UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Somebody - JID 【和訳・解説】

Artist: JID

Album: The Never Story

Song Title: Somebody

概要

JIDのデビューアルバム『The Never Story』に収録された本作は、メロウなビートに乗せて「何者かになること」への渇望とストリートでのサバイバルを描いた内省的なトラックだ。ハンプトン大学を強盗事件で退学になった過去の挫折を振り返りつつ、J. ColeやDame Dashといったヒップホップ界の先人たちから学んだ業界のビジネスや教訓をリリックに昇華している。「誰もが誰かを愛し、誰かを騙す(Juug)」という資本主義とゲットーの冷酷な真理を語りながらも、最終的には自らの夢と金(C.R.E.A.M.)を掴み取る決意を固める。アウトロに収録された幼少期のコミカルなエピソード(母親の語り)は、彼が生まれながらにしてヒップホップ的なアティチュードを持っていたことをユーモラスに示しており、作品全体に温かみとパーソナルな深みを与えている。

和訳

[Intro]

Umm, yeah
うーん、あぁ
※曲の入り、リラックスしたムード。

[Chorus]

Everybody gotta be something (Uh)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Uh)
※人生における目的やアイデンティティの探求。

Everybody wanna be something
誰もが何者かになりたがってる

Be something, don't be nothing (Uh)
何者かになれ、誰でもない存在(何もない奴)にはなるな(Uh)
※アルバムタイトル『The Never Story(持たざる者の物語)』と対比させ、現状の「Nothing(無)」から脱却しろというメッセージ。

Everybody gotta be something (Yeah)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Yeah)

Everybody gotta love somebody (Uh)
誰もが誰かを愛さなきゃいけねぇ(Uh)

Everybody gotta fuck somebody (Yeah)
誰もが誰かとヤらなきゃいけねぇ(Yeah)
※肉体的な関係、あるいは他者と深く関わること。

Love somebody, don't fuck anybody (Uh)
誰かを愛せ、誰彼構わずヤる(騙す)んじゃねぇぞ(Uh)
※「fuck」は性的な意味に加え、「騙す、食い物にする」という意味のダブルミーニング。手当たり次第に関係を持ったり、他人を陥れたりするなという教訓。

Everybody gotta be something
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ

[Verse 1]

Look, it's like quiet as kept, I been the sickest for a sec (Uh)
なぁ、内緒の話だが、俺はここしばらく一番ヤバい(イケてる)存在だったんだぜ(Uh)
※「quiet as kept」は「ここだけの話だけど」「秘密にしておくべきだが」という意味のイディオム。「sickest」はラップのスキルが最高にドープであること。

I never been pressed for all the cameras and the press (Uh)
カメラやマスコミ(プレス)に追われる(プレスされる)ことなんてなかったからな(Uh)
※「pressed(焦る、圧力をかけられる)」と「press(報道陣)」を掛けた言葉遊び。アンダーグラウンドで活動していたため、メディアのプレッシャーとは無縁だった。

I'm not the type of guy that be wildin' for respect (Uh)
俺はリスペクトを得るために無茶(ワイルディン)をするようなタイプじゃねぇ(Uh)
※ストリートで名声(ストリート・クレド)を得るためだけに無意味な暴力や犯罪に走る連中との差別化。

I'd rather be wildin' for a check (Yeah)
それより、小切手(金)のために無茶をしたいんだよ(Yeah)
※どうせリスクを負うなら、実利(金)のために動くというハスラーの思考。

I'm doing that now to manifest, (Uh) I got my head right and it's blessed (Blessed, blessed)
それを具現化(マニフェスト)するために今やってるのさ、(Uh)頭の中はクリアだし、神の祝福(ブレス)もある(祝福されてるぜ)
※「manifest」は思考を現実化すること。音楽で金を稼ぐという目標に向かって、精神状態が整っている。

Yeah, the rap game like checkers and chess
あぁ、ラップゲームってのはチェッカーやチェスみたいなもんだ
※戦略や先読みが必要な盤上遊戯のメタファー。

