Artist: Lil Wayne
Album: Tha Carter III (Deluxe Revised)
Song Title: Gossip
概要
2007年の「BET Hip Hop Awards」で初披露され、シーンに強烈な衝撃を与えた伝説的なトラックである。プロデューサーのSTREETRUNNERは、Margie Josephの1971年の楽曲「Stop! In the Name of Love」を重厚にサンプリングし、ソウルフルかつ緊迫感のあるビートを構築した。当時、圧倒的な人気と引き換えに絶え間ないメディアのゴシップやヘイターからの批判に晒されていたWayneは、本作でそれらを真っ向から一蹴する。特筆すべきは、単なる自己誇示にとどまらず、ハリケーン・カトリーナで傷ついた故郷ニューオーリンズの悲哀を背負い、自身を「ヒップホップそのもの」と同一化させている点だ。アウトロの「I'm not dead, I'm alive」という宣言は、Nasの「Hip Hop Is Dead」に対する究極のアンサーであり、自身がラップゲームの救世主にして現人神であることを証明した歴史的マスターピースである。
和訳
[Intro]
I hate gossip
ゴシップなんて大嫌いよ
And I don't walk around looking for it, you know?
自分から探し回ったりなんてしないわ、分かるでしょ?
But, yesterday it seemed to just
でも、昨日はそれがただ
Wander around 'til it found me
私を見つけるまで、うろつき回ってたみたい
You know, like, the gossip found me
ほら、ゴシップの方から私を見つけ出したのよ
Then why don't try provin' it?
じゃあ、それを証明してみたらどう?
How? You don't know how to prove it?
どうやって? 証明の仕方も分からないの?
Well, what you just do is, stop
それなら、あなたがすべき事は、やめる(ストップする)ことよ
※Margie Josephの1971年のカバー曲「Stop! In the Name of Love」(オリジナルはThe Supremes)のイントロの語りをそのままサンプリングしている。メディアやヘイターが流す無根拠な噂に対する、楽曲全体のテーマを提示している。
(STREETRUNNER)
(ストリートランナー)
※プロデューサーのSTREETRUNNERのシグネチャータグ。
[Verse 1]
Stop hatin' on a nigga
俺をヘイトするのはやめな(ストップしな)
That is a weak emotion, the lady of a nigga
そいつは弱い感情だ、まるで女々しい野郎みたいにな
And you can get tipped like you're waitin' on a nigga
お前らはウェイターみたいに「チップ」を弾んで(傾かせて)もらえるぜ
※「Waitin' on a nigga(俺に給仕する/俺を待つ)」と「Tipped(チップをもらう/傾いて倒される)」を掛けた秀逸な言葉遊び。自分にヘイトを向ける奴らを小間使いのように扱い、簡単に叩き潰すという比喩。
Put a body bag and a apron on a nigga
野郎にエプロンと、死体袋(ボディバッグ)を着せてやるよ
※前行の「ウェイター」のメタファーを引き継ぎ、エプロンを着せて死体袋にブチ込むというストリートの非情な宣告。
I give my all behind the mic
俺はマイクの後ろで全力を尽くしてる
But you can never see if you sit behind the light
だが照明の後ろ(暗がり)に座ってたら、お前らには決して見えないぜ
And you don't have to pick me to win the title fight
タイトルマッチで勝つために、お前らが俺を選ぶ必要はねぇ
But I'ma wear that championship belt so tight
だが俺は、そのチャンピオンベルトをきつく巻き締めるからな
And if I'm wrong, there is no right
もし俺が間違ってるなら、「正しい(Right)」ことなんて存在しねぇ
And if I'm wrong, there is Snow White
もし俺が間違ってるなら、「白雪姫」だって実在するぜ
※おとぎ話の「白雪姫(Snow White)」が現実には存在しないように、自分が間違っていることなど絶対にあり得ないという強烈な自己肯定。また「Snow White」は純度の高いコカインのスラングでもあり、ストリートの現実とも掛かっている。
I'm tryna be polite
俺は礼儀正しくしようとしてるんだ
But you bitches in my hair like the fuckin' po-lice
だがお前らビッチどもは、クソみたいなサツ(警察)みたいに俺の髪にまとわりつきやがる
※「In someone's hair(人にまとわりつく、イライラさせる)」というイディオム。髪の毛にシラミ(Lice)が湧くように、警察(Po-lice)やヘイターがうるさく付き纏うことへの苛立ち。
And my flow is rare, these other rappers nice
俺のフロウはレア(希少/生焼け)だ、他のラッパーたちもナイス(マシ)だがな
