UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Rock N Roll - Mos Def 【和訳・解説】

Artist: Mos Def

Album: Black on Both Sides

Song Title: Rock N Roll

概要

1999年の歴史的名盤『Black on Both Sides』に収録された本作は、黒人音楽の歴史的搾取と文化の盗用(Cultural Appropriation)に対する痛烈な告発であり、ヒップホップのみならず全音楽史における重要曲である。Mos Defは、エルヴィス・プレスリーやローリング・ストーンズといった白人アーティストが「ロックンロールの代名詞」として富と名声を得た裏で、真の創始者であるチャック・ベリーやリトル・リチャードといった黒人アーティストが正当な評価を受けてこなかった歴史を糾弾する。楽曲はコンシャスなブーンバップ・ビートで進行するが、後半(Part II)で突如として狂気じみたハードコア・パンクへと変貌を遂げる。Mos Def自身が楽器をプレイしたとされるこの破壊的なビートチェンジは、「ロックは白人のもの」という固定観念を力ずくで粉砕し、黒人がロックを「奪還」する歴史的瞬間を音響的に表現した、音楽評論においても極めて高く評価されるマスターピースである。

和訳

[Part I]

[Mos Def]

Make me wanna holla!
思わず叫びたくなるぜ!
※Marvin Gayeの1971年の名曲「Inner City Blues (Make Me Wanna Holla)」からの引用。都市のゲットーの苦境に対する悲鳴であり、同時にこれから語る黒人の不当な歴史への怒りの声である。

"Ah.. ah-ah, ah-ah.. ah-ah, ah-lert the squad.."
アー… スクワッド(部隊)に警告しろ…

Rock and roll
ロックンロールだ

[Verse 1]

(Huh) My grandmomma was raised on a reservation
(ハッ)俺のばあちゃんは、先住民の居留地(リザベーション)で育った
※アフリカ系アメリカ人の多くがネイティブ・アメリカン(インディアン)の血を引いているという歴史的背景と、Mos Def自身のルーツの告白。

(Huh) My great-grandmama was, from a plantation
(ハッ)俺のひいばあちゃんは、プランテーション(大農園)の出身だった
※黒人奴隷として綿花などを栽培させられていた過酷な南部奴隷制の歴史。

They sang - songs for inspiration
彼女たちは歌った。インスピレーションを得るためにな

They sang - songs for relaxation
彼女たちは歌った。安らぎを得るためにな

They sang - songs, to take their minds up off that
彼女たちは歌った。気を紛らわすためにな

Fucked up situation
あのクソみたいな状況からな
※黒人音楽(ブルースや霊歌)が、過酷な労働と抑圧からの魂の救済として誕生したという文化の起源を説明している。

I am, yes I am, the descendant (yes yes)
俺は、そうさ俺は、末裔なんだ(イエス、イエス)

Of those folks whose backs got broke
背骨が折れるまで働かされた人々のな

Who fell down inside the gun smoke
銃煙の中で倒れていった人々のな
※白人社会の暴力によって虐殺されてきた先人たちへの哀悼。

(Black people!) Chains on their ankles and feet
(黒人たちよ!)足首や足に鎖を繋がれて

I am descendants of the builders of your street
俺は、お前らのストリート(国)を建設した者たちの末裔だ
※アメリカのインフラや経済(資本主義)の土台は、黒人奴隷の無償労働によって築かれたものであるという歴史的事実の提示。

(Black people!) Tenders to your cotton money
(黒人たちよ!)お前らの綿花マネーの世話役さ

I am hip-hop
俺はヒップホップだ

"It's heavy metal for the black people"
「こいつは黒人にとってのヘヴィメタルだぜ」
※ヒップホップが持つ反抗的で破壊的なエネルギーを、白人社会におけるヘヴィメタルと同義の「社会的脅威(あるいはカタルシス)」として定義づけている。

I am rock and roll (rock and roll, rock'n'roll)
俺はロックンロールだ(ロックンロール、ロックンロール)

Been here forever
昔からずっとここにいたのさ

They just ain't let you know (HA!)
奴らがお前らに教えなかっただけだ(ハッ!)
※白人中心の音楽史観(メディアや教育)が、ロックの黒人ルーツを意図的に隠蔽してきたことへの告発。

I said, Elvis Presley ain't got no soul (huh)
俺は言ったんだ、エルヴィス・プレスリーには魂(ソウル)がねえってな(ハッ)
※Public Enemyの「Fight The Power」における伝説的パンチライン「Elvis was a hero to most / But he never meant shit to me you see」への強烈なオマージュ。黒人音楽(R&Bやブルース)を模倣して「キング・オブ・ロックンロール」として巨万の富を得た文化盗用の象徴としてエルヴィスを批判している。

Chuck Berry is rock and roll (damn right)
チャック・ベリーこそがロックンロールだ(その通り)
※ギターリフやショースタイルを確立し、ビートルズやストーンズに多大な影響を与えた真のロックの創始者。

