooh, dan—, pshh, dan—
踊れ…ウー、踊れ…プッシュ、踊れ…

[Chorus: Kenny Mason]

Oh, what a handsome gift
あぁ、なんて素晴らしい贈り物なんだ

To live in the land of sin (Uh)
この「罪の国」で生きることがな(アー)

Ridin' with bags and bricks
バッグとブリックを積んで車を走らせ

And my lil' nasty chick (Ah, ah, ah, ah)
俺の可愛いエロいビッチを隣に乗せてる(アー、アー、アー、アー)

That's what I asked of Him (Uh)
これこそが、俺があの方に願ったことさ(アー)

Told me He'd grant my wish (Yeah)
あの方は、俺の願いを叶えてくれると言ったんだ(イェー)

You dance with the devil (Oh, oh)
「お前が悪魔とダンスするならな」(オー、オー)

You'll never dance again (Oh, oh)
「お前はもう二度と、踊ることはできなくなるがな」(オー、オー)

[Post-Chorus: JID & Kenny Mason]

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan—
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan—
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan— (Ah, ah, ah, ah)
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…(アー、アー、アー、アー)

Dance now, dan—, dan—, pshh, dan— (Oh, oh, oh, oh)
今すぐ踊れ、踊れ…踊れ…プッシュ、踊れ…(オー、オー、オー、オー)

[Outro: Kenny Mason & Jesse Royal]

Life is a journey, you know? Not a destination
人生ってのは旅なんだよ、分かるか? 目的地にたどり着くことじゃないんだ

Lean not towards the egoistic intonations (Ah, ah, ah, ah)
利己的な誘惑(エゴの響き)に傾倒してはいけない(アー、アー、アー、アー)

Positive vibrations bring real liberation (Oh, oh, oh, oh)
ポジティブなバイブレーション(波動)こそが、真の解放(リベレーション)をもたらすのさ(オー、オー、オー、オー)

It's the will of the heart, the strength of the mind
それは心の意志であり、精神の強さであり

And the love of the creator that will help us rise out of these sadistic situations (Ah, ah, ah, ah)
そして創造主(神)の愛が、このサディスティックな(残酷な)状況から俺たちを救い上げてくれるんだ(アー、アー、アー、アー)

And experience the purity that exists in our creation, you know? (Oh, oh, oh, oh)
そうして初めて、俺たちの創造物(音楽/人生)の中に存在する純粋さを経験できるんだよ、分かるか?(オー、オー、オー、オー)
※ジャマイカのレゲエアーティストJesse Royalによる、スピリチュアルなスポークン・ワード。ストリートの暴力や悪魔の誘惑(サディスティックな状況)から抜け出すためには、ポジティブな精神と愛が必要であると説き、アルバム全体のテーマである「永遠(Forever)」の精神性へと着地させている。