And tryna make a monopoly, (Uh) I got a lot of mess
モノポリー(独占)してやろうとしてるが、(Uh)トラブル(メス)も山ほど抱えてる
※ボードゲームの「モノポリー」と市場独占を掛けている。成功への道は平坦ではない。

But it's cool, I'ma test it (Yeah)
でも問題ねぇ、俺は試してやるさ(Yeah)

Got my choice route, I'm destined for greatness (Yeah, yeah)
自分の道(ルート)は決めた、俺は偉大になる運命(デスティン)なんだ(Yeah, yeah)
※JIDの本名「Destin Route」を見事に組み込んだパンチライン。「俺の選んだ道(choice route)」「運命づけられている(destined)」と本名を重ね合わせている。

Patience is cool, I had to learn that too (Yeah, yeah)
忍耐ってのも悪くねぇ、それも学ばなきゃならなかったしな(Yeah, yeah)
※ブレイクするまでの下積み時代で培った辛抱強さ。

I had got kicked out of school like, "Nigga, fuck y'all rules" (Yeah, yeah)
俺は「お前らのルールなんてクソ喰らえだ」って感じで大学を追い出されたんだ(Yeah, yeah)
※ハンプトン大学を退学になった過去。「General」でも歌われている通り、強盗事件に関与したことが原因である。

And them niggas that snitched on me, yeah, it's fuck y'all too
俺をサツにチクりやがった連中、あぁ、お前らもクソ喰らえだ
※「snitch」は密告すること。共犯者が警察に口を割ったことで退学に追い込まれたことへの怒り。

My momma hit a nigga (Yeah) phone like "What the fuck y'all do?" Nothing (Nun)
お袋が俺の電話を鳴らして「あんたたち一体何をやらかしたの?」って聞いてきたけど、「何もしてねぇよ」って答えたさ
※事件発覚時の母親からの電話。「General」でも「Mommy went dumb when she got that call(お袋はその電話を受けた時パニックになってた)」と描写されているシーンとリンクしている。

I just finesse, I'll give 'em back all they little money (They little money, but)
俺はただ上手くやった(フィネス)だけだ、奴らのなけなしの金なんて全部返してやるよ(なけなしの金だけどな、でも)
※「finesse」は口八丁手八丁で騙す、あるいは上手く立ち回ること。強盗で奪ったはした金など、成功して返してやるという開き直り。

But everybody gotta juug somebody, (Yeah) huh
でも、誰もが誰かをジャグ(騙す・奪う)しなきゃ生きられねぇんだよ、(Yeah)ハッ
※「juug」はストリートスラングで、詐欺、強盗、あるいは巧みに金を稼ぐこと。資本主義やストリートの生存競争において、誰もが誰かを搾取しているという冷酷な世界観。

Everybody gotta juug somebody, yeah
誰もが誰かを騙し取らなきゃならねぇのさ、あぁ
※コーラスの「love somebody / fuck somebody」の変形。

[Chorus]

Everybody gotta be something (Yuh)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Yuh)
※(※注釈:コーラスの反復。)

Everybody wanna be something
誰もが何者かになりたがってる

Be something, don't be nothing (Yeah)
何者かになれ、誰でもない存在にはなるな(Yeah)

Everybody gotta be something (Uh)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Uh)

Everybody gotta love somebody (Love somebody)
誰もが誰かを愛さなきゃいけねぇ(誰かをな)

Everybody gotta fuck somebody (Fuck somebody)
誰もが誰かとヤらなきゃいけねぇ(誰かとな)

Love somebody, don't fuck anybody (Anybody)
誰かを愛せ、誰彼構わず騙すんじゃねぇぞ(誰彼構わずな)

Everybody gotta be something
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ

[Verse 2]

Look, they asked me (Yeah) "What's my sound"? I tell 'em nothing particular
なぁ、奴らは聞いてくる(Yeah)「お前のサウンド(スタイル)は何だ?」ってな。俺は「特に決まってねぇよ」って答えるのさ
※特定のジャンルや既存の型に当てはまることを拒むJIDの柔軟な音楽性。

