UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

151 Rum - JID 【和訳・解説】

Artist: JID

Album: DiCaprio 2

Song Title: 151 Rum

概要

JIDの2ndアルバム『DiCaprio 2』(2018年)のリードシングルとしてリリースされた本作は、彼の卓越したストーリーテリングとアトランタの過酷な現実が交差するダークなバンガーだ。タイトルの「151 Rum」はアルコール度数75.5%の強烈な酒(バカルディ151)を指し、ストリートの痛みや過去のトラウマを強制的に麻痺させるための道具として機能している。プロデューサーのChristoが手掛けた不穏で緊迫感のあるビートに乗せ、映画『Boyz n the Hood』の悲劇的なシーンの引用や、目の前で友人が撃たれたという凄惨な実体験など、暴力の連鎖が日常化したフッドの環境を生々しく描写する。映画俳優レオナルド・ディカプリオへのオマージュを込めたアルバムテーマに沿い、狂気に満ちた現実を映画のワンシーンのように冷徹かつドラマチックに映し出す、JIDのリリシストとしての真骨頂と言える重要曲である。

和訳

[Intro]

Act one, scene four
第1幕、第4場
※アルバムタイトル『DiCaprio 2』が示す通り、自身の楽曲を映画のワンシーンに見立てている。本作がアルバム序盤の重要な場面(実際にトラックリストでも前半に配置されている)であることを示唆する演劇的なオープニング。

[Chorus]

Yeah, run, Ricky, run, run nigga, run, jump, nigga, jump
走れリッキー、走れ、走れ、跳べ、跳べ
※ジョン・シングルトン監督の傑作フッド映画『Boyz n the Hood』(1991年)における最も悲劇的なシーンからの引用。大学へのアメフト奨学金を手にしてスラムを抜け出そうとしていたリッキーが、敵対するギャングに背後から撃たれる直前の台詞「Run, Ricky, run!」をサンプリングしている。ストリートの暴力からは誰も逃れられないという残酷なメタファー。

Come here they come, run, run, run, run
ほら、奴らが来たぞ、走れ、走れ、走れ、走れ

Gun with the drum, bum bitty bum, slump in the trunk
ドラムマガジンの銃、バン、ビディ、バン、トランクの中の死体
※「drum」は装弾数の多いドラム式マガジンのこと。「bum bitty bum」は銃の連射音を表すオノマトペだが、同時にEPMDなどのクラシック・ヒップホップにおけるリズミカルなライムスタイルへのオマージュでもある。「slump in the trunk」は車のトランクに死体が詰められている凄惨な描写と、トランクに積んだサブウーファー(重低音)が激しく鳴り響く様子のダブルミーニング。

My city go dumb, dumb, dumb, dumb
俺の街は狂っちまってるんだ

151 rum and a blunt
151ラムとブラント(大麻の葉巻)

Young nigga numb, numb, numb and he got a little gun
若い奴は感覚が麻痺しちまってて、小さな銃を持ってる
※「151 rum(アルコール度数75.5%のバカルディ151)」と「blunt」によって、過酷な現実に対する恐怖や痛みを強制的に麻痺(numb)させている若者たちの姿を描写。

A little bitty killer really doin' it for fun
ちっぽけなガキの殺し屋が、マジで遊び感覚で人殺しをやってるんだ

Give him a little bit and he'll get a nigga done
はした金を握らせれば、あいつはサクッとターゲットを片付けちまうのさ
※アトランタのストリートにおいて、善悪の判断もつかないような幼い子供たちが、わずかな金や快楽のためにヒットマンとして利用されているという恐るべき現実。

[Verse]

Son of a god, son of a bitch
神の子であり、ビッチの子でもある
※人間の持つ聖性と邪悪な二面性を表すと同時に、過酷な環境で育った自身の複雑な出自を表現している。

Son of woman and man, son of a son, in a sunken abyss
女と男の子、息子の息子、沈みゆく深淵(アビス)の中
※「sunken abyss(沈んだ深淵)」は、ジョーダン・ピール監督の映画『Get Out』に登場する「Sunken Place(沈んだ場所=黒人が身体の制御を奪われ、社会的に声を上げられない抑圧された状態)」の暗喩であるとReddit等で考察されている。

Summon a plan, please come with a script
計画を立てろ、脚本(スクリプト)を持ってきてくれ

Cover my back, cover man, please come with the blitz
俺の背中を守れ、援護しろ、電撃戦(ブリッツ)を仕掛けてくれ
※映画の撮影現場の指示(スクリプト)と、アメフトの守備戦術(ブリッツ)、そして実際のストリートでの銃撃戦におけるフォーメーションが掛け合わされている。

Look at the stats, JID like a magician
スタッツ(数字)を見てみな、JIDはまるで手品師みたいだろ

Fuck that, this some real ass shit, I paid blood for this
だがそんなんじゃねえ、これはマジな現実だ、俺はこれのために血を流してきたんだ
※JIDの急激な成功やラップスキルの高さは、魔法(才能)のように見えるかもしれないが、実際にはストリートでの過酷な経験と血の滲むような努力の結晶(paid blood)であるという主張。

Taking cheese from the government
政府からチーズを受け取って

Cereal boxes with the bugs in it
シリアルの箱には虫が湧いてた
※「cheese from the government」は、米国の低所得者向け食糧支援プログラムで配給される「ウェルフェア・チーズ(Welfare cheese)」のこと。虫が湧いたシリアルと共に、彼が経験した極度の貧困を象徴する生々しい描写。

