Artist: Travis Scott
Album: UTOPIA
Song Title: SIRENS
概要
トラヴィス・スコットの4作目のアルバム『UTOPIA』(2023年)の中盤に配置された、狂騒とパラノイアが入り混じるサイケデリックなバンガーである。1970年代のプログレッシブ・ロックバンドNew Englandの「Explorer」のサンプリングから始まり、重厚なビートの上でトラヴィスは自身の絶大な影響力と音楽業界への不信感を吐露する。「SIRENS(サイレン)」というタイトルは、警察や救急のサイレン、あるいはギリシャ神話で船乗りを誘惑し破滅させる怪物セイレーンの両方を暗示している。楽曲の最後には、ゲストとしてDrake(ドレイク)が女性と会話するスキットが挿入され、「ユートピアとは物理的な理想郷ではなく、自らの精神状態や今いる場所(ホテルの部屋)にある」というアルバム全体の核心的なテーマが提示されている。
和訳
[Intro: John Fannon & Travis Scott]
Every night, I look up in the sky
毎晩、俺は夜空を見上げるんだ
※1979年のロックバンドNew Englandの楽曲「Explorer」からのサンプリング。宇宙(ユートピア)を探索する孤独な視点。
And the stars are all there
星々はすべてそこにあるのに
But when I look for you, you're never there
君を探しても、君は決してそこにいない
Explorer, are you out there?
探求者(エクスプローラー)よ、君はそこにいるのか?
We had to spread out the word
俺たちはこの言葉を広めなきゃならなかったんだ
Mmm
ンー
[Verse 1: Travis Scott]
I was too damn determined
俺はクソほど決意に満ちてたぜ
Rap game, it needed refurbish
ラップゲームには、再構築(リファービッシュ)が必要だったからな
※現在の停滞したヒップホップシーンを、自身の革新的なサウンド(UTOPIA)で作り直すという強烈な自負。
I was on top with no service
俺は電波(サービス)の届かない頂点(トップ)にいた
Watch as they all playin' verses
奴らが必死にヴァースを蹴るのを高見の見物さ
They in the bushes, they lurkin'
奴らは茂みの中に隠れて、コソコソと待ち伏せ(ラーク)してやがる
※「bushes」はパパラッチやヘイター、あるいは業界の敵。トップに立つトラヴィスの足を引っ張ろうと隙を狙っている連中のこと。
Might gotta call the insurgents
反乱軍(インサージェンツ)を呼ばなきゃならないかもな
※自分を守るため、あるいは業界のルールをぶっ壊すために暴動や反乱を起こす側につくという過激な宣言。
She wanna fuck with a purpose
彼女は明確な目的(パーパス)があってヤりたがってる
※単なる愛や快楽ではなく、金や名声(トラヴィスの知名度)を利用するために近づいてくるグルーピーや女性たちへの冷笑。
I gotta juggle my urges
俺は自分の衝動(性欲や暴力)をうまくコントロール(ジャグル)しなきゃならねえ
Got a couple departments
俺にはいくつかの部門(デパートメント)がある
Closet built like a department
クローゼットはデパート(百貨店)みたいな造りさ
※ハイブランドの服で溢れかえった自身の巨大なクローゼットを、高級デパート(Department store)に例えた成金フレックス。
Double up cup of the bourbon
バーボンをダブルカップに注ぎ込む
※通常リーン(コデイン)を入れる二重のプラスチックカップ(ダブルカップ)に、ここでは強い酒(バーボン)を注いで酔い潰れている。
How I give all of my sermons
それが、俺が説教(サーモン)を垂れる時のやり方さ
※酒やドラッグで極限までハイになった状態で、ライブのステージから観客に向けてメッセージ(説教)を放つという、トラヴィス特有の教祖的なスタイル。
Yeah, we still (Still)
あぁ、俺たちは今でも(いまだにな)
Do things down to detail
細部(ディテール)にまでこだわってやってるぜ
Diva and the devil
歌姫(ディーヴァ)と悪魔
Both them bad as he-ell
どっちも地獄(ヘル)みたいにヤバい(バッド)んだ
※「bad」は「魅力的(イケてる)」と「邪悪」のダブルミーニング。美しいディーヴァも悪魔も、同じくらい危険な魅力を放っている。
They get quiet when he yell (He yell)
彼が叫べば(ヒ・イェル)、奴らは静まり返るのさ(彼が叫べば)
※前の行の「he-ell(地獄)」と「he yell(彼が叫ぶ)」で踏んだ秀逸な言葉遊び。「彼」とはトラヴィス自身、あるいは神/悪魔のこと。彼が声を上げれば周囲は圧倒されて沈黙するという権力の誇示。
Can't silent my people
俺の仲間(ピープル)を黙らせることなんてできねえよ
※キャンセルカルチャーやバッシングがあっても、トラヴィスの熱狂的なファンベース(レイジャーたち)の声を封殺することは不可能だという宣言。
You locked in the prequel
お前らはまだ前日譚(プリクエル)に閉じ込められてる
※他のラッパーやヘイターたちは、まだトラヴィスが過去に作ったトレンド(前日譚)の中に取り残されており、彼自身はすでに『UTOPIA』という新しい次元へ進んでいるという皮肉。
Meet me at the festi-viel
フェスティ・ヴィエル(祭典)で会おうぜ
Festi-vial
フェスティ・バイアル
※「festival(フェス)」という言葉を意図的に歪めている。「viel/veil(ベール/覆い隠すもの)」や「vial(バイアル/薬の小瓶)」に掛け、アストロワールドの惨劇でフェス自体が暗いベールに包まれたこと、あるいはドラッグまみれの狂乱の場であることを暗示する極めてダークで高度なメタファー。