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But they ain't come up with that style on they own (uh-uh)
あのスタイルは奴らが自分で考え出したもんじゃねえ(ああ)
※ストーンズがマディ・ウォーターズなどの黒人ブルースマンの楽曲やスタイルを借用(カバー)してキャリアを築いた事実を指摘。

Elvis Presley ain't got no soul (hell naw)
エルヴィス・プレスリーには魂(ソウル)がねえ(全くだ)

Little Richard is rock and roll (damn right)
リトル・リチャードこそがロックンロールだ(その通り)
※「Tutti Frutti」などのヒットでロックンロールの熱狂とボーカルスタイルを創り上げた黒人パイオニア。

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But they ain't come up with that shit on they own (nah-ah)
あのシットは奴らが自分で考え出したもんじゃねえ(ああ)

Guess that's just the way shit goes
まあ、世の中そんなもんさ

You steal my clothes and try to say they yours (yes they do)
お前らは俺の服を盗んでおいて、自分のものだと言い張るんだ(全くだ)
※音楽だけでなく、ファッション、スラング、ダンスなど、ブラックカルチャー全体が白人社会に搾取され、商品化されている構造のメタファー。

Cause it's a show filled with pimps and hoes
だってこれは、ピンプ(搾取者)と娼婦(搾取される者)で溢れたショーだからな
※音楽業界全体を、アーティストを食い物にする売春ビジネスに例えている。

Trying to take everything that you made or control (there they go)
お前が作ったもの、コントロールしているものを全て奪おうとしてるんだ(ほらな)

Elvis Presley ain't got no soul
エルヴィス・プレスリーには魂(ソウル)がねえ

Bo Diddley is rock and roll (damn right)
ボ・ディドリーこそがロックンロールだ(その通り)
※「ボ・ディドリー・ビート」と呼ばれる独特のアフリカ的なリズムで、ロックンロールのビートの基礎を築いた黒人巨匠。

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But they ain't the first place the credit belongs
奴らはクレジット(功績)を受け取るべき最初の存在じゃねえんだよ

[Chorus]

Say whoa-oh (don't take it)
ウォー・オー(奪うな)
※白人社会による文化の盗用(Cultural Appropriation)に対する明確な拒絶。

Oh-we-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh (don't take it)
ウォー・オー(奪うな)

Oh-we-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh (Jimi Hendrix say)
ウォー・オー(ジミ・ヘンドリックスが言うぜ)

Oh-we-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh (Albert King and)
ウォー・オー(アルバート・キング、それに)
※ブルース・ギターの三大キングの一人であり、エリック・クラプトンやスティーヴィー・レイ・ヴォーンら白人ギタリストに絶大な影響を与えた伝説。

Oh-we-oh (and Motown)
オー・ウィ・オー(それにモータウン)

[Verse 2]

I ain't trying to diss
ディスるつもりはないが

But I don't be trying to fuck with Limp Bizkit ("The fuck is on your mind?")
俺はリンプ・ビズキットなんかと関わるつもりはねえ(「頭狂ってんのか?」)
※当時(1999年)チャートを席巻していた白人のラップメタル(ニューメタル)バンド。黒人文化であるラップとロックを融合して大金を得ていた彼らへの痛烈な皮肉であり、彼らを聴く白人の若者たちへのアンチテーゼ。

When I get down in my zone
俺が自分のゾーン(集中状態)に入る時は

I be rockin Bad Brains and Fishbone
バッド・ブレインズやフィッシュボーンでロックするぜ
※「Bad Brains」は黒人によるハードコア・パンクの先駆者。「Fishbone」はミクスチャー・ロックの草分け。ロックが本来黒人の音楽であることを証明する伝説的バンドをネームドロップし、真のルーツを提示している。

I ain't tryin to slow your groove
お前のグルーヴを落とすつもりはないが

But that ain't the way I'm trying to move
それは俺のノリ方じゃねえんだよ

I don't turn on Korn to get it on;
盛り上がるためにコーンをかけたりはしない
※こちらも当時大流行していた白人ニューメタルバンドKornを否定。

I be playing Jimi Hendrix 'til the dawn
俺は夜明けまでジミ・ヘンドリックスを聴くのさ
※ロックギターの神様であり、黒人であるジミヘンこそが最高峰であるという主張。

That's my word is bond
俺の言葉に嘘はねえ、誓うぜ

Sitting up on my front lawn
自宅の前の芝生に座って

Got the volume turned to ten
ボリュームを10まで上げて

Playing Albert King the best again (black)
最高のアルバート・キングをまた鳴らすんだ(ブラック)

When the morning in the cooker
朝飯を作ってる時は

Got to turn on some John Lee Hooker
ジョン・リー・フッカーをかけなきゃな

When I want some rock and roll
ロックンロールが欲しい時は

Go to Otis Redding to get some soul
オーティス・レディングを聴いて魂(ソウル)をもらうのさ

Say, James Brown got plenty of soul
なあ、ジェームス・ブラウンには魂がたっぷり詰まってる

James Brown like to rock and roll
ジェームス・ブラウンはロックンロールするようにファンクするぜ

He can do all the shit fo' sho'
彼はあらゆるシットを確実にこなせるんだ

That Elvis Presley could never know (black people)
エルヴィス・プレスリーには一生理解できないようなシットをな(黒人たちよ)