Hand me down, this my brother brother's shit
お下がりばかりさ、これは兄貴のそのまた兄貴の服だ

Don't compare me to no other other niggas
俺をその辺の有象無象のラッパーどもと比較すんじゃねえぞ

In the city, boy, they say they fucking with you
街じゃ奴らが「お前の曲、最高だぜ」なんて擦り寄ってくるが

Heebie jeebie, that's a bit disgusting, but I get it
虫酸(ヒービー・ジービー)が走るね、少し吐き気がするが、まあ事情は分かるよ
※「Heebie jeebies」は極度の不安や嫌悪感、鳥肌が立つ感覚。売れた途端にフェイクな連中が手のひらを返して擦り寄ってくることへの嫌悪感。

I'm full of tension, full of spirit but full of shit
俺は緊張感に満ちていて、気力に溢れてるが、同時にクソみたいな思いでいっぱいだ

Standing next to Lil Tay when that bullet hit him
リル・テイに銃弾が撃ち込まれた時、俺はすぐ隣に立ってたんだ
※この楽曲で最も重いライン。JIDの親しい友人であるLil Tay(SNSインフルエンサーのLil Tayとは別人)が目の前で銃撃されたという実体験のトラウマを告白している。

Shit, I miss him, I wish that that bullet missed him but it didn't
クソッ、あいつが恋しいよ。あの弾があいつを外れて(missed)くれればよかったのに、そうはならなかった

And since I been living with it like a sickness
それ以来、俺は病気みたいにこのトラウマを抱えて生きてるんだ

Intimate, infinite rhymes, give me the baton
親密で、無限のライム。俺にバトンを渡してくれ
※暴力の連鎖から抜け出すため、ヒップホップの先人たちからラップゲームのバトンを受け継ぎ、言葉(無限のライム)で闘う決意。

A ticking, ticking time bomb, takin' the finish line
チクタクと針を進める時限爆弾、フィニッシュラインを越えてやる

Look alive, look in my eyes, look at you niggas tryin'
気を引き締めな、俺の目を見ろ、必死にもがいてるお前らの姿をな

And ya dumb, dumb, better run, run 'cause we fryin' em
お前らはバカだ、走って逃げた方がいいぜ、俺らが丸焦げ(ハチの巣)にしてやるからな
※「fryin'」は油で揚げるという意味から転じて、銃撃で蜂の巣にする、または電気椅子で処刑するというストリートスラング。

Eastside, where ya from, from niggas wildin'
イーストサイドだ、お前はどこ出身だ? 俺らは狂ったように暴れまわる

So be silent before my niggas creep silent
だから黙ってろ、俺のダチが音もなく忍び寄る前にな

With street knowledge, complete nonsense
ストリートの知識(ルール)に照らし合わせりゃ、ネットの戯言なんて完全にナンセンスだ

Delete comments, online, all lies, we see violence
ネットのコメントなんて削除しちまえ、あんなものは全部嘘っぱちだ。俺らは現実の暴力を目の当たりにしてるんだよ

Every day in my eyes, they killing my niggas, die, nigga die
毎日この目で見てるんだ、あいつらが俺のダチを殺すのを。「死ね、死んじまえ」ってな

Pull up with the fye, get 'em, nigga, it's eye for an eye
銃(ファイア)を持って乗り込む、奴らをやっちまえ、「目には目を」だ

If we gotta ride, fuck it, nigga, ride for the ride of ya life
もし乗り込むなら、クソッ、お前の人生を懸けたドライブ(襲撃)に出るんだ

Diabolical minds, I don't mind it, I like it, I like it, I love it
悪魔のような精神状態だ、だが気にならねえ、むしろ好きだ、愛してるぜ
※復讐心と暴力の連鎖に飲み込まれ、自らも狂気(Diabolical minds)に染まっていく感覚を「愛している」と表現する、底知れない闇。

I fuck with you, you a thug, I'ma thug with you
俺はお前を認めてる、お前はサグだ、だから俺もお前と一緒にサグをやるぜ

We can knuck, we can buck if a nigga fuck with you
もし誰かがお前にちょっかいを出すなら、俺らはナックしてバックするぜ
※アトランタのレジェンド的ラップグループ、Crime Mobの大ヒット曲「Knuck If You Buck」(2004年)への強力なオマージュ。「Knuck(拳を握る)」と「Buck(暴れる、発砲する)」を合わせた、アトランタのストリートにおける戦闘開始(クランク)の合言葉である。

I got love for you out the mud with you, off the muscle
泥水(どん底)から一緒に這い上がってきたお前への愛があるんだ、俺たちの力(筋肉)だけでな
※「out the mud」は貧困や底辺から這い上がること。「off the muscle」は他人の助けを借りず、自らの腕力(実力)のみで強引に状況を打開すること。

[Chorus]

Yeah, run Ricky, run, run nigga, run, jump nigga, jump
走れリッキー、走れ、走れ、跳べ、跳べ

Come here they come run, run, run, run
ほら、奴らが来たぞ、走れ、走れ、走れ、走れ

Gun with the drum, bum bitty bum, slump in the trunk
ドラムマガジンの銃、バン、ビディ、バン、トランクの中の死体

My city go dumb, dumb, dumb, dumb
俺の街は狂っちまってるんだ

151 rum and a blunt
151ラムとブラント

Young nigga numb, numb, numb and he got a little gun
若い奴は感覚が麻痺しちまってて、小さな銃を持ってる

A little bitty killer really doin' it for fun
ちっぽけなガキの殺し屋が、マジで遊び感覚で人殺しをやってるんだ

Give him a little bit and he'll get a nigga—
はした金を握らせれば、あいつはサクッとターゲットを——