These other rappers bark, some of 'em even bite
他のラッパーたちは吠えるし、中には噛みつく奴もいる
But I'm much more bright, I give the game sight
だが俺は遥かに輝いてる(賢い)んだ、俺がこのゲームに視界(光)を与えてるのさ
So before you dim the light, you just might, might wanna
だからお前らがその光を暗くする前に、少しだけ、ちょっとだけ
[Bridge]
Think it over
よく考えてみな
※Margie Josephのサンプリングボーカル。
Ooooh, think it over
オオオ、よく考え直すのよ
Think it over, baby, baby (Get 'em)
よく考えてみて、ベイビー、ベイビー(やっちまえ)
[Verse 2]
Stop! Analyzing, criticizing
ストップだ! 分析したり、批判したりするのはな
You should realize what I am and start epitomizing
俺が何者かを理解して、要約(エピトマイズ)し始めるべきだぜ
Legitimate, I got the heart of the biggest lion
俺は本物(レジティメイト)だ、最大級のライオンの心臓を持ってるんだ
I'm confident, like fuck 'em all, pull out my dick and ride it
俺は自信に満ちてる、「全員クソ食らえだ、俺のチ○ポを出して乗っからせてやる」ってな
My flow sick, so sick, it's like my shit is dying
俺のフロウは病的(シック)だ、病気すぎて、俺のクソ(曲)が死にかけてるみたいにな
It rains a lot in my city because my city's crying
俺の街にはよく雨が降る、俺の街が泣いているからさ
Because my city's dying
俺の街が、死にかけているからだ
※2005年のハリケーン・カトリーナによって水没し、壊滅的な被害を受けた故郷ニューオーリンズへの悲痛な言及。雨を街の涙に例えている。
Still, I emerge from all of that, I am a living pion–eer, near Zion
それでも、俺はそのすべてから這い上がってきた。俺は生きた「開拓者(パイオニア)」であり、「ザイオン」に近い存在だ
※「Zion(ザイオン)」は聖書における神の都、あるいはラスタファリ運動における約束の地。絶望の底から立ち上がり、神聖な領域に到達したことを示している。
Fear God, not them, steer my robin coupe
神を恐れろ、奴らを恐れるな。俺はロビン(赤色)のクーペを操縦(ステア)する
Through the streets of the Boot, and soo-woo!
ブートのストリートを抜けながら、「スー・ウー!」と叫ぶのさ
※「The Boot」は地図上の形がブーツに似ているルイジアナ州の愛称。「Soo-woo」はWayneが所属するストリートギャング「Bloods」の象徴的なコール。
And then I leak blood in the booth, I leave a bloodbath
そして俺はブースで血を流し、「血の風呂(大殺戮)」を残してやる
※Bloods(血)のカラーを強調しつつ、レコーディングブースで文字通り血を流すほどの魂を込めてラップし、他のラッパーを惨殺する(Bloodbath)という激しいメタファー。
Sorry, there's a tub in the booth, now where the drugs at?
悪ぃな、ブースにバスタブがあるんだ。で、ドラッグはどこだ?
I'm twisted like the strings on a shoe, no, nigga, fuck that
俺は靴の紐みたいに捻じれ(ツイストし)てる。いや、クソ食らえだ
I'm twisted like the strings on a boot, now where New Orleans at?
俺は「ブーツ」の紐みたいに捻じれてるんだよ、さあ、ニューオーリンズはどこだ?
※「Twisted」は「狂っている、ドラッグでハイになっている」という意味。前行で「Shoe(靴)」と言ったのを意図的に「Boot(ブーツ)」に訂正し、ルイジアナ州(The Boot)のレペゼンに繋げている、完璧なセルフ・コレクション。
I feel hip-hop stole me like a bus pass
ヒップホップが、バスの定期券みたいに俺を盗んだような気がするぜ
So in your possession, I-I-I must ask
だから、お前の所有物として、俺はどうしても聞かなきゃならねぇ
※少年時代からヒップホップに人生のすべてを捧げ(奪われ)てきたWayneが、擬人化された「ヒップホップそのもの」に対して問いかけるエモーショナルな展開。
[Bridge]
Hey, haven't I been good to you?
ねえ、私はあなたに良くしてこなかった?
※Wayneからヒップホップへの、あるいはヒップホップからWayneへの問いかけ(Margie Josephのサンプリング)。
(Think it over) Tell me, haven't I been sweet to you?