I'm blowing this purple 'til I feel perpendicular
俺が垂直(パーペンディキュラー)に感じるまで、このパープル(大麻)を吹かし続けるぜ
※「purple」は紫色の強力な大麻(パープル・ヘイズやグランドダディ・パープルなど)。「perpendicular(垂直)」は、ハイになりすぎて自分が地面に対してどう立っているのか分からなくなる感覚、あるいは天に向かって垂直に昇っていくような陶酔感を表す。

My flow crash like homicide vehicular
俺のフロウは、車両による殺人(ヴェヒキュラー・ホミサイド)みたいに激突するんだ
※「vehicular homicide」は車による過失致死や殺人。ビート上で強烈なインパクト(衝突)を与える破壊的なフロウのメタファー。

Leave a nigga's brain at the scene, sign for signature (Yeah)
現場に連中の脳みそを残して、署名(シグネチャー)をサインしてやるよ(Yeah)
※他のラッパーの頭を吹き飛ばし(圧倒し)、自分の仕業だとわかるように爪痕を残す。

Kicking rhymes as I'm flipping through the pages of literature (Uh)
文学(リテラチャー)のページをめくるように、ライムを蹴り出すのさ(Uh)
※JIDのリリックがストリートの言葉だけでなく、文学的な深みや語彙力を備えていることの証明。

Literally, I'm the shit, what you having for dinner?
文字通り(リテラリー)、俺は最高(ザ・シット)だぜ。お前は夕食に何を食ってるんだ?
※「the shit」はスラングで「最高のもの」。直前の「literature」と「Literally」で踏みつつ、「shit(クソ)」と「dinner(食事)」を対比させるユーモア。

Born to win but born a sinner, and that's word to Jermaine
勝つために生まれたが、同時に罪人として生まれた。これはジャーメインの言葉(誓い)だぜ
※「Jermaine」はJ. Coleの本名(Jermaine Lamarr Cole)。J. Coleの大ヒット曲「Born Sinner」(2013年)からの引用であり、自分を見出してくれたレーベルのボスへの最大級のシャウトアウト。

Cold flow, Cole World, but we living the same
冷たい(コールド)フロウ、コール・ワールド(J. Coleの世界)、だが俺たちも同じように生きている
※J. Coleのデビューアルバム『Cole World: The Sideline Story』や彼のスローガン「Cole World」を引き合いに出し、冷酷な世界を共にサバイブしているという共鳴。

I was standing in the hall, we was listening to Dame
俺は廊下に立って、デイムの話を聞いていたんだ
※「Dame」はJay-Zと共にRoc-A-Fella Recordsを創設した伝説的な起業家、Dame Dash(デイム・ダッシュ)のこと。音楽業界のビジネスや独立心について語る彼の哲学に耳を傾けていた。

He was schooling some niggas, putting them up on some game
彼は連中に教育(スクーリング)を施して、ゲーム(業界の仕組み)を教えてた
※業界の先輩が若手ラッパーたちにビジネスの罠や生き抜き方を指南している情景。

I'm ear hustling, hoping my niggas doing the same
俺は盗み聞き(イヤー・ハッスリング)しながら、俺のダチらも同じように聞いてることを願ってたよ
※「ear hustling」は他人の会話を盗み聞きして情報を得ること。貴重な教訓を仲間たちにも共有したいという思い。

Shit, that he saying, my brain strain, combust into flames
クソッ、彼の言ってることで俺の脳は緊張(ストレイン)し、炎を上げて燃え上がりそうだった
※業界の過酷な真実やビジネスのスケールの大きさに触れ、頭がパンクしそうになるほどの刺激を受けた。

He dropped gems 'bout life and getting up in the game
彼は人生や、このゲームでどうやって這い上がるかについての宝石(ジェム)を落としてくれた
※「drop gems」は貴重な知識やアドバイスを授けること。