Said, Kenny G ain't got no soul
俺は言ったんだ、ケニーGには魂(ソウル)がねえってな
※商業的な白人スムーズジャズ奏者ケニーGを、エルヴィス同様に「ソウルなき搾取者」として否定している。

John Coltrane is rock and roll (uh-huh)
ジョン・コルトレーンこそがロックンロールだ(ああ)
※スピリチュアル・ジャズの巨星コルトレーン。ジャンルは違えど、人間の魂の極限を表現する彼の音楽こそが真の「ロック」であると再定義している。

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But they could never ever rock like Nina Simone
奴らはニーナ・シモンみたいにロックすることは絶対にできないぜ
※公民権運動の闘士であり、「High Priestess of Soul(ソウルの高僧)」と呼ばれたニーナ・シモン。彼女のピアノと歌声が持つ反骨精神こそが、最もピュアなロックンロールである。

[Chorus]

Say whoa-oh (don't take it)
ウォー・オー(奪うな)

Oh-wee-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh (don't take it)
ウォー・オー(奪うな)

Oh-we-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh (don't take it)
ウォー・オー(奪うな)

Oh-we-oh (black music)
オー・ウィ・オー(ブラック・ミュージック)

Whoa-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh-oh
ウォー・オー・オー…

[Outro]

"ah-lert the squad"
「スクワッド(部隊)に警告しろ」
※ここから楽曲は、狂気じみたハードコア・パンク/スラッシュメタルへと雪崩れ込む。Mos Def自身がベースやドラムを演奏し、黒人がロックを「奪還」する歴史的瞬間を音響的・物理的に証明する凄まじい展開である。

[Part II]

{Music picks up pace and gets louder}

[Intro]

Who am I, huh!
俺は誰だ、あぁ!

Get your punk ass up
そのパンクな(ヘタレな)ケツを上げな
※「Punk ass」はクソ野郎、弱虫の意味。ロックフェスのモッシュピットを扇動するかのような叫び。

[Verse]

Elvis Presley ain't got no soul
エルヴィス・プレスリーには魂(ソウル)がねえ

Jimi Hendrix is rock and roll
ジミ・ヘンドリックスこそがロックンロールだ

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But everything they did they stole
奴らがやったことは全部、盗んだもの(パクリ)なんだよ
※Part Iのメッセージを、怒りに満ちたシャウトと共に暴力的なまでにリフレインする。

Elvis Presley ain't got no soul
エルヴィス・プレスリーには魂(ソウル)がねえ

Bo Diddley is rock and roll
ボ・ディドリーこそがロックンロールだ

You may dig on the Rolling Stones
お前はローリング・ストーンズが好きかもしれないが

But we send their punk ass home
俺たちが奴らのクソみたいなケツを家に蹴り返してやるぜ

[Chorus 1]

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)
※黒人こそがロックンロールの体現者であるという、究極のアイデンティティの咆哮。

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

Who am I? (Rock and roll)
俺は誰だ?(ロックンロールだ)

[Chorus 2]

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

Who am I? Rock and roll!
俺は誰だ? ロックンロールだ!

[Interlude]

Get your punk ass up
そのヘタレなケツを上げな
※ここから全米の黒人居住区(ゲットー)へ向けて、蜂起と覚醒を促すシャウトアウトが続く。

Company, move
部隊よ、動け

For Harlem, Fort Greene, Compton
ハーレム、フォート・グリーン、コンプトン

East St. Louis, Detroit (BO BO)
イーストセントルイス、デトロイト(バウ!バウ!)

Chicago (BO BO) Bed-Stuy (BO BO)
シカゴ(バウ!バウ!) ベッド・スタイ(バウ!バウ!)

Flatbush (BO BO) Brownsville (BO BO)
フラットブッシュ(バウ!バウ!) ブラウンズヴィル(バウ!バウ!)

East New York (BO BO) Newark New Jersey (BO BO)
イースト・ニューヨーク(バウ!バウ!) ニュージャージー州ニューアーク(バウ!バウ!)

Illadelphia Cincinnati Atlanta the Dirty South
イラデルフィア(フィラデルフィア)、シンシナティ、アトランタ、ダーティ・サウス

All towns GET YOUR PUNK ASS UP!!
すべての街よ、お前らのケツを上げろ!!

"Rock and roll for the black people"
「黒人たちへ向けたロックンロールさ」

Hi ma
やあ、母さん
※これほど暴力的で政治的なメッセージを叫び散らした後に、突然「母さん」に挨拶するという不条理なユーモア。

[Outro]

"Well that was just wonderful"
「まあ、本当に素晴らしかったわね」
※白人の上品な中年女性のような声のサンプリングで曲が締めくくられる。黒人の怒りや文化の結晶すらも、白人社会(上流階級)にとっては安全な場所から消費する「ちょっとした娯楽のショー」に過ぎないという、究極の皮肉と冷笑である。