Foo, foo
フー、フー
[Verse 2: Travis Scott]
Now I got your attention (Look out)
さあ、お前らの注目を集めたぜ(気をつけな)
It's wide and beatin' (Look out)
大きく広がって、鼓動を打ってる(気をつけな)
Vow this evenin' (Look out)
今夜誓おう(気をつけな)
You never leavin' (Look-look-look-look-look-look)
お前はもう二度とここから抜け出せねえ(気をつけろ…)
Clock out, we sneak in (Look-look-look-look-look)
仕事が終わる(クロック・アウト)、俺たちは忍び込むのさ(気をつけろ…)
All the demons
全ての悪魔たちが
Need a reason
理由を求めてる
Up from 2 A.M. to two in the afternoon (Look out)
深夜の2時から、午後の2時までずっと起きっぱなしだ(気をつけな)
It's a festival right in my room (Look out)
俺の部屋の中が、まさにフェス会場(狂乱状態)なのさ(気をつけな)
Soon as the sun up, you know that we boom (Look out)
太陽が昇った途端、俺たちがブチカマす(ブーム)って分かってるだろ(気をつけな)
Mariposa, we out to Cancún (Look out)
マリポーサ、俺たちはカンクンへ飛び立つぜ(気をつけな)
※「Mariposa」はスペイン語で「蝶」。彼の代表曲「Butterfly Effect」や、カイリー・ジェンナーとの象徴である蝶のモチーフ。メキシコの高級リゾート地カンクンへの逃避行。
We gon' hustle more just before we out the room (Look out)
部屋を出る直前まで、俺たちはさらにハッスル(ビジネス/セックス)するのさ(気をつけな)
Back outside, it ain't no time for Zooms (Look out)
再び外(アウトサイド)に出たんだ、Zoom(リモート会議)なんかやってる暇はねえよ(気をつけな)
※パンデミックが終わり、リアルな現場(ライブやストリート)が復活したこと。パソコンの画面越しではなく、現場で直接カネと熱狂を生み出すというストリートのリアル。
One point two, that's a whole lot of more vroom (Look out)
1.2、それはとんでもない爆音(ヴルーム)だ(気をつけな)
※「1.2」はブガッティなどのハイパーカーのエンジン出力(1200馬力)、あるいは0-60mph(約100km/h)の異常な加速タイム、もしくは120万ドル(約1.8億円)の車の価格など、規格外の富とスピードのメタファー。
Three point two, that's a whole lot of whole lot of (Look out)
3.2、それはとんでもない、とんでもない量(の金)だぜ(気をつけな)
※「3.2」は320万ドル(数億円単位)のさらなる巨額なキャッシュ。またはパガーニ等の超高級車の価格。
It's live, 'member days that I couldn't get by
これが生(ライブ)の現実さ、なんとか生きていくことすらできなかった日々を思い出すぜ
There outside, it come with it inside
外の出来事が、そのまま内側(心)に持ち込まれる
Now your venue, we gotta resize
今やお前の会場(ベニュー)、リサイズ(拡大)しなきゃならねえな
※トラヴィスの動員力が異常なレベルに達し、既存のライブ会場のキャパシティでは収まりきらなくなったという圧倒的な王者としてのフレックス。
I can't give all this credit to Colgate
この笑顔の功績を、全てコルゲート(歯磨き粉)のせいにはできねえよ
By the way I be rentin' the smile (Look out, look out)
だって俺は、この笑顔を「借りてる(レンタルしてる)」だけだからな(気をつけな)
※「Colgate」はアメリカの有名な歯磨き粉ブランド。カメラの前で見せる白い歯の笑顔は、歯磨き粉のおかげでも心の底からの幸福でもなく、世間向けの「作り笑い(レンタルした笑顔)」に過ぎないというスターの孤独と虚無感。
I know sometimes I be in denial (Look out, look out)
時々、現実逃避(ディナイアル)しちまうって自分でも分かってる(気をつけな)
I know sometimes I be in the wild (Look out, look out)
時々、野生(ワイルド)に還っちまうって分かってるんだ(気をつけな)
How I rock in the, rock in the
俺がどうやってロックするのか、どうやって…
Ah
アァ
[Instrumental Break] [Outro: Drake]
I thought we were going to utopia?
俺たち、ユートピアに向かってるんじゃなかったのか?
※楽曲の最後に挿入されるDrake(ドレイク)の声。次の楽曲「MELTDOWN」へのシームレスなトランジションの役割を果たしている。
What makes you say this isn't utopia?
どうしてここがユートピアじゃないって言えるの?
I mean, I don't know, isn't it supposed to be some perfect destination? This is just your hotel room
いや、分かんないけど、もっと完璧な目的地のことじゃないの? ここはただのあなたのホテルの部屋じゃない
Yeah, it looks perfect to me
あぁ、俺にとっては完璧に見えるけどな
※女性との会話。ユートピアとはどこかに実在する完璧な場所ではなく、「今自分が満たされている空間(ホテルの部屋で女といる瞬間など)」であるという、アルバム全体のテーマを代弁する極めて重要なスキット。