Or getting fucked in the game and how it's really kinda tough to complain (Yeah, yeah, woah)
あるいは、このゲームでどうやって騙され(ファックされ)るか、そして文句を言うのがどれだけ難しいかってこともな(Yeah, yeah, woah)
※レコード会社による搾取や契約の罠。一度契約してしまえば、不満を言ってもどうにもならないというヒップホップ業界の負の側面。

When you can be what you want, it not really much to explain (Yeah, uh)
自分がなりたいものになれる時、説明することなんて大してねぇんだよ(Yeah, uh)
※ごちゃごちゃ言い訳をせず、ただ実行して結果を出すのみ。

So fuck that, hustle for cream and go for the dream (Yeah, yeah, uh)
だからそんなことはクソ喰らえだ。クリーム(金)のためにハッスルして、夢を追いかけろ(Yeah, yeah, uh)
※「C.R.E.A.M. (Cash Rules Everything Around Me)」はWu-Tang Clanの曲名に由来する「金」のスラング。業界の罠を理解した上で、それでも己の夢と金のために進み続ける決意。

[Chorus]

Everybody gotta be something
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ
※(※注釈:最後のコーラスへ。)

Everybody wanna be something (Yeah)
誰もが何者かになりたがってる(Yeah)

Be something, don't be nothing (Uh)
何者かになれ、誰でもない存在にはなるな(Uh)

Everybody gotta be something (Yeah)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Yeah)

Everybody gotta love somebody (Love somebody)
誰もが誰かを愛さなきゃいけねぇ(誰かをな)

Everybody gotta fuck somebody (Yeah, fuck somebody)
誰もが誰かとヤらなきゃいけねぇ(Yeah, 誰かとな)

Love somebody, don't fuck anybody
誰かを愛せ、誰彼構わず騙すんじゃねぇぞ

Everybody gotta be something (Yeah)
誰もが何者かにならなきゃいけねぇ(Yeah)

[Outro]

There were so many people comin' outta that mall and we were tired
あのモールからたくさんの人が出てきてて、私たちは疲れてたの
※アウトロ。JIDの幼少期のホームビデオ、あるいは家族(母親や祖母)の肉声の録音。彼の無邪気でワイルドな過去のエピソードが語られる。

I said, "We can just go on and sit down in the car and just wait for everybody."
私は言ったわ、「もう車に行って座って、みんなを待っていましょう」って

I had the window like halfway down because you just had your little chin just lookin'
窓を半分くらい開けてあげたの、だってあんたが小さな顎を乗せて外を見たがってたから

Then your dad came- Your daddy came to the car and he sat down
それでお父さんが来て…あんたのお父さんが車に来て、座ったのよ

Then, so, we were sitting out there and you were just look- You were turning and lookin', turnin' your head way out the window
それでね、私たちはそこに座ってて、あんたはただ見てた…振り返って、窓から身を乗り出して外を見てたのよ

All of a sudden you looked over and you saw a whole group of people comin' your way and you said "Look at all them mothafuckas."
そしたら突然、あんたは向こうを見て、大勢の人たちがこっちに向かって歩いてくるのを見て、こう言ったの。「あのマザファカどもを見な」って

"What did you say?" I looked at your dad and he looked at me
「今なんて言った?」って、私はお父さんを見て、お父さんも私を見たわ
※幼い子供が突然汚いストリートスラング(mothafuckas)を口走ったことへの両親の驚き。

You said it again the same- same way you said it before like it wasn't- I thought it was a mistake or maybe I misunderstood you. C'mon "Look at all them mothafuckas."
あんたはもう一回、さっきと全く同じように言ったのよ、まるで何でもないことみたいに。聞き間違いか、私の勘違いかと思ったのに。勘弁してよ、「あのマザファカどもを見な」だなんて。
※JIDが幼少期からフッドの空気や言葉遣いを自然に吸収しており、生まれながらにして「ヒップホップ的」な存在であったことを示す、微笑ましくも象徴的なエピソードで曲は終わる。