(よく考えて)教えてよ、私はあなたに優しくしてこなかった?
[Verse 3]
Drag my name through the mud, I come out clean
俺の名前を泥の中に引きずり回してみろ、俺は綺麗なまま(クリーンに)出てくるぜ
※メディアやヘイターがゴシップでどれだけ名誉を汚そう(泥を塗ろう)としても、自分の本質は決して汚れないという自信。
Cast away stones, I won't even blink
石を投げつけられても、俺は瞬きすらしない
A gun is not a math problem, I won't even think
銃は数学の問題じゃねぇ、俺は考えすらしないぜ
※引き金を引くのに計算やためらいは必要ないという、ストリートの冷酷な行動原理。
Just leave you dead like the mink under my sink
お前を死体にして放置するだけさ、俺の家の流しの下にいるミンク(ネズミ)みたいにな
※「Mink」は高級なミンクコートのことでもあるが、ここでは流しの下の配管に潜む害獣(ネズミ/密告者)のメタファー。ヘイターをゴミのように始末する表現。
Don't believe in me, don't believe me
俺を信じるな、俺の言うことを信じるな
I've graduated from hungry and made it to greedy
俺は「ハングリー(飢え)」を卒業して、「グリーディ(強欲)」に到達したんだ
※ストリートのどん底で這い上がるための「ハングリー精神」はとうに通り越し、世界のすべてを手に入れても満足しない「強欲な怪物」へと進化したことを宣言している。
My flow is like pasta, take it and eat it
俺のフロウはパスタみたいだろ、手に取って食ってみな
But I'ma need cheese if I'm baking a ziti
だが「ベイクド・ジティ」を焼くつもりなら、「チーズ」が必要だぜ
※「Baked Ziti(ジティという筒状のパスタにチーズを乗せて焼いた料理)」と、「Cheese(お金のスラング)」を掛けたワードプレイ。俺の音楽(パスタ)を消費するなら、当然金(チーズ)を払えという要求。
You niggas want beef, I want a steak, and, uh, we be
お前らは「ビーフ」を欲しがるが、俺が欲しいのは「ステーキ」だ。そして俺たちは
Lost in Amsterdam or Jamaica where weed be
アムステルダムやジャマイカみたいな、ウィード(マリファナ)がある場所で迷子になるのさ
※「Beef(揉め事/安い牛肉)」と「Steak(大金・成功/高級な牛肉)」の対比。お前らがつまらない喧嘩をしている間に、俺は極上のウィードの産地で大麻を吸ってチルしているという次元の違い。
Hardbody nigga just takin' it easy
ハードボディ(タフ)な野郎が、ただ気楽に(イージーに)やってるだけさ
All about my paper, 'bout my paper like E-Z
俺の関心は「ペーパー」だけだ、「E-Z」みたいにな
※「Paper(お金)」と「E-Z Wider(アメリカで有名なマリファナ用の巻紙ブランド)」を掛けた、ヒップホップにおける古典的かつ完璧な言葉遊び。
Wider wrappers, why do rappers lie to fans, lie to rappers?
ワイドなラッパー(巻紙)、なんでラッパーたちはファンに嘘をつき、ラッパー同士で嘘をつくんだ?
※「Wider wrappers(E-Z Widerの巻紙)」と「Why do rappers(なぜラッパーたちは)」という、発音がほぼ同じ言葉を使った高度なライミング。
Lot of rappers lie like actors, cut the motherfuckin' cameras
多くのラッパーは役者みたいに嘘をつきやがる、クソみたいなカメラを止めろ
Cut the check, nigga, fuck your props
小切手(チェック)を切れ、お前らのプロップス(評価)なんてクソ食らえだ
And make it out to "Mr. Hip-Hop"
宛名は「ミスター・ヒップホップ」にしておけよ
※フェイクなラッパーたちの薄っぺらな評価(Props)など不要。自分こそがヒップホップの擬人化「Mr. Hip-Hop」であり、正当な対価(大金)だけを要求するという絶対王者の締めくくり。
[Outro]
I'm not dead, I'm alive
俺は死んでない、俺は生きてるぜ
※2006年にNasが発表したアルバム『Hip Hop Is Dead』に対する、Lil Wayneからの最終回答。前行で自らを「Mr. Hip-Hop」と定義した彼は、「俺がここにいる限り、ヒップホップは決して死なない(生きている)」と高らかに宣言し、曲を終える。
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